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第1部

第1話 当家のメイドのしきたり

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 001

 目覚めると、きれいな顔だけど無表情の女性が覗き込んでいた。

「……若様、お目覚めになられました」

 これが僕に仕えるメイドの朝一番の仕事らしい。
 びっくり仰天したのは初日だけ。
 大丈夫。一月も経過したボクの心構えに隙はない。

「おはよう、アン。今日も無表情が素敵だね」
「おそれいります、若様」

 僕の可愛い皮肉なんて、まるで相手にしてもらえない。

 アンの合図で、扉近くで控えていたメイド二人がしずしずと、音を立てると鞭打ちでも待っているのか疑う動きで近づいてくる。
 二人の顔も無表情。
 これは、決して僕が嫌われているのではなく、命令に忠実な彼女たちが職場のルールに従っているだけだ。

 ここは王国の中心部。予算の都合でお城は建てられていないけど、王族が暮らす大邸宅。
 成人前の15歳とはいえ、王位継承権を持つ第3王子の尊い寝室。

 最高権力者の集う場所というだけあって、働く者の容姿も採用基準になっている。
 たしかに3人とも美しい。

 無表情の正体は、年若く魅力的なメイドさんが不用意に笑顔で接した挙げ句、勘違いした王族関係者に犯されてしまうのを防ぐためのしきたりらしい。
 権力者ってやつは本当にしょうもないな。

 ベッドで身を起こすと顔を拭かれて身支度の準備が始まる。
 作業の間は無表情。無言でメイド3人の着替え補助を受け入れる。
 そつない手際で服をどんどん脱がされていく。

 パンツを脱がされるとデンとペニスが自己主張した。

「あら、若様……可愛らしいお顔ですのに、下はこんなに凶悪です」

 朝立ちというやつです。

「ご立派です、若様」
「猛々しいです……」

 同調した2人にも褒められる。
 さすが当家で働くおつきのメイドだ。勃起した生殖器を目の当たりにした程度では動じない。

 年頃の娘さんなのだから、もう少しいろいろ反応があると思うけど、無表情は崩れていない。
 恥ずかしがる女子の慌てる姿はいいものです。

 1月も無表情が続くとそんな妄想も萎んでしまった。

 平然と構えるメイドの態度に、だらしなくおっ立てている分、余計に恥ずかしい。
 もちろん王族のプライドで、さも当たり前みたいな態度をキープ!

 だけど、これは生理現象だけじゃない。
 何故かって?
 それは、このいたずら好きの3人が着替えを手伝うふりをして、敏感な所にわざと触れたりやわらかい体をわざと当てたりして僕の興奮を誘ってくるから。

 わざわざ笑顔を消した無表情を取り繕っているくせに、やっていることは矛盾だらけだ。
 これもメイドのお仕事なのか問い詰めたいけど、気持ちがいいから黙認している。諦めている。毎朝だからね。

「本当に、お元気になられましたね」

 小さいころから仕えてくれている幼馴染なメイドのアンが目で微笑む。
 おかんみたいな気遣いに肩を竦めて返す。
 同じ歳なのに姉ぶっていてちょっぴり可愛い。

 僕は生まれつきの虚弱体質で、風邪ひとつで人生からサヨウナラな身体だった。
 とあるきっかけで元気になったのは1月前だ。
 長い間心配をかけてしまったから、嬉しさも人一倍なのだろう。

「顔色も硬さも申し分ありません」

 顔色とイチモツを並べて褒めるメイドなんて世界広しといえど当家だけだよ。
 自慢をしてもいいのかも。

 姿見に映る身体を見る。
 そこには、美少女と見紛う姿があった。

 流れるような見事な銀髪。細い華奢な身体は陽を浴びたことのないような色白さ。
 病弱でベッドに寝ている時間が身体を起こしている時より長かったから仕方がない。

「あっ……ちょ、アン」

 声変りがまだですかという高い声。
 アンの細い指が器用にペニスにまとわりついた。
 ひんやりした手の冷たさにペニスが震える。
 先端を優しく包んでいた包皮をくるりと剥かれてしまい、ピンク色の部分が丸見えになる。

「うん、しっかり洗っていますね、感心です!」

 目のつけ所がメイドすぎる。
 夜に浴室で体を洗うのもメイドのお仕事だから、それってただの自画自賛じゃないの?

 鏡では、ベッド側に仁王立ちした少年の前に跪くメイドの姿。
 絵面だけでエロさが満タン。ペニスを擦られてさらに硬くなってしまった。

 2人のメイドも素肌を優しく撫でて煽ってくる。
 王族関係者に犯されないためのしきたりが台無しだと思う。

「これではお召し物を変えられませんので、お慰め致します」

 アンはそう言うと無表情の顔をペニスに近づけた。
 じゅぷっとエッチな音がする。
 手を添えたペニスをゆっくりと可憐なピンク色の唇を割って呑みこんでいく。

「うわっ……」

 温かい口の中の気持ちよさでペニスが暴れる。腰が引ける。
 アンは反応を見上げて確認しながら、程良いタッチのいやらしい舌でペニスを撫で回した。

「若様の大事なところを、あんなにはしたなく口を開いて食べてます」

 首筋に唇を押し当てて甘く囁く青い瞳のメイド。

「アン様、すごく美味しそうです……」

 ごくりと生唾を飲むブラウン色の髪のメイド。

 じゅるじゅるじゅぷじゅぷと口の中にため込んだ、唾液をすするように先端の敏感な部分を刺激する。そのたびに新しい刺激が襲いかかる。
 朝っぱらからなんて気持ちがいい!

「アン……すごい……」
「ん、ちゅ……おしょれいりまひゅ」

 ペニスを咥えていても礼儀を忘れないメイドの鏡だ。

 窓からはいい日差しが入ってきているというのに、淫らな音と僕のあえぐような息遣い、2人のメイドの興奮した体温と女の匂いで爽やかさなんて吹っ飛ばす。
 でも、これが朝の恒例行事。メイドたちが場慣れしているのも頷けてしまう。

「ん……ぢゅ、んっ、ぐ……」

 根元まで呑みこまれ、股間に顔を埋める美少女メイドが苦しげな鼻息をもらす。
 蕩けるような甘い穴だ。女の口って気持ちがいい。見下ろすと少女に近いメイドがお口でご奉仕している姿に興奮は高止まり。

 ぢゅるりと唾液混じりに先端に吸いつかれ、根元を手で擦られて、舌が先っぽだけをマッサージする。
 ビリビリと背筋が痺れる気持ちよさで身体の奥底から射精感がせり上がってくるのはすぐだった。

「あうっ、出ちゃうよ……」

 アンの頭を両手で押さえてしまう。
 敏感な身体は慣れた舌技であっという間に昇天させられた。

 ぶるりと身体を震わせると、ぴゅっとアンの口の中に朝一番を飛ばしてしまう。
 無表情でご奉仕補するメイドの口に出す快感にゾクゾクする。

 ちょっと涙目になってしまい、ぼんやりとした視界に身体をくっつけてくるメイドが映る。
 無表情とは言えない、淫らに興奮した美しい表情だった。

「んくっ……濃い、です……」

 こくんとアンの喉が鳴らされた。
 恐れ多くも貴族の頂点、王族の側室の息子とはいえ王子から下賜された精液を吐き出すなんてあり得ないから毎日律儀に飲み干してくれる。

 細い身体だから大した量でもないんだけど、嫁入り前の娘さんとしてみれば、きっと吐き気を催す行為だよね。
 考えてみればマッチポンプだけど、いつもありがとうございます。感謝の気持ちは忘れない。

「ふぅ……治まりましたね、これで一安心です」

 一発出しておけば、メイドおんなに色目で近づいて粗相することもないだろうという、身体を守るための措置なのかも。犯されることに比べたら口で済むなら御の字だと。

「ありがとう、アン。今日も気持ち良かったよ」

 お礼を言うと、見上げていたアンが慈しむように目だけで微笑んだ。
 仕上げに舌で丁寧にお掃除を施されて着替えが再開される。

 年下先輩メイドのアンが陣頭指揮だ。僕と同じ年齢だから15歳。
 少し癖っ毛が愛くるしい。無表情で分かり難いけど元気一杯が取り柄の女子。
 全身から大好きオーラを放ってくる忠誠心の高い自慢のメイドだ。

