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第11話 幕間 一華の憂鬱
しおりを挟む一華視点です。
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011
やはりな。
私の目に狂いはなかった。
最後に私の前に立ちはだかるのはやはり詩だ。
日頃何を考えているのか良く解らない娘だが、ここぞと言う時に愚弟の背中を躊躇することなく蹴飛ばす手腕は見事だ。
その突発的な我が身を振り返らない献身は末恐ろしい。
とても芹香の妹とは思えんな。
だが真二を譲るわけにはいかん。
初めて会った時はまだ小学生だった。
臆病な芹香と違って物怖じしない詩は真二と友也を引き連れて爆走するガキ大将みたいな奴だと覚えている。
思春期にさしかかった真二が姉離れを始めて寂しい思いもしたが、思えばその寂しさの大半は横に並ぶ詩に対する焦燥めいた嫉妬だったというわけだ。
同じ歳に生まれたというアドバンテージは覆す事が出来ない。
同じ家に生まれついた私と真二は結ばれることもない。
姉弟という立場に甘んじるしかない関係に忸怩たる思いを寄せた私を嘲笑うかのように詩は真二と友也と仲良くなった。
ふん。この頃から目をつけておいて正解だったな。
詩が友也と付き合いを始めたというのも驚いたが、そんなものはどうでもいい。
あの突発的献身力を持つ詩のことだ何か裏があってのことだというのは想定内だからな。
業腹なのは、その程度も見抜けずにメソメソと異世界転生などと喚く愚弟の有り様だ。
まったく、芹香なんぞに任せた自分が腹立たしい。
そうだ。異世界転生、いや転移か?
ふん。そんな格好のいいものではあるまい。
ただの拉致監禁からの強制脱出ゲームへの参加とはな。
どこのどいつが謀を巡らせたのか知らんがいずれ後悔はさせてやる。
そんな憤慨もルールを聞くまでだった。
間違いない。
ここは勇気ある一歩を踏み出せなくて迂回をした私に神が与えた第二ステージだ。
この世界ではつまらない世間体などを気にしなくていい。
緊急避難的に真二と超えられなかった一線を飛び越えることが出来る。
ここでの関係は、元の世界に戻っても必ず影響を与えるだろう。
神が私に勇気を与えたのだ。
だからこそ、詩にその座を譲り渡すわけにはいかん。
私の元から離れた真二と結ばれないのならば相手は誰でも同じだと両親の勧める見合い話で出会った良人は、ゲンコツを落とした時のリアクションが年上の癖にやけに真二に似ている男だった。
こいつならいずれ私の心も癒すだろう。
婿入りという条件も飲んだので、別に迷うことなく結婚を決めた。
いい出会いだった。
巡り合わせが悪く、家を出て性悪芹香に部屋を乗っ取られたのは計算外だが、後数年は愛した弟の成長を見られることで満足しよう、その矢先の凶事だ。
ここでは弟とセックスすることを非難されない。
このお膳立てで操を守るなどという同じ過ちを犯すものか。
私は一歩を踏み出した。
今、眼前では苦痛に顔を歪めた詩が歯を食い縛っている。
詩も一歩を踏み出したのだ。
真二によって女にされた。
しかも自ら腰を打ち付けて、だ。
元の世界に戻ることが前提の、真二と友也の関係を悪化させないために、自身で膜を食い破らせた。
実に天晴れだ。
自分が売女と謗られようとも意にも介さない。
精々気にするのは、友也と別れた詩を思いやって、真二がやむを得ずに身を引くことだけ。
納得ずくで詩の元から去るならそれでいい。理不尽に心を殺さないかとだけを心配する。
こいつの行動の源には真二がいる。
真二の安寧と癒しがある。
例え真二に嫌われようとも構わないのだろうな。
私にはわかる。
何故なら私も同じだからだ。
真二が私と禁断の道を歩むと望めばそれを叶えるために全力で協力をした。
残念ながら、真二がそれを望まなかった。ただ、それだけのこと。
真二が詩の意図に気づいて自らの腰を稚拙にも律動させ始める。
うむ。さすがに我が弟だ。
痛みに声も上げない詩の両目からは涙が流れている。少しだけ、芹香が私にゲンコツを落とされた時のような色が気になるが、まあ、いい。
詩が中で射精を受けている。
忌々しい娘だ。
あの、濃いモノを全て自分の物としてうっすらと口元だけで笑っている。
真二もどうやら答に行き着いたらしい。
獣のように腰を振り、詩をベッドに押し付けてペニスで蹂躙を始めた。
白い背中に歯形を残して、言い訳など出来ないようにキスマークをつけ始めている。
そうだ、愚弟。
この世界の優しさとはそうあるべきだ。
生きるためだとか仕方なかっただとかと友也に言い訳を労するのではなく、お前の彼女が美味しそうだったから丁度良いので頂いたさーせん気持ちよくてたっぷりと中に出したぜ親友と嘲笑うのが正解だ。
お前の小さな義姉がそうしたようにな。
戻ったら友也にこう言うつもりだろう。
真二のチンポで処女を破らせたんだ。しっかり腰を振って中に精液を吸い込んだの。あの時の真二の顔は見物で本当友也にも見せてあげたかったよ。
それこそが、真二と友也の友情を救う唯一の方法なのだから。
自分を殺すことで。
武者震いが起こる。
詩め、こいつは本物だ。
私の対抗馬となる存在だ。
真二よ、しっかりと受け取っているのか?
その気持ち悪さは姉以上だと知れ!
だからこそ、絶対に負けん。
条件が同じなどと眠たいことを言うなよ詩。
お前が真二の子供を孕む重さと、私のそれとは違うと知れよ?
なにしろ、私と真二は実の血のつながりのある姉弟なのだからな。
私から真二を奪いたくばそれ以上の禁忌を探すことだ。
まあ、真二が望むのなら付き合ってやる。
弟の我儘のひとつも聞いてやるのも姉として一興だからな。
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