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中東系エルフ魔術師編
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頭を抱えていると、イスがじっとこちらを見ているのに気づいた。表情の変化こそ少ないけれど、捨てられた子犬のような、悲しそうな空気を醸し出している。
「ラフィク、私を受け入れられないのなら、最初からそう言ってくれ」
「え?!ち、ちが…ッ」
「何が違う?せっかく全ての問題をクリアしたというのに。嫌がるくらいなら、最初から拒否すればよかったんだ。期待させておいて受け入れられないなんて…」
うわあ、イスが面倒くさい感じになってきたぞ!私の言い方が悪かったんだけども!アヒャアヒャ笑っているフローラさんは放っておいて、イスを宥めにかかる。
「イス、そうじゃないよ。イスが嫌とかじゃなくてね。考えてみてくれる?私は1人なわけ。でも相手は3人もいるの。どう考えても、受け入れる側が大変だと思いませんか!」
2人だって、性欲旺盛で持て余してたのに!さらにもう1人増えるとか、私の体が持たないと思うんです!イスの性欲の程度は知らんけれども!
「体力が持たないということか?」
「そうね、気絶することもザラですわ」
フローラさんもいるけど、イスははっきり言わないと伝わらないことがよくあるのでぶっちゃける。そしてフローラさんがツボっている。もう知らん。
「では、魔法陣をもう少し変えてみよう。魔法陣の維持に必要な魔力を確保し、かつ余剰分の魔力はお前の体力回復を促進させるために使う。その程度の『生命を編む術(テクスヴィタ)』であれば、問題なく紡げるな?フローラ殿」
「あひゃひゃ、問題ないよ。まったく、簡単に言ってくれるねぇ…あー苦し」
フローラさん、笑いすぎ!!
「それなら、いいな?」
「え、うん?それならいい…のか?」
あれ、相手する人数が多くて大変って話をしていたはずが、回復すれば問題ないみたいな脳筋思考に変わってません?それはいいのか?問題解決なのか?
「ラフィク、流されてるよ。まぁ、最初のうちは頑張るんだね。何か月かすれば、そのうち落ち着くんじゃないかい?」
「3ヶ月経っても1人2、3回ほぼ毎日相手させられるのは、落ち着いてるんですかねぇ?まぁ最初はもっと要求されたから、少なくはなってるのか…」
「お、おぉ~…北の戦士は性豪だねぇ」
やっぱり多いよねぇ?
「まぁ、夫婦のことだ。お互い話し合って、妥協点を探すんだね。イスハーク、女の受け入れるところはね、内臓なんだよ。他の男どもにも、丁重に扱うよう言っときな」
「ああ、わかった」
フローラさんがピシャリと言い放つ。た、頼もしい…!そうだよ内臓なんだよ、優しく扱ってくれなきゃ困ります!
「ラフィク。お前自身も、自分を大事に扱うんだよ。流されて許してばかりいては、相手はそれでいいのだと考えてしまうよ」
「うぐ。耳に痛いお言葉です…」
「お前の夫となるイスハークは元は魔術医を目指していたし、今でも知識は相当なものだ。定期的に診てもらって、無理のないようにするんだよ」
「はい」
フローラさんの言葉を噛み締めて、イスに目を向けると、彼はしっかりと頷いてくれた。
「知識は不可抗力だが…お前の役に立つのなら、あの解読という名の苦行も無駄ではなかったのか」
「じゃあ、これからも頼んだよ」
「いやだ」
キッパリと言い放つイスに、ちょっと笑ってしまう。きっとまた資料を押し付けられたら、文句を言いつつも引き受けてしまうんだろうな。
「ま、お前が持つ初めての家族だ。…大事にするんだよ」
「…わかっている」
交わされる2人の会話。この2人って、家族ほど近くはないけど、他人ほど遠くはないっていうか、いろいろ気にかけてくれる親戚くらいの、いい感じの距離感よね。
