77 / 198
中東系エルフ魔術師編
49
しおりを挟むそこからしばらくは宴会を楽しんでいたけれど、ショーンさんが音頭を取って遅くならないうちにお開きになった。小さい子どもさんも参加してたし、何気に明日は週初めで、ほとんどの人が仕事あるのよねぇ。私も仕事ですよ…。
みんなで協力して片付けて、ゴミやなんやらはキチンと始末して。会場がキレイになったところで、解散となった。ホント、今日1日でご近所の方とずいぶん打ち解けた気がする。やっぱり、一緒に飲み食いしたり協力して何かすると、違うよね。
アンリは酔いもだいぶ抜けたみたいだけど、少しふらついていたのでロルフに一緒に行ってもらった。今日はこのまま、ロルフも一緒に当直してもらう。ブーブー文句を言っていたけれど、飲ませたのはアンタだからね!上司として責任取りましょう!と言ったら舌打ちして「後で覚えてろよ」と捨て台詞を吐きつつも本部に連れて行ってくれた。借金が嵩むわー。
それにしてもアンリよりよっぽど飲んでたと思うんだけど、ケロっとしているから恐ろしい。肝臓どうなってんの?
ともあれ、今夜は何事もない事を祈る。
それから家に入って、キッチンに置かれた大量の食器と直面する。これを洗うのは時間がかかるから、取り合えず盥に水を張ってそこに入れておいてもらったんだけど…これを洗うのは、相当な気合がいるな。やる気が出ないなーなんて思っていると、ビョルンが声を掛けてきた。
「明日俺がやっておくよ。お前は仕事なんだから、もう休め」
「え、でも…」
「大丈夫だ。早く着替えて休め」
そう言って背中を向けてしまうビョルンは、どことなくそっけない。ずっとずっと頼もしく感じていた背中に、今は少し拒絶を感じる。まだ怒ってるのかな。…怒っているよね。
「ごめんね、ビョルン…」
「……」
ビョルンが振り向いて、じっと私をみつめる。深い青は冷たく凪いでいて、いつも優しい彼にそんな目をさせてしまった自分が嫌になる。
「ごめん、もう、あんなこと言わない…」
許して、と言いそうになるけど、グッと堪える。許すのを決めるのは私じゃない。彼だ。
少しの沈黙のあと、ビョルンは小さくため息をついた。
そして両腕を広げて、「おいで」と言った。そこに勢いよく飛び込む。
「ごめんね、ごめん…」
ぶ厚い体にしがみついて、謝る。ビョルンは大きな手で、私の頭を撫でてくれた。
「諦めが早いのは、お前のいいところでもあり、悪いところでもあるな…」
「うん…」
「他は諦めてもいいが、俺のことは諦めないでくれ」
「…ビョルンが私のことを嫌にならない限り、手放すつもりはないよ」
少し躊躇ってから答えた私に、またビョルンのため息が聞こえる。
ごめん、今のはビョルンの望む答えじゃなかったんだよね。でも人は変わる。環境や状況や立場の変化で、愛情が枯渇することもあるの。もしビョルンが私のこと嫌になったりしたら、すぐに手放すようにしたい。その方が自分の傷が少なくて済むから。
「ロルフの案を実行したくなってきたな…」
「え、何それ?」
なんだか嫌な予感しかしないんだけど。
「シャーラを力づくでモノにして閉じ込めちまえばいいと」
監禁ダメ、ゼッタイ!!
「冗談でしょ?!」
「だいたいいつも本気だったぞ。…ロルフはお前と、こんな関係を築けるとは思ってなかったからな。かつて思いつめている時に、口にしていた」
「い、いつから?」
「最初はお前が魔王とか呼んでいる『対するもの(コントラ)』と、決着をつけに行く前だったかな」
「思ってたよりかなり前だった!!」
てか最初はってことはその後も何回かあったってことよね?ヤンデレ化しなくてよかった!知らん間にピンチを回避してたよ!
