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第1部
第13話 幕間 王妃様の寝室 (王妃視点)
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013
くちゅりという音がした。
それはとても卑猥な音。
誰もいないとわかっているのに、暗い部屋の中で、はしたない音を聞かれまいかと息を潜めて動きを止めて身構えてしまう。
我ながら小心なことだ。
こうして性器に触れるだけのことに随分と長い時間考え込んで、躊躇までしてしまった意気地のなさに自嘲する。
指に熱い蜜が絡む。
触れた場所から背筋を抜けて、体が震える心地よい甘美な痺れが走る。
きゅうと、浅ましくも自分の指を締め付けてくる使われなくなって久しい女の穴。
「ん、あっ…」
割れ目に沿って焦らすように指をそっとクリトリスをくすぐると、ピリッと思っていたよりも強い刺激が身体を翻弄して、反射的に甘い声が漏れ出て焦る。
慌てて口を手で塞ぐ。
夜更けとはいえ、警備のものが巡回をしている。王妃の寝室に近づき盗み聞きをするような不埒者などいないと分かっていても、自慰行為で甘い声を上げているなど知られては、国務という仕事に差し障りが出る上、女としてのプライドもへし折られてしまう。
多くはないが、私を女と見る不遜な者が王族に連なる関係者にもいる。
純粋に愛を囁くものから、権力を求める者もいるのだろう。
女としての弱みはできるだけ見せたくない。
「……っん、ん……」
隣室には側付の若いメイドが控えている。
寝ずの番など時代がかった仕事ではないが、王族の不意の呼び出しに備えて仮眠を取る準待機の状態。
衆目に晒されることが仕事のような王妃という立場では、欲望に囚われ、快感に飢えて夜中に指で慰めている気配など微塵も感じさせてはいけないのだ。
メイドたちの噂話の伝播速度には、王族誰もが舌を巻く。
知られた次の日には、王妃は欲求不満だと邸宅中に知れ渡るだろう。
「……っ、……んんッ……」
いい加減、はしたない指の動きを止めないと恥ずかしい息づかいを気取られてしまうかも知れない。
そのような意思とは裏腹に、もっと気持ちがいい所があるはずだと、少しでも快感の確度を上げるための淫靡な考えに支配される。
衝動というほど強烈なものではない。
だけど子宮が疼いてしまうなど、何年ぶりのことだろう。
自分で淫らに濡れる女の秘所を慰めるなんて、人生で初めての経験だった。
それが3日も続いている。
「……ちがう……んっ、これじゃ……あっ、ない……」
それは答を知ってしまったから。
到達点を意識してしまったから。
夜になると昂ぶる身体。
悶々とする。
もちろん、誰にも相談などできない。
いや、1人いるな。
「ひっ……なんだ? これは……」
あのバカの顔を思い浮かべると快感が増して指の動きが止まってしまった。
年の割に立派だったペニスを思い出して顔が熱くなるのを感じてしまう。
風呂場で見た時は可愛いものだと、息子同然の逸物の成長を見守る母の気持ちだったのに。
舐めたらどんな味なのだろうか?
あの可愛らしい少女のような顔をどんなふうに赤らめるのか?
想像したら少しだけ身体が軽くなった。
「……あぁっ、なに……これ……」
指が擦った場所が弱点なのか、びくんと身体が震えるてベッドがきしんだ。
身体の感度が一段上がった。
ねっとりと濡れた割れ目では受けきれなかった愛液が、伝って不浄の穴まで到達する。
シーツに染みを作ってしまう。
あのバカ息子の顔とペニスの味を舌の上で想像したからだと?
