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中東系エルフ魔術師編
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「さておき。できる?」
「…治療は難しいが、診察なら」
うーん、そうしたらこちらにもメリットはあるなぁ。常に忙しいフローラさんに直接診察を頼むのも気が引けるし。フローラさん以外で口が固くて誠実な魔術医を紹介してもらうにしても、まるっと信頼できるまでは時間かかりそうだからね。イスなら信頼関係できてるし、よし。
「わかった、私はオッケー出すわ。イスにはいつもお世話になってるし」
私の収入、イスと開発した魔道具のマージンもかなりあるのよね。生活面でもお世話になっております。
「すまない。ありがとう」
「私は、ね。後は私の婚約者たちの許可取ってくれる?」
両側に座っている男たちを示すと、イスは難しい顔をした。ビョルンはまだ説得の余地あるけどね。ロルフは難しいぞー。そもそも対話になるかも怪しいから。
イスはしばらく無言で考えるそぶりを見せたあと、顔を挙げた。
「説得は難しいと思う。だから、君たちの益になることを提案したい」
おっ、賢い選択。ロルフは絶対説得に応じないとみて、餌で釣る方法を取って来たぞ。私は完全に傍観者の立場で見守る。
「ラフィク、席を外して欲しい。今から提案することは、お前は聞かない方がいい」
「いやどんな提案する気よ」
急に不穏な空気になってきたぞ。ウチの婚約者たちに何を言う気だ!
「お前の婚約者たちは喜ぶと思う。できるだけお前にも受け入れやすいようにするつもりだ。だが今は聞かない方がいい」
待って待って怖すぎる!!私は止めようとしたけれど、彼らは興味を示してしまったようだ。
「それは…興味をそそられるな。ロルフ、話を聞いてみないか?」
兄貴分のビョルンに言われて、ロルフはチッと舌打ちをした。
「聞くだけだぞ。しょーもねぇ話なら容赦しねぇからな」
「構わない。了承してもらえると思う。少しばかり自信がある」
やめろ自信を持つな!
しかしすっかり乗り気になったビョルンさんに「昼飯を注文してきてくれないか?ホラ、今朝美味いサンドイッチ屋を見つけたと言ってただろ?そこでいい。昼ごろに家に届けてもらえるようにしてくれ」とお金を渡され家を追い出された。我が家の家計管理はビョルンさんの仕事だ。ロルフは言わずもがな、私もストレス値が溜まるとつい散財して、後から何でこんなの買ったの?ってなる所があるから。キチンとお小遣いはくれるので文句はない。
とりあえず追い出されちゃったし、この前のサンドイッチ屋さんでランチ注文してこよ。
そしてもらったお金全部使って、デザートまで頼んで帰ってきたら、婚約者たちは同席を条件に私の診察に同意していた。マジでどんな提案したの!胡乱な目でイスを見やると、彼は「問題ない」と頷いた。いやあるわ。私が被害受ける予感しかないわ。
同意した提案を探ろうとしたけれど、徒労に終わった。ビョルンに聞いてもはぐらかしてばかりで答えてくれないんだもの…。ロルフに至ってはビョルンに言い含められていたのか、聞き出そうとすると無を貫いていた。返事すらしない。口を開くとボロが出るから、一言も喋るなって言われたなこりゃ。
仕方がないので一旦忘れることにした。わからないものはどうしようもない。そうこうしているうちに頼んでいたランチが届いたので、みんなで美味しくいただいた。
「おいしー!幸せ~」
ホントここのサンドイッチ、美味しいわー。元の世界にいた時からパンが好きで、朝ごはんは基本パン派だったのよねぇ。たまに米とか味噌汁とか無性に恋しくなる時もあるけど、料理チートは一切ないので潔く諦めた。米の精米方法とか味噌の作り方なんか知らんがな。誰かスマホくれー。とりあえずプロが作った美味しい料理で充分満足できてるからいいんだけど。
サンドイッチ店は3番街にもあってそっちもお気に入りだったけど、2番街のはお値段張る分中に入ってる食材も豪華…!この前美味しかったローストポークと、今日はローストビーフもあったから、思わず両方頼んじゃったよ。私はぶっちゃけサンドイッチだけでいいんだけど、男が3人もいるからね。肉類とかのガッツリ系おかずも頼んでおいた。たくさん頼んだのに、素晴らしい食べっぷりで全部なくなった。
食後は紅茶と、ちまちまプリンを楽しむ。プリンは私とイスの分だけ買ってきた。ビョルンは甘いのは嫌いじゃないけど…って程度だし、ロルフに至っては大嫌いだしね。そんな奴に食べさすのはプリン様に失礼だ。イスはやっぱり甘いのが好きみたいで、表情は変わらないけどペロっと平らげていた。
ちょっと休憩してお腹がこなれてきた辺りで、ビョルンとロルフが腹ごなしと言って庭で訓練するため出て行った。そしてどこからともなく、イケメンレーダーに反応したお嬢様方が見学に現れる。この前に金パ娘の事件で数日は見学者が少なかったんだけど、今日はまた増えている気がする。ビョルンが戻って来たから、この前とは別の人たちが来てるのかな。ビョルン推しの人たちとか。ロルフがブチ切れた時に来ていた子は、さすがにビビったのかいないように思うけれど。
ただ金パ娘たちみたいに声を掛けて来る子はいないから、ロルフもそれなりに訓練に集中できているようだ。あの事件のせいか、皆さん一定の距離を保ってお行儀よく見学してくれてるしね。今のところ金パ娘たちの親が突撃してくる様子もないし、概ね平和ではあるのかな。
「…治療は難しいが、診察なら」
うーん、そうしたらこちらにもメリットはあるなぁ。常に忙しいフローラさんに直接診察を頼むのも気が引けるし。フローラさん以外で口が固くて誠実な魔術医を紹介してもらうにしても、まるっと信頼できるまでは時間かかりそうだからね。イスなら信頼関係できてるし、よし。
「わかった、私はオッケー出すわ。イスにはいつもお世話になってるし」
私の収入、イスと開発した魔道具のマージンもかなりあるのよね。生活面でもお世話になっております。
「すまない。ありがとう」
「私は、ね。後は私の婚約者たちの許可取ってくれる?」
両側に座っている男たちを示すと、イスは難しい顔をした。ビョルンはまだ説得の余地あるけどね。ロルフは難しいぞー。そもそも対話になるかも怪しいから。
イスはしばらく無言で考えるそぶりを見せたあと、顔を挙げた。
「説得は難しいと思う。だから、君たちの益になることを提案したい」
おっ、賢い選択。ロルフは絶対説得に応じないとみて、餌で釣る方法を取って来たぞ。私は完全に傍観者の立場で見守る。
「ラフィク、席を外して欲しい。今から提案することは、お前は聞かない方がいい」
「いやどんな提案する気よ」
急に不穏な空気になってきたぞ。ウチの婚約者たちに何を言う気だ!
