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中東系エルフ魔術師編
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昨日と同じソファに座って、自分で淹れたお茶に口をつける。ビョルンとロルフが着替えている間に、少し雑談をする。
「そういやウチに所属してる魔術師の女の子が、前に『イスハークさん紹介してください!』って意気込んで来たんだけど、会う気ある?」
魔術師は全員誓約のためにサークルオブメイジに所属するけど、その後の進路は様々だ。イスみたいに塔で研究に励む者や、攻撃魔術を活かして傭兵になる者、魔術医になって民間で病院を営む者もいる。
「ない」
「即答かい!いやいや、可愛い子よ?年は私と同じくらいだったかな。攻撃魔法も得意だし、人当たりもいいし、ウチの傭兵の中でも狙ってる奴が何人かいるくらいの子よ?ちょっと会うくらい」
「会わない」
取り付く島もないわー。ごめん、私これ以上推せないわ。別のいい男を見つけてくれ。
「研究一筋のイスさんは、女性には興味ないですかねぇ」
「……」
え、なんでそこで黙り込むの?シレっと「そうだ」って答えると思ったのに。
興味はあるのか?もしや好きな人がいるのか?やばい知りたい!この鉄面皮が人を好きになったらどうなるの?!
でも質問を浴びせかける前に、着替えを終えた婚約者たちが戻って来たので聞けなかった。チッ。
「すまん、待たせたな」
先に部屋に入ってきたビョルンが、私を避けさせて昨日と同じ位置に座る。なるほど、ビョルンさん的には妻が他の男と隣り合わせで座るのはアウトなわけね。ひょいっと猫のように脇を抱えられて真ん中に移されたわ。嫉妬するビョルンさん可愛い。
「よう魔術師、昨日はごっそーさん」
続いて入って来たロルフが機嫌よく手を上げながら言ったので、イスは「?」という顔をした。
「馳走した覚えはない」
「診察だよ、昨日の。お前が調理した『ご馳走』は、俺たちが美味しくいただいたからな?」
ギャーー!朝っぱらから下ネタ発動すんな!!
「ロルフ!スィット(お座り)!!」
「犬かよ」
ヘッ、と吐き捨てながらドカリとソファに腰を降した。
「ごめんイス、朝からロルフが下ネタ満載で」
「いや…」
「謝る必要ねぇよ、どうせお前だって楽しんだんだろ?」
「はぁ?なに言ってんのよ」
「前かがみでこそこそ帰りやがって。宿でコイツの痴態を思い出しながら、お前もマスかいたんじゃねぇのか?」
………。
え。ちょっと、あまりに下品な発言に思考がフリーズしたわ。え、大丈夫?私こんな男と結婚して大丈夫?!
「失礼だぞ、ロルフ」
「本当のことだろーがよ」
まったく悪びれないロルフに、呆れる。もうホントに、こいつはどうしようもない。
「えーと、ごめんねイス。ちょっと躾がなってなくて、根も葉もないことを言って」
「……いや、うん…」
イスが目を逸らして、曖昧な返事をする。褐色の肌のせいでわかりにくいけど、顔もなんだか赤いような…?
「イス?あの、えーと、そんなに真面目に捉えないでね?ロルフもホラ、冗談を言ったんだし…」
「冗談なわきゃねぇだろ、そいつのツラ見てみろよ」
「ロルフッ!」
ここは冗談で終わらすとこだよ空気読め!
「…ラフィク、すまない…」
あああ謝っちゃったよ!!そこは否定して欲しかった!!栄誉あるサークルオブメイジの塔長様が、人妻(予定)をオ◯ネタ(自主規制)にするとか終わってる…。いや◯ナネタとか口にする人妻(予定)も終わってるわ…。
なにこの地獄絵図。「それみろ」って顔のロルフと、口を押さえて目元を赤く染めて視線を逸らしているイスと、白目むいてる私。ビョルンはでっかい体で気配を消して沈黙している。逃げんな助けろ!
私がビョルンの膝をペシっと叩くと、ため息をついてから口を開いた。
「あー、塔長殿。とりあえず、本題に入らないか?昨日の診察の理由とわかったことを、教えて欲しい」
ビョルン、ナイス!ロルフの下ネタで吹っ飛んでた本題を思い出したわ。
「そ、そうそう!その話よ!時間は有限だし!本題に入りましょう!」
もう私をネタにした云々は不問にするから!頼むから話題を変えてくれ!
