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中東系エルフ魔術師編

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 時々控えめに上がる黄色い声をBGMに、イスと雑談を楽しむ。
「バイオトイレはどう?実用化に漕ぎ着けそう?アレが普及すると衛生面が向上するから、できるのめちゃめちゃ期待してるんだけど」

※注意※
 ちょっとここからトイレ事情の汚い話になるよ。読みたくない方は読み飛ばしてね!

 みなさん中世のトイレ事情ってご存じ?基本おまるみたいなのにして、それを決まった場所に捨ててたらしいんだけど、いちいち捨てに行くのも大変だから窓から外にぽいぽい捨ててたって説があるらしいよ。うへぇ。
 この世界じゃそこまでひどくないんだけどね。現皇帝が即位してからは衛生管理にかなり気を遣ってくれていて、公衆トイレがたくさん設置された。各家庭のおまるも公衆トイレに捨てに行けばいいし、そもそも公衆トイレで用を足した方が早いからおまるをよっぽど使わないって人も増えたようだ。ただ溜まった汚物はもちろん処理しないといけないから、定期的に汲み取り業者が来る。そん時は周囲が鼻が曲がるほど臭くなっちゃうのよね。
 それでも、元の世界の中世ヨーロッパよりははるかに衛生的だ。汚物は農家に売られて肥料になるから、エコでもあるし。江戸時代といっしょよね。江戸時代って日本の歴史の中で一番リサイクルシステムが完成していたと個人的には思ってるけど、それに近い状態であることが衛生面でも本当にありがたい。それだけでも皇帝陛下万歳って思うわ。
 ただ匂い問題はなんとかしたい。下水整備は相当な時間と資金がかかるし、そもそも下水だと結局流してるだけだから肥料化はしないのよね。そうすると汲み取り業者が困っちゃうし、農家も困ってしまう。そこで思い出したのがバイオトイレの存在だ。うろ覚えだけど、確かおがくずとかに汚物を入れて、熱と攪拌で微生物の働きを活性化させて汚物を分解する仕組みだったと思う。匂いもほとんどないし、分解が終わった物は良質の肥料になるって聞いたことがある。
 その話をイスに持っていったら、ちょうど皇室から「衛生状況を改善させる研究に資金を出す」って話が塔に来てたらしく、すぐに開発に取り組んでくれたのだ。
「仕組みはとりあえずできた。だがまだ、改良する必要があると思う。試用段階では何度か上手く肥料化できず、悪臭を放ってしまった」
「改良もいいけど、あれ使用者が正しく理解してないと失敗するから。説明書つけたら?トイレの壁にプレートにして貼るとか」
「それはいいな。すぐにできると思う」
「あと処理能力超えても失敗するから、利用者数をいかにカウントして制限するかが課題よねー」
「まだその段階には行けていないが、担当者に通達しておこう」
 そういうとウチにある通信具を使って、さっそく塔へ連絡を取っていた。仕事が早いわー。これに関してはマージンとかいらないから、早急に開発を進めてほしい。私のすばらしい異世界ライフのためにも!

