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第1部
第7話 お姉様ズのサプライズ
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007
「では、行って参りますジュリーナ母様」
「うむ。しっかりと務めを果たしてくるがいい」
ペコリと頭を下げて爽やかに挨拶をした僕に、威厳たっぷりに鷹揚に王妃様は頷いた。
中世のアイルランド風味の赤黒い女王様ドレスでびしりと決めて、髪をしっかりと結い上げている。普段着の王妃様も大好きだけど、余所行きの王妃様も大好きです。
スクエアネックな胸元は下品にならない程度に胸の谷間が見えていて、見物客達の視線を独占しているから凄い人気だ。
そう見物客。お見送り。
お昼前の時間帯だというのに人だかり。お仕事とかしなくていいの? ニートの王族である僕が気にするのもおこがましいけど。
老若男女がお屋敷の前に集合していて、念のためか兵士がのんびり護衛をしている。
王家の王子がお山に向かうという噂話が広まって、娯楽の少ない国民のイベントと化していた。
ここまで大げさに送り出されるとは予想外なんだけど。
王妃様は、そっと顔を寄せるとトレードマークのように眉間に皺を寄せて小声で続ける。
「決して無理をするではないぞ? 必ず帰ってくるのだ」
「……御意」
えーと。どうして死地に赴く兵士にかけるみたいな言葉なの?
だけど言葉の中身より、背の低い僕に合わせて屈み込んだ体勢だから、チラっと見えた黒い下着の方に目も意識も奪われた。
素敵な意匠のレースが白い豊満なおっぱいを引き立てています。
うん、さすが王族。見えない所まで金をかけてる。
「何処を見ている、このたわけが」
ぽかりと手刀で気合いを入れられた。痛いです。
王妃様はいつも通りだ。
昨日のバスルームでの出来事なんて微塵も感じさせない厳しさだった。
気をやってから数分間、息を落ち着けるようにじっとしていた。眉間にしわが寄ったまま、でもどこか幸せそうで、開かれた口元から涎がたれると慌ててアンが布を使って拭っていた。
体を起こすといつも通りで「夜更かしするではないぞ?」とお小言を添えてさっさとバスルームから出て行った。おつきメイドがいなかったので、ビビィが代理で遣わされた。
朝に顔を合わせてもいたって普通。バスルームでの出来事なんて泡沫の夢だったのかも。
痴態を見せてデレた王妃様が、赤面してモジモジする姿を見たかったのに。ちょっぴり残念。
見送りにきてくれた家族の皆は、人前に出るからおめかしで正装だ。
良くお似合いです、姉様も母様も。
「心配よ、心配だわ。やっぱり私も一緒に行かないと、クロくんきっと迷子になっちゃう」
ララ姉様が、おろおろと体をくねらせて人目など全く無視して赤い瞳を潤ませながら、遠慮なく抱きついてくる。そのまますべすべしたホッペで頬ずり攻撃。果実みたいな体臭にうっとりします。
「二重遭難の未来しか見えない。愚弟、はっきり断りなさい、あれは本気で後を追いかける目」
「いえ、迷子の線は薄いと思います、パティ姉様」
だって徒歩1時間程度の移動だというのに大げさに馬車まで仕立てられてるから。
小国とは言え王族はお金持ち。黄金虫。
まさか御者が道に迷う事もないと思う。
近くの村まで送ってもらって、そこからは徒歩でお山に入山という工程。
「心配しないで姉様。立派にお務めを果たしてくるよ!」
ほわほわしているララ姉様に見えない位置で僕の服を摘まんでいる健気なパティ姉様は目が合うとふんと目を逸らし「愚弟のくせに生意気」と毒づいた。今日も猫みたいで可愛いです。
「お水はね、一度暖かくしないとお腹が痛くなるんだからね?」
「うん。アンに伝えておくね、ララ姉さま、ありがとう」
「やぁんもう、可愛い! お洋服も可愛いね!」
「ついに人前でもその格好。やっぱり王族の恥は外に出すべきじゃない」
くいっとパティ姉様は、摘まんだ服を軽く引く。
これは、危ないんだから行っちゃ駄目という意思表示かな?
