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第3話 ぬるぬる石鹸 その1
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「あなた、何してるのかな? わ……すっごい埃!」
ツギハギ屋には客から買い取ったガラクタを仕舞っておく倉庫が2つもある。
ユリスが子供の頃は居住空間だったらしい。
先代が在庫を把握せずに、来る者拒まずの精神で無計画に買い取った結果だ。
負の遺産とも言えるが、アイテム作成というチートな能力を顕現した俺にとっては宝の山。
「――とはいえ、限度がある」
「あはは、お父さんもお母さんも貧乏性で、せっかく買い取ったものだからって捨てられなかったんだよ」
懐かしーなーとユリスはニコニコ笑う。
汚部屋の掃除の基本は、まず要る物と要らない物を分けることから始まる。
「……あなた、捨てちゃうの?」
ガラクタを手にした俺の顔色を伺うユリスは心細くそう呟いた。
ご両親を否定される気分なのだろう。
「捨てるのではない、整理するんだ」
「お片付け?」
というような可愛い言葉では収まりきらない、木箱に詰められた在庫の山、山。
世界が変われど在庫を減らす方法は3つしかない。
買わないか、売るか、捨てるか、だ。
新アイテムを売り出したとは言え、ツギハギ屋のガラクタ買い取りは以前のままだ。
伝統的に捨てるいう選択肢がないなら、売れるように加工して売るしか道はない。
下着のようにな。
だが、ツギハギ屋をランジェリーショップにするつもりはないし、小規模の町では顧客も少なく住民に行き渡ればいずれ勢いは止まるだろう。
「まずはこの木箱を棚に変える」
棚を作り出して木箱を立体的に収納するだけで整理は可能だ。
「うわー、一気に片付いたね」
並べ直した事を片付けたとは言わないが、良しとしよう。
「アイテムに出来そうなものは片っ端から変化させる」
布系は奇抜ではないタオル等の日用品に、屑鉄系は農具に。このただの石にしか見えないものは何だ? 騙されたのではないのか?
頭が痛くなる。
「大変、大変」
次々と作成されるアイテムをユリスは手に取り収納していく。
何故か嬉しそうな顔をしている。
ナイトウエアなどの新商品に手を広げるのもありだが、販路を確保しないと下着と同様先細りだ。
町のしがない道具屋だ、量よりも品数豊富が望ましい。
「どうしょうもないものは置いておくか……」
偏ったアイテム作成では、適さない素材は減ることがないのが課題だな。
出処の怪しい枯れ草とか骨や牙は使い所が難しい。
「まあ、随分と片付きましたね」
陽が傾き店は閉店したのだろう、倉庫と店を行ったり来たりしていたユリスも倉庫整理を本格的に手伝ってくれる。テキパキと動く働き者だ。
額に少し汗が滲み色気が増している。
ふぅと桜色の唇を尖らせて息を吐く姿につい目を奪われてしまう。
人妻の無防備な身体が眩しくて困る。
「もう1つの部屋はどうするの? 明日にしますか?」
「いや、隣は午前中に片付けた」
「ふふ、えらいえらい。頑張りましたね、あなた」
手を伸ばしたユリスに頭を撫でられた。
ぶすっとした顔でもしていたのだろう、ユリスは俺の顔を見てくすりとおかしそうに笑う。
チャーミングな笑顔に今日の疲れなど吹っ飛ぶ。パートナーがいるというのはいいものだな。
「こっちの部屋は……あれ? なんですかこれ?」
「ああ、少し弄らせてもらった」
元々この部屋を作りたくて片付けを始めたのだ。
在庫を減らすのはついでで、ユリス攻略のために生活を改善する方法の1つ。
板張りの在庫部屋の床を水色のタイル張りにリフォームをした。排水口も用意している。
「あなた、これ、お風呂かな?」
「そうだ」
二人がゆったり浸かれる程度の浴槽を見てユリスは目を丸くしていた。
半日で立派な浴室は完成。チート能力様々だ。
町には共同の銭湯があるが料金は高い。日頃は濡らしたタオルで身体を拭くのが一般的だ。
ユリスにはいつでも綺麗な身体でいてほしいという願いでリフォームした。
個人的に風呂が欲しかったという理由もある。
だが、ユリスは眉をひそめてしまう。
「でも……大量のお湯を用意する余裕はないですよ?」
ガスも電気もない異世界では、風呂を沸かそうとするとアナログに膨大な薪を消費する。
下着程度の売上増など雀の涙。ユリスの心配も当然だろう。
「抜かりはない。クリエイトアイテム!」
手をかざした浴槽にはどんどんお湯が溜まっていく。
水もアイテム扱いだから空気中からいくらでも作れ、小さな火元があればお湯に変化させることもお茶の子さいさい。
「わぁ、凄いねアレク」
湯気が立ち上る光景を見てユリスはふんわり緩く笑う。かなりの高等技術に腰を抜かすと思ったのに味気ない。
ユリスらしいといえばらしいが。
「風呂はついでだ、ユリス」
「贅沢だね」
「今回はこの新商品を試したい」
「……」
ユリスが一歩身体を引く。新商品の下着開発に協力させられた体験を思い出したのだろう。
「それは、なにかな?」
俺の手に乗る四角い物体を指差す。
「石鹸だ、ただの石鹸ではなく、ぬるぬる石鹸と名付けようと思っている」
「名前を聞いただけで体中がゾワゾワしました!」
ユリスが絶叫した。
名前が安直すぎただろうか?
