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第28話 人妻を駄目にする椅子 その2

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 さて、石の問題は片付きそうだが、ユリスのオーラルセックスの方は異様に壁が高い。

 正攻法では無理だと判断して、趣向を変化させてみることにした。
 雰囲気作りだ。

 浴槽を置いただけのシンプルな浴室を、贅沢な浴場へと大胆にリフォームする計画を立てた。

 和洋折衷な、肩までつかれる深さと3人は一緒に入れる大きさの浴槽を半埋め込み型にして、縁も広くゆったりと座れるように幅を取る。
 これでお風呂プレイの幅も広がり、人妻調教のレベルアップ間違い無しだ。

 裸体にバスタオルを身体に巻くのがマイブームのユリスは、浴場のお披露目に目を輝かせた。

「まあ! 素敵なお風呂になりましたね、あなた!」

 水色をメインにした色調のおかげで、暗くじめついた以前の浴室とは明るさも変化している。
 
「前の部屋を知っていますから、まるで魔法のようです」

 身体を寄せてきたユリスは、柔らかな身体を押し付けて頬に唇を当ててくる。
 何かに付けてスキンシップを取りたがる人妻には困ったものだな。
 
 ダンガなら腰を抜かしてのたうち回るチート能力だが、呑気なユリスのリアクションはこの程度だ。
 非常識なアイテム作成能力にも慣れたものだった。
 
「では、あなた、準備ができましたらお呼びしますね」

 身体ぐいぐい押されて追い出される。
 一緒に入浴する際は、先にユリスが身体を清めるのが条件だ。

 旦那の前で身体を洗うのは抵抗があり、先に俺が洗われると高い確率でセックスに突入して、入浴どころではなくなるのが理由らしい。

「あなたー、もういいですよ」
 
 三十分程度で声がかかる。

 ユリスは湯で火照った身体に白いバスタオルを巻き直して、はにかみながら俺を迎え入れた。
 爽やかな香りが芳しい。

 間男に見せるために、しっかりと身体を磨いた健気な人妻に興奮する。
 いますぐバスタオルを剥ぎ取りたい衝動をなんとか抑えた。
 ゴールは舌をユリスの割れ目に届かすことだ。

 ユリスの拒否反応は元を正せば汚れが原因なのだから、清潔な風呂場で洗いたての身体ならば抵抗感は薄まるはずだ。

 後は甘い雰囲気を演出して理性を奪う。一度口をつければ観念するに違いない。
 ああ、今からユリスの愛液が絡む舌の感触が待ち遠しい。

「縁に腰掛けて足を湯につけるのが作法だ」
「温かくて、癒やされますね」

 ほぅとユリスは色っぽい息を吐く。
 足湯状態で柔らかな身体をくっつけてくる。
 
 バスタオル一枚のユリスは、白い肩が剥き出しで胸元は広く肌を晒し、胸部を凶悪に盛り上がらせている。

 お湯にバスタオルを浸からせないために少しまくっているから、揃えた膝より上はむっちりとしたふとももが際どい所まで見えている。
 脚の間は見えないが、成熟した女の色気が醸し出されていた。

 なんという美味しそうな身体だ!
 たまらなくなって肩を抱き寄せて可憐な唇を奪う。

「ん……あなた……もう……でも、キス、嬉しいです」

 甘い舌を絡ませて、唾液を交換しているとユリスの身体は次第に熱く変化しいった。
 舌を伸ばしてぴちゃぴちゃと音を鳴らし、ユリスの口の中を堪能する。
 ぎゅっとユリスが腕を掴んでくる。
 キスだけで感じる身体を必死に隠す仕草が愛おしい。