「やはり、私の見立て通りでした。似合っていますよ、クロ」
ツバァイ母様が得意げなお顔で僕の身形を厳しく観察。
そう。本日の衣装は遠い東の国の血を引くツバァイ母様が用意してくれた。
前世で言う所の千早という衣装だ。
巫女さんが上から着込んでいる白いやつ。
下はさすがに白衣でも袴でもなく中性的なシャツとハーフパンツで裾は長目。
貫頭衣の一種みたいで、前は胸辺りで後ろは長い、腋がガバッと空いているから風通し抜群。
外套みたいでくるりと回るとふわりと舞ってお気に入りです。
羽織るだけで簡単にしめやかで神秘的になるからお手軽だ。
ツバァイ母様にしっかりとお礼の言葉を述べておく。
ただし、千早はこの異世界でも女性専用。男の娘っぽくていいんだけどね。
口やかましく男らしくしろと嫌味を言う王妃様も何故か推してきた。
お山は男子に厳しいという伝承が少なからずあるらしい。
格好だけでお目こぼしがあるなら儲けものです。
「神事を行うに相応しい出来上がりですこと」
というかこの世界では、登山は神事扱い。
お清めとかあったから薄々感じてはいたけど。
実はお山の現地調査のフリをするだけなんてとても口に出せない。
ピクニックのつもりが大事になっちゃった。
安請け合いを後悔するつもりもないし、異世界の見聞を広げられる機会だと、何事にも精一杯で前向きに捉えておこう。
横に並んでいるアストレア母様は心配そうな雰囲気だけど、息子の門出を笑顔で送り出してくれる。
「クロ、ツバァイ様にしっかりお礼を言いましたか? あと、メイド達にあまり迷惑をかけないように、お山の植物には触れてはいけないと聞いています。夜はまだまだ冷えますから……」
矢継ぎ早に言葉をかけてくれる母様を遮らずに丁寧に聞いていたけど、日が暮れちゃいそうなのでぎゅうと抱きついて強制終了。
「では、行ってまいります!」
馬車に乗り込むだけで集まった人々から歓声が上がる。
なんだかハンカチを手にしているご婦人が多い。
まるで生贄として送られてしまう姫に悲観しているみたいだった。
馬車が静かに出発する。
中からしっかり手を振ってアピールしておくことも忘れない。
国民の中には、病弱で人前に姿を見せない第3王子を初めて見た人が多いから。
因みに僕のことが心配だからと強引に護衛役を買って出た兄様たちは、王妃様に出張を命じられて姿はない。激励一杯気合いをいれて困難をたたき伏せろという文が届けられた。
熱くてまめな兄様達だった。感謝しておきます。
思ったほども揺れの少ない馬車の中。
「……ますます若様が殿方から遠ざかっているご様子で、アンは複雑でございます」
「でも…クロ様、お似合いです」
千早姿を遠い目で見つめるアンの貴重な無表情のため息顔。
横の無表情なシーラには誉められた。ありがとう。
おつきのメイドだから3人ともに参加している。
ビビィは手がというか口が離せないご様子だった。
出発して5分もたたずにこれ。
決して狭くない馬車の内部構造は向かい合わせのボックスタイプ。普通、向かいにメイドが3人控える配置だよね?
でも僕のおつきメイドは過保護が多い。
「どうしてふたりともそんなにくっついているの?」
僕の座る左右からサンドイッチにアンとシーラが座り、身体を寄せて密着していた。
「護衛のためです。窮屈とは存じますが御身を守るためですからご容赦ください」
「何かお体に変調がありましたら、すぐにお知らせ下さい」
病み上がりの僕の外出と長旅は身体に障ると判断したアンの采配。
ゆっくりと進む馬車に乗るだけでも体力は奪われるとか。
「……すでに変調がございます」
座席部分に座らず、僕の前に横座りになっているビビィが無表情でそう告げる。
「何事ですか、ビビィさん」
「若様の男性部分が腫れています」
「昨日あれだけお清めして、朝もお出しになったのに、まだ出し足りてなかったのですね。お山に近付く緊張が原因でしょうか……それともこれがお山の仕業ですか? ビビィさん……お願いします」
「かしこまりました」
緊張してトイレが近くなるみたいに表現されても困ります。
そもそもの原因は。
ビビィがふくらんだ股間に手を当てた。びくっと身体が震える。
え? もしかして、ここでしちゃうの?
