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中東系エルフ魔術師編
05
しおりを挟む「まぁでも、まずは洗濯したり掃除したりしたいから。昼頃に出掛けてランチデートして、そこから買い物しよ。ね?」
ご機嫌を取るように「デート」という言葉を使うと、満更でもなさそうな声で「しゃーねぇな」と言った。やれやれ。
「ロルフも訓練するでしょ?」
任務がない時も体が鈍らないように、ビョルンもロルフも筋トレや訓練を欠かさない。そういうとこ素晴らしいよね。
「そりゃあするけどな。あのクソ女ども、どうにかなんねぇのか?」
おおう、2番街の育ちのいいお嬢さん方を「クソ女」呼ばわりしたぞ、コイツ。気持ちはわかるけれども。
広い庭で訓練できるようになったのはいいんだけど、イケメン達が汗かいてるのが噂で広まっちゃったみたいで、見学に来るお嬢さんがたくさんいるのよねぇ。見てるだけなら害はないし、ご近所のお宅に住むお嬢さん方もチラホラいるみたいだから、抗議して揉めたくもない。
だからロルフには穏便に無視するように、お願いしてはいるんだけど…。
「ごめんね、対策は考えてみるけど…辛い?」
「イラつくな。特にでけぇ声出す奴は、ぶん殴ってやりてぇ」
「まじやめて!」
暴力沙汰なんて起こしたら、もうここに住めないわ!ロルフってば、女性だから手加減するとかそういう紳士的な配慮ゼロだからな。だいぶ前だけど、酒場で強引に迫ってきた女性にヤクザキックかましたの見て、ドン引きしたもん。
「…お前が言うなら、我慢するよ」
不機嫌そうなロルフの言葉に、耳を疑う。え、我慢するって言った?ロルフが?身勝手大王のロルフが?我慢?!
「ど、どうしよう…涙出そう…」
「なんでだよ」
いやだって、ロルフの成長っぷりに感動して。みなさーん!ウチの子が我慢を覚えましたよ!!
「ええっと、とりあえず、私もシーツの洗濯があるし。洗濯機を持って行ってくれる?そしたら庭でロルフのこと見ながら洗濯できるから」
同棲中の婚約者が傍にいれば牽制にもなるし、ちょっとは遠慮もしてくれるんじゃないかな?
「あー、いいなそれ。お前がセックスでぐっちゃぐちゃになったシーツ洗ってんのとか、マジ滾る。キレそうになっても、お前の痴態思い浮かべたら我慢できそうだ」
「変態。痴態はヤメロ」
なんでエロに繋げんだよ、真面目にやれ!
しかし不純ではあるけどやる気は出たようで、ロルフは朝食を食べ終わると洗濯機を庭に運んでくれた。私もシーツを引っぺがして、下着類と一緒に盥に入れて洗濯するために持っていく。近くにある共用の井戸から一緒に水を組んできて、洗濯機に水を流し入れて。
さて、お洗濯を始めますか。
石鹸を片手に、私は腕まくりをして。ロルフは運動前のストレッチを始めた。
ロルフがストレッチを終えて、庭に設置してある打ち込み台に短槍を叩き込み始める。打ち込み台は木で出来てるから、ガッ!ドガッ!と激しい音が響く。ロルフは器用で大概の武器を使いこなすけど、メインは短槍だ。それプラス体のそこら中に仕込んだ暗器を使いこなし、なかなかトリッキーな戦い方をする。見た目も派手だけど、戦い方も派手なのよね。
私はその音をBGMに、シーツや下着に石鹸を擦りつけて、洗濯機の中に放り込む。ちなみに洗濯機は、手動でグルグル回すタイプ。これは私が開発したのじゃなくて、元々魔道具であったやつです。手動だけど、魔力で動きをちょっと補助してくれるのよね。だからシーツみたいな大物でも、女性の力で楽々洗濯できちゃう優れモノ。そりゃあいずれは全自動化するのが夢だけど、ちょっと仕組みが思いつかないのよね。術式が複雑になりそうだし、そうするとその分魔力を食うからなぁ。この手動式でも盥に洗濯板とかと比べれば手間が段違いだし、とりあえずは困らないかな。
そんな感じでそれぞれ集中していると、いつの間にやらお嬢さん方が集まり始めていた。これ絶対、近所の家の子が訓練を始めたって気づいたら、呼びかけて人を集めてるよね。それでも遠巻きに見てる分にはいいんだけど、どうもマナーのなってない子がいるのよねぇ。
「キャー、ロルフ様ステキィ!」
ホラあの子。金髪巻き毛の派手なメイクをしたお嬢さん。近所に住んでる様子はないんだけど、近所の子のオトモダチなのかな。ロルフが訓練してるとかなりの頻度でウチに来て、ああやって遠慮もなく大きな声を上げる。周囲の子も注意する様子はなく、取り巻きっぽい子達は一緒に騒いで、それ以外の子は遠巻きに見ている感じ。下手したら貴族位持ちか、それに近いセレブなのかもね。
まぁ何にせよ、相手にしないのが一番ではあるんだけど。ロルフは…だいぶ苛立ってるね。動きがさらに早く激しくなっている。そもそも自分が恋愛とか性的な対象に見られるのが大嫌いだし、苛立ちを抑え込むのも苦手だ。今までは抑え込むことなく、全部外に吐き出して当たり散らしていればよかったけれど。彼は必要以上の衝突を嫌う私と一緒にいるために、我慢することを…我慢する努力をすることを、選んでくれた。一朝一夕で変われるものではないけれど、彼の決意は本物で、今までとは比べ物にならないほど忍耐強くなっている。だから私も団長として、今は安心して彼を隊長に任命できるようになった。
だけど、これは。
「ああ、あんなにお美しいのに、強さも兼ね備えていらっしゃるなんて…『傭兵なんか』にしておくのはもったいないわ!功績からみても、騎士になられてもおかしくはないですよね!」
「ええ、本当に!」
「おっしゃる通りです!」
「でもお可哀想!きっと横暴な上司が、ロルフ様の将来を阻んでいるんですわ!」
……あ~~、うるせぇ。
これはちょっと、私も我慢ならんわ。
洗濯の手を止めて、立ち上がる。怒りを必死に抑え込んでたロルフが、驚いた目で私を見つめる。
「おい…」
「ロルフ、気にせず続けてて」
ポンポン、と肩を叩くと「まぁ」とか「なぁにあの人」とかあからさまに嫌そうな声が聞こえてくる。なぁにじゃねぇよこのクソガキが!!…と心の中でボロクソに怒鳴りつけておいて。
「だいじょーぶ。ちょっと『穏便に』、注意してくるから」
私は左耳のピアスに触れながら、騒がしいお嬢さん方の所に向かった。
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