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第2部

第35話 兆し

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 035

「一番搾り、お目覚め」

 パティ姉様。僕を変な代名詞で呼ぶのはおやめください。
 朝からメイドのしきたりに従って、無表情の目覚めになった。

 まるで吸血鬼の身体になったみたいに、清々しい朝日が恨めしい。
 起きたくないでござる。
 病弱王子から脱皮して、朝起きるのが楽しくなったのも今は昔。

 憂鬱な気持ちが勝ってしまう。

 理由は確認するまでもない。
 昨日の夜に勘違い王子は大暴走して大失態。このまま部屋に引きこもって余生を過ごすのも王族という環境なら実現できるから始末が悪い。

 そっとシーツを掴むと顔まで引き上げて亀の真似。
 きっと放置されたパティ姉様は対処ができなくて目をパチクリしているに違いない。

 というか、どうして2日続きでパティ姉様がいるんだろう?

 少しだけ視界に入れたパティ姉様は、正装していた昨日と違い、ネック部分が大胆に開いたシャツの普段着姿だった。

 屈んで顔を覗き込んでいたから白い肌が露出して、桜色の可愛らしいポッチまでチラチラと見えていた。

 ん? 桜色の何?
 そっとシーツを下げる。

 目を丸くしてオロオロしていたパティ姉様が、僕の視線に気付いてジト目に変わる。涙目になっていてとっても可愛い。

 体勢は変わっていなかったので、だらんと広がったシャツの隙間もそのままで、小ぶりなパティ姉様の愛らしいおっぱいとその先端の初々しい尖りも見えていた。

 大胆に肌を晒す女性陣が多いから忘れていたけど、不意に見える胸チラはドキドキします!

 朝から神々しいおっぱいも見れたので、さて、もう一眠りしよう。
 そっとシーツで顔を隠す。
 姉様のチラ見は効果が抜群だったけど、完全回復には至らない。

「あ……」

 パティ姉様がしゅんとした声を漏らしたのでちょっぴり罪悪感。
 だけど、今日は前向き王子は臨時休業するので、またのお越しをお待ちします。

「愚弟も体調が悪い?」

 きゅっと袖を掴まれた。
 はい、主にメンタル面ですが。

 ん? も?
 僕以外にも朝からエンジンがかからない怠け者がいるってこと?

「おはようございます、パティ姉様」
「ん」

 再びシーツを下げてにっこり笑って朝の挨拶。
 落ち込むこともあるけれど、家族に無用な心配をかけるのは拒否反応を起こしてしまう。

 パティ姉様の後ろには無表情のメイドが2人。僕と視線が合うと会釈をする。
 シーラとビビィが朝から姿勢正しく、清潔なメイド服姿で控えていた。

 あれ? アンは?
 側付きメイドの朝の最初のお仕事は僕の起床の手伝いだから、他の仕事入れないはず。
 しかも朝の一番搾りを生き甲斐にしているちょっと変わったアンがいないというのも色々解せない。

「メイドは体調不良」

 僕のキョロキョロする様を看破したパティ姉様が教えてくれた。

 元気で真面目なアンが病欠?
 なにか無理でもさせたのかな?

 あーうん。
 思い当たる節がありすぎて困ります。

 考えるまでもない、あれだ。
 昨日の夜に主が最高権力者を陵辱して弄んだこと。
 アンの視点では、そうなっているはず。

 不敬の極みを起こした主を目の前にして、精神的に打ちのめされた?
 心は体とつながっているから、体調不良くらい患ってもおかしくない。

「今は静養中」

 しまったなぁ。
 これで僕が体調を崩して部屋に引きこもっているなんて、メイドネットワークに流れたらアンが無理をして復帰してしまう。

 メイドは忙しいお仕事だけど年中無休なんてブラックな環境じゃない。
 元ブラックな会社で過ごしたことがある僕がそれを許すはずがない。
 適度にお休み入れているけど、まだまだ足りなかったのかな。

 体を起こすとシーラとビビィの業務スタート。
 身支度が始まった。

 ふにゅりと柔らかい身体を当ててくるいつもの二人の感触も、昨日の出来事とかアンの容態が気になって上の空。

「……愚弟」
「なんですか、パティ姉様」
「一番搾りは?」

 丸出しのペニスはしんなり。
 つまりパティ姉様は僕の一番搾りの見学に来られたのか。または、隙あらば試飲とか?
 朝から姉が弟の精液を飲みに来るなんて滾ります。だけど、残念! 日が悪かった。

