91 / 198
中東系エルフ魔術師編
63
しおりを挟むそれから3人で協力して採寸を終えて、屋敷内に入った。屋敷内にあった机を借りて私は附術を組むための設計を考え、その間イスとビョルンは屋敷内に犯行の痕跡がないかを調べている。
うーん、1月毎に来るみたいだけど、維持期間はもう少し余裕があった方がいいよね。効力は1月半…いや2カ月は持たせたいなー。魔石は使い捨てじゃなくて補充できるタイプにすれば無駄がないよね。初期投資は高いけど、長い目でみればコスパがいいし。その辺はサークルがどれだけお金出してくれるかにもよるけど。屋敷中めぐって魔石に補充して回るのは大変だから、1つの魔石をコアにして全体に巡らせるようにできないかな?どの道、魔石で防犯システム回路を繋いで屋敷全体をカバーするわけだし、できそうな気がするけど…コストが嵩むよねー。コストよねー。いつだって開発の敵はコストなのよー。とりあえず魔石同士、どのくらい離してもいけるか測ってみるか…。
と、メジャーを使おうとして、荷物の中を漁るけど出てこない。アレ、私どこにやった?ビョルンが使ってるかな?
「ビョルンー、私のメジャーって持ってる?」
「いや、持ってないぞ。さっき外を測った後は、お前が持っていたと思うが」
ちょうど近くにいたビョルンが寄ってきて、答えてくれる。
あちゃー、さっき屋敷内部もちょこちょこ自分で測りに行ってたから、その時にどっかに置いてきちゃったかな。アレ、自分が使いやすいようにコスト度外視で魔石までつけて高性能にしてあるから、無くすと痛いのよねぇ。でも私には、強い味方がいる!
「持っててよかった、キーファインダー!」
「ホントだな」
ビョルン、呆れた声を出さない!
えーと、メジャーにつけてたマークはどれだったかな。忘れちゃったのでとりあえず順番にボタンを押すと、光が私の荷物を指し示したり、ビョルンがさっき持って行った魔道具を指したりする。
「じゃあ、これかな?」
3番目のマークをポチっと押す。すると人には感知できないくらいの微弱な魔力がサッと周囲に走り、マークを感知したキーファインダーが…
2方向に、光を指し示した。
「……え?」
「…マークは2つの物に付けていたのか?」
「ううん。価値の高い物にしか、つけてないし…1つにつき1つのマークだけにしてるんだけど」
メジャーはひとつしかないし、2方向なんてありえないんだけど。念のためもう一度、3番目のボタンを押してみる。やはり、光は2方向を示している。
私とビョルンは顔を見合わせて、頷いた。
「イスハーク殿を呼んでこよう」
「うん、わかった」
キーファインダーが壊れてる可能性も否定できないけど。これは何か、見つけられたかもしれない。
イスが来てからすぐに、状況を説明してキーファインダーを作動する。屋敷の中を示す光の先には、本棚に無造作に置かれた私のメジャーがあった。
まず1つ。メジャーを回収して、もう1つの光を追う。光は明らかに外に続いている。玄関のドアを開け、光の示す先に目を向ける。ドアから出てすぐ横、屋敷の外壁沿い。
そのさきには、なんの変哲もない、平べったい石が落ちていた。石を拾って、裏返す。そこには、本職の者が見ればすぐにわかる、附術の証が刻まれていた。
白く光る石だ…!