「アンが命を賭してでもお守りいたします!」
「シーラもお守りします!」
違うよ2人とも。
ペニスが勃起しているのは、年頃女子とほぼ密閉された空間で良い匂いに興奮したから。あと、護衛といって柔らか温かい身体をぎゅうぎゅう押し付けてくるのが原因。
僕の身体を変調させたくないなら、まず距離を取るべきだと思う。
マッチポンプが十八番のメイドってどうなの? 評価的に。
だからビビィは僕の股間に顔を埋めているので忙しい。
ぬぽぬぽとペニスを口に出し入れ状態。ブラウン色の髪が既に乱れている。時々無表情で見上げる青い瞳は濡れまくっている。
丁寧に舌を這わせては頬ずりするような仕草を見せて、また無表情で目を閉じて唾液たっぷりの口に含ませ、ぢゅるっぷぱぁっと下品な音を撒き散らす。
「若様、お気を確かに……」
気持ちいいから昂ぶってくると、震えていると勘違いしたシーラがぎゅうとおっぱいを押し付けてきた。
出発して街を抜け川を渡ると途端にど田舎の風景に様変わりする。
建物もまばらになって耕作地が増えてくる。
見るものすべてが新鮮で心が躍る。だというのに。
視線を下ろせば見慣れてしまったメイドお口でご奉仕。
ビビィのお口は初めてだからある意味新鮮ではあるんだけど。
長閑な風景を目で楽しみながら、下半身はメイドの口で楽しむとか。王族万歳。
「くっ……なんか、すごい……」
ビビィの口はアンともシーラとも何かが違う。
長い舌が巻き付いてくるような、的確に気持ちいいポイントを抉ってくるような精密さ。
吸い付きながらも舌は淫らに動く。貴族の女子って男子を籠絡する性技の授業が、花嫁修業にくみこまれていると噂で聞いていたけど、これほどのものなのか。
我流とは違う王道のフェラに脱帽寸前。
しかも機械的な無表情。色々な性癖が刺激されます。
ほどなくビビィの口の中に欲望を吐き出す頃には短い馬車の旅は終了間近だった。
竿を白くて冷たい指を絡めて擦り、ぴゅっと噴き出す精液を口をまるく開け、舌の上でしっかりと受け止める。僕に見えるように。しっかりと口の中に出しているという事実を見せつけるように。
出し終わると赤くて艶っぽい唇で、ペニスの先で垂れている残りの液を拭い取る。
その洗練された動きがとってもいやらしくてお腹の奥が熱くなる。
ビビィって、あわよくば僕の子供を孕んで貴族の位を手に入れようと画策しているために、おつきメイドを志願したのかと思っていたけど、実は結構なエッチ好きなのかも。
無表情のスケベな女子って性癖にザクザク刺さる。
欲求も実益もかねた一石二鳥。
口許を拭いながらこくりと精液を嚥下するビビイの喉元が最高にエロい。
「けほっ、……失礼しました……喉に、へばりついています」
「若様のは濃いので分かります、ゆっくり唾液と混ぜて飲みこんでみてはいかがでしょうか?」
飲み慣れたアンが恥ずかしげもなく頷いている。あの、恥ずかしいからホントやめて。
せめて照れながらとか赤面しながらだったら、からかうことも出来るのに、無表情だから真面目なテイスティングになっちゃってる。
自分が出した物の品評会。
僕の方が照れて赤面しちゃいます。
おのれ、当家のメイドのしきたりを考案したやつめ。
「間もなく滞在予定の村に到着でございます」
アンが窓外の風景で確認する。
「了解。ところで、お山ってどんなところなの?」
イメージとしては鳥居を背景にうっそうと広がる森林。あるいは霧深い音が一切しない遮断された神秘的な空間。荘厳とした山の主の化身である仙女のような人が出てきたりするのかな?
