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中東系エルフ魔術師編

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「もしもーし!こちら団長です!当番のくせに宴会に参加しようとゴネてるバカを出せ!」
『団長、ヒデェ!』
 通信具の向こうから、陽気でノリのいい声が聞こえて来た。
「アンリ、お前ウチのビョルンにゴネたらしいな。覚悟できてんだろーな」
『ヒャー、団長コエェ!』
 こうなんていうの、チャラ男って感じの喋り方。見た目はチャラついてるけど、こいつこんなんで実力ちゃんとあるからな。人は見かけによらんわー。
『いやオレも代わり見つけようとしたんスよ!そしたら悉く用事あるか、なんでお前行かせるために代わるんだよ自分が行くわ!って言われちまって』
「人望ねぇなー」
『ヒデェ!団長~なんで俺が当番の時にやるんスか~!』
「酒樽もらったからだよ!…よし、設定できた!そこの通信具から、ウチの通信具に転送するよう設定したから。これがちゃんと動作すれば、宴会参加してもいいから。ちょっとテストで誰かに呼び鈴鳴らして、なんか喋るように言って」
『え、え?!マジすか?!おい、ちょっとお前、呼び鈴鳴らして来い!』
 後ろでドタバタ走る音が聞こえて、ちょっと待ってから『ジリリリン』と黒電話が鳴るような音が聞こえた。
「アンリ、ちょっと切るよ」
『うす!』
 アンリとの通信を一度切って、転送された方を、通信具を操作して取る。
「はい、自宅の団長でーす」
『わッ、すげぇ、団長の声、ちゃんと聞こえます!アンリさーん!聞こえますよー!』
 うぉぉ!と遠くで歓声が聞こえる。大袈裟だわー。
「じゃあまたアンリに繋げるから。こっち切るね」
『はい!失礼します!』
 再度通信具を操作して、転送を一旦切って、本部に繋げる。アンリが興奮した声ですぐに出た。
『団長、すげぇ!これで俺らも参加していいんすか?!』
「条件1、玄関のドアに『本日休業。緊急時は呼び鈴を鳴らしてしばらくお待ち下さい』の貼り紙をすること。条件2、飲み過ぎないこと。条件3、呼び出しがあったら死ぬ気で本部まで走ること。全部守れる?」
『はい、守ります!』
「じゃあ来てもいいよ。ただし準備ができたら呼ぶから、それまではちゃんとお仕事しててね」
『イエス、マム!』
 軍隊みたいに気取って、アンリたち当番の連中が返事をくれる。言っても、私たちは公的機関じゃないからね。元々は公務員たる衛兵達があんまり頼りにならなくて、緊急時用に休息日や夜でも当番を置いて欲しいって要望があって始めたんだけど。近頃は皇帝陛下を始めとした上層部の尽力のおかげか、衛兵が増員されて質も上がったから、治安も良くなった&なんかあったら衛兵に声をかけた方がお金がかからないということで、呼び出されるような事はほとんどなくなった。だからコストも嵩むし、そろそろ止めてもいいかなってビョルン達幹部と話し合ってたところだったのよね。宴会が深夜に及ぶ事はないだろうし、数時間不在でも大丈夫でしょ。
「非番の連中はまだいる?」
『ビョルンさんに言われて、張り切って買い出しに行きましたよ!』
 さすがビョルン、食材は手配済みね。後はアンリから誰が来るのか聞き出し、中に何人か料理の上手いメンツがいたので、料理もなんとかなりそうだ。
「じゃあ来る時、ちゃんと汗流してから来てよ。ご近所さんも呼ぶつもりだからね。2番街の人たちだから、まあまあお上品よ!」
 ドッと笑いが聞こえる。そんなに笑うとこ?
「ダイジョーブっすよ、団長!奥の方ならいざしらず、3番街寄りなら俺らみたいのにも慣れてますって」
 聞けば、3番街のお店のオーナーさんで、2番街に住んでるって人も多いらしい。ただし奥の方だと爵位持ち(男爵とか子爵くらい)のホントのセレブたちがいるから、3番街寄りがほとんどらしいけど。3番街で成功した人が、2番街に家を持つってのは一種のステータスなんだそうだ。
「おー、そう言われると親しみやすくなってきた」
『でしょでしょー!まあでも、なるべく清潔な恰好するように、行くやつ全員に通達しときますんで!』
 そうそれ!大事なのはいい服、っていうより清潔な格好よ!!ちょっと着古した感じの服でも、しっかり洗って清潔にしてあるのがわかると、好感持てるもんね。
「さすが女たらし。女心がわかってるねぇ」
『わッ、俺、団長に褒められた?ヤベ、こりゃ俺ワンチャンありっすか?いやでもなー、さすがにロルフの嫁獲るのはちょっと』
「ねーーーよ、この腐れち×××(自主規制)野郎が」
 地獄の底から響き渡るような声が背後からして、その場が凍り付く。私も過去に震え上がったので、思わずピャッと背筋が伸びる。怖い!
『あっ、あぁー、ロルフぅ~!いつからいたのぉ~?』
「気色わりィ声出すんじゃねぇよ。ついさっきだ」
『うわぁ最悪のタイミング…』
 アンリと会話しつつ、ロルフが私にぶつかるようにして、ソファにドカリと腰を降ろした。痛い痛い。
「テメェ今なんつった?ワンチャンっつったか?ウチの嫁にか?」 
『いや、その後にすぐ否定したし!ね、団長!』
「そうだっけ?」
『そんな殺生なぁぁぁ!』
「ワンチャンあると思った時点で、テメェは終わりだ。命(タマ)と金玉、どっちを潰されてぇよ」
『え、ウソ、どっちか選択しなきゃいけないの…?』
 震える声で答えるアンリに、後ろで仲間?が『どっちか選べ!男のまま死ぬか、女になって生きるか!』とか『死ぬよりマシだろ、女になれ!』とかはやし立ててるのが聞こえる。
 なんかもー、バカじゃない?相手にするのもアホらしくなって、私は紅茶を入れるために立ち上がった。
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