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第4話 ぬるぬる石鹸 その2
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「……おまたせしました」
ユリスは浴衣に着替えると戻ってきた。
ゆるい帯だけの前合わせの浴衣に慣れないユリスは手で体を抱きしめている。
この下がさっきまで穴が空くほど凝視した一糸まとわぬナイスバディだと思うと頬が緩む。
「なにかな、あなた?」
斜め下の視線で俯く、初心な少女のように恥ずかしがる表情はまるで美術品のように儚い。
「よく似合うな」
「え? ……ありがとうございます」
ユリスはワンテンポ遅れて反応した。
素直に褒められて拍子抜けした雰囲気だ。
アレクらしからぬ言動かもしれないが致し方ない。人妻が相手だと照れも少なく口に出来る。不倫が美味しいというのは旅の恥はかきすてという諺と相性が良いらしい。
白い浴衣は生地が薄くうっすらと肌が透けていて、首筋からうなじあたりの匂い立つ色気が凄い。
前世でも数えるほどにしか接することがなかった浴衣姿。しかもシースルー。俺ではないアレクの部分も総毛立っている。
歩くたびに裾から溢れる脚のチラリズムが素晴らしい! 感無量過ぎて、前世に足を向けて寝られないな。方向は不明だが頭を軽く下げておこう。
「あなた……?」
ユリスは呆けている夫を不審がって気遣うように寄り添ってきた。
先日倒れたことを思い出し、頭を打って中身を売ってしまったとでも心配されたか。
気をつけなければ。中身が半分偽物だと気付かれれば関係が崩壊してしまう可能性を孕んでいるからな。
近付くだけで女の匂いが混じる爽やかな空気が漂う。
すべてを持っていかれるとはこの事だ。
本当に女というのは凄まじいな。人妻という背徳感が加わり更に興奮は増していく。
「もう! 元気ならいいですけど――」
熱い視線に気付いたユリスは頬を染めて隠すように背を向けた。
「そんなに見ては駄目です……」
「無茶を言うな」
「無茶なんだ……」
改めて和装のユリスが醸し出すギャップに感嘆する。
少しエキゾチックだが、これはこれで売れそうだな。頭の隅に留めておこう。
「はじめよう」
桶につけて濡らしたタオルで石鹸を泡立てる。
名前の通りぬるぬる具合が半端なく、気を許すとどこかに飛んでいってしまいそうだった。
「この石鹸には肌をきれいにする成分をふんだんに使っている」
隣で艶やかな浴衣姿のユリスがぴくっと反応する。
「へぇ、お肌に……」
やはり女だな。
食いついてくると思った。
みっともなく食い気味というわけではなく、少しだけ興味があるだけですと言いたげなツンデレな態度が微笑ましい。
少しは嫌悪感をなくせるだろう。
計画の一歩は踏み出せた。
「銭湯で使った石鹸ほども泡立たないね」
手を伸ばし指でぬるぬるを確かめるユリスの仕草が妙にエロい。天然誑しめ。
「汚れを落とす効果と粘度を両立させたからな」
「凄くぬるぬるしてます……」
「ぬるぬる石鹸だからな」
「名前、もう少しなんとかならなかったの?」
「分かりやすくていいだろう?」
何故か盛大に呆れられた。
販売員であるユリス視点になってみると、客から尋ねられたら、ぬるぬる石鹸ですと答えられた方が応対が楽だと思うのだが?
カルチャー的なギャップの壁は高いと認識しておこう。
どかっと椅子に腰掛けた身体にお湯がかけられる。久しぶりのお湯が身体に染み渡る。
「じゃあ……洗うね?」
「頼む」
ぬるぬるした泡まみれのタオルで背中を流してもらう。
「ああ……気持ちがいい」
「うふふ、おっきい背中です」
「あとでお返しにユリスの身体も――」
「結構です!」
全力で拒否られてしまう。少しだけ悲しい。
一生懸命にアレクの大きな体を洗う内にユリスの浴衣は水分を含み次第に肌が透け始める。
胸の尖りもよく見える。
やはり白で正解だったな。
動くたびに合わせ目がはだけて白い肌がチラチラと溢れ、脚が見えると気にして裾を直す仕草が更に胸を打つ。
天然に誘惑してくるのは才能だろうか?
色々と計画通り。
これこそ人妻との入浴という醍醐味!
