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そして、ニケはというと……
あれから大魔導師が、庭整備係のニケに会わせて欲しいと、サイフォスに願い出たため。
その仲介で、面会する事になったのだった。
そこで、当時の弁明とともに。
守れなかった事や酷く傷付けてしまった事を、涙ながらに謝罪され。
償わせて欲しいと懇願されたのだった。
そう、ニケの母から妊娠を告げられたニケの父は。
全てを捨てて、その愛する人と生きようと思ったが……
後継者に選ばれるために、幼い頃から血の滲むような努力をしてきた事を、無駄にしていいのかと。
愛のない政略婚とはいえ、罪のない家族を切り捨てていいのかと。
なにより、愛する人に憎しみや危険が及ぶ訳にはいかないと。
悩んだ末に、別れを決意したのだった。
というのも、駆け落ちしたところで……
追跡を防ぐ理由で、魔法が使えなくなるため。
最大限の援助だけして、自由にした方が……
そしてネイキッドサファイアほどの実力や、その美貌があれば……
一緒に逃げるより幸せになれるはずだと。
その方が身重の体を守れるはずだと、判断したからだった。
けれどもサイフォスの推測通り。
ギフテッドサファイアが突然姿を暗ましたため、何ひとつ守れなかったという訳だった。
来訪時にニケを拒絶した理由も、サイフォスの推測通りだったが……
自分まで眠らされた事で、そんな魔力を持っているとしたら、ギフテッドサファイアとの子であるニケ以外に考えられないと勘付き。
となると必然的に、ニケが闇魔術士である事が浮かび上がり……
日陰の人生を歩ませて、多大な苦労をかけてしまった事に、いっそう後悔と謝意を募らせたのだった。
しかしニケは、和解も望んでいたものの。
そう簡単に蟠りが解けるはずもなく……
「許すかどうかは、これからのあんた次第だね」
と答えたのだった。
それにより大魔導師は……
なんと自ら、不倫の過去と隠し子の存在を暴露し。
辞任して、後継者に最強魔術士であるニケを推挙したのだった。
ところが奔放に生きてきたニケは、「冗談じゃない!」とそれを断り。
本来の後継者である大魔導師の正統な息子は、まだ力不足だったため。
結局、大魔導師に匹敵する魔力を持つ、その兄が就任したのだった。
だがその件でニケは、素性を隠す必要がなくなったため。
自分にも出来る事があるのではないかと考え……
闇魔術士を救い、守る機関を立ち上げる事に思い至ったのだった。
とはいえ、魔導師の方針に反して無登録を認めるとなると。
公的な許可がない限り、実現は不可能に近いため。
ニケはサイフォスに協力を仰ぎ……
サイフォスは、ニケなら上手くやってのけるだろうと判断し。
王太子直属の特別機関として許可し、極秘任務等の仕事も与える事にしたのだった。
そうして。
これまで水晶を通してやり取りしていたニケは、正式な手続きのために王宮を訪れていた。
「手続きは以上だ。
闇魔術士の統帥として、しっかり頼むぞ?」
「誰に言ってんの?
言われなくてもちゃんとやるし。
必要不可欠になるくらい、あんたの役にも立ってみせるよ」
それはニケなりの、感謝と恩返しだった。
「それは頼もしいな。
だったらモエの役にも立ってくれ」
「それも、言われなくてもそのつもりだし。
姉さんには今度、術を教える事になってるから」
「そうなのか……」
2人が良好な関係を築いている事を、喜ばしく思うサイフォス。
「じゃあ僕は帰るから、王太子妃様によろしく言っといて」
「なにっ?
会って行かないのか?」
「……うん、色々忙しいし。
また今度にするよ」
本当は、会いたくてたまらなかったが……
他の男の伴侶となったヴィオラと接するのは、遣る瀬無いうえに。
もう自分は必要とされてない事を、目の当たりにするのが怖かったのだ。
しかし、中央庭園の側を通りかかったところで、初めて会った日を思い出し……
やっぱり会えば良かったと、後悔が押し寄せる。
そこで「ニケ!」と、聞き覚えのある声で呼び止められて。
振り向くと、会いたくて堪らなかった姿が映り込む。
「えっ……
こんなとこで、何してんのっ?」
動揺して、そう口走るニケ。
「こっちの台詞よ!
黙って帰ろうとするなんて、ひどいじゃないっ。
侍女たちがきゃあきゃあ騒いでなかったら、気付かないとこだったのよっ?」
「だって別に、会う理由ないし……」
「ひどい!