口の中に唾液がたまる。飲み込むと、ごくりとはしたない音がした。
あの衝撃を、思い出してしまった。
腰が熱い。心の熱さに併せるように体中がいやらしい熱を放出する。
きっとむせ返るような女の匂いを振り撒いている。
奴が喜びそうな匂いだ。抱きついてきては鼻をすんすん鳴らして幸せそうな顔をする不敬な態度は、何度注意しても直らないからな。
唇を噛み締めて、口を覆っていた手を離し、男の視線を吸着させる胸のふくらみのその頂きで、固くなり薄物を僅かに盛り上げている尖りを指で痛いくらいにつまみ上げる。
再現する。
「ひっ……」
息を吸い込みながら裏返った声が出た。
敏感な乳首に走る快感。指が汚れるくらいに愛液で濡れた指に力がはいってしまう。
同時に2カ所の性的快感にぼんやりと思考が曇りはじめた。
いけない。首の下を撫でられて気持ちよく鳴く猫みたいな嬌声を隣室のメイドの気づかれてしまう。
「でも、これ……気持ち……いい」
ぎゅうぎゅうと乳首を虐める。
気持ちよくなろうとしている自分の行いに、かぁっと顔が熱くなった。
頭の中は真っ白に近づいていく。
王族に知れ渡って、関係が壊れるくらいに淫らに快感を貪りたくなる。
あの王妃は、毎晩男を求めて叶わず指で慰めているらしいと陰口を叩かれる、そんな想像をしただけでゾクゾクとした気持ちよさが襲ってきた。
「はぁ……んんッ……もっと……アァッ、違う……」
くちゅくちゅと指は吸い付いてくる穴の中の粘膜を指の腹で擦り上げる。
気持ちいい。敏感な陰核の裏側あたりを指を折り曲げて圧迫する。
気持ちいい。左の乳首を執拗に摘まんでしまう。
着替えの時に、赤く腫れあがってバレてしまう。
「んっ……んっはっ……んっ……あぁ、くる」
絶頂が、あの快感が、近付いてくるのを感じる。熱い息を殺せない。
徐々に身体が反り返り、脚がつっぱり腰が持ち上がる。
なんて淫らな格好を。腰を突き出すしてペニスを求めるような体勢。
気持ちよさに自由にならない身体は、指の動きに合わせるように腰を娼婦のように男に媚びるように振ってしまう。
「だめ……なのっ、にっ……あぁ、んふっ」
だけど昇ってくる甘い誘惑に逆らえない。
もうすぐ、くるから、きっと次こそはすごいのが来るはずだから。
来たらすべて治まって、毎晩いやらしく身体をくねらせることもなくなるから。
いくこと以外のことを考えられなくなる。
ああっ、くるくるくる。
来てしまう。
もうっ。
瞼の裏にチカチカと白い光が明滅して、ビクッと身体が大きく痙攣する。
「んはぁっ! んんッ、んんっっ、んーーー」
息を止めて身体中に走る快楽を受け止める。
いってる。王族の頂点たる者が、淫らにいっている。身体が快感のすべてを受け止める。
自分の指で絶頂している。女の身で、男に誘われるのでなく。
気持ちが良くてどうでも良くなる。
頭が真っ白になり、身体が痙攣を繰り返し、汗が噴き出す。
「ん……はぁ、はぁ……はぁ……」
身体の緊張がとけてどさっとベッドに持ち上がっていた腰を落とす。
「だめ……違う……こんなものじゃなかった……」
息を整えることも放棄して、全身に感じる汗のひんやりした感覚に身を委ねた。
絶頂したばかりだというのに、貪欲に考えてしまう。
バスルームで感じたあの時の悦楽には程遠い。自分でもよく分からないが、あまりの快感に潮吹きというどうにも我慢できない、いやらしい痴態をさらしてしまった。
あの開放感は手に入れられない。
これもそれもあれも、あのバカのせいだ。
亡くなった王の同じ妻として愛された、銀色の髪が麗しいアストレア、その息子。
母親によく似た中性的な優しい顔。
病弱で影の薄かった薄幸の少年は、神の奇跡で持ち直し人格までも変わってしまった。
男らしくもない。ただ可愛らしいだけの少年。
不意打ちで長く眠っていた私の女の部分を呼び戻した粗忽もの。
自慰ではあの領域に到達できぬのか。
若い頃には感じることができなかった快感に目覚めるとは女とは不便なものだ。
もう一度あれを経験したくば男に体を委ねるしかないというのか?
息子に王位を引き継ぎ、政から身を引いて再婚。
離縁ではなく死別した未亡人の再婚は難しい。
元正室であり元王妃という立場的にも難しい。
王の母という地位はなくならない。
その伴侶となれば絶大な権力を持つだろう。
わが息子たちの後顧の憂いとなるのならば、男など断ってしかるべきなのだ。
だけど身体は疼く。
自慰では満足できない。
「あのバカ息子なら……大丈夫なのか?」
言葉にしてすぐに、馬鹿なと首を振る。
あれは息子同然。アストレアの子供なのだ。
よりにもよって、なぜ男らしくもない貧弱で可愛らしい男女のバカなどを望む?
