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中東系エルフ魔術師編
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それからロルフを伴って居間に戻ると、そこに誰もいなかった。あれ、イスは?
探そうとすると、ちょうどイスが客間がある方から戻ってきたところだった。
「ごめんね、お待たせ」
「大丈夫だ、準備していた。お前の婚約者に客間を使っていいと言われた。そこで診察しようと思う」
「うん、わかった。服はこんなので大丈夫?」
寝る時に使っている、色気もへったくれもないリネンの上下ですけども。
「問題ない。詳しく調べたい箇所は、直接肌に触れるかもしれないがいいか」
「話が違うじゃねぇか!」
ガルガル怒り始めたロルフを宥める。もー、せっかく落ち着いたのにー。
「触る場所によるよ。触る場合は許可取って」
「わかった。お前のもう一人の婚約者が戻ってきたら、始めよう」
それから少ししたら、ビョルンが戻ってきた。
「どうだった?」
「話のわかる人だったよ。各家にやんわり注意はしていたそうだが、今回当事者から苦情があったから正式に見学禁止の通達をしてくれるそうだ」
「あっ、そうそう、近所の奥さんが言ってくれたんだと思う」
「あぁ、あの気さくなご婦人か、おかげで話が早かった。他の地区にも連絡を入れてくれると言っていたから、よっぽど大丈夫だろう。地区長さんが、英雄殿を煩わせて申し訳ありませんと言っていたよ。…彼のご子息も、あの戦いに参加していたそうだ。残念ながら亡くなられたそうだが、勝利に終わったから浮かばれると言っていた」
「そう…」
あの『対するもの(コントラ)』との戦いには、本当に多くの人が参加し、そして亡くなった。最後にそれを終わらせたのは私たちかもしれないけど、そこに到るまでの道は全ての戦った人々が築いたものだ。そしてその戦士たちを支えたのは、戦えなかった人々が提供してくれた資金や物資や献身だ。『対するもの(コントラ)』は恐ろしく強大だった。全ての人間が団結して、ようやく勝利をもぎ取ったのだ。私もビョルンもロルフもなんとか生き残ったけど、それは他の誰かが犠牲になって繋いでくれた命だ。だから、命を掛けて戦ってくれたご子息の方にこそ感謝したいと思う。
「…落ち着いたら、またお礼に伺いたいね」
「そうだな。その時は一緒に行こう」
引っ越しからずっとドタバタしてて、ご近所さんのことほとんど知らなかったけど。これからも住んでいくなら、少しずつ交流していかないとね。
とりあえず見学者問題が解決したところで、イスに促されて客間に入った。イスのために整えてもらったベッドに、自分が横になる。
「あーーー、どうしよう、怖くなってきた」
「診察がか?」
「いやその後の、アンタたちへの報酬が気になって」
男が3人とも無言になる。お前ら絶対私に被害があることだな!
「ラフィク、今から覆されては困る」
「へーーーい、女に二言はありませんーー」
「そうか、ならいい」
死ぬほどやる気ない声出してやったけど、イスは無反応だった。チッ。
「魔術医の診察方法は知っているな?受けたことは?」
「魔力を体に通して体の内部まで調べるのよね?怪我した時にかかったことはあるよ。手とか足くらいだけど」
「そうか。先に言っておくが、私の魔力は人に馴染みにくい」
「?どういうこと?」
「魔術医の診察は、まず人の体に己の魔力を通し、病巣を探ることから始める。他人の魔力が体を通るのだ、多少の違和感はある。だがよほど相性が悪くなければ、少々の不快感がある程度で、問題なく診察できる」
「それで?」
「私の魔力は、よほど他者との相性が悪いらしい。途中で吐き気や頭痛や悪寒、ひどい時は患者が嘔吐して、まともに診察できた試しがない。魔術医の道を諦めたのも、それが理由だ」
「衝撃の新事実!!」
ちょっと待て、それ患者が診察を了承する前に聞くべきじゃないかな?!
「話せば、お前は承諾しないだろう。だから黙って診察して、嘔吐するまでには終わらせるつもりだった」
「嘔吐するまでやろうとすんじゃねぇよ」
ロルフが呆れた声でツッコミを入れる。ナイスアシスト!アンタが常識人に見えてきた!
「じゃあなんで話したのよ?」
「黙ってやればお前の婚約者たちに殺されそうだ。だから先に承諾を得ることにした」
ありがとうマイダーリンズ!私、命拾いしたよ!!
「今からでも断りたい…」
「女に二言はないのではないか?」
「だまし討ちする男に言われたかないわ」
「そうか。困ったな」
無表情で全然困ったように見えない上に、中断しようとする意志も見えない。
「あー、塔長殿?」
膠着状態の私たちを見かねてか、ビョルンが声を掛けてきた。
「その魔力は、少しずつ通すことはできないのか。様子見ながら通して、異変があったらすぐに中断するとか」
「そうだな。できる」
できるんかい!
「だがそれでは、あまり診えないから意味がない」
あー、表面しか診えなくなっちゃうってこと?でもさすがに吐くほど体調悪くなるかもしれないのに、「いいよ、オッケー☆」なんて言えるかい。
「とりあえず、ビョルンの案採用。このまま睨み合っててもしょうがないでしょ?ワンチャン大丈夫な可能性もあるわけだし、お互い妥協してまずはやってみない?」
ちょっと気持ち悪いくらいなら我慢してあげるから。
「…仕方ない、やってみよう」
お前が妥協してやった空気感出すな。腹立つわー。
「ロルフ、名前呼んだらイスのことぶん殴っていいからね」
「おー。任せろ」
ロルフが軽い口調で返事をする。吐く前にウチの狂犬に噛みつかせてやるからな!
