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中東系エルフ魔術師編
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しおりを挟むそれからフローラさんと別れて、イスハークと一緒に傭兵団本部へ向かった。建物の中に入るなり、ちょうど受付にいた事務員のエリィから声が掛かる。
「あっ、団長!ビョルンさんが、団長室に来てほしいって言ってましたよ」
「あ、ロルフから連絡入ったかな?」
「ええ、そうみたいです」
エリィは、そう答えながらチラチラと目線を下にやっている。イスと手を繋いでるところだ。
「テヘ。またひとり、誑し込んじゃった」
イスと繋いだ手を持ち上げて見せてあげると、エリィは驚愕した後に、興奮したように言った。
「すごッ!さすが団長、モテますね!羨ましいー!」
「え、私モテてたの?」
ここ最近は怒涛のように色気ある出来事が押し寄せて来てるけど、それまでほとんどなかったんだけどな。
「いやぁ、噂になった人ならまだまだ…。あっ、これ言っちゃダメなヤツだった。すみません忘れてください!」
「え。どういうこと…」
「ビョルンさんが待ってますよ!早く行ってください!」
「えぇ~…」
待って待って。噂になった人がいる上に、言っちゃダメってどういうこと?!
でも粘ろうとするも、エリィは「ちょっとトイレ!」と言いつつピュッと逃げ出してしまったので、諦めて団長室へ向かった。
いちおうノックすると、ビョルンが団長室のドアを開けてくれた。
「シャーラ、お疲れさん。診察はどうだったんだ?」
「ん」
イスと繋いだ手を見せると、ビョルンはニコっと笑って頷いた。
「そうか、よかったな。歓迎するよ、イスハーク殿」
「ありがとう」
それから団長室に入って、ビョルンの向かい側のソファに2人で並んで座った。テーブルの上には、通信具が置いてある。
「ロルフから連絡来たんだよね?」
「ああ、説明は俺からしておいた。イスハーク殿の件はまだ渋っているが、アイツも俺たちだけじゃ済まないことは、わかってはいるからな。イスハーク殿も交えて話して、納得できれば、許可を出すだろう」
「そうか。手間を掛ける」
イスがそう答えているけれど、ちょっと待って、引っかかるんですけど。
「…俺たちだけじゃ済まないって、イスのこと?もう他にはいないよね?」
「あー、それでイスハーク殿。ロルフも入れて3人で、まずは話したいんだが、いいか?」
「わかった」
「いやいやいや、あからさまに私の質問を無視しないでくれる?」
「通信具の向こうでロルフを待たせているんだよ。ロルフを説得せにゃならんし、お前を巡って争わないよう、夫同士で取り決めも必要だろう?こういうことは、早めに話し合っておかないとな」
うぐ。そう言われちゃうとなぁ、反論できないわ。
「それに、シウがお前に用があると言っていたぞ。今から顔を出してきたらどうだ?その間に、話し合いを済ませておくから」
「うぅー、わかった…」
「終わったら声を掛けるからな。それまで仕事の状況も確認しておいた方がいいぞ」
「うっ!!」
そう、それなのよね。ここんとこ現場に出ることなんかほとんどなかったし、団長決裁の書類が溜まってる予感…。
「シウんとこ、行ってくる…」
「ああ、いってらっしゃい」
いつものようにビョルンに言いくるめられて、部屋を出て事務室へ向かった。
事務室へ行くとシウ達にガッツリ捕まって、急いで団長決裁が必要なものを片付けていく。やっぱり私がいない時のために、決裁権限のある副団長が欲しいよねー。ロルフを隊長にできるようになって隊の編成に余裕が出たから、ビョルンを副団長に任命できるよう支部長達と話し合って準備はしているんだけど。ビョルンは支部長達からの信頼も天元突破してるから、この人事には誰も反対しないと思うんだ。
…うーん、ホントになんで、私が団長になっちゃったのかしらね?他の人たちからの信頼度から見ても、ビョルンが適任だって絶対思ったんだけど。当のビョルンが、新団長決めの会議で「前団長の遺言もあるが、俺自身も彼女が適任だと考える」なんて発言しちゃったら、ほぼ満場一致で可決されちゃったのよねー。ちなみに、反対した幹部は私だけでございます。…おかしくね?
ビョルンはまだまだ現場に出ちゃうし、これからのことを考えると支部長の誰かをもう1人の副団長に任命して本部に配属…いやそうすると支部長を任せられる人材がまだいないか。『ボナ・ノクテム』で古参の団員は随分減っちゃったからな…。知名度のおかげで新団員はどんどん参入してくれているけど、育つにはまだまだ時間が必要だし。うーん、やっぱりしばらくは現状維持か。
つらつらと考えながら仕事を片付けていると、あっという間に時間が過ぎてビョルン達がやって来た。
「話はついた?」
「とりあえずはな。そっちはキリがつきそうか?」
チラッとシウを見ると、コクリと頷いてくれた。
「後は、週明けから取り掛かっても大丈夫ですよ」
「やった!」
もうボチボチ晩御飯の時間よね!すごいお腹空いてきたもん!
「よし、今日はここまで!シウ、週明けには出勤できると思うから、よろしくね!」
「ええ、わかりました」
「あとイスとも結婚するから、よろしくね!」
そう宣言すると、事務室内からひゃー!だかキャー!とか声が上がったけど、スルーしておく。
できる秘書シウは特に動揺するでもなく、冷静に「準備しておきますね」と請け負ってくれた。まだ婚姻手続きできる見通しは立たないけど、可能になったら即できるように準備をしておいてもらうのだ。
「迷惑を掛ける」
イスが会釈をすると、シウがいえいえと手を振った。
「むしろ団長の暴走を止める人が増えていただけるとありがた…」
「シウ、聞こえてるよ!」
「……また必要書類があればご連絡いたしますので、その際はご準備よろしくお願いします」
「わかった」
ま、こうして宣言しておけば、後は勝手に噂が広まるかな。
「じゃあ、悪いけど先に失礼するね」
「ええ、お疲れさまでした」
事務の皆や待機していた団員に挨拶しつつ、3人で本部を後にする。あー、すっごくお腹すいたな。
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