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誤解2
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「ですが当然の感情だと思いますし、私なら大丈夫ですので、どうか下女としてお仕えさせてください」
サイフォスが気にしないように、慌ててそう補うも。
「ならば……
何なりと力になるなど、無理ではないか」
と揚げ足を取られる。
「いえ私としてはっ、無理な事などございません。
なのでお二人の邪魔にならない範囲で、お力添えいたします」
「二人の邪魔?
……それは、誰と誰の事を言っている」
「え?
もちろん、殿下とビグストン公爵令嬢様の事でございます」
「っ待て、意味がわからない。
そもそもお前の恋人の話をしているのに、どうして俺の話が出てくる」
ーー私の恋人っ!?
待って、私まで意味がわからないっ。
「あの、私に恋人はおりませんが……
誰の事を言っておられますか?」
ーーまさかラピズの事っ?
でもそれなら、私がヴィオラだと断定して話してる事になる……
そう焦るも。
予想外の答えに面食らう。
「昨夜、抱き合っていた美青年の事だが……
恋人じゃないのか?」
ーーええっ、ニケの事!?
という事は、やっぱり誤解されてたのね……
「彼は大切な友人です。
抱き合っているように見えたのは、転倒しかけたところを助けてもらっていたからです」
「だが持ち帰っていた夕食は、彼に食べさせていたんじゃないのか?」
ーーうそっ、そこまで見破られていたなんて!
「……はい、お察しの通りです。
嘘をついて勝手な真似をして、申し訳ございませんでした」
「それは構わないっ。
ただそうなると、毎日自室に招き入れていたわけだろう?
恋人でもない男にそこまでするのか?」
そう指摘されて、言われてみればと思うヴィオラ。
しかし元より報告会でそうしていたため、その延長線にすぎないのだが……
それを話して何かに勘付かれては困るため、返答に困ってしまう。
するとその様子を見たサイフォスは……
「もしかして、まだ片思いの状態なのか?」と誤解を重ねる。
「っ、違います!
……だだ彼には、慣れない王宮で色々と助けてもらったので、少しでも恩返しをしたいんです」
「そうだったのか……」
サイフォスは、ほっと胸を撫で下ろすも。
自分がそうしてやれなかった事に、悔しさを感じる。
「だがこれからは、何かあれば俺を頼ってくれ。
自分の侍女が他の者に頼るのは、いい気がしないからな」
「……お心遣い、ありがとうございます。
しかし先程、侍女を辞めたいと申し上げたはずですが……」
そこでサイフォスは「そうだったな」と、先程のやり取りを思い返し……
恋人が嫌がっているという理由や、その相手にフラワベルの名が上がった事から、彼女から何か言われたのだと察する。
「だが、ビグストン令嬢の事なら気にしなくていい。
彼女は妃候補ではあるが、俺の恋人でもなければ、恋愛対象ですらないのだから」
ーーえええっ、そうだったの!?
じゃあサイフォス様の好きな女性って誰なのっ?
他にそれらしい人なんて……
と思ったところで、ふいにモエが頭に浮かぶ。
ーーどうして気づかなかったんだろう……
モエは誰よりも、サイフォス様と関わりが深くて。
優しくて有能で、私なんかよりずっと相応しいのに!
そう思って、胸が捻り潰される。
「……どうした?
他に問題でもあるのか?」
「っいえ、問題は、ありません……」
「そうか。
ならばこれまで通り、専属侍女を続けてくれ」
「……承知しました。
ですが先程、好きなようにやらせてくださると言ってくださいましたよね?」
「何か希望があるのか?」
「はい。
やりがいのある業務を見つけるために、殿下のスケジュールを把握させていただけませんか?」
もちろんそれは、サイフォスの力になるためでもあるが。
かねてからの目的である、ニケのためでもあった。
「わかった。
スケジュールを管理している、ウォルター卿に頼んでおく」
サイフォスが気にしないように、慌ててそう補うも。
「ならば……
何なりと力になるなど、無理ではないか」
と揚げ足を取られる。
「いえ私としてはっ、無理な事などございません。
なのでお二人の邪魔にならない範囲で、お力添えいたします」
「二人の邪魔?
……それは、誰と誰の事を言っている」
「え?
もちろん、殿下とビグストン公爵令嬢様の事でございます」
「っ待て、意味がわからない。
そもそもお前の恋人の話をしているのに、どうして俺の話が出てくる」
ーー私の恋人っ!?
待って、私まで意味がわからないっ。
「あの、私に恋人はおりませんが……
誰の事を言っておられますか?」
ーーまさかラピズの事っ?
でもそれなら、私がヴィオラだと断定して話してる事になる……
そう焦るも。
予想外の答えに面食らう。
「昨夜、抱き合っていた美青年の事だが……
恋人じゃないのか?」
ーーええっ、ニケの事!?
という事は、やっぱり誤解されてたのね……
「彼は大切な友人です。
抱き合っているように見えたのは、転倒しかけたところを助けてもらっていたからです」
「だが持ち帰っていた夕食は、彼に食べさせていたんじゃないのか?」
ーーうそっ、そこまで見破られていたなんて!
「……はい、お察しの通りです。
嘘をついて勝手な真似をして、申し訳ございませんでした」
「それは構わないっ。
ただそうなると、毎日自室に招き入れていたわけだろう?
恋人でもない男にそこまでするのか?」
そう指摘されて、言われてみればと思うヴィオラ。
しかし元より報告会でそうしていたため、その延長線にすぎないのだが……
それを話して何かに勘付かれては困るため、返答に困ってしまう。
するとその様子を見たサイフォスは……
「もしかして、まだ片思いの状態なのか?」と誤解を重ねる。
「っ、違います!
……だだ彼には、慣れない王宮で色々と助けてもらったので、少しでも恩返しをしたいんです」
「そうだったのか……」
サイフォスは、ほっと胸を撫で下ろすも。
自分がそうしてやれなかった事に、悔しさを感じる。
「だがこれからは、何かあれば俺を頼ってくれ。
自分の侍女が他の者に頼るのは、いい気がしないからな」
「……お心遣い、ありがとうございます。
しかし先程、侍女を辞めたいと申し上げたはずですが……」
そこでサイフォスは「そうだったな」と、先程のやり取りを思い返し……
恋人が嫌がっているという理由や、その相手にフラワベルの名が上がった事から、彼女から何か言われたのだと察する。
「だが、ビグストン令嬢の事なら気にしなくていい。
彼女は妃候補ではあるが、俺の恋人でもなければ、恋愛対象ですらないのだから」
ーーえええっ、そうだったの!?
じゃあサイフォス様の好きな女性って誰なのっ?
他にそれらしい人なんて……
と思ったところで、ふいにモエが頭に浮かぶ。
ーーどうして気づかなかったんだろう……
モエは誰よりも、サイフォス様と関わりが深くて。
優しくて有能で、私なんかよりずっと相応しいのに!
そう思って、胸が捻り潰される。
「……どうした?
他に問題でもあるのか?」
「っいえ、問題は、ありません……」
「そうか。
ならばこれまで通り、専属侍女を続けてくれ」
「……承知しました。
ですが先程、好きなようにやらせてくださると言ってくださいましたよね?」
「何か希望があるのか?」
「はい。
やりがいのある業務を見つけるために、殿下のスケジュールを把握させていただけませんか?」
もちろんそれは、サイフォスの力になるためでもあるが。
かねてからの目的である、ニケのためでもあった。
「わかった。
スケジュールを管理している、ウォルター卿に頼んでおく」
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