「最高だ、ユリス!」
「もう、身体洗ったくらいで大げさだよ? あっ……やだ」
ふとももを洗っていたユリスの手がピタッと止まった。
股間の逸物に気がついたのだろう。
ここ数日の生殺しが影響してペニスは天を突き固く勃起していた。
人妻との禁断の入浴が実現したのだから自然の摂理と言える。アレクにとっても幼い頃の水遊び以来の裸の付き合いだ。
チラチラと興味深げにユリスはペニスを見ていた。
「ユリス、そこも頼む」
「え……はい」
タオルで擦ると不味いと配慮をしてユリスはぬるぬるの泡を手に移すと、そっとペニスを握った。
「あわわ……あっくんのすごく固くなってるよ?」
目が泳ぎまくっていて可愛らしい。
もしかすると手で触れるのは初めてなのかもしれない。性情報に遅れた文化だからな。
夜の営みなど入れて出すだけで味気ない。娼館などで働く商売女は違うのだろうか? 興味はわくが何も知らない真っ白な人妻の色を染めるというのも一興だ。
どう洗えばいいのか困惑するユリスの手を導いて、洗うより気持ちよく擦る動きを教え込む。
裏筋に当たるように雁首に刺激を与えるように。
「これでいいかな?」
「ああ、気持ちいい」
「……これ、気持ちよくしてるの?」
ただの洗体ではないとバレてしまった。
洗っているんじゃないの? という疑わしい視線はスルーしよう。
「もう!」
黙り込んでしまった俺にしょうがないんだからと呟いて、ユリスのペニスご奉仕は続く。
ユリスなりに力を込めて握った指がぬるぬる石鹸の効力で快感に変換される。
甘い刺激でペニスは震える。
「びくんびくんしてます」
「そのまま上下に動かしてみてくれ」
「はい」
鬼頭部分にあたる指が心地良い。拙い技術でも人妻が俺のペニスで悦ばせる技の練習をしていると考えればエクセレントだ。
ユリスが手を上下するに合せてくちゅくちゅと卑猥な音が鳴り響く。
ローションまみれで手コキ気分だ。ぬるぬる石鹸の仕事は素晴らしい。
ゾクゾクと気持ちよさが襲ってくる。
「うわわ……脈打ってます。真っ赤だし痛くないの?」
「大丈夫だ、続けてくれ」
すのこに膝をついて前屈みになったユリスが足に身体を押し付ける体勢になる。浴衣越しの柔らかい体が温かい。
興味津々の顔も心なしかペニスに近づいている。
湿気で湿った浴衣は益々ユリスの身体の線をを浮かび上がらせていた。
ぎこちなかった動きもなくなりペニスに没頭するユリスに我慢できなくなった。
「あん、あっくん?」
顔を近付けて唇を奪う。
「んっ……もう、洗えないよ?」
甘える弟の悪戯を許す姉の顔だ。
昔から年下なのに姉のような振る舞いが多かったな。
メッと叱ってくるが手だけはしっかりと動かせてくちゅくちゅと音を鳴らせる。
唇に吸い付き舌を積極的に絡めてくる。
キスが気に入ってくれたのなら何よりだ。
唾液が絡み啜り合う。ユリスの口内は甘かった。
上下から鳴る同じような水っぽい音のハーモニーが脳を痺れさせる。
いやらしく気持ちよくさせている夫の正体が、半分とはいえ名前も知らない男だとは分かるまい。
どうしようもなくハイになってしまう。
しばらく無言で愛撫をされているうちにたまらなくなってきた。
射精など随分と久しぶりの気がする。
「もう出そうだ、ユリス」
「え? え? 出しちゃって、いいのかな?」
射精とは子作りと同義だから空撃ちに戸惑っている。
「出したい、ユリス」
「うん……じゃあ、いっぱい出して、あっくん」
そんな言葉が教えられる前から出てくるマイワイフに才能を感じてしまう。
身体が押し付けられてますます手の動きは激しくなり、唇は顔がくっつくくらい密着する。口元は二人の唾液でベトベトだ。見つめ合い甘い吐息と人妻の甘い唾液を存分に味わう。
浴室は熱気にまみれて汗も滴る。
女の匂い。ユリスの汗の匂い。すべてが素晴らしい。
「くっ」
腰が疼き、びゅるりと白濁した液が飛び散った。
「わ! すっごい……こんなに飛ぶんだ!?」
「手を止めないで続けててくれ」
「は、はい、うわ……まだ出る……」
ユリスの手の動きに合わせて、どくどくと精液が噴き出す。
他人の手で出されるというのは、こんなに気持ちがいいものなのか。
思考力が奪われて情けない声が出てしまいそうだ。
「うふふ、我慢しなくていいですよ?」
ユリスが柔らかな微笑みを浮かべ応援するように手を動かせた。
俺の情けない姿が琴線に触れたのか、ユリスの面倒見スイッチが入ったらしい。
「くぅ……」
おびただしい量の射精は続き、体中が弛緩してしまう体験だった。
出されたものはすぐにぬるぬる石鹸と混じり合ってしまう。
ユリスの手にも精液は垂れて艶めかしい。
「ふふ、すごくネバネバ……あっくんの匂いがする……」
ユリスは目を輝かていたが、俺と目があうと恥ずかしそうに目を逸らせた。
はしたないと思ったのだろうか?
長年一緒暮らしても射精を明るい場所で目の当たりにしたのは初めてなのだろう。
気持ちよく気怠い気分に浸っている間も、止め時を見失ったユリスの優しいマッサージが続けられる。
「……まだ固いままだよ?」
やはり一度くらいでは満足できなかったか。
よし、次に行こう。
応援ありがとうございます!
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