上 下
108 / 198
中東系エルフ魔術師編

80

しおりを挟む

「えっと、途中で止めてごめん。続き、する…?」
 そう聞くと、イスは小さくため息を吐きながら頷いた。
「本当は、不本意だ。私とお前の初夜に、余分な事由を介在させたくはなかった」
 少し拗ねたような声が、可愛らしい。案外、ロマンチストなんだね。ただただ、愛を交わすだけの行為にしたかったってことよね?
「仕方ないでしょ?最初にそれが必要なんだから」
「そうだが。あの男のせいでいつも…」
 さらに不満を吐こうとするイスの唇を、自分のそれで塞ぐ。
「起きたことは受け入れて。まずはちゃんと、魔法陣を完成させましょ。完成したら、その後は…」
 愛し合うためのセックス、しようね?
 そっと囁くと、イスの琥珀の瞳が煌めいて。
「ああ…そうしよう」
 彼の魔力が、するりと私の体を撫でた。


「ふッ、ん…、ん…ッ」
 キスをした後、イスの唇が私の首筋を這う。喉の横、血管があるあたり?ついばむ様に口づけされて、体がピクピク反応してしまう。それと同時に、イスの魔力が私の体を覆って、じわじわと入り込もうとしてくる。私も、応えなきゃ。魔力を交わさなきゃ。
 受け入れようとした瞬間、イスの魔力がズルリと流れ込んでくる。途端に快楽が、私を覆う。
「ぃやッ、あ…ッ」
 刺激で軽くイってしまう。イスの魔力が多いから、私の魔力じゃなかなか押し返せない。
「押し返すな、それじゃ魔力を交わせない」
「んッ、そんなこと、言ったってぇ…」
 私はエルフじゃないんだから、そんなに魔力操作が上手じゃないの!
「もうちょっと、はぁ、わかりやすく、言ってぇ…」
「やれやれ…」
 あからさまにため息つくなっつーの!!
「そうだな…古い言葉では、魔力を交わすことを魔力を『織る』と言ったそうだ」
「織る…?」
 『編む』んじゃなくて、『織る』。その言葉を聞いて、なんとなく理解する。そうか、『交わす』って、混じり合わせるようなイメージを持っていたけど、ひとつの布を織るように、お互いの魔力を交差させて行くってこと…?
 自分の魔力を細い糸のようにして、イスに向かって伸ばす。スルリと魔力が入った感触があって、イスが息を飲む。
「ああ…上手だ」
 琥珀色の瞳が、とろりと甘く融ける。もっと見たくて、魔力を糸にしてたくさん伸ばす。イスが私の魔力と絡めながら、たくさんの魔力の糸を私の体に送り込む。じわじわと快感が体を襲う。それだけでも気持ち良いのに、イスの唇が肌を伝い降りて、私の乳首をチュウっと吸う。
「ひぁッ!あッ、あぁぁッ!」
 外からの刺激と、中からの刺激で、体を震わせて達してしまう。イスの魔力がもたらす快感に慣れなくて、翻弄されてしまう。
「イス、やだぁ…イスの魔力が、気持ち良すぎる…」
 荒い息を吐きながら伝えると、イスが目元を少し細めてみせる。
「何度かすれば、私の魔力がお前に馴染むはずだ。そうすれば、ここまで刺激を受けることはないと思う」
「うん…。ずっとこれじゃあ、最後まで意識が持たないよ」
「それは困る」
 真剣に言うイスに、笑ってしまう。寝ている女を抱く趣味はないんだもんね。
「魔力なしでは出来ないの?」
「できるが…それはただ、肉体の快楽を得るだけだ。愛情を伴った行為ではない」
「ああ…」
 エルフ間では、魔力を交わすことこそ愛情表現なんだね。
「ただ、ヒューマンにはそういう行為はないのだったな。どうしてもというなら、耐えるが」
「ん…あのね、多分イスと魔力の差があり過ぎて、私がいっぱい気持ちよくなっちゃうの。ゆっくり、少しずつ交わすことはできる?」
 そもそも、2人の男に開発されちゃったからか、肉体の快楽に弱いしね。さらに魔力で内側から刺激を受けちゃったら、どれだけ達してしまうことか…。想像するだけでも恐ろしい。
「そうかもしれないな。努力してみる。だが…その、夢中になってしまったら、すまない」
「うふ…いいよ、大丈夫」
 気絶したって、死ぬわけじゃないものね。それだけ私に夢中になってくれたってことだから、それはそれで嬉しい。
「私たち、種族が違うんだもの。すぐに何もかも上手くなんて、いかないよ。試行錯誤して、いっぱい失敗しても、めげずにやり直して、…一緒に、夫婦の形を作って行こうね」
 今まで2人で、魔道具をたくさん創り出して来たみたいに。…一緒に、家族になろうね。
 イスの目が細くなる。ほんの少し、口角が上がる。
「ああ…一緒に、やっていこう」
 彼の表情も、こうして少しずつ、知っていけたらいいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました

空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」 ――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。 今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって…… 気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました

indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。 逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。 一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。 しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!? そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……? 元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に! もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕! 

【R18】転生聖女は四人の賢者に熱い魔力を注がれる【完結】

阿佐夜つ希
恋愛
『貴女には、これから我々四人の賢者とセックスしていただきます』――。  三十路のフリーター・篠永雛莉(しのながひなり)は自宅で酒を呷って倒れた直後、真っ裸の美女の姿でイケメン四人に囲まれていた。  雛莉を聖女と呼ぶ男たちいわく、世界を救うためには聖女の体に魔力を注がなければならないらしい。その方法が【儀式】と名を冠せられたセックスなのだという。  今まさに魔獸の被害に苦しむ人々を救うため――。人命が懸かっているなら四の五の言っていられない。雛莉が四人の賢者との【儀式】を了承する一方で、賢者の一部は聖女を抱くことに抵抗を抱いている様子で――?  ◇◇◆◇◇ イケメン四人に溺愛される異世界逆ハーレムです。 タイプの違う四人に愛される様を、どうぞお楽しみください。(毎日更新) ※性描写がある話にはサブタイトルに【☆】を、残酷な表現がある話には【■】を付けてあります。 それぞれの該当話の冒頭にも注意書きをさせて頂いております。 ※ムーンライトノベルズ、Nolaノベルにも投稿しています。

5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる! そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。 ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。 対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。 ※♡が付く話はHシーンです

最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~

ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。 ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。 一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。 目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!? 「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」

クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった

山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』 色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

【R18】義弟ディルドで処女喪失したらブチギレた義弟に襲われました

春瀬湖子
恋愛
伯爵令嬢でありながら魔法研究室の研究員として日々魔道具を作っていたフラヴィの集大成。 大きく反り返り、凶悪なサイズと浮き出る血管。全てが想像以上だったその魔道具、名付けて『大好き義弟パトリスの魔道ディルド』を作り上げたフラヴィは、早速その魔道具でうきうきと処女を散らした。 ――ことがディルドの大元、義弟のパトリスにバレちゃった!? 「その男のどこがいいんですか」 「どこって……おちんちん、かしら」 (だって貴方のモノだもの) そんな会話をした晩、フラヴィの寝室へパトリスが夜這いにやってきて――!? 拗らせ義弟と魔道具で義弟のディルドを作って楽しんでいた義姉の両片想いラブコメです。 ※他サイト様でも公開しております。

処理中です...