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中東系エルフ魔術師編

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「シャーラ、水がいるか?」
「うん、ありがと…」
 うぅ、口の中が苦い&生臭っ…。ビョルンから受け取った水をゴクゴクと飲み干して、口の中をスッキリさせる。
 フゥ、私も昨日今日でだいぶテクニックが磨かれたんじゃない?相当手伝ってもらったけれど。だってビョルンは更なる巨根なんだもん…信じられる?手で握っても指が回りきらないのよ?両手で持っても、亀頭が手からはみ出るのよ?どんなんよ…。
 でもビョルンは嬉しそうにしてるから、頑張った甲斐はあったかな。ビョルンが機嫌よく汚れたところを拭いてくれて、私がパジャマ用のワンピースを着ている間にシーツを整えてくれる。シーツは3枚くらい重ねて敷いてあって、今日は1枚だけ剥がせばよかったみたい。キレイに済んでよかったよかった。
 それから歯を磨いて寝る準備をして、ビョルンとキスを交わして、布団に入った。
 ビョルンの腕の中で、眠くなるまで会話を楽しむ。
「そういえば、約束しなかった場合、どうなるか聞いてなかった」
「ん?あぁ…聞くか、今さら?」
「ついつい、あらゆる可能性を知りたくなっちゃうのよねー」
 ゲームでも選択肢がある場合は、セーブ&ロードでつい両方の選択の結末を見たくなっちゃうのよね。
「約束しないって言ったら、どうするつもりだった?」
「まぁ、そうだな。ロルフの案を実行していたかもしれないな」
「……溺愛監禁エンド?」
「そんな言い回しがあるのか?」
 ええ、元の世界では、聞いたことがありますよ。メリーバッドエンドの代表っていうか。
「それって実質、選択肢ひとつじゃない?」
 約束しなくても、強制的に生涯を共にするしかないよね?監禁されたら。
「そうかもな」
「まじか、フラグ回避できてよかった…。ロルフに加えてビョルンまで敵に回ったら、どう足掻いても逃れられないじゃないの。いや待って、イスに連絡取る手段さえ仕込んでおけばワンチャン逃げられるか…?」
「起きもしない可能性は探らんでいい。まぁそれに、塔長殿もこっちの味方につくと思うぞ」
 ん?
「え、何でよ。どう考えても私の方がイスと仲がいいでしょうが」
「得られるもののデカさを考えればなぁ、こっちに付きそうな気がするが。まぁ、こんなこと考えても仕方ないだろう?もう寝よう。明日起きられなくなるぞ」
 答えるのが面倒になったのか、ビョルンが私を寝かしつけに掛かる。
「ちょっと、スッキリしないんだけど!」
「わかったわかった、また明日な」
 少し眠そうな声でそう言って、抱き寄せられればそれ以上文句も言えなくて、仕方なく諦める。
 ビョルンの鼓動を聞きながら、目を閉じていると不意に「彼女」の姿が思い浮かぶ。
 幸せ。私、ちゃんと幸せだよ。愛してくれて、命を繋いでくれた人がいる。がんばって繋いだ命を、幸せに生きてくれている人たちがいる。そして、私が何ものであっても関係なく、私を愛してくれる人たちがいる。
 本当に、幸せなの…。あなたも、あなたのことも、私が……。





 事態が動いたのは、イスと会った日から10日後。ロルフが任務に出て、私が傭兵団本部で仕事をして、ビョルンが訓練所で団員の訓練をつけているとき。
 お昼休憩に入る少し前くらいに、イスから傭兵団本部へ通信が入った。
「イス、こっちに通信入れるなんてどうしたの?」
 前の話の続きなら、自宅の通信具に連絡を入れるはずだ。イスは鉄面皮でコミュ障だけれど、そのくらいの気遣いが出来ない人間ではない。
『……極秘依頼をしたい』
 通信具の向こうから聞こえた声が、またちょっとかさついている。これ絶対、何かあったよね。
 極秘依頼。任務内容は団長である私が請け負って、任務を遂行する団員以外には内容を一切秘匿するやり方だ。場合によっては魔術師を使って秘匿の誓約を編むこともある。
「待って、団長室に移動するから。…シウ、団長室で依頼の話聞いてくるから、あとよろしくね」
 できる秘書シウに声を掛けると、すぐさま団長室に向かった。団長室は私の附術で防音できるようにしてあるから、密談にはピッタリなのよね。
 リビング部分にあるソファに1人腰掛けて、通信具をテーブルに置く。
「お待たせ、イス。依頼内容を聞かせてもらえる?」
『わかった。前に言ったあの男の屋敷に入る話だが。お前達に極秘任務を依頼することに、決定した』
「エッ!そうなの?そっか、そしたらサークルも体裁を保てるってこと?でも依頼金どうしようかな。私達が負担しようか?」
 依頼の体裁を取るなら、金銭を発生させないと帳簿としてまずい。
「サークルが負担する」
「いや、そこまでしてもらう訳には…」
「違う。正式な依頼だからだ」
 私の言葉を遮ったイスに、疑問が湧く。
「…何かあったの?」
 極秘任務って、言ったよね。凄腕の魔術師達を持ってしても、解決できない問題が発生したってこと?
『…あの男の屋敷に保管されていた、ホムンクルスが損壊された』
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