 服を着せるのにいちいち抱きつくようなスキンシップを取ってくるのは、最近不祥事で爵位をはく奪された元子爵家三女のビビィ。こっそり赤い唇を舌なめずりしている。
 たしか今年で18歳。メイド歴は他家で二年程の経験だったかな? 性欲処理を目の当たりにして興奮気味なのか、爵位を王族の婚姻で取り戻そうと誘惑してくるのか、向上心の高い2番手メイド。

 最年長の20歳だけど、平民出身の新人メイドのシーラは少しだけ頬が赤いのを誤魔化すように作業に集中している。無表情が一番板に付いていない3番手のメイドさんだ。

「アンさん、明日は私が若様をお静めしますから」
「あの、アン様、私もクロ様にご恩返しをしたいのですが……」
「はい、そこまでです。朝食に遅れてしまいますから! ふたりとも手を動かして!」

 僕のお付きのメイド達は、三者三様だけど何故か屈辱的な性欲処理を進んで引き受けたがる。
 情愛とか打算とか尊敬とか。

 でも、朝の一番搾りのお役目は古株の特権。というか被害を拡大させないためのメイドの知恵。
 メイド独自のルールに口を挟んだりしないのが、メイドと上手くやっていくコツなのです。

 いまいち古いメイド自衛のしきたりが、僕のお付きメイド達には機能していないんだけど。
 これも愛されている証と前向きに捉えよう。

 アンは元気よく指揮を執る。
 小さな体で年上相手に気後れせずに頑張っている。
 二か月前までは、3人の中で一番の下っ端だったアンが今ではおつきメイドの筆頭だ。

 姉のように慕っていたメイド2人が貴族の息子に見初められて、嫁いでしまったのだから仕方がない。
 ベッドで大半を過ごしていた僕に3人もメイドは不要と判断されて、1月はアンだけが僕のお世話係だった。

 身体が復調してから街で騒動に出くわして、ひょんなことから縁がつながり、2人のメイドを雇い入れてもらった。それがビビィとシーラ。

「ねぇアン。アンもいずれお嫁に行くんだから、無理に性欲処理お勤めなんてしなくていいんだからね?」

 当家のおつきのメイドのお仕事には、あろうことか主人の性欲処理も暗黙に織り込まれている。
 変な女にうつつを抜かして妊娠なんてさせたら国家の一大事だから、予防措置という意味で。
 ムラムラしたらメイドで済ませるというのが当家のしきたり。

 なにそれバンザイ!
 いや、けしからん。

 当家に務める女性は例外なく、契約時に取り決めを承諾している。
 王族のお手付きにより身籠ってもその子供に王位継承権も王族の地位も与えられない。と。

 だから色々なメイド視線の取り決めが沢山あるのだ。無表情とか。

 子供を身籠もり産めば、例えその後に解雇をされてもそれなりの手切れ金をいただけるので、不幸にはならないんだけど、やりっぱなしの作りっぱなしは心が痛い。

 王族の性欲処理をして過ごしたあとも、彼女たちの人生は続くのだから。

「いえ若様。私はお暇を出されない限り、若様に仕える覚悟です! お嫁になんて行きません!」
「わたくしは、爵位も持たぬただの女ですから、この身は若様のお好きなようにお使いください」
「大恩ある若様でしたら、いつでもこの身を捧げます!」

 3人とも目が本気だった。
 僕のおつきのメイドたちは、朝からとっても元気です。

「それよりも、若様……本日のお召し物も?」
「うん、お願い」
「……かしこまりました」

 アンが少しだけ微妙な顔つきになる。
 だけど王族である主人に逆らうことはない。
 理不尽な命令をしているつもりはないんだけど。

「そこまで不満なの?」
「いえ、滅相もございません。可愛らしいのですけど……やはり若様には凛々しくいてもらいたいと思うのがおつきの者としての気持ちです」

 サーセン。

「アン様、そろそろお時間が……」

 シーラが眉を八の字に寄せて困った表情になる。
 当家の家長は時間に厳しいお方なので、ちょっぴり焦る時間なのかも。

「うわ、やっば……若様、失礼いたします!」

 メイド3人が慌てて支度の仕上げに奔走はじめた。
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