「ユリス、綺麗だ」
「あっくん……うふふ……嬉しいです」

 少し目を伏せて上目遣いで恥ずかしそうにお礼を言われた。
 あまりの妖艶さに我慢が出来ず、乱暴に唇を押し付けてしまう。

「……んっ、あっくん、んっ……」
   
 うっとりとユリスの頬が緩まるまでキスを続けた。

 息苦しくなるような興奮の中で唇を離すと、ユリスは名残惜しそうに見つめてきた。
 もう頭の中は真っ白で、今すぐにでも押し倒して欲しいと瞳を潤ませている。
 半開きの口から覗く赤い舌が卑猥だった。

「ユリス、いつも俺を慰めてくれている礼をさせてほしい」
「あらあなた、お礼が欲しくてしているのではありませんよ? でもありがとうございます」

 目を細めて、頬にかかった金色の髪を指で耳にかけたユリスは嬉しそうに微笑んだ。
 よし、頃合いだ。

「では、足を開いてくれ。お返しをしよう」

 すん、とユリスの顔から表情が消えた。

「あっくんには、なくしたデリカシーを取り返して貰いたいです」

 む? お口ご奉仕のお誘いなど男には垂涎のシチュエーションだが、女性には難易度が高かったか。

「……あなた、命を粗末にするのはいけないことです。悩み事があるなら、なんなりと話してくださいな?」

 何故か真剣な目で心配された。女の性器への接吻が自殺行為だと伝えたいらしい。
 心を病んだ旦那を労るように背中を撫でられる。

「前にも話したが、ユリスの愛液が毒というのはただの迷信だ」
「いいえ、あなた、どちらかが死にます」

 ユリスは毅然とした態度で言った。
 どういうことだ?

「殿方に恥ずかしい所を舐められるなんて、とても恥ずかしいことです……たとえ毒ではなくあなたが死ななくても、代わりに私が悶死します。旦那様にお口で慰められたなんて噂が広まったら妻として死にます」

 誰が誰に話して噂が広まるのか、小一時間は問い質したい。
 迷信に対する誤解は以前の騒動での出来事が功を奏し、随分と薄れている。

 たが、羞恥や禁忌は中々ぬぐえ無い。
 エロ妻でも男から女への口淫は譲れない一線らしい。

 この世の性風俗の知識が薄いアレクの記憶も役立たずだ。

「さあ! お体を流しますから、こちらに座ってください!」
 
 隙が見出だせず連敗は続く。
 ならばアプローチを変化させてみよう。正面突破は無理があったか。
 
 もう一度、神から頂いたチート能力の出番だろう。

 *

 日が昇り沈むまで、一年中働き詰めのユリスを説得して定休日を設けた初日のことだ。

 エロアイテムも数が揃い生活にゆとりが出てきたからと説明したが、休みをとるということを理解されなかった。
 
 だが、2人の時間がほしいと訴えるとあっさりと承諾された。どこまでも面倒見のいい人妻だ。
 
「ごめんねあっくん、寂しかったんだね。だからあんなことを言い出したのですね。理解しました。あっくんは、働きすぎです」

 母に抱き締められるような抱擁。

 働き過ぎだとは、お前が言うなと反論したい。あと、疲れて死にたくなったわけでもない。
 ただ、人妻のあそこを舌で可愛がりたいだけだ。

 休みの日でも家事をテキパキとこなすユリスが、倉庫にお茶を届けてくれた。

「あら、あなた、それは椅子ですか?」

 倉庫に鎮座した立派な椅子を見てユリスは目を丸くする。

 店が休みなのでユリスの格好は足首まで隠れたワンピース姿だ。
 肩どころか腕すら出さず、肌を見せない清楚な人妻の代表者のような格好が、大変良く似合っている。

 休みの日くらいもう少しラフで目の保養になる露出の高い服装を望みたいものだ。
 ストッキングなど滅多に履いてもらえないから、作り甲斐もない。

「出し惜しみか?」

 恨み節を耳にして、ユリスはため息をこぼした。
 
「もう! ストッキングはあっくんがすぐ破くから履かないだけです!」
「作法を破るわけにはいかないからな」
「それ多分作法とは言わないよ、あっくん」

 皮肉も受け流す。
 今日はたっぷりと付き合ってもらう予定だから、無理なお願いで消耗されては困るからな。

「随分立派ですね」

 木製の椅子とはわけが違う。
 大型のシングルソファーと呼ぶべきだろう。移動しやすいようにストッパー付きのキャスターも備え付けられている。
 前世の知識を総動員して、時代を先取りした秘密兵器だ。