すっかり忘れていた。ヘンゼルが拾い集めたのはただの石じゃなく、月の光でキラキラ光る石だったんだ。
「見て、イス。このマーク、私のメジャーにつけているのと同じよ」
「石に刻んで、キーファインダーで探せるようにしたのか…。後で道順を辿って、これと同じ石がないか確認してみよう」
「そうね」
認識阻害と方向混乱の術なんだから、魔道具であるキーファインダーには効かない。こうして突破されちゃうことがわかったんなら、屋敷の防犯システムは気合い入れてやらないとね。
「後はドゥーロ君がこれと同じキーファインダーを持ってるかどうか、わかればいいんだけど…」
「これと同じ?これは、何種類かあるのか?」
ビョルンの質問に、私は頷く。
「マークは何種類か作ってるんだけどね。コレ、実は初期に作ったプロトタイプって奴で、
同じマークを割り振った物はコレの他に1個しかないの」
「ラフィク、まさかそれは、師のものか?」
イスの言葉に、頷く。
「前塔長、イスのお師匠さんに差し上げたのがその1つ。…イス、それは今どこにあるかわかる?」
「だいたいの遺品は、塔の誰もが借りられるようにしてある。貸し出し記録を調べてみよう」
それから帰り道、要所要所に同じマークが刻まれた石を発見した。イスとドゥーロ君が一緒に行った時、イスはかなりの時間ホムンクルスを調べるのに費やしたそうだから、その間に外の石を拾ってマークを刻むのは充分できそうだった。
念のため私とビョルンだけで、マークを追いながら屋敷に行ってみた。途中途中で進む先が気持ち悪く感じたり、頭がモヤっとして方向を見失ったりしたけど、光だけを信じて進めば屋敷に辿り着けた。でも魔術に逆らって進んだからか、感覚がおかしくなってすごい気分が悪くなったから、もう二度とやりたくない。帰りはビョルンにおぶってもらった。ビョルンはそこまで気分が悪くなってないらしい。三半規管が強いのかな。
それでも無事にイスの所に帰ってくることができて、塔長がいなくても屋敷にたどり着けるという証明にはなった。
1
お気に入りに追加
1,029
あなたにおすすめの小説
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました
indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。
逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。
一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。
しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!?
そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……?
元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に!
もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕!
男女比が偏っている異世界に転移して逆ハーレムを築いた、その後の話
やなぎ怜
恋愛
花嫁探しのために異世界から集団で拉致されてきた少女たちのひとりであるユーリ。それがハルの妻である。色々あって学生結婚し、ハルより年上のユーリはすでに学園を卒業している。この世界は著しく男女比が偏っているから、ユーリには他にも夫がいる。ならば負けないようにストレートに好意を示すべきだが、スラム育ちで口が悪いハルは素直な感情表現を苦手としており、そのことをもどかしく思っていた。そんな中でも、妊娠適正年齢の始まりとして定められている二〇歳の誕生日――有り体に言ってしまえば「子作り解禁日」をユーリが迎える日は近づく。それとは別に、ユーリたち拉致被害者が元の世界に帰れるかもしれないという噂も立ち……。
順風満帆に見えた一家に、ささやかな波風が立つ二日間のお話。
※作品の性質上、露骨に性的な話題が出てきます。
【R18】転生聖女は四人の賢者に熱い魔力を注がれる【完結】
阿佐夜つ希
恋愛
『貴女には、これから我々四人の賢者とセックスしていただきます』――。
三十路のフリーター・篠永雛莉(しのながひなり)は自宅で酒を呷って倒れた直後、真っ裸の美女の姿でイケメン四人に囲まれていた。
雛莉を聖女と呼ぶ男たちいわく、世界を救うためには聖女の体に魔力を注がなければならないらしい。その方法が【儀式】と名を冠せられたセックスなのだという。
今まさに魔獸の被害に苦しむ人々を救うため――。人命が懸かっているなら四の五の言っていられない。雛莉が四人の賢者との【儀式】を了承する一方で、賢者の一部は聖女を抱くことに抵抗を抱いている様子で――?
◇◇◆◇◇
イケメン四人に溺愛される異世界逆ハーレムです。
タイプの違う四人に愛される様を、どうぞお楽しみください。(毎日更新)
※性描写がある話にはサブタイトルに【☆】を、残酷な表現がある話には【■】を付けてあります。
それぞれの該当話の冒頭にも注意書きをさせて頂いております。
※ムーンライトノベルズ、Nolaノベルにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる