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中東系エルフ魔術師編
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しおりを挟む「ラフィク、大丈夫か?」
「何とか…あの地区から出たら、マシになってきた…」
「普通はそのまま突き進むなんてことはないからな。苦労を掛けた」
すい、とイスが手を出して、私の髪に指を差し入れて後頭部を包み込むように触れる。じわりと魔力が流されて、沁み込んでくる。
「うわぁ…めっちゃ気持ちいい…」
「魔力の相性がいいからな。このくらいはできる」
イスが魔力の流れを整えてくれたみたいで、気分がよくなったのでビョルンの背中から降りた。
「ビョルンは大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」
とは言え、まったく影響してないとは思えないので、私の魔力を流してみる。
「ああ、確かに、気持ちいいな」
「私とビョルンも相性がいいってことよね?不思議ね」
「俺は魔力なんてほとんどないが、そうなのかもな」
そうね、ビョルンさんは誰がどう見ても、パワーファイターでございます。
2人とも気分がよくなったので、とりあえず雑談しながら歩く。今日はもう引き上げて、ドゥーロ君の犯行の証拠を固めなければ。
「私の魔力も流してみるか?ラフィクとはいいのだから、君とも相性がいいかもしれない」
「おい待て、前に誓約とやらで吐く寸前まで行ったんだが。それなのに相性がいいとかありえるのか?」
「ないな」
「おい!」
ビョルンがイスにからかわれている。イスって冗談を言っても表情が変わらないから、私もよく騙される。この2人、仲良くなってきたなぁ。
雑談をしつつ魔道具屋に辿り着いて、また応接室を借りる。さて、今後の計画を決めていかなくちゃね。ちょうどお昼だし、買ってきたサンドイッチを皆で食べながら話し合う。
とりあえずイスは、キーファインダーの貸し出し記録を通信で確認した。すぐに魔道具の塔の副塔長が調べてくれ、最後に貸し出した記録はドゥーロ君で、返却はされているけどやはり犯行があった期間に借りていたようだ。間違いなく、これが決定打になる。どうして彼は、こんな証拠を残したんだろう?バレない自信でもあったんだろうか。
首を傾げていると、難しい顔をしたビョルンがポツリと呟いた。
「どうも、意図的なものを感じるな。あの石は、帰りながら回収することもできたはずだ。そのままにしておいた理由はなんだ?」
「焦って帰って、回収まで思いつかなかったか…もう一度来るつもりだったとか?」
「なくはないが…イスハーク殿は、どう思う?ドゥーロという男は、シャーラのようにうっかりミスが多い人間なのか」
オイ、さりげなく私をディスるんじゃない!
「いや。ラフィクに憧れてはいたが、本人は臆病であるが故に慎重な性格だった。隠そうと思ったなら、徹底的に証拠を隠滅したはずだ。それを残したのであれば、きっと意味があるのだろうな」
「その意味ってのは、やはり…」
ビョルンが私の顔をじっと見る。…ん?
「恐らく、そうだろうな」
イスも私の顔をじっと見る。…んん?
「……私?」
自分の胸を指さしながら聞くと、2人は揃って頷いた。
「動機は間違いなく、お前に関することだろう。フローラ殿に報告しがてら、注意を促しておく」
「ああ、頼むよ。だがシャーラ、お前も覚悟しておいた方がいいぞ。場合に寄っては、呼び出されるぞ」
「えぇ~、マジぃ?とりあえず予定は空けとくわー。呼び出すなら早めにしてねぇ~」
ホントは呼び出されたくないんだけどー、って感じの嫌そうな声を出すけど、イスはお構いなしで「わかった、早めにする」と頷いた。チッ、来なくていいとかはないのか。
もうさー、なんなの?前世では結婚しないまま終わったってのに、今世でのこのモテ具合。こりゃ来世怖いな。一生恋愛に縁のないまま…あ、それはそれで気楽でいいわ。今世でもう前世&来世分の恋愛もしといて、来世はひとり気ままってのも悪くない気がするわ。そんぐらい今世は濃ゆいわ…。
「大丈夫か、シャーラ。意識が飛んでいるぞ」
「ああ、うん。大丈夫…。あー、じゃあイス、とりあえず連絡があるまでは、家で防犯システムを設計しつつ自宅で待機してるわ。試算が出たら連絡するわね」
極秘任務中なので、出勤するわけにもいかないし。家には私が組んだ防犯システムがあるし内から外に音が漏れないような附術も組んであるから、盗聴の心配もないし。しばらくは家に引きこもりかな。
「ビョルンも自宅待機ね。よろしく」
「あぁ、わかった」
方針が決まったところで、荷物をまとめる。今日はこれで解散だ。家に帰れるの、うれしー。なんだかんだ、家で寝るのが一番リラックスするよね。今週いっぱいはハウスキーパーさんの晩ごはん断っちゃってるから、帰りがてら食材買って、晩ごはんは家で作るかー。
だいたいの荷物がまとまったところで、ビョルンが重い方の荷物を持って「先に行くぞ」と立ち上がった。え、なんで?待って待って。残りの荷物を慌ててまとめるけど、さっと部屋を出て行ってしまう。えー、いつもの熊紳士ビョルンさんじゃありえないんだけど。
びっくりしていると、ソファが急に沈み込む。顔を向けると、思っていたよりずいぶん近い位置に、イスが座っていた。
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