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再会2
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そうして指示された通りに、その場所に行くも。
まだ誰も来ておらず……
ーーもしかしてここじゃないのかしら?
新たな不安に駆られた矢先。
待ち潜んでいた下女たちから、即座に囲まれてしまう。
ーーなんなのこの雰囲気……
まさか、集団いびり!?
そう焦るも。
ぶつけられた第一声に、面食らう。
「ファラあなた、蒼髪の庭係とはどういう関係?」
「えっ……ニケの事ですか?」
「そうよ、ニケ様よっ。
一体どういう関係なのっ?」
ーー様って……
そこでヴィオラは、嫉妬を向けられているのだと気付く。
「……ニケとはただの、紹介仲間です」
「嘘おっしゃい!
その程度の関係で、毎日密会するわけないでしょうっ?」
「それはっ……」
そのきっかけは、ヴィオラの親切心からで。
ニケに、慣れない王宮の案内をするためだったが……
すぐにそれは、ニケが面識もないリモネの紹介という事や。
詐称身分を怪しまれないようにするための、小まめな口裏合わせが目的となっていた。
しかし当然、そんな理由を言えるはずもなく……
「その、慣れない王宮で、お互い心細かったので、毎日励ましあってたんです」
「だとしてもいいかげん慣れたでしょうっ。
それでも会い続けるって事は、下心があるって言ってるようなもんじゃない!」
「そんなっ……
でも仮にそうだとして、何か問題がありますかっ?」
「っ、あるわ!
あなたまだ半人前以下なんだから、そんな事にうつつを抜かしてる暇があったら仕事を覚えなさいっ。
あなたの代わりなんて、いくらでもいるのよっ?」
そう言われて、焦るヴィオラ。
というのも……
たとえリモネの紹介でも、使い物にならなければ解雇は免れず。
さらには、いくらリモネの人望が厚くとも。
その成り上がりや悪妃に仕えていた事などに、敵対心を持つ者も当然いるため。
辞めさせようと、付け入る隙を狙われている可能性もあるからだ。
といっても、実際ヴィオラの仕事ぶりは……
ノロマで丁寧な分、作業が人一倍遅い事を除けば。
業務もしっかり覚えており、誰よりも一生懸命に働いていた。
しかし事実はどうであれ、相手が半人前以下と思っているのなら、それが答えであり。
ーーこんな事で解雇されるわけにはいかない!
と、そのために忍従するしかなかった。
「誤解を生む発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。
ですが誓って、ニケと特別な関係はありませんし、下心も微塵もありません」
「ふーん、そう。
だったら私たちに紹介しなさいよ」
「っ、紹介ですかっ?」
「そうよ。
心細かったんなら、私たちも仲間になってあげるわ」
ーーしまった、紹介が狙いだったのねっ?
「それはっ、ありがたいのですが……
本人の了承を得てからでないと、お受け出来ません」
「ちょっと挨拶するだけなのに、了承を得る必要があるっ?
むしろ先輩との挨拶を断るなんて、礼儀知らずもいいとこだわっ」
「ですがっ、私が勝手に承諾するわけにはいきませんっ」
「だから、偶然を装って成り行きで紹介すればいいでしょうっ?
それとも、ほんとは紹介したくないんじゃないのっ?」
「違いますっ!」
「だったら協力しなさいよ!
このままここで働きたいならね」
それは、協力しなければ辞めさせると脅しているも同然で……
「っ、プライベートな事に、仕事を引き合いに出さないでくださいっ」
ついそう言い返してしまうと。
「なによっ、先輩に楯突く気!?」
そう肩を、ドンと突き押されてしまう。
するとその時。
「そこで何をしてるのかしら?」
聞き覚えのある声が、ヴィオラの耳に飛び込む。
ーーこの声は!
すぐにその声の方に顔を向けると。
そこには久しぶりに目にする、王宮魔術士モエの姿があった。
モエは裏庭の奥にある家畜小屋に、生贄の選定に向かっていたのだが……
見過ごせない状況を目にして、仲裁に入ったのだった。
まだ誰も来ておらず……
ーーもしかしてここじゃないのかしら?
