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第26話 13日目昼過ぎ 復活しました

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 ぬるぬる、ぬるぬる、ローションまみれで張りのある柔肌が体中を擦っている。
 緩やかにベタつく粘液が密着して離れる度にニチャニチャというふしだらな音が響く。

 こちらから頼み込んで服を着てもらったので、接触しているのは肉付きの良いふとももと、その付け根にある女性の秘所。
 肌に触れるとぞくぞくする群を抜いたやわらかい感触に身悶えが止まらない。

「治療を受けるのに服を着ろだなんて、変わった子よね!」

 あなた方だけには言われたくなり台詞NO1だけど、シスターズにとっては医者に白衣を脱いでとお願いしたと同義だと思えば納得かな。

 スケスケのシスター服が上半身の可愛い女子が背徳的にまとわりついてくるのがいいんです!
 シスター服が奏でる清楚さを裏切る低俗なシースルー。
 そのギャップだけで洒落にならない興奮なんです。

 潮を噴きかけられるという丸出し女神様のお膝元によく似合うサバトめいた儀式のあとは、お湯で身体を清められてからのローションマッサージのお時間だった。

 丸出しでポロリと溢れる格好もいいけれど、メッシュで透けてローション付着で更に透けたおっぱいがチャーミングにふるふる震える視覚情報だけで、身体が癒やされていくのを強く感じる。いえ滾っていきます。

 マッサージの間にも、何度かちびっ子シスターから口移しで薬品が投与される。

「ん……ちゅ……」

 苦いおくすりの後に甘い唾液が送り込まれ、レロレロと口内を悩殺してくる淫らな甘い舌で口直しがあるのがちょっぴり嬉しい。我慢できずに舌を絡めるて吸い付くと、そういうんじゃないわよ! というふうに睨まれるけど拒絶はなくて合わせてくれる。
 このちびっこシスター、本当にもって帰りたい!

「それにしても……悪い気を祓っているというのにどんどん溜まりますねぇ」

 ガチガチになったペニスをふとももで悪戯っぽく擦りながら、長身シスターが困りましたねえと頬に手を当てた。

「神聖な治癒儀式なのよ!? 心が沈まるはずよね!?」

 半裸女体マッサージで煩悩が刺激されない漢なんて漢の風上にも置けないと思う。

「あっ、あう」

 文句を言いっぱなしで眉を釣り上げたままのちびっこシスターの腰ふり素股が気持ち良すぎて、びゅるりと射精をしてしまった。
 ペニスの先からドクドク噴き出す精液がお腹の上に溜まっていく。

「……あらあら、悪い気はどんどん出してくださいね」
「……ちょっと! 硬いままなんだけど! まだ、出し足らないってこと!?」

 出したばかりのペニスに割れ目を押し付けたまま、ちびっこシスターは腰をくねらせてニュルニュルと音を立て始めた。
 出したばかりの敏感なペニスが擦られる強めの刺激に悶てしまう。

「あらあら、いけないお手手ですね」

 シスターのおっぱいに手が伸びるのは漢の性だから許してほしい。
 苦笑しながらも、上から手を当てて強くおっぱいに押しつけてくれる聖母のような長身シスターも是非お持ち帰り対象にしてほしいです。

「狭間殿! ……ここにいたのか、随分と探したぞ」
「え……」

 突然、金髪を振り乱した白い鎧姿の女性が血相を変えて部屋に入ってきた。
 破廉恥な関係とか全裸の身体を隠したいけど身動きがとれなくて焦ってしまう。
 青い瞳を丸くして裸で組んず解れつの僕たちを見ているのは、王女殿下の護衛をしている女騎士のユリさんだ。

「あらあら、騎士様でしょうか?」
「ちょっと! 今は治療中よ!」

 ちびっこシスターが叱責を飛ばす。ブレない態度に好感が持てます。
 治療中というよりプレイ中ですけど!

 それまで当たり前だったのに、第三者に見られると途端に羞恥心で顔が熱くなるから不思議です。
 知り合いで、しかも性的なおもてなしを受けた関係だから?
 どこかのメイド喫茶のメイドさんのように嫉妬で怒ったりしないよね?
 帯剣しているから背筋が凍る思いがする。

「む、治療中であったか」

 ユリさんは面目ないと素直に頭を下げた。
 これが治療に見える時点で相当おかしいと思う。
 刃傷沙汰に発展しなくて本気で安心したけどね。

「今は悪い気を祓っているところでございます、騎士様」

 祓うために気持ちよくされているのか、気持ちよくしてもらえるからペニスに悪い気が溜まるのか。マッチポンプも甚だしいけどね。

 ユリさんは眉をピクリと揺らし胡乱な表情で、ちっこいシスターのいやらしく蠢く割れ目の下で見え隠れするペニスを忌々しげに睨みつけながら呟いた。

「……時間がかかりそうだな」

 なんかすいません。

 *

 無事に20分後に処置が終了したので、教会が用意してくれた部屋でユリさんと対面する。
 質素な造りの静謐な空気が充満した部屋で着席して待機していたユリさんは、背筋がしっかりと伸びたきれいな姿勢だった。
 この綺麗な女性の初めての相手が僕なんだよね。淫らに腰を振っていたお尻とか中に出した事を思い出していると、またペニスに悪い気が溜まってきそうなので頭を振って煩悩を攪拌する。