「早速使用してみよう」
「あ、じゃあ私は夕飯の準備をするからごゆっくり――」
逃げようとするユリスの腕をそっとつかむ。
「どこに行く?」
「……協力しないと駄目なのかな?」
静かに頷く。
そのために作ったのだからな。
はぁ、とユリスは大きなため息をついた。昔からなんだかんだでアレクに甘い幼馴染妻はチョロくて助かる。
浴槽にはたっぷりとお湯を張った。
湯加減も丁度いい。
ユリスはチラチラと湯船を見て、もじもじと体を揺らしている。
「どうしたユリス?」
「一応聞きたいんだけど、一緒に入るのかな?」
「夫婦だから構わないだろう?」
「構います」
肌を合わせることは許しても肌を見せ合う事は許さない。ユリスなりの線引があるらしい。
さすがは人妻だ。貞操観念が高くて結構。
「ぬるぬる石鹸の使用感を是非聞きたい」
「感想ならあとでたくさんお話しします」
「困ったな。ユリスには、実際に俺の身体を洗ってもらいたいのだが」
「え? あなたの身体を洗うの?」
裸に剥かれて身体中を洗われるとでも思っていたらしい。エロい人妻め。
それはそれで一興だが、アレクの力強さで妻の柔肌を傷つけたくないし、性的に怖がらせるのも時期尚早。却下だな。
「それなら……まぁ……いいかな」
目を泳がせながらユリスは渋々承諾する。
よし!
人妻と一緒の入浴が実現。滾ってくる。
服を脱ぐと木の香りが仄かに漂うすのこの上に立つ。
椅子も準備済みだ。
夫の裸を目の当たりにして、ユリスは生娘のようにはわわと顔を両手で隠していた。純粋な部分が大変好ましい。
「恥ずかしいならこれを着るといい」
用意しておいた白い浴衣を手渡す。
「私じゃなくて! あっくんが裸だから恥ずかしいんだよ!?」
「俺の裸など見慣れたものだろう?」
「慣れてません!」
真っ赤な顔で抗議された。愛おしくて抱きしめたくなる。
とはいえ、入浴をするのに服のままでは濡れてしまうし、裸になるのも恥ずかしいのかユリスは浴衣を手にする。
「見たことがない不思議な服ですね」
「浴衣という。東の地方で使われていた風呂用の服だ」
前世の知識を活かした手作りだ。
「……着替えてきます」
ユリスは部屋を出てしまう。
着替えシーンは見せてくれないらしい。まあいい。着てもらえるだけでも重畳。
以前までのアレクならそのままおとなしく待っていただろう。
だが羽目を外すと決めたからには、このチャンスを逃す手はない。
音を立てずにそっと扉の隙間から外をうかがう。
ユリスはタイミングよく洋服を脱いだ所だった。
真面目なアレクに覗かれるなどと夢にも持っていないユリスは無防備だ。
真っ白い肌の眩しさに息をのんでしまう。清楚な美しさにくらくらする。
着替えの覗き見というスパイスは侮れないな。
形の良い張りのあるおっぱいは想像以上の豊かな盛り上がりで、少し身体を動かすだけで柔らかさを表すようにふるふると揺れて官能的。桜色の乳輪と乳首の色合いに惚れ惚れする。
是非あの双乳にペニスを挟んで扱いて貰いたい。
十分に引き締まっているが、腰の肉付きが気になるのかユリスは手で擦っていた。
下半身はローライズな黒い下着。布の形状が変化しただけでこの妖艶さだ。
腰の食い込みの凹みまでがいやらしい。
大きさが気に入らないのかお尻を手で押さえ込んで小さくしようとしている。可愛らしい。チャームポイントなのだから自信を持てと伝えたい。
肉感的な長い脚のラインも圧巻だ。恍惚としてしまう。
躊躇う素振りもなく下着が降ろされ、手入れはされていないが清楚な金色の陰りが一気にエロさを爆発させた。
人妻の全裸に年甲斐もなく興奮してしまう自分に苦笑する。
浴衣で身体を覆い隠すまでしっかりと観察させていただいた。
悪いなアレク。お前の愛妻の身体はしっかりと脳裏に焼き付けさせて貰ったぞ。
俺に見せるために少し乱れた髪を手で直す健気な態度もな。
我ながら奇妙な感覚と興奮だった。
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