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中東系エルフ魔術師編

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 ふと目覚めると、なんだか外が騒がしかった。寝ぼけ眼を擦りながら、身を起こす。くあっと欠伸をひとつ、伸びをひとつ。だいぶ頭がスッキリしてきて、窓の外を見る。
 まだ日が高いから、寝てからそんなに経ってないよね?サイドテーブルの上のおつまみたちも乾いた様子はないし、まだ美味しそう。
 お水を飲んで、おつまみを口に入れる。うん、美味しい。ゆっくり味わっていると、足音が近づいて来るのが聞こえる。重めのゆったりとした足音は、ビョルンかな?向こうも気配で私が起きていることがわかったのか、ガチャっと音を立ててドアが開いた。
「いま起きたとこか?」
「うん、ありがとう。一眠りして、だいぶスッキリしたよ」
「そりゃよかった。だが実はな、もっとスッキリできるものが準備できたんだ。一緒に来てくれるか?」
「うん…?」
 あれ、ビョルンはお湯沸かしてたんじゃなかったっけ?やけにウキウキしてるけど、そんなにいい事あったのかしら…?
「まぁまぁ、とにかく一緒に来てくれ」
 くるっとシーツで巻かれて、抱き上げられる。よくわからないまま家の中を移動して、庭に出るドアの前まで来る。
「え。ちょっと、この恰好で庭?!」
「大丈夫だよ。ロルフ、開けてくれ」
「おー」
 ビョルンが呼びかけると細くドアが開いて、ロルフがちらっと顔を覗かせる。そしてニヤっと笑うと、
「よーこそ。戦士の風呂屋へ」
 と言って、大きくドアを開けた。
「風呂屋…?」
 そのまま庭に出ると、周囲にはどこから持ってきたのか衝立がぐるりと囲んでいて。その中心には、ホカホカと湯気の立つお湯がたっぷり湛えられた、木桶風呂が設置してあった。
「えッ?!これって…!!」
「覚えてるか?お前が前に衝動買いしたやつ」
 覚えてますとも!めちゃめちゃ疲れてた時に行ったお風呂屋さんで、発注ミスだかで余分に木桶風呂が来ちゃったもんだから、お風呂屋さんと職人さんが揉めてたのよね。そんなら私が買えば家でもお風呂入れるしいいじゃん!ってその時は思っちゃって、衝動買いしちゃったのよね。好意で安くはしてもらったんだけど、けっこうな値段した上に、一般家庭でこんな量のお湯沸かせないってんで結局使えなくて、ビョルンに無駄遣いをめっちゃ怒られたっていう…。そこからお小遣い制にさせられました。いや、文句はないですよ。キッチリお金の管理してくれてありがたいです。
 でも使ってない部屋にひっそり置かれていたそれが、いま、本来の姿になって庭にドドンと置かれている…!!
「ええ?!ウソ、すごい!お風呂入れるの?!」
「もちろん。さっそく入るか?」
「は、入る…!!」
 ビョルンが抱いたままシーツをそっと開いて、ロルフがその中から私を持ち上げて、お風呂の中にジャプンと入れてくれる。ゆっくり腰を曲げていくとザブーっとお湯が溢れ出て、ぎゃー!なんて贅沢!
「すごい!お湯タップリ!肩まで浸かれちゃうんだけど!!」
 はしゃいでビョルンとロルフを交互に見ると、二人とも目を細めてこちらを見ている。
「湯は熱くないか?」
「バッチリ!このちょっと熱いくらいがいいのよ~!」
「そりゃよかった」
 ビョルンとロルフが、ゴツ、とグータッチをする。ああ、すごい、二人でこんなにたくさんのお湯準備してくれたのかな?嬉しすぎる!!
「どうやってこんなにたくさん、お湯を沸かせたの?」
 お風呂の縁に頬杖をついて、二人を見る。するとビョルンが、ポリポリと頬をかいて苦笑した。
「実はな、今回も地区長のショーンさんに助けてもらったんだ」
 えっ、あのサンタっぽい見た目の、地区長のおじいさん?
 ビョルンの話はこうだった。
 二人で寝室を出た後、ロルフがキッチンで火を起こしている間に、ビョルンは私が衝動買いした木桶風呂を思い出した。なんとかあのお風呂を使えるようにすれば、私が喜ぶんじゃないか?そう思い立ったビョルンは、とりあえずロルフにお湯を大量に沸かすよう指示し、木桶を庭に運び出して水洗いをした。しかし人が2人入れるほどのサイズだから、結構な量のお湯がいる。大鍋を使っても限度があるし、時間をかければお湯がどんどん冷めるし…と頭を悩ませている時に、ひょこっとショーンさんが訪ねて来たそうだ。忠告後、ご近所のお嬢さん方がちゃんと自粛しているか、見回りに来てくれたらしい。そこで悩んでいる内容を話すと、「じゃあご迷惑お掛けしたお詫びに」とご近所に呼びかけて、みんなにお湯を沸かすようお願いしてくれた。ご近所の皆さんも気まずく思っていたようで、お詫びができるいい切っ掛けをもらえたと、喜んで協力してくれたのだそうだ。
「お前にも謝りたいって、言ってたよ。お嬢さん方が」
 見学に来ていたお嬢さん方も、懸命に協力してくれたそうだ。
「ビョルンとロルフに、話しかけたかっただけじゃないの~?」
 金パ娘はひどかったけど、他にも見学中に私の姿が見えると、あからさまにため息つくような女もいたし。思い出したらムカムカしてきたわ。
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