私は会えるのを楽しみにしてたのにっ」
その言葉に、嬉しくてたまらなくなるニケ。
「しかもニケのために、アフタヌーンティーも用意してるのよっ?
だから、今度は断らないで?」
と、懐かしむように微笑むヴィオラ。
「……仕方ないなぁ。
じゃあ付き合ってあげるよ」
と、ニケも観念したように微笑んだ。
「……で、なんでわざわざ専用庭園に?」
「だって、周りの目がない方が気楽に話せるでしょう?
ここなら私とサイフォス様しか、勝手に入れないし」
そう、王太子妃にいつもの調子で話すとなると、良からぬ噂が立ちかねない上に。
常に女性たちから熱い視線を向けられるニケも、気が休まらないと思ったからだ。
「なるほどね。
にしても、すごく綺麗な建物だね」
「でしょう?」
それは離婚前にサイフォスがサプライズしようとした、宝石のような青いパビリオンだった。
「けど、こうも青ばっかだと……
僕とヴィオラの庭みたいだね」
と、ニケが思うのも無理はなく。
青の世界に、青のドレスを纏ったヴィオラと、青の髪と瞳を携えた自分がいるからだ。
とそこで。
「私がいるのもお忘れなく」
と、お茶やスイーツを並べていたリモネが口挟む。
「あぁ、その節はどうも」
邪魔に思いながらも、とりあえず潜入時の礼を棒読みで告げるニケ。
「感じわるっ」
「リモネごめんねっ?
それと、手伝ってくれてありがとう。
あとはこっちでやるから、下がってゆっくりしてて?」
よしっ!と心で2人きりを喜ぶニケ。
「ところでニケ、すごいじゃない!
闇魔術士の機関を設立するなんてっ」
「別にすごくないよ。
王太子様の力を借りなきゃ、何も出来なかったし」
「ううん!
サイフォス様は公的な事を、情で許可したりはしないわ。
ニケの考えやプランが素晴らしかったから、協力してくださったのよ。
私も協力したいから、出来る事があったら何でも言ってね?」
「気持ちはありがたいけど、ヴィオラは足手まといかも」
「ひどい!
相変わらず容赦ないわねっ。
でもお祝いは絶対したいから、何かリクエストがあったら遠慮なく言ってね?」
ーーリクエスト!?
そこでニケは、ダメ元で願望を言ってみる。
「……じゃあ、ハグがいい」
「ハグ?……ハグっ!?
さすがにそれはっ、ごめんなさいっ!」
サイフォスの妻となったからには、それをする訳にはいかなかったのだ。
「やっぱりダメか……」
しかしニケは、どうしてもヴィオラに触れたくて……
「じゃあ握手でいいよ。
それくらいなら問題ないよね?」
と、手のひらを差し出した。
「問題は、ないけど……
逆にそんな事でいいの?」
「いいよ。
何よりも頑張れる、エールになるから」
「ほんとにっ?
それなら喜んで……
頑張ってね、ニケ」
そう言って、差し出された手に自分の手を重ねると。
ぶわりとニケは、たとえようのない感情が込み上げて……
堪らずぎゅっと、その温もりを噛み締めるように握り締めた。
ところがその時。
「俺の妻に気安く触るな」
とサイフォスから不満の声がかけられる。
「っ、なんでいるワケっ?」
「お前こそ、忙しいんじゃなかったのか?」
「忙しくても、ヴィオラが僕のために用意してくれたものを、断るわけないだろ?」
「俺も、お前たちが専用庭園に向かっているのが見えたため。
仲間に入れてもらおうと赴いたところだ」
「はあっ?
あんた今公務中だよね?」
「生憎今は休憩中だ。
それより早くその手を離せ」
「はぁ、握手くらいで……
心の狭い王太子様だな」
と、渋々それを解くと。
「何だと!?
お前の事を、どれだけ寛大に対処してると思ってるんだっ」
と反論するサイフォス。
そこでヴィオラが、場を収めようと口挟む。
「確かにそうですね。
私の大切な友人の事を、寛大に対処してくださって、そして親身に協力してくださって、本当にありがとうございます。
サイフォス様はほんとに優しい方ですね」
2人して、一気に嬉しい気持ちになるも。
ニケは自分の言動のせいで、王太子の株がこれ以上上がるのを防ぎたいと思い。
「……僕も、これまでのご無礼を深く謝罪いたします。
そして寛大な対処とご協力を、心から感謝致します」
と態度を改めた。
「素直に偉いわニケ!