「もしかして、ビョルンが止めてくれてた?」
「まぁ、そうだな」
「神はここにいた…」
例え最盛期だったとしても、ロルフに本気出されて私が敵うわけがない。万全の準備を整えて、運も味方してようやく、刺し違えて共倒れに持ち込めるかってところだ。ビョルンが押さえてくれたからこそ、無事だったわけだ。神。
「だが俺だって、我慢が効かなくなる時もあるぞ」
「うん…ごめん」
ビョルンに本気出されたら、私なんて秒でやられて即監禁コースへご案内だわ。彼は温厚だし忍耐強いけれど、だからって何でも許してくれるワケじゃない。今回は私がビョルンの地雷を踏んじゃったんだよね。それが私を想うあまりだって言うのが、ありがたいけど申し訳ない。
「そうだな、生涯共にいると約束するのなら、許してやってもいい」
「うん、わかった。約束する」
貴方が私を必要とする限り。口には出さずに、心の中で付け加える。ごめんね、この性分はなかなか変えられないの。40年+αを、コレで乗り越えて来たんだもの。
ビョルンは、私のそんな心の声も察していたかもしれないけれど。仕方がないな、という顔をして、私にキスを寄越した。ビョルンが身を屈めて、私が背伸びして、たくさんキスをする。
貴方の理想通りになれなくてごめん。でもお互い上手く折り合いがつけられて、この先も貴方が私を求め続けてくれるのなら。
「…ずっと、一緒にいようね」
キスの合間に、唇が触れるくらいの距離でねだる。ビョルンは私のお尻の下に腕を入れると、少々強引に抱き上げる。
「うひゃッ?!」
「ああ…もちろんだとも」
ビョルンの目にグッと情欲が灯って、私を抱いたまま歩き始める。向かう先は寝室だ。
私たちはセックスが出来ない。子どもの事を想うなら、絶対に避妊しなければ。
でも、もしビョルンが止まってくれなかったら…後悔することになっても、止められる自信はなかった。
0
お気に入りに追加
1,029
あなたにおすすめの小説
異世界の学園で愛され姫として王子たちから(性的に)溺愛されました
空廻ロジカ
恋愛
「あぁ、イケメンたちに愛されて、蕩けるようなエッチがしたいよぉ……っ!」
――櫟《いちい》亜莉紗《ありさ》・18歳。TL《ティーンズラブ》コミックを愛好する彼女が好むのは、逆ハーレムと言われるジャンル。
今夜もTLコミックを読んではひとりエッチに励んでいた亜莉紗がイッた、その瞬間。窓の外で流星群が降り注ぎ、視界が真っ白に染まって……
気が付いたらイケメン王子と裸で同衾してるって、どういうこと? さらに三人のタイプの違うイケメンが現れて、亜莉紗を「姫」と呼び、愛を捧げてきて……!?
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました
indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。
逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。
一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。
しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!?
そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……?
元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に!
もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕!
【R18】転生聖女は四人の賢者に熱い魔力を注がれる【完結】
阿佐夜つ希
恋愛
『貴女には、これから我々四人の賢者とセックスしていただきます』――。
三十路のフリーター・篠永雛莉(しのながひなり)は自宅で酒を呷って倒れた直後、真っ裸の美女の姿でイケメン四人に囲まれていた。
雛莉を聖女と呼ぶ男たちいわく、世界を救うためには聖女の体に魔力を注がなければならないらしい。その方法が【儀式】と名を冠せられたセックスなのだという。
今まさに魔獸の被害に苦しむ人々を救うため――。人命が懸かっているなら四の五の言っていられない。雛莉が四人の賢者との【儀式】を了承する一方で、賢者の一部は聖女を抱くことに抵抗を抱いている様子で――?
◇◇◆◇◇
イケメン四人に溺愛される異世界逆ハーレムです。
タイプの違う四人に愛される様を、どうぞお楽しみください。(毎日更新)
※性描写がある話にはサブタイトルに【☆】を、残酷な表現がある話には【■】を付けてあります。
それぞれの該当話の冒頭にも注意書きをさせて頂いております。
※ムーンライトノベルズ、Nolaノベルにも投稿しています。
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
【R18】義弟ディルドで処女喪失したらブチギレた義弟に襲われました
春瀬湖子
恋愛
伯爵令嬢でありながら魔法研究室の研究員として日々魔道具を作っていたフラヴィの集大成。
大きく反り返り、凶悪なサイズと浮き出る血管。全てが想像以上だったその魔道具、名付けて『大好き義弟パトリスの魔道ディルド』を作り上げたフラヴィは、早速その魔道具でうきうきと処女を散らした。
――ことがディルドの大元、義弟のパトリスにバレちゃった!?
「その男のどこがいいんですか」
「どこって……おちんちん、かしら」
(だって貴方のモノだもの)
そんな会話をした晩、フラヴィの寝室へパトリスが夜這いにやってきて――!?
拗らせ義弟と魔道具で義弟のディルドを作って楽しんでいた義姉の両片想いラブコメです。
※他サイト様でも公開しております。
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる