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混血系大公編:第一部

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「ん…ッ」
「維持には問題ないが、胎内の魔力が少ないな」
「ロルフが任務に出てるから…魔力は、ロルフの方があるものね」
「そうだな」
「ビョルンも今、慣れない仕事で疲れてるみたいだしねー」
 言われてみれば、回数も少なかったかも。1日1、2回は全然してるけどね。
「何かあったのか?」
「うん。ビョルンが正式に副団長に就任したの。そうすると団長決裁の代理が出来るから、いま事務仕事を勉強中」
 そして今日は、私がいない状態での団長代理を実践中だ。
「それは、苦労するな」
「ふふ、そう言ってた。現場に出てる方がよっぽど楽だって」
 まぁでも、支部長たちも賛成してくれたからね。今はイスの魔術で避妊している状態だけど、それを解(ほど)けるようになったら妊娠の可能性が出てくる。そうなると、つわりとかで碌に動けなくなるかもしれないから、そうなる前に体制を整えておいた方がいい…と支部長(妻子あり)に言われて、ビョルンも納得していた。で、いま頑張って覚えてくれている。
「そうか。では私も尽力せねばな」
「うん、手間かけてごめんね」
 イスは自分の仕事をしながら、私に施されたもう1つの魔法陣…妊娠した時、胎児を殺すように編まれた魔法陣を解析してくれている。かなり複雑に編まれているみたいだから一気に無くすようなことはできないそうで、今は来るたびに少しずつ解いている状態だ。
 イスが編んでくれた避妊の魔法陣をまず解いて、元の魔法陣を不可視化する魔法陣を解いて、そこから少しずつ元の魔法陣を解いて…という手順を取るので、毎回かなり面倒で申し訳なくなるくらいなんだけど。イスは優秀な魔術師で、他の人からすれば複雑な魔法陣でも難なく編めるみたいなのでそこは甘えさせてもらっている。
「気にする必要はない。私の為でもあるのだから」
 …こう言ってくれてるしね。
「ビョルンはいつ帰ってくる?」
「何事もなければ、夕方くらいかな」
「そうか。…では、今から始めてもいいか?」
 イスが顔を上げて、琥珀色の瞳でじっと見つめてくる。表情がわかりにくい彼だけど、その瞳には確かな情欲が灯っていて、ドキドキと胸が高鳴ってくる。
 始めるっているのは、魔法陣を解く作業のことだけれど。イスの魔力がお腹の中に入ることになるから、絶頂するくらい気持ちよくなってしまう。イスもそんな私を見ていると我慢できなくなってしまうようで、前回はそのままセックスに雪崩れ込んだ。なんなら、その時は婚約者たちが3人揃ってたからそれはもう大変なことになって…ああダメだ、アレは思い出してはいけない。黒歴史すぎる。
 とにかく、絶対に途中で止められないから。まだ朝なんだけれども。
「…ベッドに、いこ?」
「ああ…わかった」
 頷いたイスがチュッとキスをして、私を少々強引に抱き上げた。


 イスは私をベッドに下ろすと、何故か私の足を開いてその間に陣取って来た。服は着たままだけど、正常位でするみたいな格好だ。
「ヤダ…なんでこんな恰好?」
「見ていて楽しい」
「もう… 」
 イスはわずかに目を細めると、ぐっと腰を押し付けてきた。服越しだけど、硬くなっているものが恥骨に当たる。
「ん…」
 強い刺激ではないけれど、期待でお腹の奥がきゅんきゅんしてしまって。自分で腰を動かして、いいトコロに当たるようにする。イスがそれに答えて、陰核を潰すように腰を押し付けてくる。もどかしい快感。もっと、もっと、刺激が欲しい。
「イス、早く…」
「ああ…」
 イスがスルリと服の中に手を入れて、お腹を直に撫でてきた。琥珀色が煌めいて、魔力がお腹に滲んでくる。
「んぅ…ッ」
 最初はこの刺激が苦手だった。体の敏感な部分に触れてるわけじゃないのに、強制的に快楽を引きずりだされるのに慣れなかった。でもイスから何度も魔力を送り込まれて、今ではすっかり愛撫のひとつだと、体が覚えている。
「は、ぁ…」
 じわじわと体に快感が広がっていく。イスが自分で施した魔法陣を解くのには、それほど時間がかからないし、魔力もあまり使わないみたい。彼の指がスルスルとお腹をなぞって、私が淡い快楽に耐えているうちにそれは終わった。
「次は元の魔法陣を解く。前にしたように魔術を紡ぐが、耐えられるか?」
「わかんない。けど、がんばるね」
 前の時はビョルンとロルフが同席した状態で解いてたんだけど、途中で気持ち良すぎて耐えられなくなってたら、ロルフが興奮して乱入しちゃったのよね。あれはカオスだった…。今日はイスとふたりきりだから、私が耐えきれなくてもあのカオスが起きることはない。それだけでも、安心だ。
「どうにも耐えきれなかったら、早めに教えてくれ。キリの良いところで終わらせるようにする」
 魔術は単語を繋げた文章になっているから、途中でぶった切ると意味が変わってしまい、思わぬ効果を齎すことがある。だからイスは魔法陣全体の文章を読み取りつつ、解いても問題ない部分から解いて、時には言語を足して文章を書き換えて、また全体を見直して、解いて、足して…を繰り返して、最終的に魔法陣をすべて解くのだと言っていた。うん、自分で言っててもよく意味がわからない。
 とにかく途中でハイ終了!ってのが出来ないから、限界を迎える前に教えて欲しいのだそうだ。気を付けます。
 イスは私の意気込みにひとつ頷くと、魔術を紡いだ。私には聞き取れない、不思議な言語がお腹の中に吸い込まれていく。その度にお腹の中が熱を持って、快感が高められていく。
 キラキラと輝いている、イスの瞳を見るのが好き。意味はわからないけれど、不思議な響きの魔術を聞くのも好き。形の良い唇が、艶やかな声で魔術を紡ぐのをじっと見つめる。
 ああ、キスしたいな。
 イスの邪魔をしてはいけないのは、わかってるんだけど。お腹の奥が疼いて、たまらない気持ちになる。
「イス…終わったら、キスしてくれる…?」
 快感に耐えながら、そっと囁く。
 イスはわずかに目を開いた後、切なげに眉を寄せて頷いた。

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