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中東系エルフ魔術師編

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 それから目覚めた時、なんとビックリ朝だった。見たことないけど多分宿のお部屋で、ダブルくらいの大きさのベッドで寝ていた。
 えーと、イスとのことは夢だったかな?ぼんやり天井を見ながら思い返して、いや夢じゃないわ間違いなくヤってるわいやヤってねーけどヤったのと同義だわあんなん間違いなくキスはしてるしこれって浮気なん?ウワァァ私サイテーじゃん!!
 フギャー!と1人でベッドを転がりつつ悶えていると、ガチャっとドアが空いてビョルンが入ってきた。
「起きたか、気分はどうだ?」
「ビョルン…えっと、昨日…」
「ああ、ここはイスハーク殿が取ってくれた宿の部屋だ。昨日お前を迎えに行った時に眠りこけていたから、そのまま連れて来たんだよ」
 イスが取ったのはシングル2部屋だったけど、ビョルンが聞いたらダブルの部屋に変えてくれたそうだ。ダブルの部屋があったのに、シングル2部屋で取ってたんだ…。
「そ、そう…ありがとうビョルン。昨日イスは何か言っていた?」
「今日の集合時間か?起きて準備出来次第でいいと言っていたぞ。いろいろあって疲れてるだろうから、ゆっくりでいいと」
 いろいろ…うん、いろいろあったよね…。これ、ビョルンは気づいてないんだろうか?聡い人だから、何も感じてないとは思えないけれど。服はワンピースに変わってるから、着替えさせてくれたみたいだけど…。チラッと襟口から、服の中を覗く。
「下着は変えてないぞ。上は少し緩めたが」
「うん、ありがと…」
 気づかないフリをしてくれているのかな。それなら、とりあえずはこのまま何も言わないでおく。正直に全部話すことが、相手のためになるとは限らない。一生黙っててくれた方が幸せってこともある。…と、言い訳しつつ8割方保身ですけれども。卑怯とは言わないで、処世術よ!溺愛監禁エンドは避けたいし。ああ、でも罪悪感がうずうず…。ダメだ、混乱して思考が乱れている。気持ちを切り替えて落ち着かなきゃ。
「この宿って、男女別のお湯場ある?」
「ああ、あるぞ。今から行くか?」
「うん、行きたい」
「じゃあ、一緒に行こう」
 男女別で別れるところまで、ビョルンと一緒に行く。頭からお湯を被って髪や体を洗って、着替えも済ませると、少しだけ気持ちがスッキリした。
 そのまま食堂に寄って朝食を食べて、部屋に戻ったらすぐに出掛ける準備をする。
「今日は色々持っていくんだな」
「うん、防犯システムの下準備くらいはしたいからね。あと屋敷に行くまでの道も、何かないか調べたいし」
「屋敷でそこらに置いて、無くすなよ」
「ふッ、対策はバッチリよ」
 私、意識せずに色んな所に物を置いちゃうから、すぐどこに行ったかわからなくなるのよね。それで探してるとビョルンが「さっき洗面所で見たぞ」とか教えてくれる。私の持ち物がどこにあったかまで把握してるって、すごくない?ちなみにロルフには毎度バカにされる。アイツめ許さん。
「チャラララッチャラーン、『キーファインダー』!!」
「なんだその声は…」
 某猫型ロボット(旧Ver)の声真似をしながら、リモコンみたいな形をした魔道具を取り出すと、ビョルンから呆れたような声が上がった。異世界では通じんか、さすがに…。
「えーと、とにかくこれは、置き場所がわからなくなった物を探す道具なの。決められたマークをサーチして、その場所を教えてくれるってやつ」
「へぇ、便利だな。お前の私物全部にマークをつけたらどうだ?」
 ビョルン、私の物品管理能力をまったく信用してないことが発覚。
「これ、サーチの範囲内にマークがあると、光で方向を教えてくれるのよね。で、マークの数は限りがあるんだけど、全部の私物にマークつけたらどうなると思う?」
「…色んな方向に光が出て、結局どこにあるかわからなくなるな…」
「そ。だから家でまた探し物をしてたら、教えてね!」
「他力本願が過ぎるぞ、ったく…」
 ビョルンが苦笑するけれど、そこは私のようなのを妻に選んだのが運の尽きと、諦めていただきたい。 
 それから準備が完了して、魔道具屋へ向かった。既に慣れたもので、店に入るなり店員さんが応接室に案内してくれた。イスはテーブルに資料を広げて熱心に読んでいたけれど、私たちが部屋に入ると資料を置いて顔を上げた。
「早いな。大丈夫か?」
 正直、どんな顔をして会えばいいかわからなかったけど。イスの態度は平常通りで、ホントに夢だったかな?と思えるくらい変わらなかったので、私も普通の態度を装うことができた。
「イスこそ。昨日からずっとそのままじゃないよね?」
「さすがに寝た。ここのソファでだが」
「もー。布団で寝ないと、ちゃんと疲れとれないよ?」
「慣れている」
「まったく!朝食は摂った?」
「従業員が持ってきた物を食べた」
 従業員さんグッジョブ!
「お昼は買っていこうね。ランチの時間取ってくれなきゃ、仕事のパフォーマンスだって落ちるんだからね」
「わかった。お前の好きなものでいい」
「やった!」
 サンドイッチのお店に寄ろうっと!
 何を買おうかな、なんて頭の中で思い描きながら、イスが支度を終えるのを待って。準備が終わったところで、再び5番街の屋敷へ向かって出発した。
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