溺愛シェーカー

よつば猫

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魔王のロック4

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「もうほんっとーによかった。
舞王のみなさんによろしく伝えてねっ?」

 長時間過ごして、タメ語もだいぶ慣れて来た。

「ん……つか送るよ。
俺SUVだからチャリ積めるし、結構飲んでて危ないし」

「んーん全然大丈夫っ。
それに今から打ち上げ行くんでしょ?」
さっきそんな電話をしてた悠世くん。

「や、打ち上げは送ってから参加すればいいし、なんかあったらこっちが責任感じるし」
と押し切られ。

 悠世くんがそれを舞王の人に連絡しようとしたところで、その相手とちょうど会う。

 あ、受付んとこで戯れ合ってた人だ。
てゆうか、この人旗士さんだったんだな~。
2人の会話が終わるとすかさず。

「あのっ、優勝おめでとうございます!
今年もめちゃくちゃ感動しましたっ。
これからも頑張ってくださいっ」

「お~!ありがとうっ。
毎年見てくれてんの?
今度こいつ通じて遊びにおいで~」

「マジっすか!
嬉しいです絶対行きますっ」
と、願ってもない機会を掴む事に。



「どうしよう悠世くん……
まさか舞王のお城に招かれるなんてっ」
送りの車内は、当然その話で持ちきりに。

「お城って……
つか社交辞令とは思わないんだ?」

「そーなのぉ!?
だとしてもそこは悠世さまのお力で……」

「俺は力の無駄遣いはしない主義なんで」

 こんっのケチ男め~。
そうしてるうちに、近かったからあっという間に家に着く。


「今日はすっごく楽しかったし、何から何までありがとうっ」
ってなんだかデートの締めくくりみたいだけど……

「や、俺も色々聞けて良かったし」

 よかったのっ?
無理やり聞いてもらった感じなのに……

「じゃあもうダサいとか思ってないすかっ?」

「ん、ありがと……」

 ありがとお!?
まさかウンチク語って感謝されるとは……

「悠世くんって、実はいい人だよね~」

「どーゆー意味だよっ」

 こーゆーやり取りが楽しくて……

「だってさりげなく優しいし。
明日もきっとお店に来てくれるんだろうな~って」
遠回しに誘ってみたり。

「だからキャバクラかよ」

「え、いつもそんなふうに誘われてんの?
てゆうかキャバクラとか行ってるんだっ?」

「いや行かねーしっ。
松本さんこそ、いつもお客さんにそんな事言ってんだ?」

「え、あたし?
言ってるかな……」

「考えんなよ……」

「じゃあ次はいつ来るのっ?」

「だからそーゆうっ……
あぁも、次は水曜に打ち合わせ出来る?」

「打ち合わせっ?
店長の最終チェックの事?」

 次の企画はようやく夜カフェセットで。
サンプル作りと写真撮影だけだったから、あたしとの打ち合わせは今月早々に終わってた。

「そうじゃなくて。
例のスタンプカード、夜カフェの前に始めときたいなって。
アサイー屋台の好調にも結びつけたいし」

 あ、スタンプラリーで燃え尽きてすっかり忘れてた。

「了解ですっ。
ってやっぱり打ち合わせは敬語の方がいいのかな?」

「……まぁ、出来るだけ」

 それはけっこうややこしいな……

「じゃあまた水曜に」

 あ、帰っちゃうんだ?
悠世くんってほんといつもサクッと帰っちゃうよねー。

「はーいお元気でー」
まぁ、打ち上げ行かなきゃだけどさ。

「なんだよその棒読み……
そんな拗ねなくても、舞王に遊び行く件はちゃんとするから」

「え、ほんとにっ?」
それで拗ねてたわけじゃないけど……

「ありがとう悠世くんっ!」
もうめっちゃ好きっ。




 そうして水曜日。

「いらっしゃいませ~」
他のスタッフの声かけに、いちいち胸が騒ぎ立てる。

 あ~なんか!
仲良くなってからお店で会うの初めてだから、変に緊張する。
し、早く来ないかな~。

 入口のガラス扉から、何気にエレベーターの方を覗くと……
ちょうど出て来た悠世くんと、バチっと目が合う。

「お、おつかれさまでーす」
扉を開けて出迎えるも。

 うわ恥ずかしっ。
なに待ち構えてんだって感じじゃん!

「……お疲れ様です」

 しかもお互いぎこちないとゆう……


「さっそくスタンプカードですが……
前に言った通り、松本さんの案をもう少し練りましょう」

「はい先生!
前は聞けなかったけど、やっぱりもっと練らなきゃ使いもんにならないっすか?」

「そーゆうわけじゃ……
ただせっかくいい内容なんで、もっとそれを活かしたいなって。
つか先生って……」

「じゃあ部長?」

「いや真面目にやれよ」

 おっと、急にグイっとくる感じたまんないなー。

「まず特典メニューは、スタンプラリーのものを応用する形でいいですか?」

「全然OKですっ」

「じゃあ次に期限ですが、6ヶ月はどうですか?」

「短っ!
でもそれってやっぱり財布の肥やしにならないように?」

「まぁ平たく言うと」

 そうやってスタンプカードの内容を完成させてくと……


「じゃあこの内容で、新井さんのOKが出たらサンプルを作って来ます」

「お願いしますっ。
って事で、悠世くんはもう帰るの?」
タメ語が解禁になったとこで、さっそくコソコソ尋ねる。

「……や、この前言ってた魔王のロック?飲むつもりだけど」
同じく悠世くんも控えめに答えた。

「ほんとに?すぐ作るねっ」
よかった!まだ一緒にいられるっ。



「お待たせでーす」

「つかさっきからなんで小声?」

「……なんでだろ?」

 なぜだか周りの目が気になって……
それにこの秘密っぽい関係がくすぐったくて、大事に隠してたい気分。

「うわこれ、ほんとに焼酎っ?
すげぇ美味いんだけど」

「でしょでしょっ?
ところで、もうひとつの舞王はどーなったの?」

「あぁそれ、ここの契約が終わってから……
来年早々にでも連れてくよ」

「遅っ」

「いやそれまで色々立て込んでるし、連れてくんだから文句言うなよ」

「うそうそっ、ありがとね悠世くんっ」


 魔王は焼酎のイメージを変えたお酒で……
あたしと悠世くんの親密度もまた、同じ呼び名の舞王によって変わってた。



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