ちゃんとサイフォス様を立ててくれてありがとうっ」
その言葉に、今度は王太子が……
ーーそんな当たり前な事で褒められるのかっ?
と、ニケの株が不当に上がるのを防ぎたいと思い。
「いや、調子が狂うから。
お前は今まで通り、無礼極まりなく、クソ生意気なままでいい」
と寛容した。
「いや、言い方……」
そんな2人のやり取りに。
ヴィオラは堪らず、ふふっと吹き出してしまう。
するとサイフォスも、その楽しそうな笑顔に堪らなく幸せを感じ……
ハハっ!と、噛み締めるように破顔した。
それを目にしたニケは、普段の冷淡な表情からは想像もつかない、サイフォスの屈託のない笑顔に面喰らっていた。
しかし、今の王宮では……
そんな2人の姿は、もう珍しいものではなく。
かつての冷酷な王太子の噂など、微塵も感じさせないほど。
そしてかつての悪妃だった事も、微塵も感じさせないほど。
いつも仲睦まじく笑い合う、2人の笑顔が溢れていた。
さらには、その数年後。
笑い合う笑顔の中には、可愛らしい天使たちの笑顔も加わっていたのだった。
fin
ーあとがきー
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
本作は初のファンタジーで、批判もたくさんいただきましたが……
亀更新にもかかわらず、ずっと追いかけ続けてくださった読者様や。
二ノ前ト月先生が描いてくださった、表紙の素敵すぎるイラストや。
とあるノベルズコンテストで審査ユーザーの方々がくださった、嬉しすぎる評価コメントのおかげで、頑張る事が出来ました。
この場を借りて、深くお礼申し上げます。
本当に、ありがとうございました。
あれから大魔導師が、庭整備係のニケに会わせて欲しいと、サイフォスに願い出たため。
その仲介で、面会する事になったのだった。
そこで、当時の弁明とともに。
守れなかった事や酷く傷付けてしまった事を、涙ながらに謝罪され。
償わせて欲しいと懇願されたのだった。
そう、ニケの母から妊娠を告げられたニケの父は。
全てを捨てて、その愛する人と生きようと思ったが……
後継者に選ばれるために、幼い頃から血の滲むような努力をしてきた事を、無駄にしていいのかと。
愛のない政略婚とはいえ、罪のない家族を切り捨てていいのかと。
なにより、愛する人に憎しみや危険が及ぶ訳にはいかないと。
悩んだ末に、別れを決意したのだった。
というのも、駆け落ちしたところで……
追跡を防ぐ理由で、魔法が使えなくなるため。
最大限の援助だけして、自由にした方が……
そしてネイキッドサファイアほどの実力や、その美貌があれば……
一緒に逃げるより幸せになれるはずだと。
その方が身重の体を守れるはずだと、判断したからだった。
けれどもサイフォスの推測通り。
ギフテッドサファイアが突然姿を暗ましたため、何ひとつ守れなかったという訳だった。
来訪時にニケを拒絶した理由も、サイフォスの推測通りだったが……
自分まで眠らされた事で、そんな魔力を持っているとしたら、ギフテッドサファイアとの子であるニケ以外に考えられないと勘付き。
となると必然的に、ニケが闇魔術士である事が浮かび上がり……
日陰の人生を歩ませて、多大な苦労をかけてしまった事に、いっそう後悔と謝意を募らせたのだった。
しかしニケは、和解も望んでいたものの。
そう簡単に蟠りが解けるはずもなく……
「許すかどうかは、これからのあんた次第だね」
と答えたのだった。
それにより大魔導師は……
なんと自ら、不倫の過去と隠し子の存在を暴露し。
辞任して、後継者に最強魔術士であるニケを推挙したのだった。
ところが奔放に生きてきたニケは、「冗談じゃない!」とそれを断り。
本来の後継者である大魔導師の正統な息子は、まだ力不足だったため。
結局、大魔導師に匹敵する魔力を持つ、その兄が就任したのだった。
だがその件でニケは、素性を隠す必要がなくなったため。
自分にも出来る事があるのではないかと考え……
闇魔術士を救い、守る機関を立ち上げる事に思い至ったのだった。
とはいえ、魔導師の方針に反して無登録を認めるとなると。
公的な許可がない限り、実現は不可能に近いため。
ニケはサイフォスに協力を仰ぎ……
サイフォスは、ニケなら上手くやってのけるだろうと判断し。
王太子直属の特別機関として許可し、極秘任務等の仕事も与える事にしたのだった。
そうして。
これまで水晶を通してやり取りしていたニケは、正式な手続きのために王宮を訪れていた。
「手続きは以上だ。
闇魔術士の統帥として、しっかり頼むぞ?」
「誰に言ってんの?