新たな不安に駆られた矢先。
待ち潜んでいた下女たちから、即座に囲まれてしまう。
ーーなんなのこの雰囲気……
まさか、集団いびり!?
そう焦るも。
ぶつけられた第一声に、面食らう。
「ファラあなた、蒼髪の庭係とはどういう関係?」
「えっ……ニケの事ですか?」
「そうよ、ニケ様よっ。
一体どういう関係なのっ?」
ーー様って……
そこでヴィオラは、嫉妬を向けられているのだと気付く。
「……ニケとはただの、紹介仲間です」
「嘘おっしゃい!
その程度の関係で、毎日密会するわけないでしょうっ?」
「それはっ……」
そのきっかけは、ヴィオラの親切心からで。
ニケに、慣れない王宮の案内をするためだったが……
すぐにそれは、ニケが面識もないリモネの紹介という事や。
詐称身分を怪しまれないようにするための、小まめな口裏合わせが目的となっていた。
しかし当然、そんな理由を言えるはずもなく……
「その、慣れない王宮で、お互い心細かったので、毎日励ましあってたんです」
「だとしてもいいかげん慣れたでしょうっ。
それでも会い続けるって事は、下心があるって言ってるようなもんじゃない!」
「そんなっ……
でも仮にそうだとして、何か問題がありますかっ?」
「っ、あるわ!
あなたまだ半人前以下なんだから、そんな事にうつつを抜かしてる暇があったら仕事を覚えなさいっ。
あなたの代わりなんて、いくらでもいるのよっ?」
そう言われて、焦るヴィオラ。
というのも……
たとえリモネの紹介でも、使い物にならなければ解雇は免れず。
さらには、いくらリモネの人望が厚くとも。
その成り上がりや悪妃に仕えていた事などに、敵対心を持つ者も当然いるため。
辞めさせようと、付け入る隙を狙われている可能性もあるからだ。
といっても、実際ヴィオラの仕事ぶりは……
ノロマで丁寧な分、作業が人一倍遅い事を除けば。
業務もしっかり覚えており、誰よりも一生懸命に働いていた。
しかし事実はどうであれ、相手が半人前以下と思っているのなら、それが答えであり。
ーーこんな事で解雇されるわけにはいかない!
と、そのために忍従するしかなかった。
「誤解を生む発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。
ですが誓って、ニケと特別な関係はありませんし、下心も微塵もありません」
「ふーん、そう。
だったら私たちに紹介しなさいよ」
「っ、紹介ですかっ?」
「そうよ。
心細かったんなら、私たちも仲間になってあげるわ」
ーーしまった、紹介が狙いだったのねっ?
「それはっ、ありがたいのですが……
本人の了承を得てからでないと、お受け出来ません」
「ちょっと挨拶するだけなのに、了承を得る必要があるっ?
むしろ先輩との挨拶を断るなんて、礼儀知らずもいいとこだわっ」
「ですがっ、私が勝手に承諾するわけにはいきませんっ」
「だから、偶然を装って成り行きで紹介すればいいでしょうっ?
それとも、ほんとは紹介したくないんじゃないのっ?」
「違いますっ!」
「だったら協力しなさいよ!
このままここで働きたいならね」
それは、協力しなければ辞めさせると脅しているも同然で……
「っ、プライベートな事に、仕事を引き合いに出さないでくださいっ」
ついそう言い返してしまうと。
「なによっ、先輩に楯突く気!?」
そう肩を、ドンと突き押されてしまう。
するとその時。
「そこで何をしてるのかしら?」
聞き覚えのある声が、ヴィオラの耳に飛び込む。
ーーこの声は!
すぐにその声の方に顔を向けると。
そこには久しぶりに目にする、王宮魔術士モエの姿があった。
モエは裏庭の奥にある家畜小屋に、生贄の選定に向かっていたのだが……
見過ごせない状況を目にして、仲裁に入ったのだった。
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