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中東系エルフ魔術師編

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 少しして、これ誰がどう収拾つけるの?ってなったところでビョルンが戻って来て、なんとか場を収めてくれた。神かな?
 それから買い出し部隊が到着したので、ロルフと一緒に下拵えやら宴会の準備を任せて、私はビョルンと一緒に地区長のショーンさんを訪ねた。
「いやぁ、英雄殿。この度は11区の者たちがご迷惑お掛けして、申し訳ありませんでした」
 豊かな白髭を蓄えたショーンさんは、見れば見るほどサンタのおじさんだ。冬になったら是非とも、赤い服着て子どもたちにプレゼント配って欲しい。
「いえいえ、こちらこそ。お力添えいただきまして、助かりました。それにお風呂も!家でお風呂入れるなんて、サイコーの気分でした!ありがとうございました」
「喜んでいただけて、何よりです」
「それに酒樽まで頂いちゃって。ウチの団員お酒大好きなんで、今日さっそく庭で宴会でも開こうと思うんですけど~…で。まぁ建前マシマシで遠回りに話してもいいんですけど、面倒なんで本音をぶっちゃけてもいいです?」
 私のバッサリした言い方に、ビョルンがため息をついてこめかみを揉み込んだ。ビョルンはアレよね、建前を大事にするタイプ。私は相手によるけれど、基本腹割って話したいタイプ。だってもう、面倒なんだもん。さっさと結論から話したい。
 ショーンさんはちょっと驚いたような顔をしていたけれど、すぐに目を細めて頷いた。
「私たち、急な引越しでここに住むことにはなったんですけど、家も気に入ってますし、職場も近いし、できれば長く住みたいと思ってます。ただご存知のように私たち、傭兵稼業なんてしているもので。できるだけお行儀よくさせますけど、どうしても荒っぽくなります。今日は傭兵団の連中を呼ぶんで、よかったらこの地区の方々も宴会にご参加頂いて、私たちを受け入れられるか見ていただけません?」
 ショーンさんは穏やかな目で、私をじっと見つめている。
「もちろん、私たちも皆さんを見ています。ウチのは荒っぽいけど気のいい連中なんで、それを蔑んだり馬鹿にするような方が多かったら、ここに住むのは難しいんで出て行こうと思っています」
 人間いろんな人がいるからね。傭兵団の依頼に来た人でも、自分が2番街住みだからってやたらと3番街を馬鹿にする人がいたし。ここにだって、そういう人がいないとは限らない。ただ地区全体でそんな雰囲気の人が多いんだったら、ここに住むことはできない。前団長から引き継いだ、私の傭兵団を馬鹿にする奴は許さない。
 じっとショーンさんの目を見つめながら言うと、彼は髭を撫で付けながら頷いた。
「…では、私も本音をひとつ、話しましょうか」
 ショーンさんが言う本音。それはざっくりまとめるとこんな感じだった。
 いま私たちが住んでる2番街の端っこの11区は、他の2番街の地区からは『成り上がり地区』なんて呼ばれているそうだ。2番街の土地や家は、1番街に近づくにつれ高くなる。3番街寄りは3番街で成功したいわゆる『小金持ち』が、最初に住むことが多い土地だから。近所の奥さんが、そういえばそんな事言ってたよね。
 大人だとお互い関わることも少ないからいいけれど、子供世代には親世代のそうした風潮が影響して、この地区の子が下に見られて馬鹿にされるようなこともあるようだ。
「言い訳するようで申し訳ないんですが、訓練の見学も、最初は他の地区のお嬢さんに強要されて、家を教えてしまったそうですよ」
「あー…、それってこう、ド派手な感じの金髪巻毛の子…」
「恐らく」
 金パ娘ね。あれ以来姿は見ないけど。
「ただ見学に行ったら、自分たちもファンになってしまったようで。皆さんの迷惑も考えず、夢中になってしまったと反省しておりましたよ」
「まぁ、ビョルンもロルフもイケメンなんでね。わかります」
 頷くと、ビョルンが照れ臭そうに頬をかいて、ショーンさんは「ホッホッ」と高らかに笑った。マジサンタ。
「昔からの風潮というのは、なかなか変え難いもんです。ただあなた方は爵位こそまだありませんが、英雄として帝国に名を刻まれ、皇帝陛下にもお目通りが適うような方々です。だから私は、あなた方にこの11区を気に入って、長く住んでいただきたい。英雄たる方々が住む地区を馬鹿にする者はいないでしょうから」
 それが私の本音です、とショーンさんは言った。
 これでお互いの本音が出揃ったわけだけど…これ、利害めちゃめちゃ一致してるんじゃない?私たちは長く住みたいし、ショーンさん達も長く住んでもらいたいと思ってくれてるんだし。
「その本音、この地区の方の総意とみていいです?」
「私の知る限りでは。今回の見学禁止をした際に、全世帯に確認しましたがね」
 それ全部じゃん。下心込みでだけど、この地区の方々は私たちがここに住むのを、歓迎してくれてるってことよね。
「じゃあショーンさん。英雄が住む地区かつ、英雄と仲良しの地区っての目指してみません?」
 ショーンさんがびっくりしたように目を開いたあと、「願ってもないことです」と嬉しそうに頷いた。
「私とビョルンは、皆さんと仲良くしたいと思ってますし、気軽に話しかけてもらいたいです。だから今日、都合のつく方は是非宴会に来てください。そこでお互い気軽に話せるように、交流しましょう。ただ、ロルフはごめんなさい、無理です。今回の宴会では裏方で参加しますが、接触は避けて欲しいです。彼は自分の領域を侵されるのが大嫌いですし、他者に対して許容範囲が狭いので、無理に交流しようとするとトラブルの元になります。彼自身、許容できた特定の人物以外との交流は望んでません。仲良くってのは、相手のそういった希望も尊重することだと思っていただきたいです」
「わかりました」
 ショーンさんがしっかりと頷いてくれる。まぁ見学の時にブチ切れた様子は皆さんご存じだろうから、よっぽど話しかけてこないかな。
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