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第47話 エピローグ その1
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気配でふと目を開けるとユリスが鏡の前でくるりと回っていた。
人妻とはいえ身嗜みに気を使うこともあるのだから、可愛いものだと寝たふりで、しばらく眺めることにする。
「んー……あっくん好みの私でしょうか?」
鏡に向かって真剣な目で問いかけて、確認しているユリスが愛おしい。
可愛いや綺麗を飛び越して、俺好みかどうかを問う姿勢が実に献身的な人妻だ。
背中を気にして肩を気にして、おかしな所がないかを入念にチェックを続ける。
中々見られない仕草にほんわかしていると、息を吹き出しそうな事まではじめた。
ユリスは恥ずかしそうにスカートの裾を持ち上げて、水色のしましまぱんつを鏡に映す。
「うう……こんな風に見られてたんですね。……変なところはないみたいです」
下着の状態が気になったらしい。
いつでも見られて大丈夫だと、安心したかったのか。淫乱な人妻らしい。
まさか、人妻の黒歴史を盗み見する日が訪れるとはな。
異世界転生も業が深い。
その後赤くなった顔の熱を冷ますように髪を直しはじめて、ようやく納得がいったのか、ユリスはベッドに近づいてきた。
そっと目を閉じる。
まったく、脇の甘い人妻の相手をするのは気を使う。
「おはようございます、あなた、そろそろ朝食ですよ?」
すっかりと身支度を整えたユリスが、ベッドで横になる俺を覗きこんでくる。
たゆんとおっぱいが揺れ、ふわりと流れてくるユリスの匂いを朝から満喫する。
相変わらず胸が強調されたエロ制服がよく似合う。
前屈みの体勢で頬にかかった細い髪を、そっと耳にかける仕草がキュートだ。
つい先ほど、下着を確認していたとは信じられない爽やかな笑顔だった。
「もう! お寝坊さんですね」
ユリスはくすくす笑いながら、顔を近づけると濡れた唇を重ねてくる。
おはようのキスか。朝からサービス満点だな。
バカップルらしくて実に清々しい。
「うふふ、早く起きてもらわないと、お店を開けるのに遅れますから特別ですよ?」
はにかんだ表情が、とても可憐で家宝にしたい。
「ユリス、着替えてから伝えるのは申し訳ないが、今日は少し出かける用がある」
ベッドから中々出ない俺の手を、非力な身体で引っ張り起こそうとするユリスに伝える。
「あら、そうなのですか? 遠くですか?」
唇を子供のように尖らせた表情は、離れるのが寂しいからだろう。抱きしめたくなる慎ましさだ。
「いや、近場だ」
「じゃあ、お昼はご一緒できますね」
うふふと笑う。チャーミングな人妻には何度でも絆されるな。
「あら、でも……私が着替えた後で申し訳ないと言いましたけど?」
そうだな。二度手間をかける、せめてもの詫びだ。
中腰で首を傾げるユリスの背中に手を回して、隠していた糸の先を力強く引っ張る。
数秒後、はらりと制服は四散した。
「ああ、店は臨時休業にして、ユリスにも同行してもらいたい」
「……え? あれ?」
縫い合わせる前の布のパーツに成り果てた制服の下から、白い豊満な裸体が現れた。
ロケットおっぱいがたわわに垂れる。
美しいカーブを描く細い腰のくびれが見事過ぎる。
艶めかしいふとももは、いやらしいほどに白い。
水色のしましまぱんつに包まれた、少し大きめのおしりが出すギャップは最高だ。
ユリスは、ぽかんと口を開けていた。
確認するように散らばった制服の残骸を見て、次に自分の身体に目を向け、最後に俺を見る。
「きゃあああああ! どういうことですか!? あっくん!?」
絹を切り裂くような見事な悲鳴だった。
仕事人間のユリスのことだから、突然の臨時休業に苦言を呈されるくらいの覚悟はできていたが、まさか悲鳴まであげられとは想定外だ。
「すまない。突然店を休みにしてしまって、心苦しいが――」
「違うよ!? そこじゃないよ!?」
「ああ、すまない。休みと伝えるのが遅れたお詫びにせめて着替えを手伝おうと思ってな」
「それも違うよ!?」
「ユリス……寝起きだから、分かるように言ってほしい」
「制服が一瞬で脱げちゃう悪戯のことです!」
ユリスは慌てて身体をベッドに押しつけ胸を隠す。
真っ赤な顔で、眉を吊り上げ睨みつけてきた。
「新しい服を用意したから、早く試してほしいと気が焦った」
「絶対、変な脱がせ方をする必要なかったよね!?」
小さな親切というのは、往々にして大きなお世話になるらしい。
ぷりぷりと怒っているが、いつまでも裸でいるわけにもいかないから、ユリスは手渡された服をひったくると、半裸の格好で部屋から出ていく。
揺れるお尻が大変美味しそうだった。
「うう……なんですかこれ……なんですかこれ……」
しばらくすると、呪詛と間違えそうな呟き声を漏らしながら、ユリスが戻ってくる。