 ※ここまで読み飛ばしていいよ!続きをどうぞ。

「開発、めっちゃ期待してるからね。なんなら個人的に資金提供するし。家庭用の試作品できたら、ウチにもちょうだいね!」
「資金は足りている。まだ小型化には遠いが、試作品が出来たら連絡する。担当者は、お前と話せて張り切っていた。死ぬ気で取り組むだろう」
「トイレのために死なさないでね」
 いまバイオトイレの開発をメインで仕切っているのは、ヒューマン種の青年で、ドゥーロ君という名前らしい。さっきイスが連絡取った時に少し話したけど、20代~30代くらいの若い声だった。ありがたいことに私に憧れているらしく、魔術師でありながら附術も学んでいる人らしい。すごく真面目で一途な性格で、今までの頑張りが認められて今回責任者に抜擢されたのだそうだ。「ヒューマン種の魔術師の地位向上のためにも、身命を賭して開発に取り組みます!ご期待ください!!」とめちゃくちゃ上ずった声で答えてくれた。魔術師のみなさん、研究のためなら命すらも賭ける!って人けっこうな頻度で見かけるからな。比喩じゃなさそうで怖いわ。
「ところで、外はすごいな。気にならないのか?」
 イスがちらりと外を見やる。見学のお嬢さん方のことかな?
「2番街の富裕層ではなかなか見ない、ワイルド系だから物珍しいのかしらね。そのうち飽きてくれるといいんだけど」
 それとも今のうちに見学料取ってやろうか。そこそこ稼げそうだ。
「お前の婚約者たちなのに、いいのか?」
「嫉妬するかって?うーん…」
 イスが意外な質問をしてきたぞ。恋愛関係疎そうなのに。金パ娘はロルフにアプローチしようとしたから腹が立ったけど、遠くで見てキャーキャー言う分には別になぁ。傭兵団の訓練所も依頼者へのアピールのために、見物できるようになってるから特別なこととも思わないし。
「今のところ、ビョルンとロルフが他の女に行くことはなさそうだしねぇ」
 任務でいない時以外は、毎日毎晩、愛されてますからね。他の女のとこ行く暇なんてないんじゃない?将来は知らんけど。
「そうか………」
 イスはそう呟くと、俯いてしまった。なんだなんだ、情緒不安定か?自分も嫁でも欲しくなったかな。いい歳だもんね。そして顔濃いな。下を向くと濃さが強調されるわ。
「なんなら、イスも外に出てみる?イケメンだし、キャーキャー言ってくれるよ。もしかしたら可愛い女の子と運命の出会いがあるかもよ」
「必要ない。うるさい女性は嫌いだ。頭が痛くなる」
「おっ、ケンカ売って来たなこのやろー」
 私はうるさい女の自覚があるぞ!
 じろっと睨みつけると、向こうも顔を挙げてこちらを見つめてくる。顔濃い。あと琥珀色の瞳がすごくキレイ。
「お前はいい」
「え、なんで?」
「お前の声は好きだ」
 ……おっと?
 突然生まれた空気に戸惑っていると、庭の方からバシャア!と水音が響いた。続いてキャー!ってひと際高い声と、「うるせぇ散れッッ!!」とロルフの怒鳴り声と何かを叩きつける音。
 慌ててイスから目を離して、窓に駆け寄る。また性懲りもなく、ロルフにアプローチかけるお嬢さんが現れたか?!窓に張り付いて見ると、違った。訓練で汗をかいたロルフが井戸の水を頭から被り、服も濡れて体の線があらわになったからお嬢さん方が興奮してしまったらしい。あぁロルフ…あなたいちいちエロいんだから気をつけなきゃ…。
「訓練終わったみたいだから、行ってくるね」
「ああ、わかった」
 慌てて、さらし(体拭く用)を持って庭に出るドアへ向かう。ほっとくとびしょ濡れのまま家に入ってきそうだ!ドアを開けて庭に出ると、「ナイスタイミング」とビョルンが来て背中を押された。押し出された先には、ロルフ。
 ロルフは苛立ちにギラついた目でこちらを見て、びしょ濡れの腕で私を引き寄せ。…公衆の面前で、私の唇にガブリと噛みついた。キャア、とまた高い悲鳴が聞こえた。
「ちょ…ッムぐ…ッ」
 止めようにも、キスが激しすぎて声が出せない。すぐに舌が差し込まれ、グチュグチュと口内がかき回される。ちょっとコレ、人前でやっていいキスじゃないから!あと私までびしょ濡れなんですけど!!しかし拘束が強くて逃れられない。
「あ…ん、ん…」
 思うさま舌を弄ばれ、引き出されてチュル、と吸われる。目が潤んで息が上がった私をみてようやく満足したのか、ロルフは観衆に向けてビシ!と中指を立てると(マジやめて!)さらしを取って家に入っていった。
 何がなんやら、ぼうっと立ち尽くす私の背中をビョルンがポンと叩く。ビョルンも水に濡れていて、観衆が私とロルフに注目している間に水を浴びたらしい。そしてビョルンもチュっと私にキスをすると、「入ろう」と私を促して家に一緒に入った。
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