「え? クロ様は、お山をご存知ではないのですか?」
元々街の娘のシーラでもしっている常識なんだ。
アンは、無表情で顔を伏せる。
「若様は、幼少の頃より臥せっておいででしたから」
ベッドの上では入ってくる情報はあまりにも少なかったらしい。読書をするにも体力がいるので病弱だったクロにはない記憶だった。
だから僕も知りようがない。
「お山は、お山でございます」
つまり、誰も何も知らない。伝承だけが一人歩きをしている。
未開の山だ。人の手が入っていない場所だから他の生物のテリトリー。
山というのは前世でも危険がいっぱいだった。
熊に猪、狼、猿に蛇、蜂だって脅威になる。
うん、前向きでも危険は勘弁。あまり深入りしないようにしようっと。
国民感情を考えると、お山を開発なんて罰当たりな行為はしないにこしたことがない。
散策だけしてお茶を濁そう。行動計画は再確認されました。
「楽しみだなぁ、どんな村なのかな」
お山を守る最前線の村にも超期待。
滞在期間は一週間だけど、その間は民宿とか宿屋に泊まったりするのかな? ファンタジーな世界に興味が湧いて尽きない。邸宅とは別の不便さがあるだろうけど、古き良きを愛することが出来る異世界人のメンタルだから問題なし。
「小さな農村だと聞き及んでおります」
素朴な村に隠された、お山を守るお務め部隊があるに違いない。きっとある。
古い文献や口伝を聞いて見識を深めよう。
馬車が静かに停止する。
窓から見える村は、往路でみかけた家と遜色なく一定間隔で建っていた。
その向こうに深い森と山が見える。あれがお山かな?
馬車の扉が開かれる。
さあ、お山調査という言い訳の冒険の第一歩だ。
「いやぁぁん、クロくんさっきぶり!」
ぎゅうっと抱きつかれて嗅ぎ慣れた果実の匂いに包まれた。
「え? ララ姉様?」
「ララお嬢様!?」
アンが珍しく目をまるくしていた。
「だから、はっきりと断れと言った」
この愚弟。そんな苦虫を噛みつぶしたような不機嫌そうな顔のパティ姉様まで。
「びっくりした? びっくりしたよね! お姉ちゃん凄く嬉しい!」
お山の調査も、一筋縄では行かない要素が盛り沢山のはじまりだった。
「では、行って参りますジュリーナ母様」
「うむ。しっかりと務めを果たしてくるがいい」
ペコリと頭を下げて爽やかに挨拶をした僕に、威厳たっぷりに鷹揚に王妃様は頷いた。
中世のアイルランド風味の赤黒い女王様ドレスでびしりと決めて、髪をしっかりと結い上げている。普段着の王妃様も大好きだけど、余所行きの王妃様も大好きです。
スクエアネックな胸元は下品にならない程度に胸の谷間が見えていて、見物客達の視線を独占しているから凄い人気だ。
そう見物客。お見送り。
お昼前の時間帯だというのに人だかり。お仕事とかしなくていいの? ニートの王族である僕が気にするのもおこがましいけど。
老若男女がお屋敷の前に集合していて、念のためか兵士がのんびり護衛をしている。
王家の王子がお山に向かうという噂話が広まって、娯楽の少ない国民のイベントと化していた。
ここまで大げさに送り出されるとは予想外なんだけど。
王妃様は、そっと顔を寄せるとトレードマークのように眉間に皺を寄せて小声で続ける。
「決して無理をするではないぞ? 必ず帰ってくるのだ」
「……御意」
えーと。どうして死地に赴く兵士にかけるみたいな言葉なの?
