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中東系エルフ魔術師編

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 しばし、沈黙。
 私は慌てて口を押さえたけど、恥ずかしくて顔が熱くなってくる。
 ちろりと視線を走らせると、ビョルンもロルフもポカンとした顔をしている。
 鋼鉄の表情筋を持つイスも、まつ毛バシバシでアイライン入ってるみたいな目を見開いて、こちらを見ていた。
「……痛みか?」
「……チガイマス……」
 いやぁぁぁ!お願いだからスルーしてぇぇぇ!!
 なんでなんで?!相性がいいって、マッサージ的な気持ちよさじゃないの?!
 ビョルンとロルフは聞きなれてるからわかっただろうけど、イスの行動をしっかり見てるから、手が変な所に触ってないことにも気づいているハズ。だから、二人ともイスを責めることもできないようだ。
 私はいたたまれなさ過ぎて、両手で顔を覆った。
「つ…続けても、いいか」
「いいけど、いやだぁ…」
 どっちなんだ、とため息をついた後、イスは右の足に両手で触れた。動きが少しぎこちない。ごめんなさい。さっきと同じように撫で上げ、足の付け根に到達したけれど、死ぬ気で声を我慢した。でも体がビクって震えてしまったから、バレバレだったかもしれない。
 その後は、頭部に行った。ホッと一安心。目を閉じて、心地よい魔力を感じる。イスも指が長いけど、節が目立たないキレイな手をしている。その手が後頭部を包み込んで、親指でするりと顔を撫でていく。おでこ、眉毛、目の周り、まぶた。じんわり温かい魔力が流れてきて、エステを受けてるぐらい気持ちいい。鼻筋、頬、顎、唇。ふに、と唇を押されたとき、イスの手がピクッて動いた気がするけど、気のせいかな?
 手が離れていったので、目を開ける。ベッドサイドに腰かけたイスが、じっとこちらを見つめている。魔力の残照で、まだ琥珀色がキラキラしている。
「胸は……」
「ぜっっってぇに、駄目だ!!」
 ロルフが鬼の形相で反対する。今すぐ噛みつきそうな勢いだ。最近、私のおっぱいを私物化していないかい?
「……後にして、できるだけ、背中から診るようにしよう」
 さすがに命の危機を感じたな。
「次は腹部を診る。…どうする?何を診る?」
「あ……」
 自分で言い出したことだけど、少し言い淀む。ビョルンとロルフがこの場にいるから。でも、いつかは知らなければいけないこと。私は決意して、口を開いた。
「子供が産める体かどうか、診てほしい」
 私たちは避妊をしていない。諸事情により結婚手続きができない状態だけど、子どもができれば諸事情がなくなる可能性もあるからだ。子どもをダシにするようで申し訳ないけれども、現状では他の手段も見つからない。
 ビョルンとロルフと最初にセックスしたのは、だいたい四半期前。1週間生理が遅れたけど、結局妊娠はしていなかった。予定日1週間後に急にお腹が痛くなって、生理が始まった。それからも、二人がいる間は生理期間を除いて毎日セックスしたけど、妊娠はしなかった。ここ1カ月に至っては、ロルフが隊長を務めて任務に出られるようになったから、必ずどちらかが一緒にいて、どちらかとほぼ毎日セックスしていた。それでも妊娠はしなかった。
 もちろん、そんな簡単に妊娠できるものじゃないことも知っている。若くたって、妊娠の確率はそれほど多くない。疑問に思ったのは、規則的だったはずの生理が、遅れて来た事。そして生理が始まる前に、魔力を大量に使用した時みたいに体から力が抜けて、しばらく動けなかったこと。今までそんなことなかったから、不思議に思ったし、そしてなんだか不安を感じた。
「ラフィク、それは…何故、そんなことを思った?」
 イスの眉間に皺が寄る。瞳の煌めきがなくなり、いつもの色に戻る。何か、おかしなこと言った?
「何故って…だって、ビョルンとロルフと…その、たくさんセックスしてるのに、妊娠しないから。私の体に問題があるのかなって、心配になって…」
 私の言葉を聞いて、イスは難しい顔をする。グッと眉を寄せて、目の影が濃くなって、何かを思い悩んでいる。
「お前は、何故…いや、誰が…」
 艶やかな声を籠らせて、独り言を呟く。どうすることもできずに見守る。
「いや…とにかく、終わらせなければ」
 そう言うと、イスは自分の両方の手のひらをそっと、私のお腹を包むように乗せた。
「診察を続けよう」 
 再び魔術が紡がれ、イスの瞳が煌めいた。
 じわり、お腹の上に熱が広がる。最初は湯たんぽを乗せたみたいにあたたかな魔力だったのが、じわじわと肌に沁み込んで内側を浸食していく。そのたびに、ゾクゾクと「あの」感覚が体に広がっていく。やだ、これ、ヤバい…!
「イス、待って、ちょっと、ストップ…!!」
「早すぎる。まだ、ほとんど診ていない」
「そうじゃなくって、すごい、やだ、変な感覚が…!」
 もじもじと、内ももを擦り合わせてしまう。足の間からトロリとしたものがにじみ出てくる感覚がして、驚愕する。ウソでしょ、なんで?!イスは手を動かしていない、ただ服の上から、お腹に触れているだけなのに。彼の魔力がお腹の中で暴れまわって、直接愛撫していくみたいに快感が広がっていく。
 未知の感覚に、涙がじわっと目に溜まって、必死にイスに懇願した。
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