「お待たせしました」
「む、もう身体はいいのか?」

 あの日に見せたゴミを見るような侮蔑の色は瞳に浮かんでいない。
 怪我人だから容赦してくれているのかもしれない。

「……多分」
「まったく……心許ない返事だな」

 呆れたようにユリさんは鼻を鳴らす。

 だって何が起きてこうなったのか自分でも良く分かっていないんです。
 何度か世界の言葉を担当する声の人に対話を求めたけれど、その都度エロエロシスターズに邪魔されたし。

「それで、何があった? 緑の悪魔を容易く討伐できる狭間殿が教会で治療を受けるなど緊急事態だと思うのだが?」

 そんな大したものじゃないですけどね。

「……あーその、オークにやられました」
「な……なんだと!?」

 椅子を飛ばしてユリさんが立ち上がる。
 とても静かな教会内だから音が反響したのか、部屋の外の動揺が部屋にまで伝わってくる。
 お静かに! なんて、ちびっこシスターが怒鳴り込んできそう。

「て、天災級の魔物が現れたというのか!?」

 あ、オークってそういう括りなんだ。
 地震雷台風レベル? 人の力ではどうにも出来ないから諦めるしかない対象?

「良く生還できたものだ……」

 一瞬でユリさんの頬を汗が伝うのを見て、かなり衝撃を受けていると認識できた。
 よく生還できたという件については同意します。

 そもそもどうして僕は助かったんだろう?
 可能性としては、オークに吹っ飛ばされることで相当な距離が開いたからかな。
 縄張りから大きく離れたから追ってこなかった?

 だとすれば、そんな強烈な攻撃を受けてどうしてこの程度のダメージだけで済んだんだろう?
 全身打撲とか内臓に損傷とか骨折とか、想像しただけでも大怪我になってもおかしくない。

「よく見れば、シャツもボロボロだな。死闘だったと想像できる」
「え? うん、まぁ、はい」

 いえ、ショルダータックル一発で沈みました、とは言えない。
 ボロボロになったシャツ?
 そうだ……このシャツは武器と防具のお店の若妻店員さんの唾液でベタベタになったシャツが駄目になったから新調したんだった。若妻店員さんの技巧に優れたやわらかい唇の感触がよみがえってきて身震いする。

「狭間殿がそこまで怯えるとは……」

 違うんです。エロい想像をしただけです。ごめんなさい。

 若妻店員さんの説明で、ある程度衝撃を吸収してくれる性能の話をされたっけ?
 眉唾だと思っていたけど、シャツが効果を発揮したからこの程度で済んだのか!
 すんなりと納得できてしまった。
 後でお礼を言いに行かないと。エロい気持ちがどんどん追加されていくのをなんとか抑える。

「オークって、そんなに強いの?」

 討伐料金はゴブリンの10倍。戦う暇もなく油断で吹っ飛ばされたから強さがいまいち分からない。

「強いか……うむ、強いのだろう。私も古い文献の記録でしか知らないが、緑の悪魔を遙かにしのぐ強さを持っていたらしいからな。だが、強いことも問題だが、真の恐怖はその繁殖力なのだ」

 なるほど、繁殖力。
 確かに元世界の物語で語られるオークは性欲モンスターだし。

「女の敵でレイプ魔でしたっけ……」

 女性に話すのも憚られる内容だけど。

「レイプ魔? いや、そのような話は伝わっていないぞ?」
「あれ? そうなの?」
「うむ。オークは女を無理矢理犯したりはしないらしい、女が誘ってくるまでは手を出さなかったそうだ」