でもそっか。家族か。私にはすでに2人家族がいるけれど、もう1人増えるんだ。…なんだかいろいろ、実感湧いてきたなぁ。
「さて、これで話は終了だ。他に質問はあるかね?」
「あー、えっと、あの、ホムちゃんの事ですけど…」
切り出すと、フローラさんが深く頷いて答えた。
「ああ…ホムンクルスのことだね。可哀想なことをしたよ。私が責任持って、埋葬するからね。決して粗雑には扱わない。心配しなくていい」
「ありがとうございます。あの、可能なら埋葬に立ち会わせてもらえませんか?見送りたいんです」
フローラさんは少し悲しそうな目を私に向けて、首を振った。
「顔が見えないとは言え、誰がお前とホムンクルスの関係に気づくかわからないんだよ。リスクを犯すのはやめておきな」
「あ…、そう、ですね…」
そうか。また、ビョルンに心配させてしまうところだった。でも、何か少しでも、してあげたらなって思ったんだけれど。
「…身寄りのない魔術師の、共同墓地に埋葬する予定なんだ。前の魔道具の塔長が埋葬されているのと同じところだよ。埋葬が済んだら、イスハークに伝えておく。イスハークの付き添いとして、一緒に墓参りをしてやってくれるかい?」
そうか、イスハークなら関係者だから、自分のお師匠さんのついで…とか父親の犠牲者だから…とか、いくらでも理由はつけられる。彼の妻として付き添うんなら、少々不自然でも疑われるほどのものじゃない。フローラさんの提案に、わたしはしっかりと頷く。
「そうします。…ありがとうございます」
「いいや、こちらこそありがとう。何かあれば、いつでも連絡してくれていいよ。このババァで役立つことなら、協力は惜しまないからね」
美魔女なのに、惜しげもなくババァとか言うよねこの人。
「はい。結婚式できることになったら、招待するので来てくださいね」
「ハハッ!嬉しいね。そんときゃ何を置いてもかけつけるよ」
まだまだ、結婚式するには、時間がかかりそうだけど。でも心強い夫がもう1人増えるんだもの、きっと解決できるはず。
「4人で協力して、がんばっていこうね」
「…ああ、そうしよう」
私が差し出した手を、イスがギュッと握ってくれる。指を絡める、いわゆる恋人繋ぎってやつ。
それが私たちの関係が変わったことを象徴しているようで、なんだか照れくさくなってしまった。
「ラフィク、私を受け入れられないのなら、最初からそう言ってくれ」
「え?!ち、ちが…ッ」
「何が違う?せっかく全ての問題をクリアしたというのに。嫌がるくらいなら、最初から拒否すればよかったんだ。期待させておいて受け入れられないなんて…」
うわあ、イスが面倒くさい感じになってきたぞ!私の言い方が悪かったんだけども!アヒャアヒャ笑っているフローラさんは放っておいて、イスを宥めにかかる。
「イス、そうじゃないよ。イスが嫌とかじゃなくてね。考えてみてくれる?私は1人なわけ。でも相手は3人もいるの。どう考えても、受け入れる側が大変だと思いませんか!」
2人だって、性欲旺盛で持て余してたのに!さらにもう1人増えるとか、私の体が持たないと思うんです!イスの性欲の程度は知らんけれども!
「体力が持たないということか?」
「そうね、気絶することもザラですわ」
フローラさんもいるけど、イスははっきり言わないと伝わらないことがよくあるのでぶっちゃける。そしてフローラさんがツボっている。もう知らん。
「では、魔法陣をもう少し変えてみよう。魔法陣の維持に必要な魔力を確保し、かつ余剰分の魔力はお前の体力回復を促進させるために使う。その程度の『生命を編む術(テクスヴィタ)』であれば、問題なく紡げるな?フローラ殿」
「あひゃひゃ、問題ないよ。まったく、簡単に言ってくれるねぇ…あー苦し」
フローラさん、笑いすぎ!!
「それなら、いいな?」
「え、うん?それならいい…のか?」
あれ、相手する人数が多くて大変って話をしていたはずが、回復すれば問題ないみたいな脳筋思考に変わってません?それはいいのか?問題解決なのか?
