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説得3
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「そんな奴が、聖人であるべき魔術士を束ねてるなんて、聞いて呆れるっ。
だから不祥事を起こさせて、その地位を剥奪すべきなんだよ!」
「っ、確かにっ、大魔導師様がやった事は許される事じゃないと思うわ。
だけどやっぱり、罪のない陛下を犠牲にするのは間違ってるわっ」
「間違ってたってどうでもいいよ!
そんな綺麗事は、僕と同じ目に遭ってから言って欲しいねっ。
そもそも、あいつが先に間違いを犯したんだし。
その血を受け継いでるから、僕も自分さえ良ければどうでもいいんだよっ」
「ううん!ニケは違うわっ。
ニケはとても優しい人だから……
だから誰かを犠牲にしたら、後悔して余計苦しむはずっ」
「っっ、知ったふうな事言うなよ!
あんたは所詮、王太子しか見てないクセにっ……
王様を助けようとしてるのも、結局王太子のためだろうっ!?」
「確かにっ、サイフォス様のためでもあるわ。
けど同じくらい、ニケにもそんな真似させたくないのっ。
これ以上、ニケが苦しむのは嫌なの!
だって……
私にとっては、本当に大事な人だから」
と、邪魔者なんかじゃない事を精いっぱい伝えるヴィオラ。
その言葉にニケは、胸をどうしようもなく締め付けられる。
嬉しくて……
なのにその愛は、決して手に入らない事がやるせなくて。
それでも、欲しくて堪らなくて。
そしてどうしても、大魔導師が許せなくて。
苦悩の表情を浮かべると……
「……わかったよ」
と呟くニケ。
「ニケ!」
しかしヴィオラが「ありがとうっ」と続けたところで、その言葉が「ただし!」と遮られる。
「……ただし、代価はあんただ」
「えっ……
それって、私の命って事?」
「まぁ似たもようなもんかな。
そう、あんたの人生を僕にくれるなら……
代わりに、王様の命を救ってあげるよ。
それも悪化したとこだけじゃなく、病気自体を治してあげるよ」
「っ、陛下のご病気を治せるのっ!?
待ってそもそも……
どうして病気の事を知ってるのっ?」
「あぁ前に、王宮に納められた物に魔法をかけたって言ったよね?
その中の、王様の部屋に届けられた水晶で、様子を覗いたり、遠隔魔法で探ったりしたからだよ」
「すごい、そんな事まで出来るなんて……」
とはいえ。
闇魔術士である自分が、身バレの危険を冒してまで助けるわけにもいかず……
大魔導師と和解出来たら、治療をしてあげようと思っていたのだ。
そしてそうすれば、父親に認められたり褒められたりするんじゃないかと……
幼少期に拗らせた淡い期待を、心の奥底に抱いていたという訳だった。
一方ヴィオラは……
国王の病気でサイフォスが、ずっと辛く大変な思いをして来たのを知っているからこそ。
その回復が何よりも、サイフォスの力になれる事だと考え。
そのためなら自分の人生など、いくら差し出しても構わないと思っていた。
「……わかったわ。
でも私の人生を、どうあげればいいの?
何が欲しいの?」
するとニケは、「はぁ、鈍感だな」とため息をついて、言いにくそうに答えた。
「だから……
僕の伴侶になれって言ってんの!」
「伴侶?
って、えええっ!
どうして私とっ!?」
「ああも!全部言わなきゃわかんないっ?
あんたに惚れてるからに決まってるだろ!?
他にあんたと居て、どんなメリットがあるっていうんだよっ」
思わぬ告白に、胸をズキュンと撃ち抜かれるヴィオラ。
しかし、あまりに予想外な展開に。
「ずっ、ずいぶん辛口な告白ね……」
としか返せず、混乱する。
対してニケも。
ーーほんと何言ってんだ!