若い男が性癖に刺さるのなら、いくらでも見繕えるだろう。
息子を相手にするという背徳感か。
浅ましいな。
「バカ息子の滞在は1週間の予定だったな」
あと4日。
長く熱くやるせない夜は、もう少しだけ続くらしい。
くちゅりという音がした。
それはとても卑猥な音。
誰もいないとわかっているのに、暗い部屋の中で、はしたない音を聞かれまいかと息を潜めて動きを止めて身構えてしまう。
我ながら小心なことだ。
こうして性器に触れるだけのことに随分と長い時間考え込んで、躊躇までしてしまった意気地のなさに自嘲する。
指に熱い蜜が絡む。
触れた場所から背筋を抜けて、体が震える心地よい甘美な痺れが走る。
きゅうと、浅ましくも自分の指を締め付けてくる使われなくなって久しい女の穴。
「ん、あっ…」
割れ目に沿って焦らすように指をそっとクリトリスをくすぐると、ピリッと思っていたよりも強い刺激が身体を翻弄して、反射的に甘い声が漏れ出て焦る。
慌てて口を手で塞ぐ。
夜更けとはいえ、警備のものが巡回をしている。王妃の寝室に近づき盗み聞きをするような不埒者などいないと分かっていても、自慰行為で甘い声を上げているなど知られては、国務という仕事に差し障りが出る上、女としてのプライドもへし折られてしまう。
多くはないが、私を女と見る不遜な者が王族に連なる関係者にもいる。
純粋に愛を囁くものから、権力を求める者もいるのだろう。
女としての弱みはできるだけ見せたくない。
「……っん、ん……」
隣室には側付の若いメイドが控えている。
寝ずの番など時代がかった仕事ではないが、王族の不意の呼び出しに備えて仮眠を取る準待機の状態。
衆目に晒されることが仕事のような王妃という立場では、欲望に囚われ、快感に飢えて夜中に指で慰めている気配など微塵も感じさせてはいけないのだ。
メイドたちの噂話の伝播速度には、王族誰もが舌を巻く。
知られた次の日には、王妃は欲求不満だと邸宅中に知れ渡るだろう。
「……っ、……んんッ……」
いい加減、はしたない指の動きを止めないと恥ずかしい息づかいを気取られてしまうかも知れない。
そのような意思とは裏腹に、もっと気持ちがいい所があるはずだと、少しでも快感の確度を上げるための淫靡な考えに支配される。
衝動というほど強烈なものではない。
だけど子宮が疼いてしまうなど、何年ぶりのことだろう。
自分で淫らに濡れる女の秘所を慰めるなんて、人生で初めての経験だった。
それが3日も続いている。
「……ちがう……んっ、これじゃ……あっ、ない……」
それは答を知ってしまったから。
到達点を意識してしまったから。
夜になると昂ぶる身体。
悶々とする。
もちろん、誰にも相談などできない。
いや、1人いるな。
「ひっ……なんだ? これは……」
あのバカの顔を思い浮かべると快感が増して指の動きが止まってしまった。
年の割に立派だったペニスを思い出して顔が熱くなるのを感じてしまう。
風呂場で見た時は可愛いものだと、息子同然の逸物の成長を見守る母の気持ちだったのに。
舐めたらどんな味なのだろうか?
あの可愛らしい少女のような顔をどんなふうに赤らめるのか?
想像したら少しだけ身体が軽くなった。
「……あぁっ、なに……これ……」
指が擦った場所が弱点なのか、びくんと身体が震えるてベッドがきしんだ。
身体の感度が一段上がった。
ねっとりと濡れた割れ目では受けきれなかった愛液が、伝って不浄の穴まで到達する。
シーツに染みを作ってしまう。
あのバカ息子の顔とペニスの味を舌の上で想像したからだと?