 積極的な着替えという名のセクハラめいた柔らか身体の接触程度では、僕のメンタルは回復しませんでした。

 調子が乗らない朝食の後、メイドのお部屋を静かにノックする。
 寝ている可能性があるのでそっと扉を開く。
 女子のお部屋にお邪魔します。

 後ろに控えるメイドズは、無表情だけど目はちょっぴり非難の色。
 王族に仕えているメイドは高給取りの部類だけど、個室を与えられるほどの待遇は望めない。
 だから、この部屋はアンの部屋でもあるけどシーラとビビィの部屋でもある。

 年頃の女子が主とはいえ聖域に踏み込まれるのは微妙なんだろう。
 ブライバシーは厳守します。

「中で見たことは一切外には漏らさないから安心していいよ!」
「と仰られていますけど、どうして洗濯物をジロジロと見られているのでしょう?」

 無表情でビビィが苦言。
 あわわとシーラは慌てている。

 部屋干しのメイドの下着がカラフルだったからです。女子の洗濯済みとはいえ下着をこんな目の前で観察できるなんて、王族は恵まれ過ぎていて神の怒りに触れないのかちょっと心配。

 種類は沢山。しましま模様もスケスケレースもシンプルな一品も興味深い。
 この赤い下着は誰のだろう? 匂いを嗅いだら分かるのかな?

「見ていただくのは構いませんけど、そんなに顔を近づけられると抵抗がございます」
「だめです! だめです、クロ様!」

 さすがビビィだ。
 使用済み下着を観察されたくらいでは動じない。
 この慌て様は、まさかシーラ? 清楚なお顔をしているのに下着は大胆な色とか見直しました。

「……若様?」

 顔色のあまり良くないアンが目を開けて、下着と僕の間に立つシーラとの間合いの探り合いを見て呆れていた。

「あ、ごめんねアン騒がしくて、すぐに済むから待っててね」
「すみません!」

 謝っているのか否定しているのかわからないシーラの言葉に、ビビィは無表情で溜息を着いていた。

「……何を待てばよろしいのでしょう?」

 アンの声には脱力したみたいに力がない。
 ふむ。僕が長居をすると無表情という窮屈を強いてしまう。反省反省。
 下着の観察はアンが元気になってからにしよう。

「アン、お見舞いに来たよ。どこか辛いところはない?」
「……わざわざ若様にご足労をかけてしまったことが辛うございます」

 嫌味を言うくらいは元気みたいで安心した。本音はメイドの部屋にメイドのお見舞いになど来てはいけませんという忠言だろうけど。

「熱がありそうだね、ちょっと計ってみるね?」

 そっとシーツをめくると寝間着の胸元に、恐る恐る手を入れる。

「……何をなされているのでしょうか?」
「熱を測ってるよ?」

 おっぱいで。じゃなくて腋で。
 うん。柔らかくてあったかい。平熱かな? 少しだけ熱が高いのかな?
 どっちとも言える。

「ビビィ、手伝って」

 下着を視界から死守しようとしているシーラは忙しそうなのでビビィを呼ぶ。

「すこし上だけはだけて」
「……かしこまりました」

 無表情のビビィがエプロンドレスの紐を解き、艶めかしく肩紐を滑らせて、ワンピースの胸元のボタンを外しはじめる。
 胸元を大きく開いてもらう。

「ん。それで大丈夫」

 中から現れたピンク色のブラを堪能しながら、腋に手を差し込む。
 アンの体温と比べてみる。
 やっぱり少しだけ熱っぽいかな。

「あの、若様……少し胸が張っていますので、ご容赦ください」

 用があるのは腋だけなんだけど、どうしても首元から腕を突っ込んでいるからおっぱいに手が当たってしまう。誓って言うけど他意はないんだよ?
 病気で弱ったメイドにエロ行為を働いているわけじゃないからね?

 メイドズの無表情が心に刺さる。
 普通におでこで測れば良かった。

 この世界の医療文化はお粗末なものだから風邪だって馬鹿にできない。
 アンが無理をしてしまう前に気をつけないと。

「……クロ、少し外しなさい」
「え?」

 びっくりしたぁ!
 いつの間にか背後にツバァイ母様が立っていた。
 素早く着衣の乱れを神業で直したビビィとシーラは肩を並べて待機時様態。

 どうしてツバァイ母様が、アンの部屋に?
 メイドネットワークを総べるような立ち位置を疑ってしまうツバァイ母様だから、体調不良の噂を聞きつけてやってきたの?