「ラフィク、流されてるよ。まぁ、最初のうちは頑張るんだね。何か月かすれば、そのうち落ち着くんじゃないかい?」
「3ヶ月経っても1人2、3回ほぼ毎日相手させられるのは、落ち着いてるんですかねぇ?まぁ最初はもっと要求されたから、少なくはなってるのか…」
「お、おぉ~…北の戦士は性豪だねぇ」
やっぱり多いよねぇ?
「まぁ、夫婦のことだ。お互い話し合って、妥協点を探すんだね。イスハーク、女の受け入れるところはね、内臓なんだよ。他の男どもにも、丁重に扱うよう言っときな」
「ああ、わかった」
フローラさんがピシャリと言い放つ。た、頼もしい…!そうだよ内臓なんだよ、優しく扱ってくれなきゃ困ります!
「ラフィク。お前自身も、自分を大事に扱うんだよ。流されて許してばかりいては、相手はそれでいいのだと考えてしまうよ」
「うぐ。耳に痛いお言葉です…」
「お前の夫となるイスハークは元は魔術医を目指していたし、今でも知識は相当なものだ。定期的に診てもらって、無理のないようにするんだよ」
「はい」
フローラさんの言葉を噛み締めて、イスに目を向けると、彼はしっかりと頷いてくれた。
「知識は不可抗力だが…お前の役に立つのなら、あの解読という名の苦行も無駄ではなかったのか」
「じゃあ、これからも頼んだよ」
「いやだ」
キッパリと言い放つイスに、ちょっと笑ってしまう。きっとまた資料を押し付けられたら、文句を言いつつも引き受けてしまうんだろうな。
「ま、お前が持つ初めての家族だ。…大事にするんだよ」
「…わかっている」
交わされる2人の会話。この2人って、家族ほど近くはないけど、他人ほど遠くはないっていうか、いろいろ気にかけてくれる親戚くらいの、いい感じの距離感よね。
でもそっか。家族か。私にはすでに2人家族がいるけれど、もう1人増えるんだ。…なんだかいろいろ、実感湧いてきたなぁ。
「さて、これで話は終了だ。他に質問はあるかね?」
「あー、えっと、あの、ホムちゃんの事ですけど…」
切り出すと、フローラさんが深く頷いて答えた。
「ああ…ホムンクルスのことだね。可哀想なことをしたよ。私が責任持って、埋葬するからね。決して粗雑には扱わない。心配しなくていい」
「ありがとうございます。あの、可能なら埋葬に立ち会わせてもらえませんか?見送りたいんです」
フローラさんは少し悲しそうな目を私に向けて、首を振った。
「顔が見えないとは言え、誰がお前とホムンクルスの関係に気づくかわからないんだよ。リスクを犯すのはやめておきな」
「あ…、そう、ですね…」
そうか。また、ビョルンに心配させてしまうところだった。でも、何か少しでも、してあげたらなって思ったんだけれど。
「…身寄りのない魔術師の、共同墓地に埋葬する予定なんだ。前の魔道具の塔長が埋葬されているのと同じところだよ。埋葬が済んだら、イスハークに伝えておく。イスハークの付き添いとして、一緒に墓参りをしてやってくれるかい?」
そうか、イスハークなら関係者だから、自分のお師匠さんのついで…とか父親の犠牲者だから…とか、いくらでも理由はつけられる。彼の妻として付き添うんなら、少々不自然でも疑われるほどのものじゃない。フローラさんの提案に、わたしはしっかりと頷く。
「そうします。…ありがとうございます」
「いいや、こちらこそありがとう。何かあれば、いつでも連絡してくれていいよ。このババァで役立つことなら、協力は惜しまないからね」
美魔女なのに、惜しげもなくババァとか言うよねこの人。
「はい。結婚式できることになったら、招待するので来てくださいね」
「ハハッ!嬉しいね。そんときゃ何を置いてもかけつけるよ」
まだまだ、結婚式するには、時間がかかりそうだけど。でも心強い夫がもう1人増えるんだもの、きっと解決できるはず。
「4人で協力して、がんばっていこうね」
「…ああ、そうしよう」
私が差し出した手を、イスがギュッと握ってくれる。指を絡める、いわゆる恋人繋ぎってやつ。
それが私たちの関係が変わったことを象徴しているようで、なんだか照れくさくなってしまった。
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