だけど言葉の中身より、背の低い僕に合わせて屈み込んだ体勢だから、チラっと見えた黒い下着の方に目も意識も奪われた。
素敵な意匠のレースが白い豊満なおっぱいを引き立てています。
うん、さすが王族。見えない所まで金をかけてる。
「何処を見ている、このたわけが」
ぽかりと手刀で気合いを入れられた。痛いです。
王妃様はいつも通りだ。
昨日のバスルームでの出来事なんて微塵も感じさせない厳しさだった。
気をやってから数分間、息を落ち着けるようにじっとしていた。眉間にしわが寄ったまま、でもどこか幸せそうで、開かれた口元から涎がたれると慌ててアンが布を使って拭っていた。
体を起こすといつも通りで「夜更かしするではないぞ?」とお小言を添えてさっさとバスルームから出て行った。おつきメイドがいなかったので、ビビィが代理で遣わされた。
朝に顔を合わせてもいたって普通。バスルームでの出来事なんて泡沫の夢だったのかも。
痴態を見せてデレた王妃様が、赤面してモジモジする姿を見たかったのに。ちょっぴり残念。
見送りにきてくれた家族の皆は、人前に出るからおめかしで正装だ。
良くお似合いです、姉様も母様も。
「心配よ、心配だわ。やっぱり私も一緒に行かないと、クロくんきっと迷子になっちゃう」
ララ姉様が、おろおろと体をくねらせて人目など全く無視して赤い瞳を潤ませながら、遠慮なく抱きついてくる。そのまますべすべしたホッペで頬ずり攻撃。果実みたいな体臭にうっとりします。
「二重遭難の未来しか見えない。愚弟、はっきり断りなさい、あれは本気で後を追いかける目」
「いえ、迷子の線は薄いと思います、パティ姉様」
だって徒歩1時間程度の移動だというのに大げさに馬車まで仕立てられてるから。
小国とは言え王族はお金持ち。黄金虫。
まさか御者が道に迷う事もないと思う。
近くの村まで送ってもらって、そこからは徒歩でお山に入山という工程。
「心配しないで姉様。立派にお務めを果たしてくるよ!」
ほわほわしているララ姉様に見えない位置で僕の服を摘まんでいる健気なパティ姉様は目が合うとふんと目を逸らし「愚弟のくせに生意気」と毒づいた。今日も猫みたいで可愛いです。
「お水はね、一度暖かくしないとお腹が痛くなるんだからね?」
「うん。アンに伝えておくね、ララ姉さま、ありがとう」
「やぁんもう、可愛い! お洋服も可愛いね!」
「ついに人前でもその格好。やっぱり王族の恥は外に出すべきじゃない」
くいっとパティ姉様は、摘まんだ服を軽く引く。
これは、危ないんだから行っちゃ駄目という意思表示かな?
「やはり、私の見立て通りでした。似合っていますよ、クロ」
ツバァイ母様が得意げなお顔で僕の身形を厳しく観察。
そう。本日の衣装は遠い東の国の血を引くツバァイ母様が用意してくれた。
前世で言う所の千早という衣装だ。
巫女さんが上から着込んでいる白いやつ。
下はさすがに白衣でも袴でもなく中性的なシャツとハーフパンツで裾は長目。
貫頭衣の一種みたいで、前は胸辺りで後ろは長い、腋がガバッと空いているから風通し抜群。
外套みたいでくるりと回るとふわりと舞ってお気に入りです。
羽織るだけで簡単にしめやかで神秘的になるからお手軽だ。
ツバァイ母様にしっかりとお礼の言葉を述べておく。
ただし、千早はこの異世界でも女性専用。男の娘っぽくていいんだけどね。
口やかましく男らしくしろと嫌味を言う王妃様も何故か推してきた。
お山は男子に厳しいという伝承が少なからずあるらしい。
格好だけでお目こぼしがあるなら儲けものです。
「神事を行うに相応しい出来上がりですこと」
というかこの世界では、登山は神事扱い。
お清めとかあったから薄々感じてはいたけど。
実はお山の現地調査のフリをするだけなんてとても口に出せない。
ピクニックのつもりが大事になっちゃった。
安請け合いを後悔するつもりもないし、異世界の見聞を広げられる機会だと、何事にも精一杯で前向きに捉えておこう。
横に並んでいるアストレア母様は心配そうな雰囲気だけど、息子の門出を笑顔で送り出してくれる。
「クロ、ツバァイ様にしっかりお礼を言いましたか? あと、メイド達にあまり迷惑をかけないように、お山の植物には触れてはいけないと聞いています。夜はまだまだ冷えますから……」
矢継ぎ早に言葉をかけてくれる母様を遮らずに丁寧に聞いていたけど、日が暮れちゃいそうなのでぎゅうと抱きついて強制終了。
「では、行ってまいります!」
馬車に乗り込むだけで集まった人々から歓声が上がる。
なんだかハンカチを手にしているご婦人が多い。
まるで生贄として送られてしまう姫に悲観しているみたいだった。
馬車が静かに出発する。
中からしっかり手を振ってアピールしておくことも忘れない。
国民の中には、病弱で人前に姿を見せない第3王子を初めて見た人が多いから。
因みに僕のことが心配だからと強引に護衛役を買って出た兄様たちは、王妃様に出張を命じられて姿はない。激励一杯気合いをいれて困難をたたき伏せろという文が届けられた。
熱くてまめな兄様達だった。感謝しておきます。
思ったほども揺れの少ない馬車の中。
「……ますます若様が殿方から遠ざかっているご様子で、アンは複雑でございます」
「でも…クロ様、お似合いです」
千早姿を遠い目で見つめるアンの貴重な無表情のため息顔。
横の無表情なシーラには誉められた。ありがとう。
おつきのメイドだから3人ともに参加している。
ビビィは手がというか口が離せないご様子だった。
出発して5分もたたずにこれ。
決して狭くない馬車の内部構造は向かい合わせのボックスタイプ。普通、向かいにメイドが3人控える配置だよね?
