もうこれ以上、許さない

よつば猫

文字の大きさ
上 下
35 / 53

苦しめたら許さない2

しおりを挟む
 そのままベッドに押し倒されて、熱烈なキスに襲われる。

 甘い吐息を混ぜ合って、だんだんそれが荒くなって……
貪るように欲して、もっともっとと求め合って……
気持ちが高ぶってたあたしは、そんないつもより激しいキスに煽られて……
風人が欲しくてたまんなくなる。

 それだけじゃなく。
今の追い詰められてる状況にも、やっぱり結ばれない運命なのかと不安を煽られて……
とにかく身体だけでも結ばれたかった。

 なのに風人は、相変わらずその先に進もうとはしなくて……
だんだん耐えられなくなる。

「っ、もぉおしまいっ」
顔を背けて手で遮った。

「ええっ!全然足りないんだけどっ」

「いっぱいしたじゃんっ。
それに、おやすみのキスもあるんだし」

「うっわ、足りてんだ?
俺の事おかしくなるくらい好きとか言っといて、これくらいで足りてんだっ?」

「そうじゃ、ないけど……」
むしろ風人はキスだけで足りてんだっ?
と心の中で反撃する。

「じゃあしてい?するよっ?
手ぇどけて?」

「やだ、どけないっ」
シたくなるもんっ。

「早くどけないと舐めるよ?」
予告されたと同時、手のひらがベロリとなぞられる。

「っっ!
もう舐めてるじゃんっ」

「あ……
じゃあどけるまで舐めるよ?
ほら、早くどけて?
それとももっと、舐められたい?」
甘い声音で問いかけながら。

 その唇が手のひらをたどっては、食《は》んで。
その舌がぬらぬらと這っては、ニュルリと指の間を弄《まさぐ》っていく。

「ゃっ、あぁっ……」

「っ、月奈エロいって……
そんな感じられたら、我慢出来なくなんじゃん」

「しなくていいよっ。
なんで我慢するのっ?」

「いやするだろっ。
まだそんな関係じゃないんだし……」
悩ましげに片手で顔を覆う風人。

「キスはこんなしてるクセに?」

「だってキスは、外国じゃ挨拶だし?」

「ここ日本!」

「でも俺っ、弟と妹がちっちゃい時は普通にちゅーしまくってたし」

「でもこんなえっろいのはしないよねぇっ?」

「そーだけどっ……
ごめん!キスは我慢出来ませんでしたっ」

「だから我慢しなくていんだって!
ここまでやったら同じようなもんだし」
どのみち玉城さんには寝取ったと思われてるし。
お泊まりしてる以上、やってなくてもそうなるし。

「同じじゃないって!
今の関係で最後までシたら、ただのセフレじゃん。
俺はあいつみたいに、月奈をそんな扱いしたくない」

「あたしはそれでもいいのに?」

「だから、前にも言ったけど。
月奈はもっと自分を大事にしよっか」
そう言って風人は、またあたしの頭をよしよしした。

 大事にって、あたしなんかそうする価値もないのに。
第一あたしは、とっくに風人に抱かれてるんだよっ?
ふと、風人と初めての時が思い浮かんだ。





「月奈初体験はじめて、じゃないよなぁ?」
恐る恐る問いかけてきた風人に、あたしもおずおずと頷いた。

「くそ、やっぱりかー!
じゃあ最後の相手は、俺がなる」

「なにその、漫画みたいなセリフ……」

「いやマジで。
これからはずっと、俺だけのもんだから」

 それどーゆう意味かわかってる!?
これから最後の相手まで、ずっと風人だけって事は……
一生風人だけって言ってるも同然で。
胸が思いっきり鷲掴まれて、すぐ。
唇が風人のそれに塞がれた。