 女の人が誘っちゃうんだ!
 娼館都市の女性特有の文化なのかな?
 ちょっと興奮してしまう。

「待て、何か勘違いがあるようだな」

 ユリさんに睨まれて首をすくめる。
 ごめんなさい、エロい妄想をする年頃なんです。

「オークの特殊な催淫効果のある気に当てられた女は欲情を抑え込めなくなるのだ。堕ちてしまえばその後は嬉々として奴らの子を生む苗床となるらしい」

 その辺りは元世界の設定と同じなんだ。

「オークは女をその気にさせて子を孕ませ知らぬ間に大軍団になる。オークの母体となる女の能力を色濃く受け継ぐ傾向があるらしいから、強く賢い女を狙う」

 ユリさんは眉をひそめながら語る。

「オーク1体でも厄介だというのに、それ以上の能力を持った子供が生まれるなど目も当てられない」

 それが、天災級と記録されている所以だ。
 掠れた声でそう呟いた。

「まずは場所を特定して女を近づけないようにしなければな。被害が拡大する」

 退治ではなく封鎖が基本。
 伝染病みたいな扱いだな。

「奴らの気に当てられれば女は例外なく欲情してオークを誘う。個人差はあっても抵抗は1日が限界との話だ」

 大体僕の知識の中にあるオークに似ている。
 意外と紳士なんだなとは思うけど。
 くわばらくわばら。出来るだけ近づかないようにしないとね。
 見た目が女子だからってオークに誤解されたら大変なことになる!

「あの……それより僕になにか用があったんじゃ?」

 ユリさんは、少しだけキョトンとした気の抜けた顔になった。

「む……そうであったな。オークの話で優先度を見失うところであった。すまないが狭間殿は王女殿下をお見かけにならなかっただろうか?」
「はい? いえ、ご存じの通り昨日から教会に籠もりっぱなしで目が覚めたのも2時間くらい前だから分かりません。王女殿下が来たという話も聞いてないし」
「であろうな。実は、内密に願いたいが、王女殿下が行方不明なのだ……」

 結構大変な事態だった。
 だけどユリさんは、そこまで慌てていない。

「大事件じゃないですか! でも、どうして僕にそんな機密情報を?」
「大事件か。うむ、それなのだが。殿下は時々城を抜け出して視察と称して街を徘徊する常習犯でな」

 娼館都市は身元がしっかりとした者しか入れない安全システムだから、王家の子女でも危険度は低いんだろうな。変な男に絡まれることも滅多にないだろうし。
 お転婆王女様か、ちょっぴり萌えてしまう。

「ギルドに問い合わせても情報はなく、狭間殿の居所を聞いて回っていたのだが、たまたま居合わせた衛兵に運良く会えて行幸だった」
「あの……どうして僕を探したの?」

 1回お話ししただけの関係の僕を探す意味が不明なんだけど。

「王女殿下は、狭間殿に、興味を持たれていたからな」

 そこで烈火のごとく睨まれる。はた迷惑この上ないけど、この侮蔑の視線は癖になりそう。
 王女殿下が僕に興味を持つ事情は不明だけど、こちら側に睨まれるような過失はないです。

「狭間殿を尋ねたのは、狭間殿の側に殿下が身を寄せていないかと考えたからだ」
「いえ、身に覚えはありません……というか王女殿下の失踪っていつのことですか?」
「正確な時間は不明だ」

 はい?

「恥ずかしながら今日の昼頃としかわかっていない」

 朝から治療中だったので、アリバイはバッチリだった。
 というより、どうして王女殿下の所在が確認されていないのか気になってしまう。

「今回は家出ではなく、馬車に乗って視察をしていたらしいのだが、中はメイドがなりすましていた。いつからいないのかも見当がついていない」

 あのメイドさんかー。お転婆王女に振り回される苦労がうかがえる。

「近衛を密かに動かせて目下の所捜索中なのだ」
「早く見つかると良いですね」
「うむ」

 ユリさんは頭をぐりぐりと手で押さえてから、倒してしまっていた椅子を直す。

「療養中に時間を取ってもらってすまなかった。殿下を見かけたら王城までお連れしてほしい」

 そう言い残すと、ユリさんは慌ただしく教会から立ち去った。

 *

「もう、来るんじゃないわよ! この粗忽者!」

 ちびっこシスターに激励されて教会を出る。

「さて、どうしよう」

 怪我はもう意識しても感じられないから完治したみたいだけれど、この時間から淀みの調査というのも精神的に少し辛い。
 現実問題として負傷して休養を取るというのは大切だよね。
 怪我を負っても奇跡か治癒魔法で治療されて、すぐに前線に戻される異世界事情というのは経験して、そのブラックさがよく分かってしまう。

 まずは、冒険者ギルドにオーク出現の報せに向かうことにする。
 被害が広がるのは嫌だからね。

 オークが現れた淀みの場所を冒険者ギルドに報告すると、蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
 今回は討伐していないから証拠はない。だけど、信用してもらえて何よりだ。
 王女殿下が討伐隊の依頼をしているという話が伝わっているらしく、エリーさんの話だと冒険者か兵士が到着するまで付近は立入禁止にするらしい。

 幸い、淀みからあまり離れない魔物の特性を利用すれば被害も押さえ込めるので一安心。

 少し時間は早いけど、宿でゆっくり休むことにする。
 英気を養わないといけないという理由もあるけど、後回しにしていた女神様と話し合いたいという目的もあるからね。
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