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北欧系戦士兄弟編
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「わかった。する」
「おっ」
「あ?」
「結婚。ビョルンとロルフと、する」
観念して、私は答えた。
もーなんか、いろいろ納得はできないんだけど!ロルフの目つきが相当ヤバかったからね、断ったら無事じゃすまなかったと思われる。Marry or DieならMarryを選ぶよ!
私の答えを聞いたビョルンはホッとしたような顔をし、ロルフの目から殺気が晴れた。
「よし!よーし!言ったな?取り消しは効かねぇぞ?撤回したらブッ殺すぞ?わかってんだろーな!」
「わかってるよ。私は約定を違えないのが信条なの。知ってるでしょ?」
ロルフの顔にパッと喜色が浮かぶ。こういう無邪気な喜び方するから、憎めないのよね。
「…ッそうだな!ああ、もちろん知ってる!離婚もナシだからな?いいな!」
「ハイハイ、わかってるって。だからナイフを仕舞ってくれるかしら、旦那様?」
そう呼びかければ、わずかに惚けた顔をしたあと、ロルフの目にジワッと色気が滲んだ。
「…もちろんだ、シャーラ」
そう言って、ナイフの刃先をツゥっとあごまで滑らせた。
皮膚が切れるか切れないかの、ギリギリの刺激。さらにおへその下あたりに硬いものをグッと押し付けられ、お腹の奥がゾクゾクする。
「ん…ッ」
思わず声が漏れてしまい、ロルフはニヤニヤしながらナイフを仕舞い、私の上から降りた。
「おい秘書!結婚するにゃ何すりゃいいんだ?」
「わぁビックリ。ご存知ないのに結婚すると仰ったんです?」
「うるせぇ、さっさと教えろ!」
ロルフがシウと話し始めたのを見て、ふぅっと一息ついた。首を触って血が出てないことを確かめる。
あーーー、疲れた。なんか負けた気がするし。『んッ』ってなんだよ、くそ。
「大丈夫か?」
ビョルンが差し出した手を取り、身を起こす。
「大丈夫に見えますぅ?」
「ああ、悪かったな。だがよかった。今回ばかりはロルフを殺らにゃならんかと肝を冷やした」
それに煽りすぎだぞ、と注意を受けた。
まぁ確かにね、ロルフの想いに気付きながら、追い詰めた自覚はある。その結果がコレなんだから、自業自得ってものだ。もしあの時、ロルフの想いを否定していたら?彼は激情を抑えられずに、ナイフを引こうとしただろう。そうしたらビョルンは全力で止めただろうし、そうなればロルフも無事ではすまなかっただろう。
ビョルンはロルフの想いを否定せずに、私が了承するように話を持っていってくれた。それでなんとか、この場が丸く収まったのだ。
「ビョルンはよかったわけ?こんな急に結婚が…3人で決まって」
「恋人期間を楽しめないのは残念だな。だが、いずれはこうなることを望んでいた。だから嬉しいよ」
そうか、ビョルンは複婚制度が当たり前の世界の人だものね。妻に自分以外の夫がいて、嫉妬とか感じないものなのかな?不思議な感覚。
首をひねっていると、ビョルンが急に私の前に跪いた。
「な、なに?」
「すまない、俺からのプロポーズがまだだったな」
「えっと、そうだっけ?」
なんかもう色々お腹いっぱいなんですけど。
だけど遠慮しようとするこちらにはお構いなしに、ビョルンは私の左手を優しく取った。
「シャーラ、俺の唯一。お前はとても魅力的だから、他にも求婚者は絶えないだろう。それでも、お前の夫となる栄誉にあずからせてほしい」
深く青い目でこちらを見つめながら、ちゅ、と薬指に口付ける。
ひぃぃ、何コレさっきと違ってめっちゃまともなプロポーズなんだけど!嬉しいやら恥ずかしいやらで顔がカァっと赤くなり、右手で口を押さえる。
「愛してるよ、俺の女神。結婚してくれ」
するりと返されて、今度は手のひら。懇願するように、ちゅ、ちゅ、と口付けられる。最後に薬指の腹に唇を寄せて。
ちろり、熱い感触。
舐められた…ッ!
「んぅ…ッ」
口を押さえていたのに、声が漏れ出てしまう。腰がゾクゾクして、足に力が入らなくて、崩れ落ちそうになったところをビョルンに抱き寄せられる。跪いたまま器用に抱えられ、逃げる術を失う。おでこをくっつけてきて、くすんだ金色が顔にかかる。青い、青い瞳に、吸い込まれてしまいそう。
「返事を聞かせてくれ、シャーラ」
「ビョルン…」
この世界に来た時。気がついたら森の中にいて、魔獣に襲われたところで助け出してくれたのがビョルンだった。任務中なのに一緒に連れて行ってくれて、身寄りがないことを知ると前団長に交渉して、傭兵団の雑用係として雇ってもらえることになった。そこからふとしたきっかけで自分に附術の才能があることに気づいて、みんなと一緒に任務をこなしたり戦ったりできるようになって。紆余曲折あって、今じゃ傭兵団の団長にまでなっちゃったんだけど…。
今までずっと、この逞しい腕が支えてくれていた。釣り合わない、いつかきっと私じゃない素敵な女性の手を取るのだろうと、気持ちを育てないようにしてきたけれど。こんなふうに差し出されてしまったら…。
この手を取らない選択肢なんて、ない。
「うん、結婚、しよう?私もビョルンが、好きよ」
心から微笑んで、答える。
ビョルンの大きな手が私の頬に触れ、知らぬうちに零れた涙をその唇で吸い。
ふふ、ヒゲが当たってくすぐったい。
彼もまた、少し泣きそうな顔で笑ったあと。深く優しい、口づけをくれた。
「おっ」
「あ?」
「結婚。ビョルンとロルフと、する」
観念して、私は答えた。
もーなんか、いろいろ納得はできないんだけど!ロルフの目つきが相当ヤバかったからね、断ったら無事じゃすまなかったと思われる。Marry or DieならMarryを選ぶよ!
