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北欧系戦士兄弟編

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 おねだりすると、ビョルンは私を軽々と抱き上げてベッドへエスコートしてくれた。
 ベッドの上には肘枕をして寝転がり、白けた目をこちらに向けたロルフがいて。その隣に、優しく降ろされる。
「なんだ、元サヤか」
「なによ、悪い?」
「悪かねぇけどよ。独占できるもんなら、したかったな」
 あらま、可愛いこと言って。ちょっと拗ねたような顔をするロルフに、触れるだけのキスを贈る。
「アンタと私じゃ、破綻するだけよ。ビョルンがいてくれてやっと成立するの」
 自分しかないロルフと、自分が大切な私。どう考えたって相性が悪いわよ。
「私はまだ譲ったり諦めたりしてそれなりに上手くやっていける方だと思ってるけど、でも相手にもそれを求めるよ。アンタは無理でしょ?」
「………」
 図星だろうけど、答えたくないロルフは黙り込む。でも以前だと「ったりめーだろ何で俺が譲らにゃなんねぇんだ!」って即答してた気がするから、多少は成長したのかな。
「…譲れるようになりたいのか?」
 私の隣で、ベッドサイドに腰を掛けたビョルンが声を掛ける。え、ウソでしょ?私ロルフからは一生「譲る」って言葉は出てこないもんだと思ってたけど。
「譲れるようにっつーか…」
 眉間に皺を寄せて考える仕草をしたあと、チラッとこちらを見る。うん?
「…死ぬまでにゃあ、お前に『好きだ』って言わせてぇし…」
 モゴモゴとそんなことを言って、プイッと目を背けるロルフ。え、何これ。さっき私がビョルンに「大好き」って言ったから?自分も言われたいってこと?「怒らず耐えて~」なんて言ったから、自分もそうしなきゃって思ったってこと?何それ可愛いかよ。
「あー、えっと、見た目は好きよ?」
「それじゃねーし」
「いひゃい、いひゃい」
 ぶにぃ、と頬を引っ張られる。
「死ぬまでにか、お前にしちゃあ気の長い話だな」
「うるせー」
 拗ねてベッドに突っ伏すロルフを、ビョルンが優しい目で見る。お兄ちゃんだねぇ。
「お前は少し、我慢を覚えないとな。腹が立つことを言われても、グッと堪えてだな」
「それができりゃあ苦労しねぇよ」
 瞬間湯沸かし器だもんねぇ。
「まぁ、やり方は人それぞれよ。無視するとか、その場を離れるとか、何か別のもので気を逸らすとか、どうしても衝動が我慢できないなら物に当たるとか、ギリギリ寸止めで許してやるとか」
「それもどうかと思うが…」
「いきなりブン殴るよりマシじゃない?完璧にやろうとして、失敗して嫌になっちゃったら意味ないじゃない。段階を踏んで、成功体験を重ねた方がいいと思うけど。あっ、ロルフの腕なら、寸止めと威圧で大概の相手は制圧できるでしょ?そうしたらまずは平和的解決の括りでよくない?」
「それじゃあ済まない相手もいるだろう」
「相手が権力者だったらってこと?そんなん一般ピーポーに絡む方が悪いでしょ!ウチのロルフは売られた喧嘩は即買いだけど、絡まれない限り自分からちょっかいは出さない子です!相手がその気ならこっちも権力総動員して揉み消しちゃうぞ!」
「あー、それは、頼もしいな…」
 ロルフは返事をしないけど、聞いてはいると思う。微かに「ふっ」って笑う声が聞こえて、肩が揺れたから。
「まぁ、いろいろ考えて試してみることね。何が嫌か、どういうことが許せないのか。どうすれば気がまぎれるのか、何があれば気分が上がるのか。自分自身を識るのがいいと思う。病気や怪我だってそうでしょ?治したかったら、まず病識を持つことだって言うじゃない。自分の性質を変えたい時だって、同じようなものかもよ?」
 素人考えで申し訳ないけれども。でも敵と戦う時だって、相手の情報があるのとないのじゃ難易度が桁違いだし。私みたいな支援職の人間が傭兵団の幹部になって団長にまでなれたのだって、事務経理系統を整えて経営を立て直したのと、行き当たりばったり状態だった実務部隊の任務に、事務方が事前に情報収拾して整理して提供することで任務成功率を上げたってのが大きいみたいだし。そのくらい、識るってことは大事だと思う。
 ロルフの後頭部を撫でる。丸っとしていてキレイな形をしている。すごいな、こんなところまでイケメンとは…!形を確かめるように何回も撫でる。
「ロルフが変わりたいっていうなら、協力するよ。これから一生一緒にいるんだもの。いい方に変わってくれると嬉しい。ね、ビョルン」
「あぁ、そうだな。3人で協力してやっていこう。俺たちは家族になるんだからな」
「そうだよ、ロルフ。ちょっとずつ、できることからやっていこうね。できた自分は褒めてあげて。でもできなかった自分も、許してあげてね。やめないってことが、大事なんだよ」
 ロルフが顔を伏せたまま上体を起こして、腰に腕を回してお腹にぐりっと頭を押し付けてきた。ぐふぅ。
「…できたらお前が褒めて、できなかったらお前が慰めてくれ。…そうしたら、やってける気がする」
 何よもう、可愛すぎるんだけど。
「いいよ。いつでも甘えに来てね」
 お腹に顔を埋めたまま、ロルフが頷く。今はまだわからないけど、この調子じゃすぐに好きになってしまいそう。今こうして頭を撫でているだけで、愛しさが込み上げて来るんだもの。
 そうやって頭を撫でて穏やかな雰囲気になっていたけれど、お腹にチクっとした刺激を感じる。
「…んッ、ちょっと、ロルフ…?!」
 ちゅ、ちゅ、とリップ音が聞こえてきて、ロルフお前ぇ!雰囲気ぶち壊しにきやがった!
「ちょっと待ってって…ふぎゃあ!」
 グチュっとおへそに舌を突っ込まれる。なんか変な刺激で悲鳴をあげてしまう。そのまま押されて、ベッドに仰向けに倒れる。ロルフが覆い被さってきた…ところでビョルンのストップが入った。
「ロルフ、待て!」
 ビョルン、救いの神よ!
「さすがに俺の番だぞ」
 あああそうだった!どっちにしろ始まるんですねわかりました!
「チッ、わかってるよ…でも参加する分にゃいいだろ?」
 えっ、参加しちゃうの?
「…まぁ、仕方ないな」
 仕方ないの?!

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