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中東系エルフ魔術師編

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「…ッ!」
 思わず息を飲む。アレよね、私にソックリだって言っていた。
『ああ、すまない。お前はこういう言い方は不快か?だが、前にも言ったようにアレは魂の入っていないタイプのものだ。発見された時点で生命反応はなく、魔術の痕跡を残すためと肉体の腐敗を防ぐために最低限の魔術を通して保管されている状態で…』
「え?あぁ、ごめん。聞いてなかった」
 イスが早口で言った言葉は、驚きのあまり上滑りしてしまって、頭に入ってこなかった。
「聞こえてなかったならいい」
「ごめんって。それで、誰がやったかはわかってるの?」
『目星は付いている。だが決定打がない。私とフローラ殿が調べた限りでは、魔術の痕跡が見つからない。そのため、侵入した手段を推測できないんだ。場所が場所なだけに、サークル内でも調査できる人間は限られているから、外部の手を借りることも難しい。しかしお前達は既に誓約を交わしているし、特にお前は関係者なのだから、内容を知られても問題ない。以上の点を示して、他の塔長を説得した』
 なるほど、折角なので便乗したわけね。やるじゃない、イス。
「お前達には私と共にあの屋敷へ行き調査をすることと、附術による防犯の強化を頼みたい」
「わかった。乗りましょう」
 そこからイスと詳細を詰め、必要な物を各自準備することになった。
「いつ行く?」
「可能な限り早くだ。私は今日にでも行ける」
「ロルフはいま任務に出てるんだけど、私とビョルンで行ってもいい?」
「お前の判断に任せる」
「ちょっとビョルン呼んでくる。待ってて」
 私は急いで訓練所に行って、ビョルンを呼んできた。団長室に入ってから、一通り説明する。
「ロルフはいいんじゃないか?多分、行っても理解する気はないだろう。戦闘行為があるならまだしも、調査には向かんからな」
「それなのよねぇ。イスの話もほとんど聞いてなかったみたいだし」
 奇襲とか、公には言えないけど暗殺任務とかも得意なんだけど、どうも侵入経路とか攻撃のタイミングとかも野生の勘で動いてるみたいなのよね。後から報告させようとしても「何となく」とか「知らねー」って言葉がどんだけ出て来るか…。補足しまくって報告書を作り上げたのを思い出して、ちょっと頭痛くなったわ。ビョルンみたいに論理的(ロジカル)な考え方をするタイプでもないし、調査して原因を探るような任務はとにかく向かない。
「ただ後で『何で呼ばなかった』って言われると厄介っていうか…。ホラ私、いまロルフに借りが嵩んでるから、拗ねられると後が怖いのよねー」
「あぁ…執念深いしな…」
 そうなの。自分は踏み倒しても、借りの回収は忘れない男なのよ。改めていうと酷いな、アイツ。
「でも極秘任務だから、どこかに通信入れるわけにもいかないし…」
「うーん、それでもとりあえず、任務先近くの衛兵待機所に連絡だけ入れておいたらどうだ?すぐに捕まらなくても、通信を折り返すように伝言を頼んだ方がいいと思うが」
「内容話せないのに?」
「伝えようと努力した事実ってのは、大事だと思うぞ」
 あー、そっか。最初から伝えないのと、伝えようと努力したけど結果伝わらなかったってのは、相手からしたら心象が全然違うよね。
「わかった。そうする」
 内容は、急遽イスとビョルンと出掛けることになったから…とか言えば察してくれるとは思うし。
「怒ったら、後からビョルンも宥めてね」
「わかった。まぁ、お前なら大丈夫だ」
 …それって暗に、体で宥めろって言ってないかい?
『話はまとまったか?』
「うん。とりあえず今日、今から行きましょう。調査するなら早い方がいいしね。附術の道具は少し持っていくけれど、今日は下見で実際に施すのは後日ってことになると思う」
『わかっている』
「イス、近くに来ているの?」
『4番街の魔道具屋にいる。サークルの直営店だ。わかるか?』
「ああー、行ったことはあるけど…ビョルン、場所わかる?」
「ああ、大丈夫だ」
「じゃあそこで待ち合わせでいい?そこから一緒に5番街に行くってことで」
『わかった。待っている』
 話がまとまったところで、すぐに準備を始めた。私が団長室に置いてある附術道具をピックアップしている間に、ビョルンがロルフの任務中滞在予定の街へ連絡を入れて、見かけたら連絡をしてもらうよう伝言を頼んでおく。それから秘書のシウに極秘任務が入った旨と、とりあえず私とビョルンが任務に当たることを告げて後を頼んでおく。あと、ロルフから連絡が入ったら、いつなら連絡がつくか確認するようお願いして、と。私がシウと話をしている間にビョルンが自分の装備を整えて、出掛ける準備は完了した。
「じゃあシウ、後はよろしくね」
「お任せください。お気をつけて」
 極秘なので、行先も告げられない。シウに見送られつつ、ビョルンと一緒に4番街へ向かった。
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