異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

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混血系大公編:第一部

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 んで。
 気がついた時には昼前でしたよっと。自分のお腹がグーグー鳴るのを聞きながら目覚めたよ…めっちゃお腹空いた。
 ベッドの上に脱ぎ散らかした下着と服を拾い集めて、のんびり身につける。目に見える範囲にキスマークが付いてないのをチェックして…ヨシ。
 うーんとひとつ伸びをすると、寝室を出て居間に向かった。
 居間に入る扉を開けると、ふわっと爽やかな香りを感じる。その香りを楽しみながらソファに近づき、カップを傾けながら資料を読んでいるイスの隣に、ぶつかるようにして座る。
「体の調子はどうだ?」
 資料から目を離さないまま問うイスに抱きついて、グリグリと頭を押し付ける。
「お腹すいた」
「良さそうだな」
「ふふ。なに飲んでるの?」
「ハーブティーだ。医療の塔の副塔長は予防医学が専門なんだが、その一貫でハーブにも詳しい。自分でブレンドしたハーブティーを、時折差し入れしてくれる」
「へぇ、どんな効能があるやつ?」
「精力増強」
「ぅおいッ!!」
 何てもの差し入れて来るんだ!精力は嫌ってほど足りてるんだぞ!
「冗談だ。眼精疲労に効くと言っていた」
「あ、イスにぴったりだね…」
 びっくりした。イスの鉄面皮だと、冗談か本気か全然わかんないんだって。
「飲むか?」
「うん」
 ポットに入ったハーブティーを、準備してあった私用のカップに注いでくれる。何が入ってるのかは知らないけど、赤い色がすごく綺麗。ハイビスカスとか?飲むとほのかな甘さと酸味があって、ベリー系も入ってるのかな。すごく飲みやすい。
「おいしい!」
「そうか、伝えておく。またくれるだろう」
「わーい、何かお礼しなきゃね!」
「私が資料を読み解いた礼にともらったものだから、不要だ」
「あ、そういう…」
 お礼にお礼するのも変かな?
「じゃあ、言っといてくれる?婚約者が喜んでましたって」
 何気なく言った言葉だけど、イスの心の琴線に触れたらしい。ずっと資料を見ていた目を私に向けて、感慨深げにじっと見つめた後。軽く頷いて、チュッと口づけて来た。
 ハーブティーを飲み終わると、出掛ける準備を始めた。お昼ごはんは何も準備していないので、外に食べに行くのだ。イスは食に拘りがないので、主に私の好みで決めることになる。
「お昼食べたら傭兵団本部にちょっと寄りたいけどいい?」
「構わない」
「様子見に行かないとね。じゃあ、3番街にあるシーフードの美味しい店行かない?イス、シーフード大丈夫だっけ?」
「問題ない」
「じゃあ決まり!パスタの気分だったのよねー」
 そしてご近所に住むお嬢さん、ヴィッテさんが働いているお店でもある。そういえばヴィッテさんのもう1人のお父さん(ヴィッテさん家は複婚家庭だ)とお兄さんは魔術師の塔所属だっけ。今日ヴィッテさんがいたら、イスが知ってるか聞いてみよっと。
 準備を済ませると家を出てしっかり鍵を掛けて、イスと手を繋いで。丁度鉢合わせた散歩中の親子と挨拶を交わして手を振って、3番街へと向かった。

「英雄さん!来てくださったんですね!」
 お店に入るなり、ヴィッテさんが目敏く見つけて、席を案内してくれた。まだ早めの時間だから、お客さんもまばらで外の風景が見えるいい席だ。
「今日は、ビョルンさんとロルフさんはお仕事ですか?」
「うん。ロルフは任務、ビョルンは内勤だよ」
「そうなんですね。それで、あの、失礼なんですが、もしやこちらの方は…」
 チラチラとヴィッテさんがイスに視線を向けながら、聞いてくる。
「ああ、イスハーク。魔道具の塔長だけど、知ってるかな?」
 そういうと、ヴィッテさんがやっぱり!という顔をして頷いた。
「父と兄が、いつもお世話になっております!」
 おお、綺麗な90度の礼だ。めっちゃ深々頭下げている。しかもなかなか頭が上がらない。
 イスを小突くと、「?」という感じで見てきたので早く答えて!と促してやる。
「…君の父兄は、魔術師か?」
「はい!魔道具の塔に所属してます!あの、プロジェクトをひとつ任せていただいたと兄が張り切っておりました!元々あんまり家に帰ってこなかったんですけど更に帰ってこなくなりまして、あっすみません文句じゃないんです家族みんな兄を評価していただいてありがたく思ってるんですけど!」
 ヴィッテさんが体を起こして、勢いよくまくしたてる。真面目で可愛いんだけど、たまに勢いが暴走するのよねこの子。こういうとき、ヴィッテさんのお母さんの遺伝子を感じるわー。
「父兄の名は?」
「サイモンとマシューです!」
 ヴィッテさんが答えると、イスはコクリと頷いた。
「ああ、彼らのか。2人とも、真面目に取り組んでくれていて、私もありがたいと思っている。だが、ご家族には迷惑をかける」
「おおお恐れ多いです!」
 ヴィッテさんの動揺っぷりがすごい。まぁ、いちおうサークルの塔長さんってかなり高い地位の人間だもんね。私はたまたま友達の魔術師が塔長になっちゃったから、身近な存在だったけど。普通はそう易々と会える存在じゃないらしいしね。
「もう少ししたら落ち着くだろう。終わったら、長めの休みを取るように言っておく」
「おおおお恐れ多いですぅ!」
 余計なことを言ってすみませんん!!と言いながらメニューを置いてしっかりオススメまで教えてくれて、ヴィッテさんは風のように去っていった。「お決まりのころ窺います!」とのこと。面白い。
「誰だ?」
「ご近所の子。ヴィッテさんって言うの、可愛いでしょ?」
「アンツィラットのようだ」
「それ魔獣やん…」
 アンツィラットはネズミに似た小型魔獣だ。小型って言っても猫くらいあるけど。臆病で落ち着きがなく、遭遇してもだいたい向こうが逃げてくれるから、害の少ないタイプの魔獣だ。
「本人の前で言わないでよ?」
「気を付ける」
 マジで言わないでよ?年ごろのお嬢さんなんだからね。
 とりあえず注意はその辺にして、注文を決めることにした。私はオススメしてもらった今日のランチを頼むことにする。シーフードたっぷりのパスタ(ペスカトーレだっけ?)でめっちゃ美味しそう。

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