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中東系エルフ魔術師編
06
しおりを挟む「こんにちは、お嬢さん方。ここで何をしてらっしゃるんです?」
私はこの騒ぎの中心である、金髪巻き毛派手娘の目の前に立った。口元には笑みを浮かべつつも、目は思いっきり見開いて相手の目を見てやる。人間真正面から目を見られると、案外ビビるのよね。まずはそうやってこっちのペースに引きずり込んでやる。
「な、何って…あなたに言う必要あります?」
「必要ないと思います?そちらさん、ウチの婚約者の名前叫んで人んちの庭先で大騒ぎしてますよね。何か御用なら、彼はいま忙しいので、代わりに婚約者である私が承りますけど」
婚約者のところを強調して言ってやると、向こうは明らかに苛立ったようで目が釣り上がった。
「あぁら、ロルフ様の婚約者ですって?やぁだ、地味なお顔で地味な格好で洗濯なんてしてらっしゃるから、てっきり洗濯女かと思いましたわ」
挑発するように金パ娘(めんどいので省略)が笑うと、周囲の取り巻きもクスクスと笑い出す。
「どう見ても、釣り合わないと思うんですけど。一緒にいて、恥ずかしくないのかしら?」
「本当ね、鏡を見てみたらよろしいのに」
クスクス。クスクス。
……おーおー、いい度胸してんじゃないの。こちとら地味に見えるし爵位もないけど、まぁまぁこの国に影響力持ってんだぞ!
「はぁ。それでご用件は?」
「えっ」
イライラを抑え込んで、低い声で言い放ってやる。想定外の質問が来たのか、相手はポカンと間抜けな顔をする。
「えじゃなく。ご用件はって伺ったと思うんですけど。私の言ってる意味わかります?もしや意味が理解できていらっしゃらない?もっとお子様にもわかる言い方しましょうか?」
「な、なんて失礼な…!!」
「失礼はそちらでしょう。あなた自分ちの庭先で知己でもない赤の他人が自分の名前叫んで好き勝手喚きたててきたらどう思います?迷惑だと思いません?常識も良識もないですよね?それでもこちらは礼儀を尽くしてるんですよ。常識も良識もある大人なんでね。それではハイ、ご用件をどうぞ」
金パ娘は口をパクパクさせながら、目をウロウロさせている。なんとか用件を絞りだそうとしてるな。
「わ、私は、ロルフ様を応援に来たのです!がんばって訓練されてる姿を見て、励ましたくて…!」
「あ、迷惑です。集中して訓練している所に、キーキーうるさい声が聞こえてきたら、邪魔になると思いません?」
「わ、私がうるさいですって…?!」
「キーキーうるさいって言っただけですよ。自分のことだと思ったってことは、自覚があるんですか?」
口をわなわなさせて声を出せなくなってしまった金パ娘の代わりに、取り巻き1が口を開いた。
「差し入れをお持ちしたんです!ロルフ様に美味しいものを食べていただきたくて…!」
持っていたバスケットの中身を見せてきて、ふわっと甘い匂いが鼻につく。焼き菓子の匂いだな。
「あー、彼、甘いの大嫌いです。お持ち帰りください」
取り巻き1が絶句する。いや、差し入れしたいならせめて酒にしろよ。相手の好みくらいリサーチしとけよ。脇が甘いな。
「あの、あの、静かに見ているのはダメですか?!ロルフ様のお姿を見ていたいんです!」
取り巻き2がんばるな!情に訴える方向に切り替えてきたぞ!
「なるほど。では騒がしかったあなた方はダメですね。お帰りください」
取り巻き2、撃沈。逆にここまでケンカ売ってきて、なんで許されると思ったのよ。
さすがに何も言えなくなったようで、お互いの顔を見合わせながら戸惑っている。金パ娘は顔を真っ赤にしたまま、こちらを睨みつけている。それを目を逸らさず見つめ返してやる。
「それでは、これ以上のご用件はないようですね。どうぞお引き取りください」
お帰りはあちら、と手で指し示す。
「ヒトの男に懸想して大騒ぎするなんて。恥ずかしいと思わない?」
金パ娘にだけ聞こえるよう、私がそう呟いた瞬間。彼女が取り巻き1の持っていたバスケットを奪い取り、振りかぶった。私に投げつけようとしている。
いかん、ついつい余計な一言を言っちゃった!このくらい簡単に避けられるけど、後ろで殺気が膨れ上がって、血の気が引く。
「ロルフ、だめ!!」
叫んだけれど、間に合わない。ロルフの手から殺気の塊が放たれ、空気を切り裂き金パ娘に向かう。ぎゃー!さすがにこれはマズイ!とっさに手を広げて、軌道を遮る。
バチバチィッ!!
ロルフの放ったナイフは2つ。1つは投げつけられたバスケットに突き刺さり、一緒に地面に落下した。そしてもう1つは私の腕に刺さる…前に防御の附術が作動し、ナイフを弾いた。
ホッ。
胸を撫でおろす私に、ロルフが駆け寄る。
「シャーラ、何やってんだ!」
「いやそれはこっちのセリフよ!素人に手を出すのダメ、絶対!」
「関係ねぇ!ソイツはお前を攻撃したんだ!殺り返されたって文句は言えねぇ!!」
私の腕をチェックしながら、ロルフが怒りに満ちた声を上げる。それでようやく状況が理解できたのか、金パ娘がヘナヘナとへたり込む。取り巻きの子も、ナイフが突き刺さったバスケットを見て青ざめている。そしてこの騒ぎに、なんだなんだと人も集まりだしている。
あーぁ、こうなる前に追い払いたかったんだけどな。私も頭に血が昇ると、つい相手を追い詰め過ぎちゃうのよね。失敗したわー。
私はため息をグッと堪えて、ロルフの頭を胸に抱き込んだ。
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