「見事だ、よく似合っているぞ!」
「あ、ありがとうございます。着方、あっていますか?」
初めて見るインナーもあったから不安なのだろう。
「点検しよう」
「うう……はい」
オーソドックスな白いブラウスに、身体の線が丸出しの黒のタイトスカート姿がよく似合っている。
だが特筆すべきは、ブラウスに薄っすらと透ける黒のハーフカップのブラだ。
信念を曲げてブラの作成に踏み切った自分を褒めたい出来だった。
ブラにしっかりと支えられたユリスの巨乳はツンと前に張り出し、うっとりするほどブラウスの前を盛り上げている。
タイトスカートのスリットからチラリと覗く、ガーターベルトのチラリズムも匠の技だ。
黒いストッキングを吊っている辺りは、白いふとももが見えて女の色香が凄まじく匂ってくる。
絶対領域の破壊力はやはり偉大だ。
露出は控えめなのに、内側から滲み出る成熟した女の色気は止めようがない。
「問題はないようだ」
「ありがとうございます。でも、あなた……これで外に出るって……破廉恥すぎないですか?」
ユリスは姿見で服装を確認している。
「いや……エロアイテムショップの店員にしては、おとなしい方だろう」
ユリスは、ガクッと寝落ちをしたみたいに、俯いてしまう。
これ以上余計なことを言うと、更に服が過激になるやぶ蛇だと理解したらしい。
「……それで、どこにお出かけですか?」
「冒険者ギルドだ」
「……分かりました」
ユリスに手を引かれて、ようやく身体を起こす。
貴族の娘のことでも思い出したのか、ユリスの手は汗で湿っていた。
*
冒険者ギルドに到着すると、受付に座る元気娘と目が合った。
「え? ご主人!?」
途端にあわあわと慌てはじめる。
もしかすると、授業を受けている教室に、予告もなく保護者が参観に現れた的な恥ずかしさか?
突拍子のない性格のくせに、案外可愛らしい所があるやつだな。
とりあえず、貴族娘の騒動で解雇されていない様子で一安心だ。
「ご主人! 困ります! 来るなら先触れを出していただかないと!」
少し顔を出さない間に、冒険者ギルドに来る際はそんな物が必要になったのか。
物々しいな世の中だな。
「え? あれ、もしかしてツギハギ屋の!?」
「嘘! 新作の発表なの!?」
「是非お話を!」
なんだ!? 若い娘さんたちが獲物を狩る目で見ているぞ!?
ほとんどが誰もが目を奪われる、透け透けのビキニアーマーでいらっしゃる。
つまり、ツギハギ屋の顧客だから始末が悪い。
あっという間に囲まれるが、手荒な真似はできそうにない。
「あっくん? 若い娘さんの知り合いが多いですけど、どういうことかな?」
ユリスの目は据わっていた。誤解だから腕をつねるな。
「あちゃー」
元気娘が頭を押さえて呻きながら、人混みをかき分けてやって来る。
「駄目ですよ、公でもない場に迂闊に顔を出すなんて、ご主人は人気者なんですから!」
「へぇ……あっくんって女の子に人気があるのですね」
ユリスのジト目が益々険しくなる。痛いからそろそろ許してくれ。
「あ……もしかして横にいるのは奥さんじゃないの!?」
「あらゆるアイテムを使いこなす達人って噂よ!?」
「ツギハギ屋は、奥さんが裏のボスなんだよね?」
「違いますよ!? え? え? あなた、どういうことですか!?」
あっという間にユリスにも若い娘さんが群がりはじめる。
「なにかしら、見たことがないスカートよ!」
「胸の形、綺麗すぎじゃない!?」
「待って待って、いまチラッて見えた脚、女の私でも卒倒しそうな色気だったわ!」
さっそくブラとガーターベルトの効果が現れたか。
なるほど。シースルーの奥にブラとガーターベルトが見えるというのも一興だな。
ユリスがチヤホヤされると大変気分が良い。
「うう……あっくん、たすけて」
ユリスは背中に隠れてしまう。
「ユリスさんはカリスマなんですから、ご主人は気を遣ってあげてください!」
まあ、人気があるのは俺やユリスではなく、エロアイテムショップのブランドだろう。
商売繁盛でいいことだ。
ツギハギ屋が有名になって感構い深い。
「それはそうと、いつでも声をかけてください!」
「私達、戦いますから!」
「ダサい服なんて、断固拒否です!」
お、おう。
貴族の娘の噂が広がっているのか。
「はいはい! ツギハギ屋のご主人は、これより打ち合わせでございます! 通して下さーい!」
元気が機転を効かせて匿ってくれる。
「さ、ご主人、今のうちに裏口からお逃げください」
どこの芸能人だ? まったく。
「いや、ギルドマスターと約束がある」
「はい?」
元気娘の目が丸くなる。
「案内を頼む」
「宣戦布告ですか!?」
「……ただの商売の話だ」
そんな物騒な場所にユリスを連れてくるわけがないだろうが。
貴族の顔を立てただけだ。
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