私の答えを聞いたビョルンはホッとしたような顔をし、ロルフの目から殺気が晴れた。
「よし!よーし!言ったな?取り消しは効かねぇぞ?撤回したらブッ殺すぞ?わかってんだろーな!」
「わかってるよ。私は約定を違えないのが信条なの。知ってるでしょ?」
ロルフの顔にパッと喜色が浮かぶ。こういう無邪気な喜び方するから、憎めないのよね。
「…ッそうだな!ああ、もちろん知ってる!離婚もナシだからな?いいな!」
「ハイハイ、わかってるって。だからナイフを仕舞ってくれるかしら、旦那様?」
そう呼びかければ、わずかに惚けた顔をしたあと、ロルフの目にジワッと色気が滲んだ。
「…もちろんだ、シャーラ」
そう言って、ナイフの刃先をツゥっとあごまで滑らせた。
皮膚が切れるか切れないかの、ギリギリの刺激。さらにおへその下あたりに硬いものをグッと押し付けられ、お腹の奥がゾクゾクする。
「ん…ッ」
思わず声が漏れてしまい、ロルフはニヤニヤしながらナイフを仕舞い、私の上から降りた。
「おい秘書!結婚するにゃ何すりゃいいんだ?」
「わぁビックリ。ご存知ないのに結婚すると仰ったんです?」
「うるせぇ、さっさと教えろ!」
ロルフがシウと話し始めたのを見て、ふぅっと一息ついた。首を触って血が出てないことを確かめる。
あーーー、疲れた。なんか負けた気がするし。『んッ』ってなんだよ、くそ。
「大丈夫か?」
ビョルンが差し出した手を取り、身を起こす。
「大丈夫に見えますぅ?」
「ああ、悪かったな。だがよかった。今回ばかりはロルフを殺らにゃならんかと肝を冷やした」
それに煽りすぎだぞ、と注意を受けた。
まぁ確かにね、ロルフの想いに気付きながら、追い詰めた自覚はある。その結果がコレなんだから、自業自得ってものだ。もしあの時、ロルフの想いを否定していたら?彼は激情を抑えられずに、ナイフを引こうとしただろう。そうしたらビョルンは全力で止めただろうし、そうなればロルフも無事ではすまなかっただろう。
ビョルンはロルフの想いを否定せずに、私が了承するように話を持っていってくれた。それでなんとか、この場が丸く収まったのだ。
「ビョルンはよかったわけ?こんな急に結婚が…3人で決まって」
「恋人期間を楽しめないのは残念だな。だが、いずれはこうなることを望んでいた。だから嬉しいよ」
そうか、ビョルンは複婚制度が当たり前の世界の人だものね。妻に自分以外の夫がいて、嫉妬とか感じないものなのかな?不思議な感覚。
首をひねっていると、ビョルンが急に私の前に跪いた。
「な、なに?」
「すまない、俺からのプロポーズがまだだったな」
「えっと、そうだっけ?」
なんかもう色々お腹いっぱいなんですけど。
だけど遠慮しようとするこちらにはお構いなしに、ビョルンは私の左手を優しく取った。
「シャーラ、俺の唯一。お前はとても魅力的だから、他にも求婚者は絶えないだろう。それでも、お前の夫となる栄誉にあずからせてほしい」
深く青い目でこちらを見つめながら、ちゅ、と薬指に口付ける。
ひぃぃ、何コレさっきと違ってめっちゃまともなプロポーズなんだけど!嬉しいやら恥ずかしいやらで顔がカァっと赤くなり、右手で口を押さえる。
「愛してるよ、俺の女神。結婚してくれ」
するりと返されて、今度は手のひら。懇願するように、ちゅ、ちゅ、と口付けられる。最後に薬指の腹に唇を寄せて。
ちろり、熱い感触。
舐められた…ッ!
「んぅ…ッ」
口を押さえていたのに、声が漏れ出てしまう。腰がゾクゾクして、足に力が入らなくて、崩れ落ちそうになったところをビョルンに抱き寄せられる。跪いたまま器用に抱えられ、逃げる術を失う。おでこをくっつけてきて、くすんだ金色が顔にかかる。青い、青い瞳に、吸い込まれてしまいそう。
「返事を聞かせてくれ、シャーラ」
「ビョルン…」
この世界に来た時。気がついたら森の中にいて、魔獣に襲われたところで助け出してくれたのがビョルンだった。任務中なのに一緒に連れて行ってくれて、身寄りがないことを知ると前団長に交渉して、傭兵団の雑用係として雇ってもらえることになった。そこからふとしたきっかけで自分に附術の才能があることに気づいて、みんなと一緒に任務をこなしたり戦ったりできるようになって。紆余曲折あって、今じゃ傭兵団の団長にまでなっちゃったんだけど…。
今までずっと、この逞しい腕が支えてくれていた。釣り合わない、いつかきっと私じゃない素敵な女性の手を取るのだろうと、気持ちを育てないようにしてきたけれど。こんなふうに差し出されてしまったら…。
この手を取らない選択肢なんて、ない。
「うん、結婚、しよう?私もビョルンが、好きよ」
心から微笑んで、答える。
ビョルンの大きな手が私の頬に触れ、知らぬうちに零れた涙をその唇で吸い。
ふふ、ヒゲが当たってくすぐったい。
彼もまた、少し泣きそうな顔で笑ったあと。深く優しい、口づけをくれた。
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