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中東系エルフ魔術師編
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しおりを挟む言葉の意味を理解する前に、ビョルンが庇うように腕を私の前に出し。ガンッ!!とカウンターが悲鳴を上げる音が響いた。
「テメェ!何ふざけたことぬかしてやがる!!」
ロルフが怒声を上げる。ヨシヨシ、いきなり飛びかからず我慢したのは偉い!カウンターが無事かどうかは気になるけども!
私自身は、ロルフが激怒してくれたので、全然平静を保ってナスヨ?イイマチガエテマセンヨ?
「…いちおう聞くけども。エロい意味はないのよね?」
「エロい…ああ、下心はない」
「下心なくてもいいわけねぇだろ!」
ガァン!!
頑張れ!耐えろ!カウンター!!
「ロルフごめん、ちょっと我慢して欲しい。受ける受けないは別として、イスがこんなこと言い出した理由を聞きたいの」
「だけどなぁお前…!」
ドカドカと足音荒く近づいてきたロルフの腕を引き、頭をギュッと胸に抱き込む。意識して胸を押し付け、頭をヨシヨシする。
「私のために怒ってくれたのよね?ありがとう。でもまずは話をさせて。受けるかどうかは、ちゃんとあなた達の意見も聞いて決めるから」
ぐぅ、とロルフが唸るけど、より胸に押し付けてやる。すんすんと匂い嗅がれてる気がするけど、好きにさせる。少しすると落ち着いたのか、ぐりぐりっと頭を押し付けてから、ソファにどかりと腰を降ろした。ムスっとした顔でイスを睨みつけているけど、ヨシヨシよく耐えた。えらいえらい。膝をポンポンと叩いてやる。
「…すごいな、猛獣使いのようだ」
感心してるんだかよくわからない無表情でイスが言う。思ってても口にだすんじゃないよ。
「それで、理由は?なんかあるんでしょ?調べる方法は?着衣は?調べることで何がわかるの?言いやすいところからでいいから全部教えて」
さすがに長い付き合いだ。無意味にこんな意味のわからんことを言う人間じゃないとわかってるけども。デリケートな問題だし、婚約者もいる身ですしね。
「着衣は…ない方がいいが、問題があるなら薄手の服なら構わない」
「問題あるに決まってんだろ!!」
「どうどう」
いきなりぶっ飛んでるなー、イスさんや。
「調べる方法は、手を触れて、魔力を通す。魔術医と同じ方法だ」
「そんなら、フローラさんの方がよくない?」
私は魔術医療分野の権威、フローラさんの名前を出す。サークルオブメイジの塔が全部で5つあるっていうのは、前に述べたけれど。塔は帝都を中心にして、大陸各地に点在して建っている。それぞれの塔に塔長と呼ばれるトップがいて、塔長を筆頭にして同じ分野を研究する魔術師たちが所属している、という感じだ。その中で東西に位置する2つの塔は帝都に近く、東側は魔術医療の塔、西側に魔道具の塔がある。西側は前は魔力を動力源としたからくり式の魔道具の研究をしていたそうだけど、今は国民の生活を向上させている附術による魔道具の勢いがすごい。だから附術を使った魔道具の第一人者であるイスが、若くして塔長になれたのだそうだ。
私が名前を挙げたフローラさんは東側の塔長で、魔術医療のスペシャリストだ。『生命を編む術(テクスヴィタ)』は禁術として広く知れ渡っているけれど、完全に仕様を禁止されているわけではない。新しく魔術を開発するのはご法度だけど、厳しい誓約を交わした者が決められた術式を扱うことは許されているのだそうだ。
フローラさんには何度かお会いしたことがある。医療系の魔道具を開発したこともあるから、それなりに親しい仲だと思う。エルフ種で、黒人系の美魔女なお方だ。
「この件については、私にしかわからない。だから私が来た」
「イス、魔術医みたいに調べられるの?」
「…かつては医療分野を学んでいた。問題ない」
ええっ、知らなかった。私が出会ったときは魔道具の塔に所属していたけど、以前のやり方ではこれ以上の発達が見込めそうにないからと、別の方法を探してたんだよね。それが当時、附術師としてちょっと名が売れ始めた私と出会ったキッカケなんだけど。だから知る限り魔道具の研究者だと思ってたんだけどな。
とりあえず魔術医の代わりはできると知って、別の質問に移る。
「理由と、何がわかるか、か…。」
イスの眉間にぐっと皺が寄る。目に影が落ちる。顔濃いわー。まつ毛も濃すぎて目張り入ってるかと思うもん。
「調べた結果で、お前が何も関係ないのなら、教えられない。関係があるとわかれば、教える。それではだめか?」
イスの言葉に、私はため息をつく。ダメに決まってんだろーがよ。そう言いたいけれど、何か深刻な事情がありそうだしなー。友人の頼みを無下に断るのも気が引ける。
「…そうねぇ。イスは魔術医の代わりができるのね?ちょうどフローラさんに連絡取って、魔術医に診察してもらおうと思ってたのよね。それをイスにお願いすることはできる?」
私の言葉に、両側の二人がバッとこちらを見る。
「シャーラ!何か、調子の悪いところがあるのか?!」
「おかげさまでねぇ、あんた達がいる限りだいたい腰はダルいですけども」
そう答えてやると、ビョルンはニコッと笑って「すまん。後でまたマッサージするから」と言った。改善する気はねーな、こりゃ。
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