115 / 123
対決1
しおりを挟む
「じゃあまずは……
どうして僕たちの居場所がわかったんですか?」
「お前がラピズやヴィオラに伝説魔法をかけた、闇魔術士だと判断し。
それ以降、見張りをつけていたからだ」
そう、睡眠魔法の効果が切れたあと。
一斉に目覚めたサイフォス達は、その異常な事態に危機を感じ、すぐさま国王の安否を確認したのだが……
無事だっただけでなく、容態までも回復していたため。
状況的にニケの仕業だと判断したサイフォスは、すぐにその部屋へ使いを差し向け。
自身は、先程席を外したファラと一緒にいる可能性を考え、その部屋に向かったのだった。
というのも、ニケが毎晩その部屋で夕食を取っていた事から。
ファラが席を外したのも、その断りを入れるためだと思ったからだ。
そしてそこで書き置きを見つけ。
さらには見張りの者から、2人が一緒に逃げていると報告を受けたため。
即座にその詳しい情報と、見張りの者が仕掛けた追跡型浮光石を基に、追いかけたのだった。
また、王太子でありながら危険を顧みずに1人で追いかけたのは……
ヴィオラが心配で、居ても立っても居られなかったからで。
この機を逃せば、ニケほどの魔術士を見つけ出すのは不可能に近いと判断したからだった。
「そういう事か……
でも何で、僕がその魔術士だと?」
「伝説と化した魔法を操り、王宮魔術士をも凌ぐ魔力の闇魔術士など、数人(2・3人)もいないだろう。
にもかかわらず。
立て続けに親しい間柄の2人が、それほどの魔法を受けたとなると……
同じ魔術士に依頼した事が窺える」
そう言ってサイフォスは「さらに」と続けた。
「ラピズの件で、その魔術士を探っていたところ。
遡って洗い出した際に、王宮でそれらしき男と面会していた事が判明した。
その男は蒼髪の美しい男で、その時にヴィオラとも顔を合わせていた事が目撃されている。
そしてヴィオラも同様の伝説魔法でファラと化し、そのファラが親しくしていたのも同じく蒼髪の美しい男だった。
目撃者の証言によると、同一人物に間違いないらしく。
共通の知人や友人ならば、ラピズだと疑われないように3人での接触は避けたはずだ。
しかもお前を調べた結果、ファラと同時期にリモネの紹介で働き出した事は分かったが……
その割には、リモネと接した形跡は皆無で。
その素性も謎に包まれていた。
加えてお前の部屋にファラが訪れると、奇妙なほど会話も音も全く聞こえないという証言も上がっている」
そう、間切りされた空間に扉が付いただけの、粗末で狭い部屋であるがゆえ。
本来なら、音も声も駄々漏れなのだ。
「これらの状況証拠から、お前を疑うのは当然だろう」
「ははっ、さすがだね。
忙しいクセによくやるよ。
でも僕が本気で隠してたら、絶対バレない自信があるけどね」
「そうだろうな。
だがお前はどこか詰めが甘く、むしろ所々に痕跡を残していた。
まるで、誰かに見つけてもらいたいかのように」
「……へぇ、そんな事まで気付いてたんだ」
そう、身を守るために必要な隠蔽はしていたものの。
伝説魔法を使えるようになってからも、その珍しい髪や瞳の色を隠さなかったり。
素性の口外禁止を重要視しなかったり。
大魔導師と関わる可能性がある王太子妃や王宮の者に、敢えて自分の姿を晒したり。
モエに身バレしそうな事まで話したりと。
大魔導師が気に留める情報を、あれこれ残していたのだ。
「まっ、見つけて欲しい相手には全然見つけてもらえなかったし。
こっちから現れてやっても、邪魔にしかされなかったけどね」
「……その相手とはお前の父、大魔導師の事か?」
「っっ!