「でもあなた、これはちょっと売りに出すには大き過ぎますね」

 ツギハギ屋はそれほど広くない。
 だが心配無用だ。これは新たなビジネスだからな。

「売るのではなく、時間貸しを考えている」

 はて? と可愛らしくユリスは指を顎に当てて首を傾げた。
 レンタルという商法はあまり普及していないらしい。

「時間を決めてお代を頂き、使用してもらう」
「椅子を貸し出すのですか?」

 ただの椅子ならお金を出してまで座る客はいないだろう。
 あまりピンと来ていないが、利用すれば自ずと理解できる仕掛だ。

 ユリスは興味深げに椅子に近づき撫で始める。

「ふああ……柔らかいのにすごい弾力で押し返しくるよ、あっくん!」
 
 椅子に出来に感激していた。
 そうだろう! こだわりの部分を共感されると鼻が高い。

「うむ。分かってもらえるというのは嬉しいものだな。因みに硬さはユリスのお尻を参考にした」
「良さそうな話だったのに台無しだよ!?」

 ユリスは顔を赤くして抗議してきた。

 ユリスを真似て手触りを確かめる。
 やはり、いい出来だ。
 俺を見たユリスが「はわわ」とお尻に手を当ててもじもじとしている。
 
「どうした?」
「あっくんのバカ! 変なこと言うから気になっちゃいました!」

 自分のお尻を撫でられたと錯覚したらしい。可愛いい人妻だ。

「新商品だ。名前はマッサージチェアと名付けた」

 名前に不審な所はなかったらしく、ユリスはポフポフとクッションを確かめている。

「まずは、ユリスに試してもらいたい」
「……変な機能はついてないよね、あっくん?」
「もちろんだ」
「……信じますよ?」

 ユリスはチョロかった。
 魔法の椅子の魅力にとりつかれることを想像してほくそ笑む。
 ユリスが考える何倍もの満足を与えるだろう。

 豪華な椅子に包まれるようにユリスは座る。

「では始めるぞ」
「え? はい、あなた……うきゃっ」

 ユリスの背中が当たる部分が振動を始めた。続いて腰の辺りも震え始める。
 
「あ、なんですかこれ、背中がもこもこしてます……」

 マッサージチェアだからな。
 座るだけで癒やされる。

「こ、これは……いい気持ちですね」

 いくら元気に見えても披露はたまる。
 入浴で回復していても身体の凝りというのは中々取れない物だ。

「ああ、売るのではなく貸すという意味がわかりました」

 ユリスは心地良いマッサージに完全に癒やされていた。
 座る前にあった猜疑心など微塵もない。
 想定通りだ。
 
「ああ……体がポカポカしてきます、あなた」
「少し倒すぞ?」
「え? あなた? あっ……た、倒れていきます」

 背もたれ部分をリクライニングして傾斜を弱くすると、よりダイナミックにマッサージ効果が伝わる仕組みだ。

「これは……駄目になっちゃいそうな椅子です。いえもう椅子と呼ぶのも申し訳無いといいますか……」

 リラックスを追求した椅子だからな。
 すぐにでも寝てしまいそうな心地好さに、ユリスはうっとりした顔になっていた。
 目を閉じて振動に身を任せる無防備な人妻を見ていると、たまらなくなる。

「ん……もう、あなた……」

 つい物欲しそうな唇を塞いでしまった。
 無防備に投げ出された身体で上下に動く胸の隆起にそっと手を伸ばす。

「もう……そんなところを触って……エッチです……あなた……」

 ユリスは初体験のマッサージチェアの心地よさに上の空だった。
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