「若様……あの、お見舞いに来ていただきましてありがとうございました」

 アンからも退室を促された。
 少しだけ真剣な目をしたツバァイ母様の態度が気になったけど、素直に部屋を出る。
 アンの容態は心に引っかかるけど、行く所がもうひとつあるからね。

 朝食の場にいなかったもうひとり。

 扉をノックして返事を待たずに中に入ると、お花の匂いで充満していた。

「ララ姉様?」
「クロくん、いらっしゃい」

 ベッドに横になったララ姉様がにっこり笑う。
 顔色がとっても青い。だけど笑顔はいつも通りで僕を迎えてくれる。
 ララ姉様は今朝方から体調が悪くて伏せっていると、朝食の場で聞かされた。

 病弱王子の時代が長かった僕は「病気」という状態がとても苦手だ。
 それが自分でも、家族でも。

 アンが体調を崩して寝込んでいると聞いていた所に、ララ姉様の話が加わり心が淀んでいたに違いない。
 だからとても不安な顔をしていたんだと思う。

「もう、クロくん……ほら、おいで」

 何故かシーツをまくられて、ララ姉様に中に入るように促された。
 多分、姉として放置しておけないと気を使わせた。

「失礼します」
「失礼じゃないよぉ。クロくんだったらいつでも入っていいんだよ?」

 ララ姉様の優しさに癒やされます。
 ベッドに寝そべると、ララ姉様はそのままツーシを頭から被せてくる。
 少しだけ薄暗いシーツの中で、ララ姉様とおでこを当てる距離で密着。

 中は、芳醇なララ姉さまの匂いでいっぱいだった。

「ララ姉様、体調は平気なの?」
「んー頭がクラクラする。貧血だって言われた」

 貧血だって馬鹿に出来ない。何か病気の予兆じゃなければいいんだけど。
 ぎゅうと顔がララ姉様のおっぱいに押し付けられる。
 少し湿ったような肌触り。
 一晩ララ姉様の汗を吸ったネグリジュは、とっても良い匂いがして僕も頭がクラクラしてきた。

 女の人ってどうしてこんなに良い匂いがするんだろう。
 王妃様のおっぱいによく似たララ姉様のふくらみに甘えるように顔を預ける。

「あはっ、クロくんのすごく固い」

 あ、はい。本日はアンが不在という理由もあって日課の一番搾りをしていないから。
 逃げ場のないララ姉様の良い匂いで充満するツーツの中にくるまれて、おっぱいに埋もれていたから覚醒しました。

 顔を上げるとララ姉様はにこーっと笑っていた。

「ララ姉様、体調が悪いんじゃない、んぶ」

 唇が派手に押し付けられる。そのまま舌を吸われてちゅっと音がする。

「んっ……お布団の中に隠れてエッチなことするのってドキドキするね」

 いつの間にか下は途中まで脱がされていた。
 ベッドの上でシーツで隠れて姉に悪戯をされてしまう弟というシチュエーション。
 ララ姉様はネグリジュの裾をまくって露出した生足を僕のペニスに擦りつける。
 ララ姉様、体調が悪いんじゃないの? 暗がりだからはっきりとは分からないけど、明らかにさっきより顔には血の気が戻っている。

「んークラクラするなぁ」
「無理しないで、ララ姉様」
「違うよぉ、クロくんの匂いがこもってクラクラするの!」

 それはお互い様だと思う。

 服越しだけど、ララ姉様のおっぱいに顔をうずめて手コキが開始。
 敏感な先っぽは、つるつるすべすべのふとももに当てられる。

 ツーツで遮断された中、姉様と二人きりでキスしたり、おっぱいを触ったり、ペニスを擦られたり、僕の最低だった気分はドンドン上昇していく。
 ララ姉様は、回復魔法が使える神官の生まれ変わりに違いない。

