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中東系エルフ魔術師編
02
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『そう言えば婚約したと聞いた。おめでとう』
「ありがとー!まぁまだ結婚する日は未定なんですけど。え、誰に聞いたの?そんな噂話教えてくれる友達いたっけ?」
遡ること約3カ月前。なし崩しで始まった同居生活だけれども、まぁ付き合いも長いし3人でうまくやっている。ただ今のところ婚約状態で籍は入れてないんだけど、あっという間に帝都中に噂がかけめぐって、半分くらいの人には結婚したと認識されていた。婚約状態で同棲する人は少ないらしいし、仕方ないかな。
それにビョルンとロルフの故郷では、戸籍とか厳密に管理されてないらしく、事実婚が普通らしい。なのでロルフはもう夫婦って気持ちでいるようで、私を嫁呼ばわりしている。ビョルンは帝国に住んでいる以上は帝国法に従った方がいい…という私の気持ちを尊重してくれているけど、ロルフに感化されちゃったのか面倒になったのか、ちょいちょい妻って言ったりする。
私も最初は否定したりもしたけど、今は親しい人以外にはお祝い言われたら「ありがとうございますウフー」って返してる。いちいち否定するのも面倒になってきたし、そもそも諸事情で籍入れられないから、仕方なく婚約状態にしてるだけだし。問題さえクリアできたら即結婚するつもりでいるから、まあいいかと思っている。
『……用があってお前の私室にあるはずの通信具に繋げたら、あの熊男が出て言われた』
我が婚約者ビョルンのことですね。イスさん未だに名前覚えてないのかい?頭いいくせに興味のないことはまったく覚えないからなーこの人。
そういえば私の名前も知らないよね。というか私の名前は、この世界の人には何故か聞き取れない発音らしいのだ。そんな複雑な響きの名前じゃないはずなのに聞き取れないって、何それ何のホラー?文字は英語っぽいからてっきり発音もそうで、転移チートで耳で聞こえるのだけ日本語訳されてると思ってたんだけど。元の言語が英語っぽいなら、十分発音できる名前だと思うんだけどな。
とにかく名乗るとみんなに「???」って顔をされるので、もう諦めて好きに呼んでくれーと言っている。だから役職名とか、『レーデル』だの『シャーラ』だの好き放題に呼ばれているわけだ。
ちなみに彼のいう『ラフィク』は、エルフの古い言語で『同志』って意味らしい。サークル内の魔術師仲間を表す言葉らしいんだけど、それを私の呼称として使ってくれている。これはちょっと嬉しいよね、仲間って認められたみたいで。
「あー、そうだ、諸事情あって引っ越ししたのよね。通信具も引っ越し先に持ってったから。また場所教えるね。というわけで引っ越し祝いに冒頭で言った魔術を開発してくれません?もうさー、あいつら2人がかりでひどいのよ!何とか阻止してるけど尻は出すとこであって入れるとこじゃ」
『それ以上はいい。聞きたくない』
途中まで言いかけたところで遮られる。そらそうか、友人の下半身事情なんて聞きたくないわな。
『しかし言っておく。お前は阿呆か』
「なんだとコノヤロー!」
コミュ障のくせにケンカ売ってくるスタイル変わんねーな!
『ラフィクよ、考えてみてくれ。男を強制的に萎えさせるということは、人体に影響を及ぼす術だ。そう言った術のことを、世間では何という?』
「あ」
ようやく気づいた私に、イスのでっかいため息が聞こえる。
こういう所で、自分が異邦人だなって思う。この世界の人は、魂に沁みついてるレベルで『生命を編む術(テクスヴィタ)』を恐れて避けているから。
ついつい忘れちゃってたけど、どう考えても禁術ですねありがとうございます。
「ちッ、しゃーねぇ、別の手を考えるか…」
『口が悪くなったな。狼男の影響か?』
「それだと人狼っぽいからやめて。ウチのロルフがモンスターになっちゃうから」
まぁモンスターの方が可愛いくらいの狂暴ぶりですけれども。
それから魔術と附術についての雑談をしていたら、イスがちょうど用事があるからと、新居に遊びに来ることになった。1週間後なら私も休息日合わせて2連休が取れるし、イスもなんとか都合がつけられるとのこと。お互い忙しい身だからなー、会うのは久しぶりだから楽しみだ。
「場所はねー、3番街寄りの2番街の端っこ!周囲はちょっと開けてて、でっかい男2人が訓練しても余裕がある広いお庭付き一軒家です。最近なんか2人が訓練してると見学者出ちゃってさー、イケメンは罪よね!あ、壁は煉瓦色で赤っぽい色の屋根だから!」
『住所を言ってくれ。誰もがお前のように方向音痴なわけじゃない』
失礼な!まぁ確かに引っ越して1週間程どこに行くにもビョルンかロルフに付き添ってもらったけれども!ナビ機能欲しいわー。でもそうなるとGPSに相当するものがいるよねー。
「2番街11区の23番地!それでわかる?」
「問題ない」
本当に?すごいな。とりあえず素直に感心して、通信を切った。
さてさて、新居に来て初めてのお客様だから、はりきってお持てなししなきゃ!お茶も前に買った新しいの開けて、なんか美味しそうなスイーツも準備したいな。うーん、それとその日はロルフに外に出てもらったほうがいいかしら。いまビョルンが任務に出ちゃってていないのよね。1週間後だと早ければ帰って来れるかもしれないけど、微妙なラインだ。ロルフとイスが同じ空間にいるなんて、危険なニオイしかしないわー。余計な諍いが起きて、新居が破壊されたら困るんだけどな。
「ありがとー!まぁまだ結婚する日は未定なんですけど。え、誰に聞いたの?そんな噂話教えてくれる友達いたっけ?」
遡ること約3カ月前。なし崩しで始まった同居生活だけれども、まぁ付き合いも長いし3人でうまくやっている。ただ今のところ婚約状態で籍は入れてないんだけど、あっという間に帝都中に噂がかけめぐって、半分くらいの人には結婚したと認識されていた。婚約状態で同棲する人は少ないらしいし、仕方ないかな。
それにビョルンとロルフの故郷では、戸籍とか厳密に管理されてないらしく、事実婚が普通らしい。なのでロルフはもう夫婦って気持ちでいるようで、私を嫁呼ばわりしている。ビョルンは帝国に住んでいる以上は帝国法に従った方がいい…という私の気持ちを尊重してくれているけど、ロルフに感化されちゃったのか面倒になったのか、ちょいちょい妻って言ったりする。
私も最初は否定したりもしたけど、今は親しい人以外にはお祝い言われたら「ありがとうございますウフー」って返してる。いちいち否定するのも面倒になってきたし、そもそも諸事情で籍入れられないから、仕方なく婚約状態にしてるだけだし。問題さえクリアできたら即結婚するつもりでいるから、まあいいかと思っている。
『……用があってお前の私室にあるはずの通信具に繋げたら、あの熊男が出て言われた』
我が婚約者ビョルンのことですね。イスさん未だに名前覚えてないのかい?頭いいくせに興味のないことはまったく覚えないからなーこの人。
そういえば私の名前も知らないよね。というか私の名前は、この世界の人には何故か聞き取れない発音らしいのだ。そんな複雑な響きの名前じゃないはずなのに聞き取れないって、何それ何のホラー?文字は英語っぽいからてっきり発音もそうで、転移チートで耳で聞こえるのだけ日本語訳されてると思ってたんだけど。元の言語が英語っぽいなら、十分発音できる名前だと思うんだけどな。
とにかく名乗るとみんなに「???」って顔をされるので、もう諦めて好きに呼んでくれーと言っている。だから役職名とか、『レーデル』だの『シャーラ』だの好き放題に呼ばれているわけだ。
ちなみに彼のいう『ラフィク』は、エルフの古い言語で『同志』って意味らしい。サークル内の魔術師仲間を表す言葉らしいんだけど、それを私の呼称として使ってくれている。これはちょっと嬉しいよね、仲間って認められたみたいで。
「あー、そうだ、諸事情あって引っ越ししたのよね。通信具も引っ越し先に持ってったから。また場所教えるね。というわけで引っ越し祝いに冒頭で言った魔術を開発してくれません?もうさー、あいつら2人がかりでひどいのよ!何とか阻止してるけど尻は出すとこであって入れるとこじゃ」
『それ以上はいい。聞きたくない』
途中まで言いかけたところで遮られる。そらそうか、友人の下半身事情なんて聞きたくないわな。
『しかし言っておく。お前は阿呆か』
「なんだとコノヤロー!」
コミュ障のくせにケンカ売ってくるスタイル変わんねーな!
『ラフィクよ、考えてみてくれ。男を強制的に萎えさせるということは、人体に影響を及ぼす術だ。そう言った術のことを、世間では何という?』
「あ」
ようやく気づいた私に、イスのでっかいため息が聞こえる。
こういう所で、自分が異邦人だなって思う。この世界の人は、魂に沁みついてるレベルで『生命を編む術(テクスヴィタ)』を恐れて避けているから。
ついつい忘れちゃってたけど、どう考えても禁術ですねありがとうございます。
「ちッ、しゃーねぇ、別の手を考えるか…」
『口が悪くなったな。狼男の影響か?』
「それだと人狼っぽいからやめて。ウチのロルフがモンスターになっちゃうから」
まぁモンスターの方が可愛いくらいの狂暴ぶりですけれども。
それから魔術と附術についての雑談をしていたら、イスがちょうど用事があるからと、新居に遊びに来ることになった。1週間後なら私も休息日合わせて2連休が取れるし、イスもなんとか都合がつけられるとのこと。お互い忙しい身だからなー、会うのは久しぶりだから楽しみだ。
「場所はねー、3番街寄りの2番街の端っこ!周囲はちょっと開けてて、でっかい男2人が訓練しても余裕がある広いお庭付き一軒家です。最近なんか2人が訓練してると見学者出ちゃってさー、イケメンは罪よね!あ、壁は煉瓦色で赤っぽい色の屋根だから!」
『住所を言ってくれ。誰もがお前のように方向音痴なわけじゃない』
失礼な!まぁ確かに引っ越して1週間程どこに行くにもビョルンかロルフに付き添ってもらったけれども!ナビ機能欲しいわー。でもそうなるとGPSに相当するものがいるよねー。
「2番街11区の23番地!それでわかる?」
「問題ない」
本当に?すごいな。とりあえず素直に感心して、通信を切った。
さてさて、新居に来て初めてのお客様だから、はりきってお持てなししなきゃ!お茶も前に買った新しいの開けて、なんか美味しそうなスイーツも準備したいな。うーん、それとその日はロルフに外に出てもらったほうがいいかしら。いまビョルンが任務に出ちゃってていないのよね。1週間後だと早ければ帰って来れるかもしれないけど、微妙なラインだ。ロルフとイスが同じ空間にいるなんて、危険なニオイしかしないわー。余計な諍いが起きて、新居が破壊されたら困るんだけどな。
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