上 下
113 / 198
中東系エルフ魔術師編

85

しおりを挟む

 それからイスが帰って行くのを見送って。さぁて何するかなー、とりあえずシーツを洗濯しなきゃなー、なんて思っていると、ロルフにガシっと肩を抱かれた。
「なに?」
「何じゃねぇよ、やるこた決まってんだろうが」
「え、何すんの?」
 首をかしげると、ロルフが馬鹿にしたように「ハッ」と鼻で笑う。
「お前、中出しできるようになったんだろ?だったら、やるこた1つだろうが」
 まったく隠しもしない言い方に、カアっと顔が赤くなる。
「なか…ッ、ちょっと言い方!だいたいまだ、朝でしょ?!」
「関係ねぇよ。任務明けで溜まってんだよ、さっさとヤらせろ」
「サイテー!」
 もうホント、デリカシーもクソもない言い方、なんなの?!
「ちょっとビョルン、なんとか言って…うひゃあ?!」
 文句を言ってもらおうとするも、スルリとビョルンの手が、首筋を撫でて。
「そうだな。俺も、我慢できないよ」
 私を見つめる青い瞳に、情欲が灯る。
「し、シーツだって、洗いたいし…」
「予備があるだろう?それと交換して、後でまとめて俺が洗うよ」
「でも、外も、明るいし…」
「お前の裸がハッキリ見えるじゃねぇか、たまんねぇな」
 私を見つめる灰色の目が、獲物を狙うようにギラリと光る。
 これは、ダメだ、逃げられそうもない。
 それに…それに、思い出してしまう。ビョルンとロルフに、セックスを我慢してもらってたこと。…私も、本当はしたくてたまらなかったこと。イスといっぱいしたはずなのに、お腹がキュンキュンして、あの時のやるせない気持ちを思い出してしまう。
 ああ、もう、ホント。ビッチって言われても、仕方ないよ、これじゃあ。
 はぁ、と吐き出すため息も、なんだか熱を持ってしまう。
 もう諦めて、ビョルンとロルフの腕をそれぞれの手で取る。
「…久しぶりだからって、気絶するまでするのは、やめてね」
「ああ、気を付けるよ」
 ビョルンがにっこり笑って、頷いてくれる。ロルフは返事をしない。このやろー。
 でもまぁ、イスの魔法陣で体力の回復促進もしてくれるらしいし、何とかなる…かな?
 2人の腕を取って寝室に向かった私は、自分の見通しの甘さを恨むことになるんだけど。その時は思いつかなかったんだから、後悔したところでどうしようもない。
 まさか、初夜の再来ってくらい...いや何なら、初夜よりももっと盛り上がっちゃうとは…北の戦士たちの性欲、底知れないわ。
 それからたっぷり、週明けまで楽しんで。いっぱいお腹を満たされて。
 そして私たちは、日常に戻っていった。


