溺愛シェーカー

よつば猫

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ジャックダニエルのトワイスアップ1

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 そして、日曜の昼下がり。

 京太くんと話す約束をしてたあたしは……
どっちかの家ってわけにもいかず、人目を気にしないで話せる個室カフェに来ていた。

「なんか粋とこーゆーの、久しぶりすぎて緊張するなっ」

「ははっ、でもそのっ……
いい話じゃないってゆうか……」

 すると京太くんは、少し切なげな優しい笑顔で……
「ん、わかってる」

 それに胸が締め付けられる。

「でもその前に……
2年前の事、ちゃんと聞いて欲しいんだ」

「……浮気してない、って事?」

 悲しげに頷く京太くんに、申し訳なさでさらに胸がぎゅっとなる。

「俺今までも、周りの嫉妬で付き合った相手に嫌な思いをさせてきたからさ。
粋には絶対、そんな思いさせたくなくて。
公認させる状況を作ったり、付け入る隙がないって気持ちを見せつけたり、俺なりに色々立ち回ってきたつもりだったんだけど……」

 やっぱりあたしを守るために、気持ちを公言してたんだ……
だからこそ。
翔くんと働いてる今は、この前みたいなアクシデントが起きたけど。
同じように人気者だった京太くんと働いてた時には、なんの被害にも合わなかったんだ。

「だけどいざ付き合ったらさっ。
最初はその笑顔が見れれば、それでよかったはずなのに。
だんだんその気持ちまで、もっともっと欲しくなって」

 そんなの、あたしだって同じだったよ。
なのに……

「でも粋は自分の気持ち言わないし、触れられるのも嫌がってたから。
俺不安でっ、周りへの警戒より不安の方が大きくなって……」

 ごめん。
本当にごめん……
申し訳なくて涙がにじむ。

「そんな時あの子と偶然会って、粋の事で相談があったらなんでも聞くよって言われたんだ。
それでつい、粋も仲良いって言ってたから安心して……
相談に乗ってもらったら、あんな事になったんだ」

「それってつまり……
ただ相談してただけなのに、あたしが勝手に浮気って」

「いやそーじゃなくて!
粋は悪くないんだ。
前に責めるような事言っといてなんなんだけど、粋がそう思ったのも無理ないんだ。
後でわかった事だけど、」

 と明かされたのは……
なんとすべてはその子の、あたし達を別れさせる策略だったとゆう。

 そしてその策略自体は、見事に成功したわけだけど。
「やっぱり」という前置きで浮気を疑われた事が、腑に落ちなかった京太くんは……
後日その子にずっと好きだったと告白されて、策略に勘付いたそうだ。

 それで、責めるように問い詰めたら……
相談とゆう名目で京太くんに近づいた事や、自ら浮気の噂を流した事。
そしてそれらしい行動を取って、結果的に2人であたしを苦しめてた事を、逆ギレで暴露してきたらしい。

「すげぇ頭にきたけど。
結局は俺が自分の不安に負けて、油断したから守れなかったわけだし。
コソコソ相談なんかして、粋を苦しめてたのは事実だし。
粋の気持ちを試すような真似した挙句、別れようって言葉に逆上して……
傷付いてた粋をさらに傷付けたのは、俺自身だから。
ほんとにごめん」

 その時の気持ちが胸に迫って……
言葉にならず、ただ首を大きく横に振った。

「だからもう合わせる顔なんかないと思ったし、別れが正解なんだと思ってた。
俺、ずっと粋の気持ちがわからなくてさ。
告白したのも俺だし、しつこく口説いて無理やり付き合ってもらった感じだし。
浮気と思った状況でも、怒るわけでも悲しむわけでもなく、ただ終わらせようとしてたから……
それが粋の答えなんだなって」

 そんなふうに思ってたんだ……
いや思うよねっ。

「ごめんっ……」

 京太くんの辛い気持ちや、そう思せた自分の不甲斐なさに、涙がポロポロこぼれ落ちる。

「責めてるわけじゃないんだ。
ただ、それでも俺は好きで。
ずっと忘れられなくてっ。
どうにか忘れようと頑張って、ひたすら仕事に没頭してきたけど……
また再会して、やっぱり諦められないって確信して。
なぁ粋、ほんとの事を教えてくれないか?
あの頃俺の事、ちゃんと好きだった?」

 好きだったよ。
そしてその気持ちは終わった気持ちだから、他人事みたいに口に出来そうな気がしたけど。
今それを口にするのは違う気がして、あたしはただコクリと頷いた。

「……そっか。
なのに俺、自分の不安ばっかで疑って……
ごめんな。
しかもこの話だって、あの子が証言してくれるとは思えないから証拠もない。
それどころか今日の目的も、俺を諦めさせる話だってわかってる。
だけど俺今度こそっ、どんな粋でも受け止めるし必ず守る。
だからもう少しだけ、チャンスをくれないかっ?」

 もおっ、なんでそんなに想ってくれるのっ?
あたしは京太くんみたいな素敵な人に、そこまで想ってもらえるような人間じゃないのにっ。

「ごめん、チャンスはあげられない……
あたしはもう、誰とも付き合う気はないからっ」

「え……
なんだよそれ、もしかして俺のせいっ?」

「違うっ、自分自身の問題だよっ。
こんなんじゃ誰と付き合っても、例え京太くんとやり直しても。
また傷付けてしまうし、あたしも傷付く。
もぉそーゆうの繰り返したくないの!」

「じゃあその問題ってなんなんだよっ。
俺はそんなのもひっくるめて支えたいし、一緒に解決していきたいんだよ!」

「もうなんでっ!?
京太くんなら、あたしなんかより相応しい相手がいくらでも見つかるよっ。
でもあたしは無理なの!わかってよっ」

「わかったよ」

 急な引き下がりに、心がガクッとずっこける。
え、わかってくれたのっ?

「じゃあ俺はずっと片思いでいい」

 そっち!?

「いやそれは~、あたしも気が引けるってゆうか……」

「俺、諦められないって言ったよな?
別に片思いなら自由だし。
粋が誰かのものになったならともかく、1人でいるならほっとけないし、諦めだってつくわけないだろ?」

 誰とも付き合う気はないって事を逆手に取ったな~!
相変わらずの策士め~。

「まぁそーゆうわけだから、これからも店には顔出すし。
常連の1人だと思って気にするなよ」

「いやそんな人生、お金と長身とイケメンの無駄遣いだからっ」

「ははっ、粋の笑顔で元取るよ」

 なんだその殺し文句わ!
何気にズキュンと突き刺さる。

「もうっ、そんなのお釣りがきまくるよ」

「じゃあさっ、その分美味しいウイスキー教えてくれよ」

 そこは否定せんのかーい!

「取引先の部長さんがウイスキー通らしくてさっ、俺も勉強したいと思ってるんだ」

「そーゆうことなら任せてよっ。
あ、めっちゃ詳しい副店にも聞いとくねっ」

「助かる」


 京太くんの気持ちには応えられないけど……
こーやって少しでも力になれたらいいな。

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