悪妃になんて、ならなきゃよかった

よつば猫

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告白2

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 そしてぐっと、ぐううと、狂おしい気持ちで包み込みながら……

「ほんとに……
本当、なのか?」
信じられない思いで、うわ言のように呟いた。

「はいっ、本当です。
これまでずっと、伝える訳にはいかなかった……
でもずっと、伝えたかった!」
そう言ってヴィオラは、ちゃんと謝りたかった事も口にした。

「それと……
あんなにもたくさんのブルーローズを、傷だらけになりながら摘み取ってくださったのに、捨ててしまってごめんなさいっ。
とても忙しい中で、あれほど素敵な舞踏会を開いてくださったのに、酷い仕打ちをしてごめんなさいっ。
公務もずっと肩代わりしてくださってたのに、何度も妨害して、倒れるまで追い詰めてしまってごめんなさいっ。
他にもたくさん、酷い事を言ったり、酷い事をしてごめんなさいっ……」

「お前は何も悪くない!
そうさせたのは俺だし、本心じゃないと分かっているっ。
むしろ俺の方こそ……
ラピズとの仲を引き裂いてすまなかった。
毎日好物を差し入れてくれたのに、ずっと拒絶してすまなかった。
好きな女が出来たと嘘をついて、切り捨ててすまなかった!」

 そこでヴィオラは、聞き捨てならない台詞に反応する。

「っ、嘘だったのですかっ!?」

「すまないっ。
お前が心置きなくラピズとやり直せるように、計らったつもりだったんだが……
お前の気持ちを気付けずに、逆に傷付けてしまって本当にすまないっ」

「いえっ!
気持ちをいたのですから、気付かなくて当然ですっ」

 それはラピズを守るために、詳しい事は話せないヴィオラの……
専用庭園での発言は偽りだという、精いっぱいの弁明だった。

「それより私のために、サイフォス様まで悪役をさせてしまって……
その事の方が心苦しいです」

「まったくお前はっ、俺のせいでこんな事になったというのに……
……だが、許してくれるなら。
もう一度、俺の妃になってくれないか?」

 突然のプロポーズに、今度はヴィオラの心臓が止まるも。

「えっ……
そんな事が、許されるのですかっ?」
と恐る恐る聞き返す。

 そう、一般の再婚と違って。
国を司る立場の者が、くっついたり離れたりするのはイメージが良くない上に。
ヴィオラの印象も悪妃として最悪だったため、多くの者が反対するに違いないからだ。

 しかし。

「誰にも文句は言わせない。
俺はそれだけの事をやって来たし、必ず守ると約束する。
だから今度こそ、俺と生涯一緒に生きてくれ」

 真っ直ぐな目で、願うように告げるサイフォスに。
ヴィオラは再び涙で溢れ返る。

 一緒に生きられる未来など絶対に無いと、とうに諦めていたため。
この上なく幸せな例えようもない奇跡に、ただただ言葉を無くしていた。

 その様子を見かねて、サイフォスが「不安か?」と尋ねると。
ヴィオラは首を横に振り、懸命に声にした。

「サイフォス様と一緒なら、何があっても平気です。
なので私の方こそ、ずっと一緒にいさせてくださいっ……」
そう答えるや否や。

 会話で離れてしまった身体を、再びきつくきつく抱き締めるサイフォス。

「ありがとうっ……」
そして奇跡を噛み締めるように、頬を擦りつけると……

 もう我慢出来ないといったふうに、愛しくて堪らない唇を自分のものにした。

 ヴィオラは心臓が壊れそうになりながら、身体が溶け落ちそうになりながらも……
互いに、渇望するように欲し合い。
2人して悶えるほど甘いキスに、深く深く溺れ続けたのだった。






 それから、ひと月ほどの間。
サイフォスは、再婚の準備を万全に整えると……
ヴィオラを正式に、王太子妃として迎え入れた。

 その際ヴィオラは、ウォルター卿をはじめ宮中全ての者に、かつての振る舞いを心から謝罪した。

 それでもウォルター卿は、人はそんなに容易く変わらないと。
どうせすぐに化けの皮が剥がれると、ヴィオラを信用出来ずにいた。

 とはいえ。
離婚後、酷く辛そうにしていたサイフォスが、驚くほど幸せそうにしているため。
今度こそ上手くいってほしいと願ってもいた。

 ちなみに、離婚と再婚における表向きの理由は……
政略婚の複雑な事情によりすれ違いが生じ、相手を思うが故に別れたものの。
互いになくてはならない存在だと思い知り、誤解が解けて復縁に至ったとしていた。

 そんな中、ラピズは……
ヴィオラをもう一度振り向かせようと、立ち直りかけていたのだが。
復縁にショックを受け、再び絶望に突き落とされていた。
だがこれで、諦めざるを得なくなり。
それが新たな一歩になるに違いなかった。

 また、フラワベルも……
復縁にショックを受け、どうにか別れさせようと企んでいたが。
サイフォスから、王太子妃への接近禁止を命じられたため。
もう嫌がらせが出来なくなったのだった。

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