 それから数日後。私は夜に、家にある私室からイスと通信していた。ほっとくとすぐ寝食を疎かにするからねー、この人。健康チェックしつつ、雑談も楽しむ。
「あ、そう言えば、ドゥーロ君はどうしてるの?」
 バイオトイレを完成させてくれると嬉しいけど、さすがに元の職場には戻れないかな?
「ああ、死んだ」
 ………。
「ええッ?!ちょっと、死んだって言った?!ウソでしょ?!」
「嘘を言ってどうする。私たちが帰って、監視員が目を離していた隙に塔から飛び降りたようだ。気づいた時には、転落死していたらしい」
「……マジ?」
「マジだ」
 えぇー…ウソでしょ?そんな、自殺するほど思いつめているようには見えなかったのに。
「飲食なしが辛かったとか?確かに、人間お腹すくと追い詰められて狂暴化することも…」
「お前と一緒にするな。そもそも、考察しても仕方がない。死んだのは事実だし、死んだ人間に理由など聞けるはずもない」
「そうだけど…」
 いつもなら、一緒に考察してくれるのにな。この話は、あまりしたくなさそうに感じる。でもそうか。自分の部下が亡くなってしまったんだものね。少なからず、ショックがあるのかもしれない。
「そっか…、残念だったね。それが、月の神様の裁きだったのかしら…」
「ああ…そうだな。案外、そうなのかもしれない」
 それからバイオトイレについては、他の人が引き継いでくれることになったそうだ。表向き皇帝陛下の要請から始まったプロジェクトだし、開発もドゥーロ君が完成に近い状態まで進めていたから、おいしい案件として引継ぎにはかなりの人間が名乗りを上げたらしいけど。イスが任命したのは、ドゥーロ君の後輩で一緒に開発に関わっていたヒューマン種の青年だった。年が若すぎるため、同じく魔術師をしている彼の父親がサポートをするそうなんだけど。魔道具師としては優秀で、将来有望な青年だそうだ。
「心配ない。彼なら、問題なく完成させるだろう」
「そっか…。試作品は、ウチにも納品してね。いろんな場所でテストした方がいいでしょ?レポートもちゃんと書くわ」
「ああ、助かる」
「あと、ドゥーロ君のお墓も、また教えて。これまで頑張ってくれたんだものね。完成したら、報告とお礼を言いたいから」
「ああ…ありがとう。その時は、一緒に行こう」
 イスの声が、しんみりしているように聞こえる。イスなりに、ドゥーロ君のことを部下として可愛がっていたのかな。彼は亡くなってしまったけれど、せめて、ヒューマン種の手でプロジェクトを完成させてあげたい。それがイスの、ドゥーロ君に対する優しさなのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました

空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」 ――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。 今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって…… 気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました

indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。 逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。 一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。 しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!? そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……? 元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に! もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕! 

【R18】転生聖女は四人の賢者に熱い魔力を注がれる【完結】

阿佐夜つ希
恋愛
『貴女には、これから我々四人の賢者とセックスしていただきます』――。  三十路のフリーター・篠永雛莉(しのながひなり)は自宅で酒を呷って倒れた直後、真っ裸の美女の姿でイケメン四人に囲まれていた。  雛莉を聖女と呼ぶ男たちいわく、世界を救うためには聖女の体に魔力を注がなければならないらしい。その方法が【儀式】と名を冠せられたセックスなのだという。  今まさに魔獸の被害に苦しむ人々を救うため――。人命が懸かっているなら四の五の言っていられない。雛莉が四人の賢者との【儀式】を了承する一方で、賢者の一部は聖女を抱くことに抵抗を抱いている様子で――?  ◇◇◆◇◇ イケメン四人に溺愛される異世界逆ハーレムです。 タイプの違う四人に愛される様を、どうぞお楽しみください。(毎日更新) ※性描写がある話にはサブタイトルに【☆】を、残酷な表現がある話には【■】を付けてあります。 それぞれの該当話の冒頭にも注意書きをさせて頂いております。 ※ムーンライトノベルズ、Nolaノベルにも投稿しています。

5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる! そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。 ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。 対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。 ※♡が付く話はHシーンです

最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~

ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。 ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。 一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。 目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!? 「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

【R18】義弟ディルドで処女喪失したらブチギレた義弟に襲われました

春瀬湖子
恋愛
伯爵令嬢でありながら魔法研究室の研究員として日々魔道具を作っていたフラヴィの集大成。 大きく反り返り、凶悪なサイズと浮き出る血管。全てが想像以上だったその魔道具、名付けて『大好き義弟パトリスの魔道ディルド』を作り上げたフラヴィは、早速その魔道具でうきうきと処女を散らした。 ――ことがディルドの大元、義弟のパトリスにバレちゃった!? 「その男のどこがいいんですか」 「どこって……おちんちん、かしら」 (だって貴方のモノだもの) そんな会話をした晩、フラヴィの寝室へパトリスが夜這いにやってきて――!? 拗らせ義弟と魔道具で義弟のディルドを作って楽しんでいた義姉の両片想いラブコメです。 ※他サイト様でも公開しております。

処理中です...