と自己嫌悪しながら。
「うるさいなっ……
こーゆーの初めてだから仕方ないだろっ」
と片手で頭を抱えた。
だから不祥事を起こさせて、その地位を剥奪すべきなんだよ!」
「っ、確かにっ、大魔導師様がやった事は許される事じゃないと思うわ。
だけどやっぱり、罪のない陛下を犠牲にするのは間違ってるわっ」
「間違ってたってどうでもいいよ!
そんな綺麗事は、僕と同じ目に遭ってから言って欲しいねっ。
そもそも、あいつが先に間違いを犯したんだし。
その血を受け継いでるから、僕も自分さえ良ければどうでもいいんだよっ」
「ううん!ニケは違うわっ。
ニケはとても優しい人だから……
だから誰かを犠牲にしたら、後悔して余計苦しむはずっ」
「っっ、知ったふうな事言うなよ!
あんたは所詮、王太子しか見てないクセにっ……
王様を助けようとしてるのも、結局王太子のためだろうっ!?」
「確かにっ、サイフォス様のためでもあるわ。
けど同じくらい、ニケにもそんな真似させたくないのっ。
これ以上、ニケが苦しむのは嫌なの!
だって……
私にとっては、本当に大事な人だから」
と、邪魔者なんかじゃない事を精いっぱい伝えるヴィオラ。
その言葉にニケは、胸をどうしようもなく締め付けられる。
嬉しくて……
なのにその愛は、決して手に入らない事がやるせなくて。
それでも、欲しくて堪らなくて。
そしてどうしても、大魔導師が許せなくて。
苦悩の表情を浮かべると……
「……わかったよ」
と呟くニケ。
「ニケ!」
しかしヴィオラが「ありがとうっ」と続けたところで、その言葉が「ただし!」と遮られる。
「……ただし、代価はあんただ」
「えっ……
それって、私の命って事?」
「まぁ似たもようなもんかな。
そう、あんたの人生を僕にくれるなら……
代わりに、王様の命を救ってあげるよ。
それも悪化したとこだけじゃなく、病気自体を治してあげるよ」
「っ、陛下のご病気を治せるのっ!?
待ってそもそも……
どうして病気の事を知ってるのっ?」
「あぁ前に、王宮に納められた物に魔法をかけたって言ったよね?
その中の、王様の部屋に届けられた水晶で、様子を覗いたり、遠隔魔法で探ったりしたからだよ」
「すごい、そんな事まで出来るなんて……」
とはいえ。
闇魔術士である自分が、身バレの危険を冒してまで助けるわけにもいかず……
大魔導師と和解出来たら、治療をしてあげようと思っていたのだ。
そしてそうすれば、父親に認められたり褒められたりするんじゃないかと……
幼少期に拗らせた淡い期待を、心の奥底に抱いていたという訳だった。
一方ヴィオラは……
国王の病気でサイフォスが、ずっと辛く大変な思いをして来たのを知っているからこそ。
その回復が何よりも、サイフォスの力になれる事だと考え。
そのためなら自分の人生など、いくら差し出しても構わないと思っていた。
「……わかったわ。
でも私の人生を、どうあげればいいの?
何が欲しいの?」
するとニケは、「はぁ、鈍感だな」とため息をついて、言いにくそうに答えた。
「だから……
僕の伴侶になれって言ってんの!」
「伴侶?
って、えええっ!
どうして私とっ!?」
「ああも!全部言わなきゃわかんないっ?
あんたに惚れてるからに決まってるだろ!?
他にあんたと居て、どんなメリットがあるっていうんだよっ」
思わぬ告白に、胸をズキュンと撃ち抜かれるヴィオラ。
しかし、あまりに予想外な展開に。
「ずっ、ずいぶん辛口な告白ね……」
としか返せず、混乱する。
対してニケも。
ーーほんと何言ってんだ!
と自己嫌悪しながら。
「うるさいなっ……
こーゆーの初めてだから仕方ないだろっ」
と片手で頭を抱えた。
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