異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

中東系エルフ魔術師編

０１

「あっ、もしもしイス？久しぶりー！ちょっと聞きたいことあるんだけどさ」
『……なんだ、ラフィク』
　通信用魔道具から、かっすかすのハスキーボイスが響く。普段は艶のあるいい声してるんだけど、こりゃ研究でまた何徹かしたかな。ただ研究に没頭してるときや、研究が一区切りついて泥のように眠ってるときは通信無視されるから、今はとりあえず大丈夫だろうと話を続ける。
「新しい附術（ふじゅつ）を開発したいんだけどね？男を強制的に萎えさせる魔術とかなんか思いつかない？」
『…………何を言ってるんだお前は』
　タップリの沈黙の後、表情が推察できない淡々とした声色と共に、でっかいため息が聞こえてきた。




　私がいま通信している相手について説明…する前に、ちょっと前回までのおさらいをさせてもらおうかな。

・日本でゲーム好きなアラフォー会社員だった「私」が、車に轢かれて異世界転移をかます。
・剣と魔法ありの、中世ヨーロッパっぽい雰囲気の異世界に転移。
・何故か転移時に年齢が半分に若返り。理由は不明。
・言語理解チートあり。文字チートはなし。
・物に魔術効果を付与できる「附術（ふじゅつ）」という、ある意味チート能力あり。
・生きるためお金を稼ぐため、転移時に最初に出会った傭兵団に所属。様々な任務をこなすうちに、世界規模の脅威『ボナ・ノクテム』が発生する。
・任務中に仲良くなった仲間たちと共に、『ボナ・ノクテム』の元凶である『対するもの（コントラ）』と呼ばれる敵対勢力と戦い、退ける。
・とりあえず脅威は去って１年。そこそこ穏やかに過ごしていた所で、なんやかやあって、同じ傭兵団のイケメン２人に求婚される。
・脅さｒ…押し切られて、２人と結婚を決意。ここ複婚ＯＫな国だったよビックリ。でも諸事情あってすぐに婚姻手続きができなかったため、婚約状態で現在同棲中。←イマココ！

　だいたいこんな感じ。前章でイケメン２人から求婚されたすったもんだを語ってるので、気になる方はそちらをご参照ください。
　さて、話を戻すけれども。私が今話している相手は、現在サークルオブメイジという魔術師団体の塔長を勤める男だ。名前はイスハーク。ちなみに塔自体は５つあるので、完全なるトップというわけではないのだけれど。
　この世界における魔術ってのはエルフという種族が使える固有の能力で、別種族で魔術が使える者はどこかでエルフの血が入っていると言われている。なんかノドに声帯とは別に、エルフだけが持つ魔術を紡ぐための器官…『エルフ喉』って言うものがあるとかなんとか聞いたことがあるけど、詳しくは忘れた。魔術は発動に時間がかかるものの威力がすさまじく、戦争における手榴弾とかロケットランチャーのような高火力武器に等しい扱いを受けている。中にはウチの婚約者たちみたいに、魔術をかいくぐって魔術師に肉薄して物理で倒しちゃうトンデモ戦士もいるんだけど、通常は戦力で敵わないよね。　
　また、この世界では一部の治癒術を除いて『生命を編む術（テクスヴィタ）』は禁術扱いになっているんだけど、それは過去にとあるエルフが起こした大事件が発端になっているらしい。そのためエルフ喉が発現した者は強制的にサークルオブメイジに所属し、魔術について学び知識を深めると共に、『高火力の攻撃術（マグナフォティス）』や『生命を編む術（テクスヴィタ）』の使用を制限する誓約を行うのだそうだ。
　そして私が使う附術（ふじゅつ）は、魔術を使用できない別種族…主に私たちヒューマン種が、なんとか魔術を使えないかと研究して産まれた技術だそうだ。エルフ以外でも魔力自体は持っていて、その魔力を篭めるか魔石とかの魔力を含んだ鉱物で補うかして、物体に術式を刻むことで魔術と同じ効果を発動できるのだ。
　生粋のエルフ種の魔術師からしたら『下等種族の悪あがき』って感じの見方らしいんだけど、そこはホラ私、異世界転移のチート能力者だから。ここで得た知識とは別に、元の世界のゲームや小説のファンタジー知識を総動員して附術の効力爆上げしちゃったのよね。
　そこで魔道具の技師でもあり、附術に興味を持っていたイスと意気投合して、一緒に色んな附術を開発した。附術は魔術が基礎になってるんだけど、魔術ってめちゃくちゃ複雑だから、新しい術式とか作ろうとすると魔術師との協力が不可欠なのよね。
　そしてイスたち魔道具師も、今までは魔力をエネルギー源として作動するからくり道具を作ってたんだけど、それだと複雑な機能が組み込めないから限界を感じていた。だけど道具そのものに魔術効果を付与できる附術を組み込むことで、魔道具を一気に進化させることができた。
　そうして持ちつ持たれつの関係を築きつつ、色んな魔道具を一緒に開発して、その仲が現在も続いているというわけだ。イスはエルフとヒューマンとのハーフだからか、附術に偏見もなかったみたいだし、ヒューマン種だからって見下して来ることもなかったしね。
　以前『対するもの（コントラ）』と戦った時も、もちろん協力してくれた。『対するもの（コントラ）の王』（メンドイので次回から魔王と呼びます）との最終決戦の時は、イスが作ってくれた魔術式と魔道具にどれだけ助けられたかわからない。そのため彼も『現代の英雄』の一人に数えられている。あ、あと我が傭兵団が誇る戦士ビョルン＆ロルフも実は『現代の英雄』に名を連ねてますよ！私の名声が無闇に高くなりすぎちゃったせいで目立たないけど、最終決戦では『対するもの（コントラ）』最強と呼ばれる『黒騎士』をたった２人で押さえこんだんだからね！…あれ、人外だったかな？私の婚約者たちは。