言われなくてもちゃんとやるし。
必要不可欠になるくらい、あんたの役にも立ってみせるよ」
それはニケなりの、感謝と恩返しだった。
「それは頼もしいな。
だったらモエの役にも立ってくれ」
「それも、言われなくてもそのつもりだし。
姉さんには今度、術を教える事になってるから」
「そうなのか……」
2人が良好な関係を築いている事を、喜ばしく思うサイフォス。
「じゃあ僕は帰るから、王太子妃様によろしく言っといて」
「なにっ?
会って行かないのか?」
「……うん、色々忙しいし。
また今度にするよ」
本当は、会いたくてたまらなかったが……
他の男の伴侶となったヴィオラと接するのは、遣る瀬無いうえに。
もう自分は必要とされてない事を、目の当たりにするのが怖かったのだ。
しかし、中央庭園の側を通りかかったところで、初めて会った日を思い出し……
やっぱり会えば良かったと、後悔が押し寄せる。
そこで「ニケ!」と、聞き覚えのある声で呼び止められて。
振り向くと、会いたくて堪らなかった姿が映り込む。
「えっ……
こんなとこで、何してんのっ?」
動揺して、そう口走るニケ。
「こっちの台詞よ!
黙って帰ろうとするなんて、ひどいじゃないっ。
侍女たちがきゃあきゃあ騒いでなかったら、気付かないとこだったのよっ?」
「だって別に、会う理由ないし……」
「ひどい!
私は会えるのを楽しみにしてたのにっ」
その言葉に、嬉しくてたまらなくなるニケ。
「しかもニケのために、アフタヌーンティーも用意してるのよっ?
だから、今度は断らないで?」
と、懐かしむように微笑むヴィオラ。
「……仕方ないなぁ。
じゃあ付き合ってあげるよ」
と、ニケも観念したように微笑んだ。
「……で、なんでわざわざ専用庭園に?」
「だって、周りの目がない方が気楽に話せるでしょう?
ここなら私とサイフォス様しか、勝手に入れないし」
そう、王太子妃にいつもの調子で話すとなると、良からぬ噂が立ちかねない上に。
常に女性たちから熱い視線を向けられるニケも、気が休まらないと思ったからだ。
「なるほどね。
にしても、すごく綺麗な建物だね」
「でしょう?」
それは離婚前にサイフォスがサプライズしようとした、宝石のような青いパビリオンだった。
「けど、こうも青ばっかだと……
僕とヴィオラの庭みたいだね」
と、ニケが思うのも無理はなく。
青の世界に、青のドレスを纏ったヴィオラと、青の髪と瞳を携えた自分がいるからだ。
とそこで。
「私がいるのもお忘れなく」
と、お茶やスイーツを並べていたリモネが口挟む。
「あぁ、その節はどうも」
邪魔に思いながらも、とりあえず潜入時の礼を棒読みで告げるニケ。
「感じわるっ」
「リモネごめんねっ?
それと、手伝ってくれてありがとう。
あとはこっちでやるから、下がってゆっくりしてて?」
よしっ!と心で2人きりを喜ぶニケ。
「ところでニケ、すごいじゃない!
闇魔術士の機関を設立するなんてっ」
「別にすごくないよ。
王太子様の力を借りなきゃ、何も出来なかったし」
「ううん!
サイフォス様は公的な事を、情で許可したりはしないわ。
ニケの考えやプランが素晴らしかったから、協力してくださったのよ。
私も協力したいから、出来る事があったら何でも言ってね?」
「気持ちはありがたいけど、ヴィオラは足手まといかも」
「ひどい!
相変わらず容赦ないわねっ。
でもお祝いは絶対したいから、何かリクエストがあったら遠慮なく言ってね?」
ーーリクエスト!?
そこでニケは、ダメ元で願望を言ってみる。
「……じゃあ、ハグがいい」
「ハグ?……ハグっ!?
さすがにそれはっ、ごめんなさいっ!」
サイフォスの妻となったからには、それをする訳にはいかなかったのだ。
「やっぱりダメか……」
しかしニケは、どうしてもヴィオラに触れたくて……
「じゃあ握手でいいよ。
それくらいなら問題ないよね?」
と、手のひらを差し出した。
「問題は、ないけど……
逆にそんな事でいいの?」
「いいよ。
何よりも頑張れる、エールになるから」
「ほんとにっ?