でも僕のおつきメイドは過保護が多い。
「どうしてふたりともそんなにくっついているの?」
僕の座る左右からサンドイッチにアンとシーラが座り、身体を寄せて密着していた。
「護衛のためです。窮屈とは存じますが御身を守るためですからご容赦ください」
「何かお体に変調がありましたら、すぐにお知らせ下さい」
病み上がりの僕の外出と長旅は身体に障ると判断したアンの采配。
ゆっくりと進む馬車に乗るだけでも体力は奪われるとか。
「……すでに変調がございます」
座席部分に座らず、僕の前に横座りになっているビビィが無表情でそう告げる。
「何事ですか、ビビィさん」
「若様の男性部分が腫れています」
「昨日あれだけお清めして、朝もお出しになったのに、まだ出し足りてなかったのですね。お山に近付く緊張が原因でしょうか……それともこれがお山の仕業ですか? ビビィさん……お願いします」
「かしこまりました」
緊張してトイレが近くなるみたいに表現されても困ります。
そもそもの原因は。
ビビィがふくらんだ股間に手を当てた。びくっと身体が震える。
え? もしかして、ここでしちゃうの?
「アンが命を賭してでもお守りいたします!」
「シーラもお守りします!」
違うよ2人とも。
ペニスが勃起しているのは、年頃女子とほぼ密閉された空間で良い匂いに興奮したから。あと、護衛といって柔らか温かい身体をぎゅうぎゅう押し付けてくるのが原因。
僕の身体を変調させたくないなら、まず距離を取るべきだと思う。
マッチポンプが十八番のメイドってどうなの? 評価的に。
だからビビィは僕の股間に顔を埋めているので忙しい。
ぬぽぬぽとペニスを口に出し入れ状態。ブラウン色の髪が既に乱れている。時々無表情で見上げる青い瞳は濡れまくっている。
丁寧に舌を這わせては頬ずりするような仕草を見せて、また無表情で目を閉じて唾液たっぷりの口に含ませ、ぢゅるっぷぱぁっと下品な音を撒き散らす。
「若様、お気を確かに……」
気持ちいいから昂ぶってくると、震えていると勘違いしたシーラがぎゅうとおっぱいを押し付けてきた。
出発して街を抜け川を渡ると途端にど田舎の風景に様変わりする。
建物もまばらになって耕作地が増えてくる。
見るものすべてが新鮮で心が躍る。だというのに。
視線を下ろせば見慣れてしまったメイドお口でご奉仕。
ビビィのお口は初めてだからある意味新鮮ではあるんだけど。
長閑な風景を目で楽しみながら、下半身はメイドの口で楽しむとか。王族万歳。
「くっ……なんか、すごい……」
ビビィの口はアンともシーラとも何かが違う。
長い舌が巻き付いてくるような、的確に気持ちいいポイントを抉ってくるような精密さ。
吸い付きながらも舌は淫らに動く。貴族の女子って男子を籠絡する性技の授業が、花嫁修業にくみこまれていると噂で聞いていたけど、これほどのものなのか。
我流とは違う王道のフェラに脱帽寸前。
しかも機械的な無表情。色々な性癖が刺激されます。
ほどなくビビィの口の中に欲望を吐き出す頃には短い馬車の旅は終了間近だった。
竿を白くて冷たい指を絡めて擦り、ぴゅっと噴き出す精液を口をまるく開け、舌の上でしっかりと受け止める。僕に見えるように。しっかりと口の中に出しているという事実を見せつけるように。
出し終わると赤くて艶っぽい唇で、ペニスの先で垂れている残りの液を拭い取る。
その洗練された動きがとってもいやらしくてお腹の奥が熱くなる。
ビビィって、あわよくば僕の子供を孕んで貴族の位を手に入れようと画策しているために、おつきメイドを志願したのかと思っていたけど、実は結構なエッチ好きなのかも。
無表情のスケベな女子って性癖にザクザク刺さる。
欲求も実益もかねた一石二鳥。
口許を拭いながらこくりと精液を嚥下するビビイの喉元が最高にエロい。
