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中東系エルフ魔術師編
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しおりを挟むそこからしばらくは宴会を楽しんでいたけれど、ショーンさんが音頭を取って遅くならないうちにお開きになった。小さい子どもさんも参加してたし、何気に明日は週初めで、ほとんどの人が仕事あるのよねぇ。私も仕事ですよ…。
みんなで協力して片付けて、ゴミやなんやらはキチンと始末して。会場がキレイになったところで、解散となった。ホント、今日1日でご近所の方とずいぶん打ち解けた気がする。やっぱり、一緒に飲み食いしたり協力して何かすると、違うよね。
アンリは酔いもだいぶ抜けたみたいだけど、少しふらついていたのでロルフに一緒に行ってもらった。今日はこのまま、ロルフも一緒に当直してもらう。ブーブー文句を言っていたけれど、飲ませたのはアンタだからね!上司として責任取りましょう!と言ったら舌打ちして「後で覚えてろよ」と捨て台詞を吐きつつも本部に連れて行ってくれた。借金が嵩むわー。
それにしてもアンリよりよっぽど飲んでたと思うんだけど、ケロっとしているから恐ろしい。肝臓どうなってんの?
ともあれ、今夜は何事もない事を祈る。
それから家に入って、キッチンに置かれた大量の食器と直面する。これを洗うのは時間がかかるから、取り合えず盥に水を張ってそこに入れておいてもらったんだけど…これを洗うのは、相当な気合がいるな。やる気が出ないなーなんて思っていると、ビョルンが声を掛けてきた。
「明日俺がやっておくよ。お前は仕事なんだから、もう休め」
「え、でも…」
「大丈夫だ。早く着替えて休め」
そう言って背中を向けてしまうビョルンは、どことなくそっけない。ずっとずっと頼もしく感じていた背中に、今は少し拒絶を感じる。まだ怒ってるのかな。…怒っているよね。
「ごめんね、ビョルン…」
「……」
ビョルンが振り向いて、じっと私をみつめる。深い青は冷たく凪いでいて、いつも優しい彼にそんな目をさせてしまった自分が嫌になる。
「ごめん、もう、あんなこと言わない…」
許して、と言いそうになるけど、グッと堪える。許すのを決めるのは私じゃない。彼だ。
少しの沈黙のあと、ビョルンは小さくため息をついた。
そして両腕を広げて、「おいで」と言った。そこに勢いよく飛び込む。
「ごめんね、ごめん…」
ぶ厚い体にしがみついて、謝る。ビョルンは大きな手で、私の頭を撫でてくれた。
「諦めが早いのは、お前のいいところでもあり、悪いところでもあるな…」
「うん…」
「他は諦めてもいいが、俺のことは諦めないでくれ」
「…ビョルンが私のことを嫌にならない限り、手放すつもりはないよ」
少し躊躇ってから答えた私に、またビョルンのため息が聞こえる。
ごめん、今のはビョルンの望む答えじゃなかったんだよね。でも人は変わる。環境や状況や立場の変化で、愛情が枯渇することもあるの。もしビョルンが私のこと嫌になったりしたら、すぐに手放すようにしたい。その方が自分の傷が少なくて済むから。
「ロルフの案を実行したくなってきたな…」
「え、何それ?」
なんだか嫌な予感しかしないんだけど。
「シャーラを力づくでモノにして閉じ込めちまえばいいと」
監禁ダメ、ゼッタイ!!
「冗談でしょ?!」
「だいたいいつも本気だったぞ。…ロルフはお前と、こんな関係を築けるとは思ってなかったからな。かつて思いつめている時に、口にしていた」
「い、いつから?」
「最初はお前が魔王とか呼んでいる『対するもの(コントラ)』と、決着をつけに行く前だったかな」
「思ってたよりかなり前だった!!」
てか最初はってことはその後も何回かあったってことよね?ヤンデレ化しなくてよかった!知らん間にピンチを回避してたよ!
「もしかして、ビョルンが止めてくれてた?」
「まぁ、そうだな」
「神はここにいた…」
例え最盛期だったとしても、ロルフに本気出されて私が敵うわけがない。万全の準備を整えて、運も味方してようやく、刺し違えて共倒れに持ち込めるかってところだ。ビョルンが押さえてくれたからこそ、無事だったわけだ。神。
「だが俺だって、我慢が効かなくなる時もあるぞ」
「うん…ごめん」
ビョルンに本気出されたら、私なんて秒でやられて即監禁コースへご案内だわ。彼は温厚だし忍耐強いけれど、だからって何でも許してくれるワケじゃない。今回は私がビョルンの地雷を踏んじゃったんだよね。それが私を想うあまりだって言うのが、ありがたいけど申し訳ない。
「そうだな、生涯共にいると約束するのなら、許してやってもいい」
「うん、わかった。約束する」
貴方が私を必要とする限り。口には出さずに、心の中で付け加える。ごめんね、この性分はなかなか変えられないの。40年+αを、コレで乗り越えて来たんだもの。
ビョルンは、私のそんな心の声も察していたかもしれないけれど。仕方がないな、という顔をして、私にキスを寄越した。ビョルンが身を屈めて、私が背伸びして、たくさんキスをする。
貴方の理想通りになれなくてごめん。でもお互い上手く折り合いがつけられて、この先も貴方が私を求め続けてくれるのなら。
「…ずっと、一緒にいようね」
キスの合間に、唇が触れるくらいの距離でねだる。ビョルンは私のお尻の下に腕を入れると、少々強引に抱き上げる。
「うひゃッ?!」
「ああ…もちろんだとも」
ビョルンの目にグッと情欲が灯って、私を抱いたまま歩き始める。向かう先は寝室だ。
私たちはセックスが出来ない。子どもの事を想うなら、絶対に避妊しなければ。
でも、もしビョルンが止まってくれなかったら…後悔することになっても、止められる自信はなかった。
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