口の中に唾液がたまる。飲み込むと、ごくりとはしたない音がした。
あの衝撃を、思い出してしまった。
腰が熱い。心の熱さに併せるように体中がいやらしい熱を放出する。
きっとむせ返るような女の匂いを振り撒いている。
奴が喜びそうな匂いだ。抱きついてきては鼻をすんすん鳴らして幸せそうな顔をする不敬な態度は、何度注意しても直らないからな。
唇を噛み締めて、口を覆っていた手を離し、男の視線を吸着させる胸のふくらみのその頂きで、固くなり薄物を僅かに盛り上げている尖りを指で痛いくらいにつまみ上げる。
再現する。
「ひっ……」
息を吸い込みながら裏返った声が出た。
敏感な乳首に走る快感。指が汚れるくらいに愛液で濡れた指に力がはいってしまう。
同時に2カ所の性的快感にぼんやりと思考が曇りはじめた。
いけない。首の下を撫でられて気持ちよく鳴く猫みたいな嬌声を隣室のメイドの気づかれてしまう。
「でも、これ……気持ち……いい」
ぎゅうぎゅうと乳首を虐める。
気持ちよくなろうとしている自分の行いに、かぁっと顔が熱くなった。
頭の中は真っ白に近づいていく。
王族に知れ渡って、関係が壊れるくらいに淫らに快感を貪りたくなる。
あの王妃は、毎晩男を求めて叶わず指で慰めているらしいと陰口を叩かれる、そんな想像をしただけでゾクゾクとした気持ちよさが襲ってきた。
「はぁ……んんッ……もっと……アァッ、違う……」
くちゅくちゅと指は吸い付いてくる穴の中の粘膜を指の腹で擦り上げる。
気持ちいい。敏感な陰核の裏側あたりを指を折り曲げて圧迫する。
気持ちいい。左の乳首を執拗に摘まんでしまう。
着替えの時に、赤く腫れあがってバレてしまう。
「んっ……んっはっ……んっ……あぁ、くる」
絶頂が、あの快感が、近付いてくるのを感じる。熱い息を殺せない。
徐々に身体が反り返り、脚がつっぱり腰が持ち上がる。
なんて淫らな格好を。腰を突き出すしてペニスを求めるような体勢。
気持ちよさに自由にならない身体は、指の動きに合わせるように腰を娼婦のように男に媚びるように振ってしまう。
「だめ……なのっ、にっ……あぁ、んふっ」
だけど昇ってくる甘い誘惑に逆らえない。
もうすぐ、くるから、きっと次こそはすごいのが来るはずだから。
来たらすべて治まって、毎晩いやらしく身体をくねらせることもなくなるから。
いくこと以外のことを考えられなくなる。
ああっ、くるくるくる。
来てしまう。
もうっ。
瞼の裏にチカチカと白い光が明滅して、ビクッと身体が大きく痙攣する。
「んはぁっ! んんッ、んんっっ、んーーー」
息を止めて身体中に走る快楽を受け止める。
いってる。王族の頂点たる者が、淫らにいっている。身体が快感のすべてを受け止める。
自分の指で絶頂している。女の身で、男に誘われるのでなく。
気持ちが良くてどうでも良くなる。
頭が真っ白になり、身体が痙攣を繰り返し、汗が噴き出す。
「ん……はぁ、はぁ……はぁ……」
身体の緊張がとけてどさっとベッドに持ち上がっていた腰を落とす。
「だめ……違う……こんなものじゃなかった……」
息を整えることも放棄して、全身に感じる汗のひんやりした感覚に身を委ねた。
絶頂したばかりだというのに、貪欲に考えてしまう。
バスルームで感じたあの時の悦楽には程遠い。自分でもよく分からないが、あまりの快感に潮吹きというどうにも我慢できない、いやらしい痴態をさらしてしまった。
あの開放感は手に入れられない。
これもそれもあれも、あのバカのせいだ。
亡くなった王の同じ妻として愛された、銀色の髪が麗しいアストレア、その息子。
母親によく似た中性的な優しい顔。
病弱で影の薄かった薄幸の少年は、神の奇跡で持ち直し人格までも変わってしまった。
男らしくもない。ただ可愛らしいだけの少年。
不意打ちで長く眠っていた私の女の部分を呼び戻した粗忽もの。
自慰ではあの領域に到達できぬのか。
若い頃には感じることができなかった快感に目覚めるとは女とは不便なものだ。
もう一度あれを経験したくば男に体を委ねるしかないというのか?
息子に王位を引き継ぎ、政から身を引いて再婚。
離縁ではなく死別した未亡人の再婚は難しい。
元正室であり元王妃という立場的にも難しい。
王の母という地位はなくならない。
その伴侶となれば絶大な権力を持つだろう。
わが息子たちの後顧の憂いとなるのならば、男など断ってしかるべきなのだ。
だけど身体は疼く。
自慰では満足できない。
「あのバカ息子なら……大丈夫なのか?」
言葉にしてすぐに、馬鹿なと首を振る。
あれは息子同然。アストレアの子供なのだ。
よりにもよって、なぜ男らしくもない貧弱で可愛らしい男女のバカなどを望む?
若い男が性癖に刺さるのなら、いくらでも見繕えるだろう。
息子を相手にするという背徳感か。
浅ましいな。
「バカ息子の滞在は1週間の予定だったな」
あと4日。
長く熱くやるせない夜は、もう少しだけ続くらしい。
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