「お前の婚約者たちは喜ぶと思う。できるだけお前にも受け入れやすいようにするつもりだ。だが今は聞かない方がいい」
待って待って怖すぎる!!私は止めようとしたけれど、彼らは興味を示してしまったようだ。
「それは…興味をそそられるな。ロルフ、話を聞いてみないか?」
兄貴分のビョルンに言われて、ロルフはチッと舌打ちをした。
「聞くだけだぞ。しょーもねぇ話なら容赦しねぇからな」
「構わない。了承してもらえると思う。少しばかり自信がある」
やめろ自信を持つな!
しかしすっかり乗り気になったビョルンさんに「昼飯を注文してきてくれないか?ホラ、今朝美味いサンドイッチ屋を見つけたと言ってただろ?そこでいい。昼ごろに家に届けてもらえるようにしてくれ」とお金を渡され家を追い出された。我が家の家計管理はビョルンさんの仕事だ。ロルフは言わずもがな、私もストレス値が溜まるとつい散財して、後から何でこんなの買ったの?ってなる所があるから。キチンとお小遣いはくれるので文句はない。
とりあえず追い出されちゃったし、この前のサンドイッチ屋さんでランチ注文してこよ。
そしてもらったお金全部使って、デザートまで頼んで帰ってきたら、婚約者たちは同席を条件に私の診察に同意していた。マジでどんな提案したの!胡乱な目でイスを見やると、彼は「問題ない」と頷いた。いやあるわ。私が被害受ける予感しかないわ。
同意した提案を探ろうとしたけれど、徒労に終わった。ビョルンに聞いてもはぐらかしてばかりで答えてくれないんだもの…。ロルフに至ってはビョルンに言い含められていたのか、聞き出そうとすると無を貫いていた。返事すらしない。口を開くとボロが出るから、一言も喋るなって言われたなこりゃ。
仕方がないので一旦忘れることにした。わからないものはどうしようもない。そうこうしているうちに頼んでいたランチが届いたので、みんなで美味しくいただいた。
「おいしー!幸せ~」
ホントここのサンドイッチ、美味しいわー。元の世界にいた時からパンが好きで、朝ごはんは基本パン派だったのよねぇ。たまに米とか味噌汁とか無性に恋しくなる時もあるけど、料理チートは一切ないので潔く諦めた。米の精米方法とか味噌の作り方なんか知らんがな。誰かスマホくれー。とりあえずプロが作った美味しい料理で充分満足できてるからいいんだけど。
サンドイッチ店は3番街にもあってそっちもお気に入りだったけど、2番街のはお値段張る分中に入ってる食材も豪華…!この前美味しかったローストポークと、今日はローストビーフもあったから、思わず両方頼んじゃったよ。私はぶっちゃけサンドイッチだけでいいんだけど、男が3人もいるからね。肉類とかのガッツリ系おかずも頼んでおいた。たくさん頼んだのに、素晴らしい食べっぷりで全部なくなった。
食後は紅茶と、ちまちまプリンを楽しむ。プリンは私とイスの分だけ買ってきた。ビョルンは甘いのは嫌いじゃないけど…って程度だし、ロルフに至っては大嫌いだしね。そんな奴に食べさすのはプリン様に失礼だ。イスはやっぱり甘いのが好きみたいで、表情は変わらないけどペロっと平らげていた。
ちょっと休憩してお腹がこなれてきた辺りで、ビョルンとロルフが腹ごなしと言って庭で訓練するため出て行った。そしてどこからともなく、イケメンレーダーに反応したお嬢様方が見学に現れる。この前に金パ娘の事件で数日は見学者が少なかったんだけど、今日はまた増えている気がする。ビョルンが戻って来たから、この前とは別の人たちが来てるのかな。ビョルン推しの人たちとか。ロルフがブチ切れた時に来ていた子は、さすがにビビったのかいないように思うけれど。
ただ金パ娘たちみたいに声を掛けて来る子はいないから、ロルフもそれなりに訓練に集中できているようだ。あの事件のせいか、皆さん一定の距離を保ってお行儀よく見学してくれてるしね。今のところ金パ娘たちの親が突撃してくる様子もないし、概ね平和ではあるのかな。
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