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中東系エルフ魔術師編
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しおりを挟む結論を申し上げますと、今回のことは私が悪かったと思います。
引っ越してきたばかりで、ご近所さんと波風立てるのが嫌で見学者を放置していたのが裏目に出てしまった。金パ娘みたいに突撃してこないから大丈夫と思ってたけど、ロルフに取って色目を使って見られるのだけでも相当なストレスだったようだ。傭兵団の訓練所では、傭兵としての実力を見る品定めの目だからね。視線の種類が全然違うのだと思う。それでも私が消極的な選択を取ったから、がんばって我慢してくれていたらしい。いつもなら私がちょこちょこ庭に出て(もちろん牽制のためだよ!)なだめてたから何とか耐えられたけど、今回はイスと話し込んで姿が見えなかったから我慢の限界が来てしまったのだそうだ。本当にごめんなさい。
ビョルンにも謝ると、苦笑しながら首を振った。
「俺も、お前が時々ムッとしてくっついて来るのが可愛くて、つい放置してしまった。悪かったな」
私の嫉妬を楽しんでたんかい。ビョルンには謝らんでよいな。
とりあえずロルフには、お詫びの意味を込めて後でおっぱいを揉ませてあげよう。奴はおっぱいを与えておけばだいたい落ち着く。
それから近いうちに、地区長さんのとこに相談に行こう。このままじゃ快適に過ごせないし。それでも解決しなさそうなら庭に目隠し作るか、最悪引っ越しかな。
つらつらと考えながら、私も濡れてしまったのでイスに「着替えてくるから」と伝える。頷いたイスは、「ちょうどいい」と艶やかな声で答えた。
「そのまま薄手の服に着替えてきてくれ。診察をはじめたい」
あー、そういやそんなんあったわ。
婚約者たちにした謎の提案を思い出して、うへぇ、となりつつ同意する。でもちょっと時間をちょうだいね。ロルフを落ち着かせて来るから。
着替えてから自分の部屋にロルフを呼んだ。手をチェックすると、爪を噛んだ跡がある。好き放題に外へ怒りを放出していたときはなかったんだけど、我慢をさせるようになってから現れた癖だ。ヤスリで整えてやりながら、胸が切なくなってしまう。
ロルフにとっては、前のままの方が自然で幸福だったのだろうか。でも人の暮らす社会に身を置いて、協調性なく暮らしていくのは厳しい。大衆はいつだって、迫害する相手を探している。異質な存在は対象になりやすい。私はロルフをその対象にしたくない。
ロルフの頭を胸に抱き込む。私の背中に手を回し、無言で額を押し付けてくる。いっそのこと、何もかも捨てて山奥に家を立てて、そこへ婚約者達を連れて引き篭もろうか。誰にも煩わされない世界は、楽園に似ているかもしれない。でも子供が出来たら?私が死んだ後も生き続ける子供を、社会から隔絶させるわけにはいかない。それに、誰もが突然死ぬ可能性がある。私が先に死んだら、誰がこの可愛い獣の面倒を見るのか。答えはまだ見えない。
ただ額を押し付けて呼吸を繰り返していたロルフが、左手を戻してふに、と胸に触れた。ちょっと落ち着いて来たかな。
「…怒ってんのか?」
少し不安そうな声。一緒に暮らす前は、こんな可愛い男だって知らなかったな。
「自分にね。なぁなぁにして、ロルフへの配慮が足りなかったなって。ごめんね。いっぱい我慢させちゃって」
「お前は何も悪くねぇよ。悪いのはあのクソ女どもだ」
キッパリ言い切ったロルフに苦笑する。確かに。なんで私たちがこんなに気を使わなきゃいけないのかしらね。
「とりあえず、また地区長さんに相談してみるわ。ホラ、先週近所の奥さんが言ってた人。不動屋さんに紹介してもらって、引っ越しの時にご挨拶したお爺さんだけど、覚えてる?」
「あの白髭のジジイか。赤い服着てた」
サンタかよ。
「兄貴がもう行ってる。心配いらねぇ、兄貴なら上手くやるよ」
ロルフの言葉にハッとする。そっか、さすがビョルン。私は近所の奥さんに言われるまで思いつかなかったけど、ビョルンはもう解決方法を思いついていたんだね。私は独りじゃない。助けてくれる婚約者がいる。全部全部、自分で背負わなくてもいい。それはすごく、幸せなことだと思う。
「そっか。じゃあ、私はいっぱい頑張ったロルフをいっぱい褒めてあげなきゃね」
「…そうしろ」
胸に抱いてヨシヨシしていると、だんだん持ち直してきたみたいで遠慮なくおっぱいを揉み始めた。調子こいて服を剥いてナマで揉もうとするから、阻止するのに苦労した。胸だけじゃ済まないからね、絶対。診察受ける前に、致すのは御免ですよ!
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