「けほっ、……失礼しました……喉に、へばりついています」
「若様のは濃いので分かります、ゆっくり唾液と混ぜて飲みこんでみてはいかがでしょうか?」
飲み慣れたアンが恥ずかしげもなく頷いている。あの、恥ずかしいからホントやめて。
せめて照れながらとか赤面しながらだったら、からかうことも出来るのに、無表情だから真面目なテイスティングになっちゃってる。
自分が出した物の品評会。
僕の方が照れて赤面しちゃいます。
おのれ、当家のメイドのしきたりを考案したやつめ。
「間もなく滞在予定の村に到着でございます」
アンが窓外の風景で確認する。
「了解。ところで、お山ってどんなところなの?」
イメージとしては鳥居を背景にうっそうと広がる森林。あるいは霧深い音が一切しない遮断された神秘的な空間。荘厳とした山の主の化身である仙女のような人が出てきたりするのかな?
「え? クロ様は、お山をご存知ではないのですか?」
元々街の娘のシーラでもしっている常識なんだ。
アンは、無表情で顔を伏せる。
「若様は、幼少の頃より臥せっておいででしたから」
ベッドの上では入ってくる情報はあまりにも少なかったらしい。読書をするにも体力がいるので病弱だったクロにはない記憶だった。
だから僕も知りようがない。
「お山は、お山でございます」
つまり、誰も何も知らない。伝承だけが一人歩きをしている。
未開の山だ。人の手が入っていない場所だから他の生物のテリトリー。
山というのは前世でも危険がいっぱいだった。
熊に猪、狼、猿に蛇、蜂だって脅威になる。
うん、前向きでも危険は勘弁。あまり深入りしないようにしようっと。
国民感情を考えると、お山を開発なんて罰当たりな行為はしないにこしたことがない。
散策だけしてお茶を濁そう。行動計画は再確認されました。
「楽しみだなぁ、どんな村なのかな」
お山を守る最前線の村にも超期待。
滞在期間は一週間だけど、その間は民宿とか宿屋に泊まったりするのかな? ファンタジーな世界に興味が湧いて尽きない。邸宅とは別の不便さがあるだろうけど、古き良きを愛することが出来る異世界人のメンタルだから問題なし。
「小さな農村だと聞き及んでおります」
素朴な村に隠された、お山を守るお務め部隊があるに違いない。きっとある。
古い文献や口伝を聞いて見識を深めよう。
馬車が静かに停止する。
窓から見える村は、往路でみかけた家と遜色なく一定間隔で建っていた。
その向こうに深い森と山が見える。あれがお山かな?
馬車の扉が開かれる。
さあ、お山調査という言い訳の冒険の第一歩だ。
「いやぁぁん、クロくんさっきぶり!」
ぎゅうっと抱きつかれて嗅ぎ慣れた果実の匂いに包まれた。
「え? ララ姉様?」
「ララお嬢様!?」
アンが珍しく目をまるくしていた。
「だから、はっきりと断れと言った」
この愚弟。そんな苦虫を噛みつぶしたような不機嫌そうな顔のパティ姉様まで。
「びっくりした? びっくりしたよね! お姉ちゃん凄く嬉しい!」
お山の調査も、一筋縄では行かない要素が盛り沢山のはじまりだった。
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セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
異世界をスキルブックと共に生きていく
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(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
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