悪妃になんて、ならなきゃよかった

よつば猫

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対決1

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「じゃあまずは……
どうして僕たちの居場所がわかったんですか?」

「お前がラピズやヴィオラに伝説魔法をかけた、闇魔術士だと判断し。
それ以降、見張りをつけていたからだ」 

 そう、睡眠魔法の効果が切れたあと。
一斉に目覚めたサイフォス達は、その異常な事態に危機を感じ、すぐさま国王の安否を確認したのだが……
無事だっただけでなく、容態までも回復していたため。
状況的にニケの仕業だと判断したサイフォスは、すぐにその部屋へ使いを差し向け。
自身は、先程席を外したファラと一緒にいる可能性を考え、その部屋に向かったのだった。

 というのも、ニケが毎晩その部屋で夕食を取っていた事から。
ファラが席を外したのも、その断りを入れるためだと思ったからだ。

 そしてそこで書き置きを見つけ。
さらには見張りの者から、2人が一緒に逃げていると報告を受けたため。
即座にその詳しい情報と、見張りの者が仕掛けた追跡型浮光石を基に、追いかけたのだった。

 また、王太子でありながら危険を顧みずに1人で追いかけたのは……
ヴィオラが心配で、居ても立っても居られなかったからで。
この機を逃せば、ニケほどの魔術士を見つけ出すのは不可能に近いと判断したからだった。

「そういう事か……
でも何で、僕がその魔術士だと?」

「伝説と化した魔法を操り、王宮魔術士をも凌ぐ魔力の闇魔術士など、数人(2・3人)もいないだろう。
にもかかわらず。
立て続けに親しい間柄の2人が、それほどの魔法を受けたとなると……
同じ魔術士に依頼した事が窺える」

 そう言ってサイフォスは「さらに」と続けた。

「ラピズの件で、その魔術士を探っていたところ。
遡って洗い出した際に、王宮でそれらしき男と面会していた事が判明した。
その男は蒼髪の美しい男で、その時にヴィオラとも顔を合わせていた事が目撃されている。
そしてヴィオラも同様の伝説魔法でファラと化し、そのファラが親しくしていたのも同じく蒼髪の美しい男だった。
目撃者の証言によると、同一人物に間違いないらしく。
共通の知人や友人ならば、ラピズだと疑われないように3人での接触は避けたはずだ。

しかもお前を調べた結果、ファラと同時期にリモネの紹介で働き出した事は分かったが……
その割には、リモネと接した形跡は皆無で。
その素性も謎に包まれていた。
加えてお前の部屋にファラが訪れると、奇妙なほど会話も音も全く聞こえないという証言も上がっている」

 そう、間切りされた空間に扉が付いただけの、粗末で狭い部屋であるがゆえ。
本来なら、音も声も駄々漏れなのだ。

「これらの状況証拠から、お前を疑うのは当然だろう」

「ははっ、さすがだね。
忙しいクセによくやるよ。
でも僕が本気で隠してたら、絶対バレない自信があるけどね」

「そうだろうな。
だがお前はどこか詰めが甘く、むしろ所々に痕跡を残していた。
まるで、誰かに見つけてもらいたいかのように」

「……へぇ、そんな事まで気付いてたんだ」

 そう、身を守るために必要な隠蔽はしていたものの。
伝説魔法を使えるようになってからも、その珍しい髪や瞳の色を隠さなかったり。
素性の口外禁止を重要視しなかったり。
大魔導師と関わる可能性がある王太子妃や王宮の者に、敢えて自分の姿を晒したり。
モエに身バレしそうな事まで話したりと。
大魔導師が気に留める情報を、あれこれ残していたのだ。

「まっ、見つけて欲しい相手には全然見つけてもらえなかったし。
こっちから現れてやっても、邪魔にしかされなかったけどね」

「……その相手とはお前の父、大魔導師の事か?」

「っっ!
そこまでお見通しだったとはね……
まさか、あいつが何か言ったのかっ?」

「いや、お前を調査する最中《さなか》。
同じ魔術士であるモエに協力を仰いだところ。
ファラを介して相談を受けた事や、その内容を聞いた事がきっかけだ」

 つまりスケジュールにモエとの打ち合わせが沢山あったのは、闇魔術士を調査するためだったのだ。

「それにより、お前が大魔導師と会いたがっていた事や。
ファラが大魔導師の接待役を、特定で志願して来た事から。
大魔導師を目的としている事が、自ずと浮かび上がるだろう。
それらの事から、今回の来訪時に接触を狙っていた事が窺え。
こっちから現れたという言動で、それが裏付けられたのだ」
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