 唇を貪りながら手コキをされて、我慢汁でぬるぬるになったララ姉様のふとももにぶちまけちゃうのも時間の問題。

「ララ姉様!」
「ん、いいよ、たくさん出してね」

 びゅーっと精液が飛び出す感覚。
 見えていないけど大量に吐き出した白濁液は、きっとララ姉様の脚だけじゃなくて下着もツーツも汚している。

 ツーツの中だから息苦しい中、ひとり息を荒げてララ姉様にすがりついて、情けなく射精をする。

「んー、あったかい……クロくん、元気出た?」

 とんだあべこべ。

「う……僕は体調の悪いララ姉様のお見舞いに来たんだよぉ」
「あはっ、凄いいっぱい出たみたい。手がすっごくベタベタしてる。クロくんの匂いでお姉ちゃんバカになっちゃいそう」

 聞いちゃいねえ。さすが天然浮世離れ。

「んー、だけど体調が悪くてお休みしているのに、クロくんとエッチなことをしたなんて、皆には内緒だよ?」

 なるほど。元気のない弟を放置できなかった姉気質もあるけれど、隠れてエロい事ごっこがしたかったみたい。

「んークラクラ……このままクロくんの匂いの中で寝るねー。おやすみ」

 きゅーと目を回したみたいにララ姉様は目を閉じるとすぐに寝息を立て始める。
 ララ姉様の奔放さにはいつまでたっても勝てる気がしない。

「……シーラ、ビビィ、内緒みたいだから、お願いね」

 シーツから顔を出して、控えていたメイドズに声をかける。
 ララ姉様は全く気づいていなかったけど、シーツの中の秘め事は全部側付きメイドに筒抜けでした。

「……かしこまりました」

 んー。気分は少しだけ晴れたけど、僕もこのまま一緒に寝ようっと。
 ララ姉様の体調も心配だし。

「……若様、少しこちらに身体をむけていただけますか?」

 ビビィに言われて仰向けに。シーツがそっとめくられる。

「そのままお休みになられては、汚れますので、きれいにさせていただきます」

 精液まみれのペニスをビビィが口で消毒しはじめる。
 出したばかりで敏感なペニスが痛気持ちよくて声が出ちゃう。

 ララ姉様が眠っているすぐ横で、メイドにお口ご奉仕。なにこのシチュエーション。

 シーラはララ姉様を起こさないように、脚を汚した精液を拭き取っている。
 さすがにアンみたいに口でお掃除する気概はないみたい。

 最近僕の周りはエロ度が上がっている気がする。気のせいじゃない。
 結局、もう一回、ビビィのお口の中に吐き出して、ようやくララ姉様のお見舞いは終了した。
 幸せなお昼寝に突入する。

 *

 後で聞いた話だ。

 僕がララ姉様のベッドで幸せな惰眠を貪っている間、メイドの部屋でアンとツバァイ母様が交わした会話。

「ツバイ奥様、私はなにか病なのでしょうか?」

 アンは胸に手を当てて目を伏せる。
 メイドが体調を崩した程度で、王族の元王妃が尋ねてくるなんて前代未聞。
 なにかあったと考えるのが自然だった。

「もしそうでしたら、早めに教えてください。若様に万が一感染るような類のものでしたら」
「どうするつもりです?」

 アンは目に力を入れる。

「すぐに身を引かせていただきます」
「見事な忠義ですこと。しかし、そうですね。身を引くのか一緒にいるのか、クロとよく話しなさい」

 ツバァイ母様は口元だけで笑う。
 天晴れなアンの事を大層気にいったと教えてくれた。

「え? あの、それはどういう意味でしょうか?」

 ツヴァイ母様は、誰も居ないことは分かっていたけど、念の為に周囲を窺ってからアンの耳に口を寄せる。
 アンにしか聞こえないように小声で伝える。

 アンは目を丸くした。それからこくりと1度だけ、同意するように頷いた。

「は、はい……間違いございませんが……」
「そうですか」
「あの、よくお話が……」
「時が来ればわかります。ああ、心配はいりません。病ではありません、伝染る事もないですこと。いまはゆるりと身体を休ませなさい。無理は禁物です」

 起き上がろうとしたアンを制するように、ツバァイ母様はアンの髪を優しく撫でた。

「か、かしこまりました」
「そうですね、アストレアには私から話を通しておきます」
「ア、アストレア奥様にでございますか…」

 いったい、何の話を通すのか、詳細を教えてもらえなかったアンは驚愕していた。

「ジュリーナには……少し時を空けたほうがいいです、か」

 ツバァイ母様は少しだけ憐れむような表情を見せたらしい。
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