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中東系エルフ魔術師編
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しおりを挟むそれからイスが帰って行くのを見送って。さぁて何するかなー、とりあえずシーツを洗濯しなきゃなー、なんて思っていると、ロルフにガシっと肩を抱かれた。
「なに?」
「何じゃねぇよ、やるこた決まってんだろうが」
「え、何すんの?」
首をかしげると、ロルフが馬鹿にしたように「ハッ」と鼻で笑う。
「お前、中出しできるようになったんだろ?だったら、やるこた1つだろうが」
まったく隠しもしない言い方に、カアっと顔が赤くなる。
「なか…ッ、ちょっと言い方!だいたいまだ、朝でしょ?!」
「関係ねぇよ。任務明けで溜まってんだよ、さっさとヤらせろ」
「サイテー!」
もうホント、デリカシーもクソもない言い方、なんなの?!
「ちょっとビョルン、なんとか言って…うひゃあ?!」
文句を言ってもらおうとするも、スルリとビョルンの手が、首筋を撫でて。
「そうだな。俺も、我慢できないよ」
私を見つめる青い瞳に、情欲が灯る。
「し、シーツだって、洗いたいし…」
「予備があるだろう?それと交換して、後でまとめて俺が洗うよ」
「でも、外も、明るいし…」
「お前の裸がハッキリ見えるじゃねぇか、たまんねぇな」
私を見つめる灰色の目が、獲物を狙うようにギラリと光る。
これは、ダメだ、逃げられそうもない。
それに…それに、思い出してしまう。ビョルンとロルフに、セックスを我慢してもらってたこと。…私も、本当はしたくてたまらなかったこと。イスといっぱいしたはずなのに、お腹がキュンキュンして、あの時のやるせない気持ちを思い出してしまう。
ああ、もう、ホント。ビッチって言われても、仕方ないよ、これじゃあ。
はぁ、と吐き出すため息も、なんだか熱を持ってしまう。
もう諦めて、ビョルンとロルフの腕をそれぞれの手で取る。
「…久しぶりだからって、気絶するまでするのは、やめてね」
「ああ、気を付けるよ」
ビョルンがにっこり笑って、頷いてくれる。ロルフは返事をしない。このやろー。
でもまぁ、イスの魔法陣で体力の回復促進もしてくれるらしいし、何とかなる…かな?
2人の腕を取って寝室に向かった私は、自分の見通しの甘さを恨むことになるんだけど。その時は思いつかなかったんだから、後悔したところでどうしようもない。
まさか、初夜の再来ってくらい...いや何なら、初夜よりももっと盛り上がっちゃうとは…北の戦士たちの性欲、底知れないわ。
それからたっぷり、週明けまで楽しんで。いっぱいお腹を満たされて。
そして私たちは、日常に戻っていった。
それから数日後。私は夜に、家にある私室からイスと通信していた。ほっとくとすぐ寝食を疎かにするからねー、この人。健康チェックしつつ、雑談も楽しむ。
「あ、そう言えば、ドゥーロ君はどうしてるの?」
バイオトイレを完成させてくれると嬉しいけど、さすがに元の職場には戻れないかな?
「ああ、死んだ」
………。
「ええッ?!ちょっと、死んだって言った?!ウソでしょ?!」
「嘘を言ってどうする。私たちが帰って、監視員が目を離していた隙に塔から飛び降りたようだ。気づいた時には、転落死していたらしい」
「……マジ?」
「マジだ」
えぇー…ウソでしょ?そんな、自殺するほど思いつめているようには見えなかったのに。
「飲食なしが辛かったとか?確かに、人間お腹すくと追い詰められて狂暴化することも…」
「お前と一緒にするな。そもそも、考察しても仕方がない。死んだのは事実だし、死んだ人間に理由など聞けるはずもない」
「そうだけど…」
いつもなら、一緒に考察してくれるのにな。この話は、あまりしたくなさそうに感じる。でもそうか。自分の部下が亡くなってしまったんだものね。少なからず、ショックがあるのかもしれない。
「そっか…、残念だったね。それが、月の神様の裁きだったのかしら…」
「ああ…そうだな。案外、そうなのかもしれない」
それからバイオトイレについては、他の人が引き継いでくれることになったそうだ。表向き皇帝陛下の要請から始まったプロジェクトだし、開発もドゥーロ君が完成に近い状態まで進めていたから、おいしい案件として引継ぎにはかなりの人間が名乗りを上げたらしいけど。イスが任命したのは、ドゥーロ君の後輩で一緒に開発に関わっていたヒューマン種の青年だった。年が若すぎるため、同じく魔術師をしている彼の父親がサポートをするそうなんだけど。魔道具師としては優秀で、将来有望な青年だそうだ。
「心配ない。彼なら、問題なく完成させるだろう」
「そっか…。試作品は、ウチにも納品してね。いろんな場所でテストした方がいいでしょ?レポートもちゃんと書くわ」
「ああ、助かる」
「あと、ドゥーロ君のお墓も、また教えて。これまで頑張ってくれたんだものね。完成したら、報告とお礼を言いたいから」
「ああ…ありがとう。その時は、一緒に行こう」
イスの声が、しんみりしているように聞こえる。イスなりに、ドゥーロ君のことを部下として可愛がっていたのかな。彼は亡くなってしまったけれど、せめて、ヒューマン種の手でプロジェクトを完成させてあげたい。それがイスの、ドゥーロ君に対する優しさなのかもしれない。
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