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中東系エルフ魔術師編
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しおりを挟む「ロルフは完全に遠巻きにされてたし、俺に話し掛けるにも親御さんに促されて恐る恐るって感じで、下心は特に感じなかったよ。まぁ、きっかけがあれば話してみるといい。ここに住み続けるのなら、ご近所さんと仲良くして損はないぞ。特に同世代の同性とはな」
「うーん、それなのよねぇ…」
今のところ家も立地も気に入ってるし、いずれ買い取ってちょこちょこ自分好みに改装しながら、ずっと住み続けるのもいいと思っている。ただ、どこに住むにしろご近所付き合いってのはついて回る。そこでうまく立ちまわれなかったら、待つのは孤立だ。それは辛すぎる。
「でも、そうよね。まずは話してみなきゃ、親しくなるもクソもないもんね」
少しネガティブな考えになったけど、そんな気持ちをお風呂の温かさがほぐしてくれる。そうだよ、こんなタップリのお湯準備するの、きっとかなりの人が協力してくれたはず。その善意を疑ってはいけない。お詫びしたい気持ちは、きっと本物だったはず。
それにまずは話してみなければ、相手がどんな人かもわからないものね。元の世界でだって、当たりがキツくて苦手だなーと思ってた人がいたけど、避けるのも負けたみたいで嫌だったから会うたびにこやかに挨拶するようにしてたら、段々態度が軟化して向こうから声かけてくれるようになった…なんてこともあったし。
話してみて「あ、ダメだこの人、相性悪いわ」ってタイプもいるだろうけど、大事なのは「敵対しないこと」だもんね。当たり障りなく付き合えればそれでいい。親しくなろう!なんて気負わなくていい。
「ね、ビョルン。またご近所の皆さんに、お礼しなきゃね」
菓子折りでも持って、挨拶に行けばいいかな?
「あぁ、それならいい案がある。実はショーンさんが最初訪ねて来た時、お詫びの気持ちだと酒樽を置いて行ってくれてな」
個人宅に酒樽?!多すぎない?!そりゃ我が家には酒豪が2人もいますけれど!
「なかなか食えない爺さんだな。酒樽のあるところには人が集まる、だとさ」
「あぁ、なるほど…アハハ、確かにね」
お国柄か、お酒好きな人多いもんね。お祭りとかじゃなくても、お酒を飲んで陽気に歌ったり踊ったりする人は、街中でちょいちょい見かける。通りがかりに飲んでる人を見かけて、その日会ったばかりの人同士が陽気に乾杯して飲みかわす…なんて光景も珍しくない。
「じゃあいっちょ、非番の奴らを呼んで、庭で宴会でもしよっか!」
それでショーンさんにも声を掛けて、ご近所の方々もよかったらどうぞ~って誘って来てもらえば、ご近所交流の第一歩になるんじゃない?
「よし来た、本部に連絡入れてみるよ。誰かしら非番の奴もいるだろう」
今日は休息日だけど、傭兵団本部には訓練所が設けられているから、お休みの日でも誰かしら利用しに来てるのよね。後は緊急時用の当番もいるけど。
通信機を使うぞ、と言ってビョルンが家に入っていった。
「よし、じゃあ髪洗ってやる」
「うわッ、嬉しい!サービス良いねぇ」
「髪にまだついてるからな」
「?何が」
ロルフが悪そうな顔でニヤッと笑う
「俺のせーえき」
「……ッ!!」
バシャっとお湯をかけてやる。けど、ヒョイっと避けて被害はほとんどない。どんな反射神経だよ!
何回かバシャバシャやったけど全部避けられて、「湯がなくなるぞ」って言われて諦めた。
大人しくお風呂の淵に頭を乗せて、洗ってもらう。首のところにさらしを重ねて、ちゃんとクッションにしてくれた。ふや~、気持ちいい!
「そういやロルフは、どうする?宴会参加する?」
そんな積極的に他者と関われるタイプじゃないし、知らない人がたくさん来るのは、苦痛じゃない?
「俺がいなきゃ、飯はどーすんだよ」
まぁそうなんですけど。ただ肉焼くだけにしても、ロルフがやる方が美味しいのよねぇ。
「でも、お嬢さん方にも来てもらうよ。大丈夫そう?」
「さっき来た奴らは、完全に俺にビビってたからな。大丈夫だろ。面倒になったら、隊の誰かに対処さすから心配すんな」
おっと、君の隊には女たらし君がいなかったかい?顔はロルフほどじゃないけどかなり良くって、ロルフにアタックして手ひどくフラれた女の子は、だいたいこの男に優しくされてコロっといっちゃうのよね。んで、美味しくいただかれてしまうという。お互いにお互いを利用しているって公言しちゃってるけど、なんだかんだ相性はいいみたいで、今んとこ任務も問題なく遂行してくれている。ロルフと組める貴重な人材だ。
「女たらし君が来たら、今日は女の子の持ち帰り禁止って言っといてよ」
「女たらし君だぁ?…あーアンリか。ほっとけよ、食われる方も悪い」
「いや私もそれなりの年齢のお姉様相手なら、なんも言わないけどさ。こんな2番街で育った年端の行かないお嬢さん方を弄ばれたら、親御さんに申し訳なくって」
「成人もしてねぇ女に手ェ出すかよ。そこまでバカじゃねぇよ、アイツも」
「成人してたからって、まだまだ若いじゃん。傷つけていいわけじゃないでしょうよ」
「お前なァ、お貴族サマじゃねぇんだから。成人した女が男のあしらいひとつ覚えねぇで、どうすんだよ」
ロルフが私の髪を丁寧に流しながら、呆れた声で言う。え、そんなもん?
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