「そうか、できるだけ手加減を頼む」
「じゃああんたもちゃんと手加減してよね!」
探そうとすると、ちょうどイスが客間がある方から戻ってきたところだった。
「ごめんね、お待たせ」
「大丈夫だ、準備していた。お前の婚約者に客間を使っていいと言われた。そこで診察しようと思う」
「うん、わかった。服はこんなので大丈夫?」
寝る時に使っている、色気もへったくれもないリネンの上下ですけども。
「問題ない。詳しく調べたい箇所は、直接肌に触れるかもしれないがいいか」
「話が違うじゃねぇか!」
ガルガル怒り始めたロルフを宥める。もー、せっかく落ち着いたのにー。
「触る場所によるよ。触る場合は許可取って」
「わかった。お前のもう一人の婚約者が戻ってきたら、始めよう」
それから少ししたら、ビョルンが戻ってきた。
「どうだった?」
「話のわかる人だったよ。各家にやんわり注意はしていたそうだが、今回当事者から苦情があったから正式に見学禁止の通達をしてくれるそうだ」
「あっ、そうそう、近所の奥さんが言ってくれたんだと思う」
「あぁ、あの気さくなご婦人か、おかげで話が早かった。他の地区にも連絡を入れてくれると言っていたから、よっぽど大丈夫だろう。地区長さんが、英雄殿を煩わせて申し訳ありませんと言っていたよ。…彼のご子息も、あの戦いに参加していたそうだ。残念ながら亡くなられたそうだが、勝利に終わったから浮かばれると言っていた」
「そう…」
あの『対するもの(コントラ)』との戦いには、本当に多くの人が参加し、そして亡くなった。最後にそれを終わらせたのは私たちかもしれないけど、そこに到るまでの道は全ての戦った人々が築いたものだ。そしてその戦士たちを支えたのは、戦えなかった人々が提供してくれた資金や物資や献身だ。『対するもの(コントラ)』は恐ろしく強大だった。全ての人間が団結して、ようやく勝利をもぎ取ったのだ。私もビョルンもロルフもなんとか生き残ったけど、それは他の誰かが犠牲になって繋いでくれた命だ。だから、命を掛けて戦ってくれたご子息の方にこそ感謝したいと思う。
「…落ち着いたら、またお礼に伺いたいね」
「そうだな。その時は一緒に行こう」
引っ越しからずっとドタバタしてて、ご近所さんのことほとんど知らなかったけど。これからも住んでいくなら、少しずつ交流していかないとね。
とりあえず見学者問題が解決したところで、イスに促されて客間に入った。イスのために整えてもらったベッドに、自分が横になる。
「あーーー、どうしよう、怖くなってきた」
「診察がか?」
「いやその後の、アンタたちへの報酬が気になって」
男が3人とも無言になる。お前ら絶対私に被害があることだな!
「ラフィク、今から覆されては困る」
「へーーーい、女に二言はありませんーー」
「そうか、ならいい」
死ぬほどやる気ない声出してやったけど、イスは無反応だった。チッ。
「魔術医の診察方法は知っているな?受けたことは?」
「魔力を体に通して体の内部まで調べるのよね?怪我した時にかかったことはあるよ。手とか足くらいだけど」
「そうか。先に言っておくが、私の魔力は人に馴染みにくい」
「?どういうこと?」
「魔術医の診察は、まず人の体に己の魔力を通し、病巣を探ることから始める。他人の魔力が体を通るのだ、多少の違和感はある。だがよほど相性が悪くなければ、少々の不快感がある程度で、問題なく診察できる」
「それで?」
「私の魔力は、よほど他者との相性が悪いらしい。途中で吐き気や頭痛や悪寒、ひどい時は患者が嘔吐して、まともに診察できた試しがない。魔術医の道を諦めたのも、それが理由だ」
「衝撃の新事実!!」
ちょっと待て、それ患者が診察を了承する前に聞くべきじゃないかな?!
「話せば、お前は承諾しないだろう。だから黙って診察して、嘔吐するまでには終わらせるつもりだった」
「嘔吐するまでやろうとすんじゃねぇよ」
ロルフが呆れた声でツッコミを入れる。ナイスアシスト!アンタが常識人に見えてきた!
「じゃあなんで話したのよ?」
「黙ってやればお前の婚約者たちに殺されそうだ。だから先に承諾を得ることにした」
ありがとうマイダーリンズ!私、命拾いしたよ!!
「今からでも断りたい…」
「女に二言はないのではないか?」
「だまし討ちする男に言われたかないわ」
「そうか。困ったな」
無表情で全然困ったように見えない上に、中断しようとする意志も見えない。
「あー、塔長殿?」
膠着状態の私たちを見かねてか、ビョルンが声を掛けてきた。
「その魔力は、少しずつ通すことはできないのか。様子見ながら通して、異変があったらすぐに中断するとか」
「そうだな。できる」
できるんかい!
「だがそれでは、あまり診えないから意味がない」
あー、表面しか診えなくなっちゃうってこと?でもさすがに吐くほど体調悪くなるかもしれないのに、「いいよ、オッケー☆」なんて言えるかい。
「とりあえず、ビョルンの案採用。このまま睨み合っててもしょうがないでしょ?ワンチャン大丈夫な可能性もあるわけだし、お互い妥協してまずはやってみない?」
ちょっと気持ち悪いくらいなら我慢してあげるから。
「…仕方ない、やってみよう」
お前が妥協してやった空気感出すな。腹立つわー。
「ロルフ、名前呼んだらイスのことぶん殴っていいからね」
「おー。任せろ」
ロルフが軽い口調で返事をする。吐く前にウチの狂犬に噛みつかせてやるからな!
「そうか、できるだけ手加減を頼む」
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