こっちの剣幕に押されたのか、イスは少し視線をさ迷わせた後に頷いた。
「…そうだな。本題に入ろう」
イスはいつもの無表情を取り戻して、口を開いた。
「そういやウチに所属してる魔術師の女の子が、前に『イスハークさん紹介してください!』って意気込んで来たんだけど、会う気ある?」
魔術師は全員誓約のためにサークルオブメイジに所属するけど、その後の進路は様々だ。イスみたいに塔で研究に励む者や、攻撃魔術を活かして傭兵になる者、魔術医になって民間で病院を営む者もいる。
「ない」
「即答かい!いやいや、可愛い子よ?年は私と同じくらいだったかな。攻撃魔法も得意だし、人当たりもいいし、ウチの傭兵の中でも狙ってる奴が何人かいるくらいの子よ?ちょっと会うくらい」
「会わない」
取り付く島もないわー。ごめん、私これ以上推せないわ。別のいい男を見つけてくれ。
「研究一筋のイスさんは、女性には興味ないですかねぇ」
「……」
え、なんでそこで黙り込むの?シレっと「そうだ」って答えると思ったのに。
興味はあるのか?もしや好きな人がいるのか?やばい知りたい!この鉄面皮が人を好きになったらどうなるの?!
でも質問を浴びせかける前に、着替えを終えた婚約者たちが戻って来たので聞けなかった。チッ。
「すまん、待たせたな」
先に部屋に入ってきたビョルンが、私を避けさせて昨日と同じ位置に座る。なるほど、ビョルンさん的には妻が他の男と隣り合わせで座るのはアウトなわけね。ひょいっと猫のように脇を抱えられて真ん中に移されたわ。嫉妬するビョルンさん可愛い。
「よう魔術師、昨日はごっそーさん」
続いて入って来たロルフが機嫌よく手を上げながら言ったので、イスは「?」という顔をした。
「馳走した覚えはない」
「診察だよ、昨日の。お前が調理した『ご馳走』は、俺たちが美味しくいただいたからな?」
ギャーー!朝っぱらから下ネタ発動すんな!!
「ロルフ!スィット(お座り)!!」
「犬かよ」
ヘッ、と吐き捨てながらドカリとソファに腰を降した。
「ごめんイス、朝からロルフが下ネタ満載で」
「いや…」
「謝る必要ねぇよ、どうせお前だって楽しんだんだろ?」
「はぁ?なに言ってんのよ」
「前かがみでこそこそ帰りやがって。宿でコイツの痴態を思い出しながら、お前もマスかいたんじゃねぇのか?」
………。
え。ちょっと、あまりに下品な発言に思考がフリーズしたわ。え、大丈夫?私こんな男と結婚して大丈夫?!
「失礼だぞ、ロルフ」
「本当のことだろーがよ」
まったく悪びれないロルフに、呆れる。もうホントに、こいつはどうしようもない。
「えーと、ごめんねイス。ちょっと躾がなってなくて、根も葉もないことを言って」
「……いや、うん…」
イスが目を逸らして、曖昧な返事をする。褐色の肌のせいでわかりにくいけど、顔もなんだか赤いような…?
「イス?あの、えーと、そんなに真面目に捉えないでね?ロルフもホラ、冗談を言ったんだし…」
「冗談なわきゃねぇだろ、そいつのツラ見てみろよ」
「ロルフッ!」
ここは冗談で終わらすとこだよ空気読め!
「…ラフィク、すまない…」
あああ謝っちゃったよ!!そこは否定して欲しかった!!栄誉あるサークルオブメイジの塔長様が、人妻(予定)をオ◯ネタ(自主規制)にするとか終わってる…。いや◯ナネタとか口にする人妻(予定)も終わってるわ…。
なにこの地獄絵図。「それみろ」って顔のロルフと、口を押さえて目元を赤く染めて視線を逸らしているイスと、白目むいてる私。ビョルンはでっかい体で気配を消して沈黙している。逃げんな助けろ!
私がビョルンの膝をペシっと叩くと、ため息をついてから口を開いた。
「あー、塔長殿。とりあえず、本題に入らないか?昨日の診察の理由とわかったことを、教えて欲しい」
ビョルン、ナイス!ロルフの下ネタで吹っ飛んでた本題を思い出したわ。
「そ、そうそう!その話よ!時間は有限だし!本題に入りましょう!」
もう私をネタにした云々は不問にするから!頼むから話題を変えてくれ!
こっちの剣幕に押されたのか、イスは少し視線をさ迷わせた後に頷いた。
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イスはいつもの無表情を取り戻して、口を開いた。
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