それなら喜んで……
頑張ってね、ニケ」
そう言って、差し出された手に自分の手を重ねると。
ぶわりとニケは、たとえようのない感情が込み上げて……
堪らずぎゅっと、その温もりを噛み締めるように握り締めた。
ところがその時。
「俺の妻に気安く触るな」
とサイフォスから不満の声がかけられる。
「っ、なんでいるワケっ?」
「お前こそ、忙しいんじゃなかったのか?」
「忙しくても、ヴィオラが僕のために用意してくれたものを、断るわけないだろ?」
「俺も、お前たちが専用庭園に向かっているのが見えたため。
仲間に入れてもらおうと赴いたところだ」
「はあっ?
あんた今公務中だよね?」
「生憎今は休憩中だ。
それより早くその手を離せ」
「はぁ、握手くらいで……
心の狭い王太子様だな」
と、渋々それを解くと。
「何だと!?
お前の事を、どれだけ寛大に対処してると思ってるんだっ」
と反論するサイフォス。
そこでヴィオラが、場を収めようと口挟む。
「確かにそうですね。
私の大切な友人の事を、寛大に対処してくださって、そして親身に協力してくださって、本当にありがとうございます。
サイフォス様はほんとに優しい方ですね」
2人して、一気に嬉しい気持ちになるも。
ニケは自分の言動のせいで、王太子の株がこれ以上上がるのを防ぎたいと思い。
「……僕も、これまでのご無礼を深く謝罪いたします。
そして寛大な対処とご協力を、心から感謝致します」
と態度を改めた。
「素直に偉いわニケ!
ちゃんとサイフォス様を立ててくれてありがとうっ」
その言葉に、今度は王太子が……
ーーそんな当たり前な事で褒められるのかっ?
と、ニケの株が不当に上がるのを防ぎたいと思い。
「いや、調子が狂うから。
お前は今まで通り、無礼極まりなく、クソ生意気なままでいい」
と寛容した。
「いや、言い方……」
そんな2人のやり取りに。
ヴィオラは堪らず、ふふっと吹き出してしまう。
するとサイフォスも、その楽しそうな笑顔に堪らなく幸せを感じ……
ハハっ!と、噛み締めるように破顔した。
それを目にしたニケは、普段の冷淡な表情からは想像もつかない、サイフォスの屈託のない笑顔に面喰らっていた。
しかし、今の王宮では……
そんな2人の姿は、もう珍しいものではなく。
かつての冷酷な王太子の噂など、微塵も感じさせないほど。
そしてかつての悪妃だった事も、微塵も感じさせないほど。
いつも仲睦まじく笑い合う、2人の笑顔が溢れていた。
さらには、その数年後。
笑い合う笑顔の中には、可愛らしい天使たちの笑顔も加わっていたのだった。
fin
ーあとがきー
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
本作は初のファンタジーで、批判もたくさんいただきましたが……
亀更新にもかかわらず、ずっと追いかけ続けてくださった読者様や。
二ノ前ト月先生が描いてくださった、表紙の素敵すぎるイラストや。
とあるノベルズコンテストで審査ユーザーの方々がくださった、嬉しすぎる評価コメントのおかげで、頑張る事が出来ました。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結おめでとうございます😊
途中(°_°;)ハラハラ(; °_°)しながらも
それぞれお互いのすれ違い、思い違いが解決して良かったです。
ニケも幸せになってくれるといいな。
楽しかったですありがとうございました🥰
はるるんさん!お祝いのお言葉、ありがとうございます!
ニケの幸せも願ってくださって嬉しいです😊
そして「楽しかった」と言っていただき、感激です💖
いつもコメントくださって、本当にありがとうございました🙏✨
田鶴さま!お祝いのお言葉、ありがとうございます!
最後のシーンを微笑ましく思ってくださり、とてもほっとしました。
ラピズも少し先の未来でちゃんと幸せになります。心配してくださって嬉しいです。
そして初期からずっとお付き合いくださり、たくさんのコメントをくださり、いつも登場人物たちの心に寄り添ってくださり、本当に感謝でいっぱいです。
改めて、ありがとうございました!
胸キュン感動していただけたなんて、めちゃくちゃ感激です!
ニケの事まで色々と考えてくださって、本当に嬉しいです。
子供たちとのシーンも、いつか機会があれば書いてみようと思います。
それと「告白1」でのご指摘ですが、反対ではなくそのままの意味ではあるんですが、ファラの件と一括りに書いてしまったので、確かにそう受け取れますよね💦
ご指摘助かりました!ちょっと工夫してみます(工夫しても分かりにくいかもですが…)