そこまでお見通しだったとはね……
まさか、あいつが何か言ったのかっ?」
「いや、お前を調査する最中《さなか》。
同じ魔術士であるモエに協力を仰いだところ。
ファラを介して相談を受けた事や、その内容を聞いた事がきっかけだ」
つまりスケジュールにモエとの打ち合わせが沢山あったのは、闇魔術士を調査するためだったのだ。
「それにより、お前が大魔導師と会いたがっていた事や。
ファラが大魔導師の接待役を、特定で志願して来た事から。
大魔導師を目的としている事が、自ずと浮かび上がるだろう。
それらの事から、今回の来訪時に接触を狙っていた事が窺え。
こっちから現れたという言動で、それが裏付けられたのだ」
どうして僕たちの居場所がわかったんですか?」
「お前がラピズやヴィオラに伝説魔法をかけた、闇魔術士だと判断し。
それ以降、見張りをつけていたからだ」
そう、睡眠魔法の効果が切れたあと。
一斉に目覚めたサイフォス達は、その異常な事態に危機を感じ、すぐさま国王の安否を確認したのだが……
無事だっただけでなく、容態までも回復していたため。
状況的にニケの仕業だと判断したサイフォスは、すぐにその部屋へ使いを差し向け。
自身は、先程席を外したファラと一緒にいる可能性を考え、その部屋に向かったのだった。
というのも、ニケが毎晩その部屋で夕食を取っていた事から。
ファラが席を外したのも、その断りを入れるためだと思ったからだ。
そしてそこで書き置きを見つけ。
さらには見張りの者から、2人が一緒に逃げていると報告を受けたため。
即座にその詳しい情報と、見張りの者が仕掛けた追跡型浮光石を基に、追いかけたのだった。
また、王太子でありながら危険を顧みずに1人で追いかけたのは……
ヴィオラが心配で、居ても立っても居られなかったからで。
この機を逃せば、ニケほどの魔術士を見つけ出すのは不可能に近いと判断したからだった。
「そういう事か……
でも何で、僕がその魔術士だと?」
「伝説と化した魔法を操り、王宮魔術士をも凌ぐ魔力の闇魔術士など、数人(2・3人)もいないだろう。
にもかかわらず。
立て続けに親しい間柄の2人が、それほどの魔法を受けたとなると……
同じ魔術士に依頼した事が窺える」
そう言ってサイフォスは「さらに」と続けた。
「ラピズの件で、その魔術士を探っていたところ。
遡って洗い出した際に、王宮でそれらしき男と面会していた事が判明した。
その男は蒼髪の美しい男で、その時にヴィオラとも顔を合わせていた事が目撃されている。
そしてヴィオラも同様の伝説魔法でファラと化し、そのファラが親しくしていたのも同じく蒼髪の美しい男だった。
目撃者の証言によると、同一人物に間違いないらしく。
共通の知人や友人ならば、ラピズだと疑われないように3人での接触は避けたはずだ。
しかもお前を調べた結果、ファラと同時期にリモネの紹介で働き出した事は分かったが……
その割には、リモネと接した形跡は皆無で。
その素性も謎に包まれていた。
加えてお前の部屋にファラが訪れると、奇妙なほど会話も音も全く聞こえないという証言も上がっている」
そう、間切りされた空間に扉が付いただけの、粗末で狭い部屋であるがゆえ。
本来なら、音も声も駄々漏れなのだ。
「これらの状況証拠から、お前を疑うのは当然だろう」
「ははっ、さすがだね。
忙しいクセによくやるよ。
でも僕が本気で隠してたら、絶対バレない自信があるけどね」
「そうだろうな。
だがお前はどこか詰めが甘く、むしろ所々に痕跡を残していた。
まるで、誰かに見つけてもらいたいかのように」
「……へぇ、そんな事まで気付いてたんだ」
そう、身を守るために必要な隠蔽はしていたものの。
伝説魔法を使えるようになってからも、その珍しい髪や瞳の色を隠さなかったり。
素性の口外禁止を重要視しなかったり。
大魔導師と関わる可能性がある王太子妃や王宮の者に、敢えて自分の姿を晒したり。
モエに身バレしそうな事まで話したりと。
大魔導師が気に留める情報を、あれこれ残していたのだ。
「まっ、見つけて欲しい相手には全然見つけてもらえなかったし。
こっちから現れてやっても、邪魔にしかされなかったけどね」
「……その相手とはお前の父、大魔導師の事か?」
「っっ!
そこまでお見通しだったとはね……
まさか、あいつが何か言ったのかっ?」
「いや、お前を調査する最中《さなか》。
同じ魔術士であるモエに協力を仰いだところ。
ファラを介して相談を受けた事や、その内容を聞いた事がきっかけだ」
つまりスケジュールにモエとの打ち合わせが沢山あったのは、闇魔術士を調査するためだったのだ。
「それにより、お前が大魔導師と会いたがっていた事や。
ファラが大魔導師の接待役を、特定で志願して来た事から。
大魔導師を目的としている事が、自ずと浮かび上がるだろう。
それらの事から、今回の来訪時に接触を狙っていた事が窺え。
こっちから現れたという言動で、それが裏付けられたのだ」
30
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる