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北欧系戦士兄弟編
19※
しおりを挟む私の声のトーンが変わったことに気づいたのか、ビョルンの瞳が戸惑うように揺れる。察しがいいね。
本題は、これからだよ。
少しの沈黙。私は手を外して、ビョルンと目を合わせて、彼の不安を煽ってから、ゆっくり口を開いた。
「私の護身装具。全部外したよね。なんで?」
「護身装具?あ、ああ…」
ビョルンはそこを突かれると思ってなかったのか、口籠る。
「アレがないと私はただの非力な女なの。知ってるでしょ?どうして私から抵抗する力を奪ったの?」
「……」
ビョルンが答えられないでいる。わかるよ、責められると思考がストップして、なかなか反論ってできないよね。だからこそ畳みかける。
「ロルフが本懐を遂げられるように?私がそれを邪魔しないように?そうね、だとしたら正解だわ。抵抗もできずに、中にたっぷり出されたわよ。見る?」
ビョルンが眉間に深く皺を刻んで、首を振る。さすがに見たくないか。
「…あなたの思惑は、わかってるつもりだよ」
ロルフは拒否されるのがものすごく苦手だ。そして自分の感情を制御することも難しい。ビョルンがロルフに接するとき、いつも拒否しないような言葉を掛けて、うまいこと誘導するやり方には感心する。ロルフが中に出すって宣言してた時、私がそれを拒否してた時、どうすれば丸く納まるかって考えたんだよね。ロルフが興奮した状態の時に、私が全力で拒否したら?護身用の指輪で攻撃したら?攻撃は大して効かないだろうけど、ロルフがブチギレて私に危害を加える可能性がある。だけど私の抵抗力を完全に削いでしまえば?拒否したとしても簡単に抑え込まれて、ロルフは自分の思う通りに私を犯すことができる。
「それが一番、平和に納まると思ったんでしょ?」
私は諦めが早いから。切り替えも早いから。だからロルフにいいようにされてヘソを曲げても、後からヨシヨシしとけばすぐにご機嫌になるとでも思った?
「待ってくれ、シャーラ!俺は…」
「言い訳はいらない。今は私の話だけ聞いて?」
あのね、私にも譲れないもんがあるのよ。
「私ね、父親に向いてない男の子供を産む気はないの。だからロルフの子供を産む気はなかったの。だから中に出して欲しくなかったの。そりゃあナマでやってる以上、完全に避妊なんてできないわよ。でもそれで万が一出来たのがロルフの子供だったら、それによって子供に被害が出るなら、最悪あんた達と離婚して一人で子供育てていこうと思ってたの。離婚しないって言ったけど、子供が関わったら別だから。幸い経済力は並みの男よりあるしね。わかる?あんた達にわかる?私はそんくらい、ろくでもない男を自分の子供の父親にしたくないのよ!!」
離婚って言葉にビョルンがビクッと反応する。やっと私の怒りが深刻だって理解できたのかもしれない。遅いわこの野郎!
「でもろくでもないって言ってごめんね、ロルフ!」
「いいよ。その通りだ」
「んッ?!」
そう言って腰を動かして、私の中の存在を思い出させる。そういえばロルフさんまだ入ってたね!ホントろくでなしだわこいつ。いっそ清々しい。それでも自覚してるだけマシなのか?
「シャーラ、俺は、俺が父親になるつもりだったんだ。ロルフとの子でも、俺との子でも、俺が父親になればいいと…」
「へぇ、複婚ってそういうもんなの?誰との子でも愛しますって?すごいわねぇ、私には理解できない世界だわ」
ホント、理想を押し付けて来るよね、ビョルンは!それが後になってだいたい正しいってわかるから、また腹立つんだけど。
「確かに、あなたが導いた未来が、一番マシで正しいんだと思う。今までだってそうだったし。ロルフとも話して、案外愛情とか優しさも持ってるって思えたし。私が思ってるよりは、ちゃんとした家庭を築けるのかもね」
「シャーラ…すまない、俺は…」
「でもダメ、許さない。貴方は私を蔑ろにしたの」
彼が伸ばした手を払う。許されると思った?
「私はそりゃぁ、ご大層な人間じゃないよ。今は附術も制限かかっちゃったから、あなたたちみたいに戦えるわけじゃないし。見た目も平凡だし、正直釣り合わないんじゃない?って思うけど。でも私ね、自分に満足してる人間なの。やれることはやってきたし、可能な限り逃げずに全力で取り組んできた自分をよくやった、偉い!って思ってるし。自分のことけっこう好きなのよね。だからね、私は私を蔑ろにする人は、許せないの。結果的によかったとかは関係ないのよ。あなたが私をテキトーに扱って、地雷を踏み抜いたことに腹が立ってしょうがないのよ!」
「シャーラ、シャーラ!俺が悪かった。何もかも全て、俺が悪い。これからは、絶対にこんなことをしない。だからどうか、今回だけは俺を許してくれ!」
ビョルンが必死に言い募って来る。イケメンってこんな風に取り乱しててもイケメンなのね。でも許さないよ、ごめんね?私は今、あなたを傷つけたくて堪らないの。
「ロルフ、私につきあって」
「仰せのままに、俺の女王」
ビョルンの目の前で、私はゆっくり足を開く。AVみたいに、ロルフと繋がっているところがよく見えるように。後で思い返したら、恥ずかしさで死にたくなるかも。でも怒りが羞恥を凌駕して、今は気にならない。
「ロルフ。ビョルンは私とあなたが仲良くするのをお望みよ。見せつけてあげましょ?」
「ああ、もちろんだとも、シャーラ」
「ビョルン、床に座って手を膝に置いて。そこから動いちゃダメよ?」
私はビョルンに向けて、うっそりと笑った。
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