異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

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混血系大公編:第一部

09

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 さておき。美味しい料理に満足した私は、ヴィッテさんに声を掛けてからお店を出た。そのまま傭兵団本部に向かい、様子を伺う。
 ちょうどお昼休憩中だったので、残り番の子に聞いて団長室を覗く。そこにはソファで足を投げ出して、横になっているビョルンの姿があった。
「ビョルン、調子はどう?」
「シャーラ、イスハーク、来てくれてありがとう。今のところは、問題ないよ」
 ビョルンは嬉しそうに起き上がって、私をギュッと抱きしめてこめかみにキスをしてきた。
「前団長が、書類仕事を嫌がっていた気持ちがよくわかったよ…」
「事務仕事も、楽じゃないでしょ?」
「身に染みた」
 まぁビョルンは、事務仕事をバカにしてくるようなタイプじゃないけどね。中にはそういう人間もいるからね。
「現場の人間も、もう少し事務仕事をやらせた方がいいのかもな。苦労がわかる」
「ふふ。でも事務作業を肩代わりするために事務員を雇っているんだから、それはそれでいいのよ。ただ、お互いの仕事に敬意を払わなきゃね」
「よく言い聞かせておくよ」
 実務部隊の団員は、やっぱり現場に出ない団長よりビョルンの方を慕っているからね。そのビョルンが苦労を理解してくれていれば、認識も変わると思う。私もかつては現場に出ていて現場の苦労もわかるから、事務仕事しか知らない子達にも伝えるようにしてるしね。
「今日は夕方には帰って来れそう?」
「ああ、このまま順調にいけばな。夕飯の話か?帰る前に連絡入れた方がいいか?」 
「そうね。イスのリクエストで行きたいところだけど…」
 団長室の中を興味深げに見ていたイスに話を向けると、首を傾げて答えた。
「夕食か?何でもいい」
「一番困るやつー」
 もー。こっちも考えるの大変なんだからね!
「じゃあ外で食べたいとか、家で食べたいとかある?家で作れそうなものなら、作ってもいいし」
「作る?お前が、作るのか?」
「うん、今日はハウスキーパーさん断ったからね」
「……」
 イスがじっと、私を見つめてくる。え、なに?料理ができるかどうかって、疑ってるの?
「あのねぇ、心配しなくても私だって料理くらい…」
「作って欲しい」
 うん?
「お前の作った料理が、食べたい」
 そう言って、イスはついっと目を逸らす。…おおん?
「えーっと、手の込んだようなものは無理よ?」
「わかった」
「あんまり期待しないでね?」
「不味くても構わない」
「さすがに不味いものは作らないわよ!…多分!」
 そんな私たちのやりとりを見ていたビョルンが、優しい微笑みを浮かべてイスを見やった。
「妻の手料理は、格別だよな。イスハーク、俺は外で食べてこようか?シャーラと会うのは久しぶりだろう、二人きりを楽しみたいんじゃないか?」
「いや…」
 遠慮しなくていいぞ、と言ったビョルンにイスハークは首を振る。
「ビョルンとも一緒に食べたい。…私たちは、家族なのだから」
 目元を少し赤く染めて、答えるイスハークに納得する。
 そっか、イスハークも家族の愛情と無縁の人生を歩んで来たんだもんね。家族と一緒に過ごすのって、憧れちゃうよね。
 ビョルンが笑みを深くして、頷く。
「そうか。今日は早めに仕事を終わらせないとな」
「ふふ、そうね。じゃあイス、このあと市場で買い物していこうよ。イスの嫌いじゃないもの、教えてね」
「わかった」
 頷くイスは相変わらず無表情だけど、どことなく嬉しそうに見えた。
 ビョルンと別れて本部を出ると、昼休憩から戻ってきたシウと鉢合わせた。ちょうどいいので、緊急事態がなければビョルンを早めに帰宅させてもらうよう頼んでおく。
「承知しました。週明けに回せるものは、回しておきますね」
「おおぅ…来週がんばりまーす…」
 こりゃあ週明け、気合い入れて出勤しないとね。お休み最終日は、美味しいお肉食べよっと!いま決めた!
「よしイス!美味しいもの探しに行くよ!最後にスイーツも買っていこうね!」
「大賛成だ」
 イスがしっかり頷いてくれたので、テンションが上がる。今日は何種類もスイーツ買っちゃうぞ!残ってもイスが平らげてくれるから安心だ。
「じゃあシウ、よろしくねー!」
「ええ、よい休日を」
 シウに手を振って、イスと手を繋いで。私達は美味しいものを探索するべく、市場に向かった。


 イスは基本的に、嫌いなものはないらしい。ただ豆類はあまり好きじゃない様子(眉を顰めてた)だったので、野菜スープにはベーコンを入れることにした。野菜からの栄養は、野菜たっぷりスープで摂れると私は信じている。前世では野菜の汁物、メインの肉か魚、米かパンってのがだいたいの食事内容だったなー。
「肉と魚、どっちが食べたい?」
「どちらでもいい」
「はいはい、どっちでもね」
 もうイスに食べ物のリクエストは期待してはいけないな。ベーコンの購入のために立ち寄ったお肉屋さんに、丁度美味しそうなお肉の塊があったので、今日はお肉にすることにした。お昼はシーフードだったし、ちょうどいいよね。
「分厚く切ってステーキしたいなー。でも竈の火の調節って、難しいのよね。イスはできる?」
「問題ない」
 随分自信ありげに頷いたので聞けば、かつては竈の火を魔術で調節して料理していたんだって。魔術師は学舎を出てしばらくは、見習い魔術師という扱いになる。その間はお師匠様になる魔術師に付き従って色々教えてもらう代わりに、身の回りのお世話をするらしいんだけど。その際魔術でできることは全部魔術を使って、生活を成り立たせるんだそうだ。とにかく魔術に慣れるのと、魔力調節を上達させるために。
「へぇ、騎士の従士制度みたい」
「まぁ、一緒だな。食事の支度やら洗濯やら、一通りのことはやらされる」
「そうなんだ!じゃあ、家事も一通りできるんだね。料理の腕は?」
「可もなく不可もなく、だそうだ」
「……それって美味しいの?美味しくないの?」
「旨くはないらしい。が、食べるのと栄養素に問題はないと」
「食の楽しみが…ないだと…」
 私からすれば、食事は人生の楽しみのひとつなんだけど。こりゃあ、我が家の料理担当は変わらず私とロルフになりそうだ。
「じゃあ、火加減は頼んだよ?私、竈の火を起こすのも苦手なんだけど、魔術でできるんだよね?」
「指示さえくれれば、どんな火加減でもできる」
「それは頼もしいわ」
 ついつい魔導コンロに頼っちゃうから、竈の扱いは上手にならないのよね。ここはイスの魔術に期待しよう。

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