「好きだよ、月奈。
俺だけって、約束して?」
キスの合間に、甘く囁く。

「んっ、いいよっ?
風人、はっ?」

「俺は余裕で、月奈だけだよ?
この先、ずっと……」





 なのにあたしは、誉に数えきれないほど抱かれてきて。
風人も玉城さんを4年もの間……

 別れてたから仕方ないとはいえ。
あたしだけのものでいて欲しかったのに……
風人だけのものでいたかったのに……

「……ごめんねっ」

「いや責めてるわけじゃなくてっ。
悪いけど俺、抱きたくて狂いそうだし、頭ん中じゃめちゃくちゃ襲ってるよ?」

「なにそれっ、危ない人じゃん」

「うん、マジでヤバいし、すげぇしんどい。
けどそれ以上に、月奈を大事にしたいから」

 だから抱かなかったんだ……
胸がぎゅっと締め付けられる。

 正直、それでも抱いて欲しい。
だけどそんなふうに大事にしてくれるのは、すごくすごく嬉しいから……
我慢するし。
あたしも風人が大事にしてくれる自分を、ちゃんと大事にしなきゃと思った。

「じゃあ、ぎゅっとして?」
性的に抱き合えなくても、せめて物理的に少しでもくっついていたかった。
そして。

「ぎゅっとしながら、それやって?」
まだよしよししてくれてる手に目線を向けると。

「いくらでもするっ」
ベッドに横たわってた身体が、むぎゅうと抱き潰される。

「ちょっ、苦しいって!」

「あ、ごめんっ。
あまりにも可愛いすぎて……
つーかなにその破壊力!
おねだり月奈ガチでヤバいっ。
マジで俺もう、気は確かっ!?」

「知らないよっ。
もお、よしよしはっ?」
興奮する風人に、今さら照れくさくなる。

「あぁごめんっ。
つか俺、普通にやってしまってたけど。
よしよし、もうだいじょぶなんだ?」
と、止まってた手を動かし始める。

「うん、あの時は払いのけてごめん。
それと、苦手って言ったのも嘘なの。
ごめんね?」

「そーなんだっ?
いやいーけど、なんでそんな嘘?」

「だって、心が風人に持ってかれそうで……
怖かったから」

「マジでっ!?
え、そんな前からっ?
うっわ、感動……
も、一生大事にするっ」

 一生っ!?
その軽はずみな言葉に、不覚にも胸がヤラれる。

「だから、ほんっと口だけ!」

「違うし!
神に誓えるねー」

「ふーん、じゃあ一生抱かないんだ?
ちゃんと守ってねー」

ー「抱きたくて狂いそうだし…
…けどそれ以上に、月奈を大事にしたいから」ー

「あ……
いやその大事じゃなくてっ、」

「ほらまた手ぇ止まってるよっ?」

「あぁごめんっ。
じゃなくて月奈聞いてっ!?」

「ふふっ、風人のよしよしめっちゃ好き」

「マジで!?
俺もう腱鞘炎になるまでするよっ?
って、俺の事弄ばないでっ?」

 弄んでないよ、ほんとだよ?
あたしは風人の腕の中で、クスクスと笑いながら……
たまらなく好きなそのよしよしに、不安も辛さも吹き飛ばしてもらってた。


 だけど、追い詰められてる状況に変わりはなくて……
誉の言う通り、玉城さんがこのまま引き下がるはずもなく。
一週間後、不安は現実になる。

 その日、また仕事中に風人から、今日彼女が来る事になったと連絡が入り。
あたしは、きっとここにも来るだろうと腹をくくった。

 実際約束を破ってるわけだから、前回みたいに誤解を突き通すのは難しいだろうし。
あたしと風人の過去を知ってる玉城さんの目は、親の時みたいに誤魔化すのは難しいと思ったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

ただずっと側にいてほしかった

アズやっこ
恋愛
ただ貴方にずっと側にいてほしかった…。 伯爵令息の彼と婚約し婚姻した。 騎士だった彼は隣国へ戦に行った。戦が終わっても帰ってこない彼。誰も消息は知らないと言う。 彼の部隊は敵に囲まれ部下の騎士達を逃がす為に囮になったと言われた。 隣国の騎士に捕まり捕虜になったのか、それとも…。 怪我をしたから、記憶を無くしたから戻って来れない、それでも良い。 貴方が生きていてくれれば。 ❈ 作者独自の世界観です。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

処理中です...